あらすじ
第1巻
スイスから10年ぶりに日本へと帰国した美浜シエルは、パンダで有名な和歌山県の白浜での新しい生活に胸を躍らせていた。まだ寒さが募る3月にもかかわらず、熱帯魚が生息するなら泳げなくはないだろうと、シエルは海へと向かう。一方、趣味のビーチコーミングのため、海岸を訪れていた由良硝子は、浜辺で一人下を向いて歩いていたところ、なぜかビキニの水着を拾った直後、冷たい海の中から助けを求める声を聞く。そこにいたのは、水着が脱げて身動きが取れなくなった青い目の少女シエルだった。硝子がシエルに水着を渡して、二人は自己紹介のあいさつを交わしたことで、ビーチコーミングについて話が及ぶ。すると、シエルはおもむろに浜辺で拾ったという大きなシーグラスを取り出して見せる。硝子は、レア度の高いウランガラスに少し驚きつつ、このガラスを夜明け前の青空にかざして見るようにシエルにアドバイスを送り、その場を離れる。後日、入学式の朝に高校へ向かう途中、硝子は自分と同じ制服に身を包んだシエルと再会。人懐っこく話に掛けてくるシエルに困惑しつつ、新しい学校生活が始まることとなった。これまで実家の民宿の手伝いが忙しすぎて、幼なじみでクラスメートの九度山さざれ以外に友達も少なく、学生らしい時間を楽しんでこなかった硝子だったが、ビーチコーミングを通じてクラスメートの周参見陶子とも親しくなり、高校生らしく青春を謳歌する。
登場人物・キャラクター
美浜 シエル (みはま しえる)
3月に和歌山県の白浜に引っ越してきた少女で、年齢は15歳。日本人の母親と、外国人の父親を持つ日本国籍の碧眼の美少女。もともとはスイスに住んでいたが、母親の仕事の都合でチェコやウズべキスタンなど、世界各国を回っており、日本には10年ぶりに戻ってきた。そのため、6か国語がしゃべれるハイスペック女子で、日常会話は英語やフランス語などの外国語まじりの日本語をしゃべる。海でウランガラスを拾い、由良硝子と知り合ったことがきっかけで、ビーチコーミングに興味を持つようになる。強気な性格ながら、ピュアで人懐っこいところがある。硝子と同じ高校の同じクラスになったことを喜んでいる。さらに、クラスメートとなった九度山さざれ、周参見陶子ともなかよくなり、行動を共にするようになる。みんなで学校帰りに浜辺へ行き、ビーチコーミングをするのが恒例となっている。学校に持ってくるお弁当は、いつも菓子パン。特徴的な「あちゅ」というくしゃみをする。
由良 硝子 (ゆら しょうこ)
美浜シエルと同じ高校に通う女子で、和歌山県の白浜在住。実家は民宿「しららら」を営んでおり、日々家の手伝いに追われている。そのため、放課後の部活やカラオケなどの友達付き合いもできず、趣味は読書やインターネットと、一人で楽しめるものが中心。特に、浜辺に打ち上げられたさまざまなものを拾い集めるビーチコーミングが大好きで、ヒマさえあれば浜辺へ赴き、シーグラスなどを拾い集めている。内気で引っ込み思案な性格で、友達は幼なじみの九度山さざれしかいない。しかし、3月に引っ越してきたばかりの美浜シエルと海で出会い、その後入学した高校でも同じクラスになったことで、親しくなる。しかし、友達付き合いに慣れていないこともあり、何かと懐いてくるシエルと、どう付き合ったらいいかわからずに困惑している。学校に持ってくるお弁当は、いつも民宿の残り料理を詰め込んだものだが、シエルやさざれからはうらやましいほどに豪華な弁当に見えている。寒がりで冷え性なため、冬場は制服の上衣の内側に使い捨てカイロを貼り付けている。
九度山 さざれ (くどやま さざれ)
美浜シエルや由良硝子と同じ高校に通う女子で、和歌山県の白浜在住。まじめな性格で眼鏡を掛けている。硝子とは幼なじみのため、友達付き合いが苦手な硝子の性格もよく理解しており、彼女の唯一の友達として関係を築いてきた。硝子とは進学した高校でも同じクラスになり、クラスメートとなったシエル、周参見陶子ともなかよくなった。科学部に所属しており、九度山さざれ自身は「うみべのいきもの」を研究テーマにしている。そのため、学校帰りに浜辺に足を運んでは、ビーチコーミングがてら生き物に関しての調査を進めている。かなりの科学オタクで、その手の話になると饒舌になる傾向にある。シエルと硝子の関係を、友達以上恋人未満と表現して、硝子の困惑している様子を見て面白がっている。
周参見 陶子 (すさみ とうこ)
美浜シエルや由良硝子と同じ高校に通う女子で、和歌山県の串本在住。白浜にある学校までは1時間かけて通っている。ちょっとしたヤンキー感を醸し出しているため、周囲からは敬遠されがちだが、面倒見が非常にいい。手芸部に所属しており、ビーチコーミングや手作りアクセサリーにも詳しい。さらにコスメが大好きで、ポーチの中にはプチプラのコスメをたくさん入れて持ち歩いている。ある時、クラスメートのシエルが貝にビニールひもを通しただけの手作りペンダントを、硝子と九度山さざれにプレゼントしようとしたところを目撃し、シエルに小さな子供じゃあるまいしと、否定的な言葉を投げ掛けた。細工をしないまま取り付けられた貝やビニールひもは、身につける人にとって危険であることを指摘したものだったが、言葉足らずでかなりキツい物言いとなってしまう。それにもかかわらず、シエルが怒らずに自分の意見を聞き入れたことで、その後は貝の扱いやアクセサリー作りのポイント、かわいく作るための具体的なアドバイスを送った。これがきっかけでシエルたちとなかよくなり、行動を共にするようになる。実は入学直後から、シエルや硝子、さざれの会話が気になっていたが、話し掛けられないでいた。周参見陶子が住んでいる串本は、日本で最も多くの種類の貝が打ち上げられるといわれる貝の聖地として有名で、両親が貝を集めるのに幼い頃から付き合わされてきた。そのため、硝子と同じテンションで語れるほどにビーチコーミングには詳しい。みんなからは「すさみん」と呼ばれているが、陶子自身は栄養素のようだからという理由で嫌っている。
硝子の母親 (しょうこのははおや)
由良硝子の母親。和歌山県の白浜で民宿「しららら」を営んでおり、日々忙しさに追われている。硝子が何かと民宿を手伝ってくれることは、ありがたいと思っているが、手伝いばかりで高校生らしく過ごす時間がなくなっているのではないかと心配し、友達のいない硝子の学校生活についても気にしている。ある時、道に迷って困っていた美浜流木に声を掛け、民宿で保護した。その後、硝子の友達となった美浜シエルの母親であることがわかり、意気投合。これがきっかけで、流木となかよくなった。
美浜 流木 (みはま るき)
美浜シエルの母親で、年齢は34歳。お尻が隠れるほどのストレートロングヘアをしている。小説家として世界各国を転々とする生活を送っていたが、10年ぶりに白浜に戻ってきた。すっかりのんびりモードになってしまい、仕事が全然進まずに状況はかなりひっ迫している。お酒が大好きで、何かと理由を付けては飲酒や外出することで仕事から逃げようとしている。これまでどこの国に行っても、言葉も覚えずになんとなく暮らしてきた。家事や役所の書類などもすべて娘のシエルに任せっぱなしで、過去には軍事施設に迷い込んだり、国境を越えてしまったりしたこともあった。そのため、シエルからは生活能力がないといつも心配されている。ある時、財布もスマートフォンも持たずに道に迷ってしまい、困り果てていたところ、硝子の母親に助けてもらった。直後にシエルの友達となった由良硝子の母親であることを知って意気投合し、親同士なかよくなる。