お嬢様とお世話係の日常
時代は大正、舞台は東京のある華族家の別宅。その家の末娘、璋子は、事情があって別宅を出ることを禁じられていた。本から得た知識しか持たない璋子は、外の世界に興味津々だが、外出ができないため暇を持て余している。そんな彼女の趣味は、お世話係の青年、宇於崎にわがままを言って困らせることである。「何をしてもいいから許可なく外に出すな」と本家から厳命を受けている宇於崎は、「花見をしたい」と言われれば、庭に花見の用意をし、足を捻って歩けないと言われれば璋子を抱っこする。璋子は宇於崎をからかうように、着物の着付けを命じたり、髪を結わせたりする。本作は、そんな二人の関係をコミカルに描いていく。
美しい着物と大正ロマン
本作の大きな魅力となっているのは、毎回のように登場する着物である。様々な柄の着物はシワや質感までも丁寧に描写されており、衣替えのエピソードでは「袷(あわせ)」と「単衣(ひとえ)」の違いといったうんちくも描かれる。また、お菓子の「シベリヤ」や蓄音機とアナログレコード、当時の化粧道具、和鋏(わばさみ)を使った爪切りの様子など、レトロな小道具や風俗習慣が丁寧に描かれており、大正ロマンの雰囲気を楽しむことができる。
璋子の生い立ちの謎
璋子が別宅に住まわされ外出禁止になっている理由を宇於崎は知らない。ある日、家を片付けていた宇於崎は、璋子にそっくりな少女の写真を見つける。それは璋子の母の少女時代の写真だった。母の写真を見せられた璋子は明らかに動揺する。男の子ばかりの兄弟の一番末に生まれた女の子である璋子は、父をはじめ周りの大人たちに歓迎されるが、母親だけは違っていた。その後兄たちが別宅を訪れることで、璋子が本家の座敷牢に閉じ込められていたことも判明する。璋子と宇於崎のコミカルな掛け合いが楽しい本作だが、物語が進むにつれ璋子に関する謎が少しずつ明かされていく。
登場人物・キャラクター
璋子 (たまこ)
とある華族の家の末娘。事情があり別宅に住まわされ、外出を禁じられている少女で、長い黒髪と着物姿が特徴。書庫の本を読み漁っているため博識だが、リアルな体験が少なく、外の世界への好奇心が強い。読書の他にはショパンの「子犬のワルツ」のレコードを聴くのが好き。お世話係の宇於崎や優しい長兄に無理難題を吹っかけることも楽しみの一つ。
宇於崎 (うおざき)
璋子のお世話係を務める青年。詳しい素性は明かされていない。生まれてまもなく開拓民として北海道に移住したため、内地の季節感覚に疎い。璋子が別宅に軟禁されている理由を知らないまま、璋子に忠実に仕えている。着物の着付けや髪結いなどを器用にこなす。
書誌情報
璋子様のお気に召すまま 3巻 小学館〈サンデーうぇぶりコミックス〉
第1巻
(2022-04-12発行、978-4098510702)
第2巻
(2022-07-12発行、978-4098511839)
第3巻
(2022-11-10発行、978-4098513307)







