さまざまな鉱物の知識が得られる
本作は、鉱物に魅せられた女子高校生・谷川瑠璃が、山へ川へ洞窟へとさまざまな場所で鉱物採集に挑む物語。その道程や鉱物に関する解説は、鉱物学を修めた作者・渋谷圭一郎の確かな知見に基づいており、物語を楽しみながら、鉱物の特徴や鉱物採集の方法、ひいては地球の成り立ちや仕組みに至るまで、さまざまな知識を得ることできる。だが、その内容は決して杓子定規ではなく、瑠璃の鉱物を巡る冒険はどこかコミカルで、ほのぼのとしたものとなっている。また、各エピソードの最後には「凪の小憩」というコラムが設けられており、さらに見識を深めることができる。
「現代の宝探し」鉱物採集をとおしての成長物語
鉱物採集の冒険をとおし、瑠璃は鉱物の研究者として、あまり自覚はないながらも着実に成長し、頭角を現すようになる。そんな中で、荒砥凪に所属する研究室の後輩である伊万里曜子や、谷川瑠璃のクラスメートで子供の頃から好きだった石への思いを封じ込めてしまった瀬戸硝子、瑠璃の友人で登山好きの笠丸葵など、瑠璃の好奇心や探究心に感化された鉱物仲間が増えていく。そして凪も含め、進路をはじめとしたそれぞれの年代ごとの悩みや自分との葛藤など、本作では鉱物採集の冒険のみならず登場人物たちの成長も描かれる。
登場人物・キャラクター
谷川 瑠璃 (たにがわ るり)
とある高校に通う女子。明るい色の髪を長く伸ばしている。宝石やアクセサリーなど、キラキラした綺麗なものが大好き。少々礼儀に欠けて身勝手なところはあるが、明るくおおらかな性格で好奇心が強い。地元の山で水晶が手に入ると聞き、喜び勇んで山へやって来た際に、たまたま実地調査に訪れていた大学院生の荒砥凪と知り合い、半ば強引に頼み込んで水晶が採れる場所まで案内してもらう。それ以来、鉱物の魅力に取り憑かれ、凪と共に鉱物の採集に行ったり、彼女の研究室に入り浸ったりするようになる。鉱物への興味が高じるにつれ、鉱物と向き合う意識が芽生え、産地不明であるサファイアの実際の産地を自ら調査し始めるほどにハマっていく。凪には「ルリ」と呼ばれている。
荒砥 凪 (あらと なぎ)
前芝大学理学部鉱物学研究室に在籍する大学院生の女子。黒髪ロングヘアに、長身でグラマラスな体型をしている。石の研究者として各地を飛び回っており、その過程でたまたま谷川瑠璃と知り合った。その際、瑠璃に半ば強引に案内を要求され、彼女を水晶が取れる場所へと連れていった。それ以来、瑠璃に懐かれ、いっしょに鉱物の採集をしたり、彼女を大学の研究室に招いて鉱物の研究をさせてあげたりしている。どんなときでも冷静沈着で、口調こそ少々堅苦しいものの心優しく、鉱物に興味を持った瑠璃を温かく見守りながら導く、師匠のような存在。研究者としては、博物館に石専門の学芸員として誘われるほどの実力者だが、その申し出は辞退しており、荒砥凪自身は大学の教授になることを目指している。実は瑠璃が通っている高校のOGで、今はもう廃部となった地学部の最後の部員だった。瑠璃からは「ナギさん」と呼ばれている。
書誌情報
瑠璃の宝石 5巻 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉
第1巻
(2020-10-15発行、 978-4047362673)
第2巻
(2021-08-12発行、 978-4047366152)
第3巻
(2022-10-15発行、 978-4047371774)
第4巻
(2023-08-12発行、 978-4047376373)
第5巻
(2024-09-13発行、 978-4047379145)