白の悠久 黒の永遠

白の悠久 黒の永遠

平清盛のもとに養女として迎え入れられた朗らかで素直な少女、明日菜を巡る、歴史ミステリーロマン。「HITOMI CCミステリー」に掲載された作品。コミックス下巻には6つの番外編エピソードも収録されている。

正式名称
白の悠久 黒の永遠
ふりがな
しろのゆうきゅう くろのとわ
作者
ジャンル
歴史IFもの
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あらすじ

第1話 明日菜~第3話 橋姫(上巻)

自然豊かな深草の里で暮らしていた少女、明日菜は、母親の遺言に従い、邪なものをはねのける力を持つ、形見の翡翠の玉を託すため、平清盛の邸を訪ねる。そこで明日菜は清盛の隠し子と間違われ、清盛の近侍、にも冷たく扱われるが、清盛はその誤解を解こうともせず、明日菜はただ困惑する。その頃、海の魔のものの姫、龍媛は、かつて見た清盛の魂の輝きを忘れられず、手下の烏洞に清盛の魂を奪うように命じていた。こうして、清盛の周囲では不審な出来事が勃発。そんな中、清盛は明日菜に初恋の人である彼女の母親の面影を見い出し、娘として正式に迎え入れるのだった。 その後も清盛は烏洞に魂を狙われ続けるが、ついに直接対決し、自らの魂の力で烏洞を退ける事に成功。清盛の未来に興味を持ち、また彼の近くにいる明日菜に惹かれ始めていた烏洞は、「自分のものになるなら清盛の魂を奪うのを待つ」と明日菜に条件を提示する。一方で、清盛に危害が及んで責任を感じた渡は、姿を消してしまう。しかし、自分に思いを寄せる明日菜の説得を受け、清盛のもとへと戻るのだった。

第4話 群時雨~第7話 凩(上巻)

平清盛に連れられて宮中へと赴いた明日菜は、そこで顕仁上皇と知り合い、穏やかに交友を深める。だが、彼は明日菜が平氏の娘だと知ると豹変し、手籠めにして妻に迎えようと画策。そこに現われた烏洞の助けにより、明日菜はかろうじて難を逃れる。 烏洞を見て魔のものに興味を抱いた顕仁上皇は、自ら魔のものである祇王祇女を呼出し、に反逆を企てる。さらに顕仁上皇は清盛と明日菜を味方に引き入れようとするが、清盛はこれをきっぱりと拒否。顕仁上皇は、敵対の意志を明らかにした清盛を殺すため、祇王と祇女を差し向けるのだった。実は祇王と祇女は龍媛の使い魔でもあり、裏切った烏洞に罰を与え、清盛の魂を奪うよう命じられていた。そんな祇王と祇女の牽制を受けて烏洞が明日菜から目を離したスキに、明日菜は顕仁上皇に騙され、さらわれてしまう。しかし、明日菜は顕仁上皇のもとから逃げ出し、危機を察知して駆けつけた烏洞に救われるのだった。そんな二人を見送る顕仁上皇は、胸に秘めていた、人としての幸せを望む心と決別し、鬼になる決意を固める。

第8話 妖花~第12話 鬼(上巻~下巻)

都ではの側近が相次いで亡くなっていた。平清盛に調査を命じられたは、亡くなった人々が、その数日前に白拍子を呼んでいる、という共通点に気づく。だが、近侍の仕事に忙殺される渡は、明日菜に対してはそっけない態度を取り続けていた。そんな彼に対し烏洞は、自分なら明日菜を最優先にすると語り、同時に顕仁上皇には魔のものが手を貸しているから注意するよう忠告する。しかし渡は任務の途中で、祇王祇女が仕組んだ罠に落ち、意のままにあやつられるようになってしまう。顕仁上皇は清盛に対し、渡を助けたければ本院に次期帝として自分を推すよう求める。だが清盛は、渡には自分のためであれば死ぬ覚悟があると、彼を見捨てる苦渋の決断を下して、顕仁上皇との取り引きを拒否。そんな中、渡を案じて打ちひしがれる明日菜を見かねた烏洞は、表立って動けない清盛に代わって、明日菜と共に祇王と祇女を倒し、渡を救い出すのだった。配下を失って一層孤独を募らせた顕仁上皇は、絶望のまま帝に対して反逆の戦を起こすが間もなく鎮圧され、讃岐に配流される。

第13話 不知火~第15話 龍媛(下巻)

明日菜に縁談が持ち上がった。しかし彼女を溺愛する平清盛は、気乗りしないなら断るよう諭す。一方、本心では明日菜を失う事を耐えがたく感じながらも、それを素直に口にできないは、心ない言葉で明日菜を怒らせてしまう。明日菜は怒りに任せて縁談の相手のもとに向かうが、それは龍媛の使い、の罠だった。岬は明日菜を意のままにあやつって烏洞にその身柄を差し出し、思いを遂げて未練を断ち切り、改めて清盛の魂を奪うよう求める。烏洞は岬の言葉に心揺らすものの、渡を思い続けている明日菜を悲しませる選択肢をとれなかった。こうして烏洞は自身の思いを諦め、清盛の魂を奪いもせず、死罪に値すると知りながらも龍媛のもとへ帰っていく。一方の岬は、清盛の魂さえ奪えば、烏洞は助かるのではないかと考え、清盛を襲撃。この時、すべての事情を知った清盛は、意外にも龍媛に会ってみたいと言い出す。

登場人物・キャラクター

明日菜 (あすな)

若い娘。数年前に父親を亡くし、以後は深草の里で母親と暮らしていたが、その母親も亡くなってしまったため、遺言に従って母親の形見の、邪を退ける翡翠の玉を持ち、平清盛の邸を訪ねた。最初は清盛が他所で作った娘だと誤解され、邸に留め置かれていたが、のちに血縁はないものの、娘として正式に迎え入れられた。長い黒髪を両肩の下あたりで一束ずつまとめて、それぞれリボンや飾り紐で飾り、残りは背中に流して中程でリボンで束ねた髪型をしている。 明るく朗らかな性格で、誰に対しても物怖じせずに、率直な気持ちをぶつけるため、物静かで自身の気持ちを抑えがちだった清盛の妻、時子に大きな影響を与えた。清盛の近侍の渡に好意を寄せているが、なかなか構ってもらえず、しばしば寂しい思いをしている。 烏洞に好かれているが、渡を一途に慕っており、烏洞に対しては時に心を揺らしながらも、恋愛感情は抱いていない。

平 清盛 (たいらの きよもり)

平氏の棟梁を務める中年男性。身の内から光を発しているかのように生き生きとしており、その魅力に惹かれる女性は多い。一方で、その力や魅力を疎んじる政敵も多い。少年の頃に若狭の海で高波にさらわれ、生存は絶望視されていたが、龍媛によって助けられた。実在の人物、平清盛がモデル。

時子 (ときこ)

平清盛の妻。落ち着いた雰囲気を漂わせる中年女性で、穏やかで従順な性格をしている。女官達から、もう少し夫の遊び好きを咎めてもいいくらいだ、と言われていた。生き生きとした明るい性格の明日菜の影響によって、次第に快活さを取り戻す。実在の人物、平時子がモデル。

(わたる)

平家の棟梁の平清盛に仕える近侍。髪を結い上げて、高い位置でまとめている青年。少年の頃から小姓として清盛に仕えており、清盛とその正室の時子に忠誠を誓っている。主の清盛のためなら命を投げ出す強い覚悟を持っている。生真面目で堅物と言われており、快活で、素直に好き嫌いを表現する明日菜を好ましく思っているが、それをうまく言葉にできない。

龍媛 (なーが)

魔のものを支配下に置き、「海の媛」と呼ばれる存在。若くすらりとした女性の姿をしている。豊かに波打つ長い髪を流しており、たっぷりとした袖と裾の装束を身にまとっている。平清盛の魂の輝きに惹かれ、天寿をまっとうせよと、若狭の海で溺れた彼を助けたが、のちに待ちきれなくなり、手下の烏洞に清盛の魂を奪うように命じた。

烏洞 (うどう)

龍媛の使い魔の、魔のもの。人の形をとる時は、ウェービーな黒髪の長髪を流した青年の姿になる。烏の化身で、本当の姿は大きな烏。人から忌み嫌われるのに慣れている。物怖じしない明日菜に惹かれ、平清盛の魂を奪うのを先送りにしてほしければ、自分のものになるよう、明日菜に条件を出した。しかし明日菜を悲しませたくないからと、つい彼女を助け続けている。 自分の感情や欲求に忠実な性格。不意に現れて明日菜を抱きしめたり、手助けする返礼として何度かキスをするなど、スキンシップが激しい。人間達には「死の使い」と、恐れられ忌み嫌われている。

顕仁上皇 (あきひとじょうこう)

帝の兄。訪ねて来る者の少ない宮中の一角で生活している青年。長いストレートの黒髪を後ろに流し、額を出している。父親の本院のもとに母親が輿入れした時には既に腹に宿っていたため、本院の実子ではない。本院に疎まれ、憎まれている。宮中でも孤立しており、女官達にも「忘れ去られた上皇」と言われている。明日菜は初対面で、平清盛に面差しが似ていると感じた。 明日菜を娶り、清盛の後ろ盾を得たいと、繰り返し清盛と明日菜を招くが、拒否されている。明日菜個人にも初恋の女性の面影を重ね、魅力を感じていた。得られなかった父親からの愛情を権力欲にすり替え、愛されて育った今の帝を妬み、帝位を取り戻そうと反乱を起こした。実在の人物、崇徳天皇がモデル。

(みかど)

本院の息子で、顕仁上皇の弟の少年。まだ若い顕仁上皇が本院に疎まれ、早くに退位させられ、そのあとを継いだ。病弱と噂されている。本院が健在で影響力を保っていた時には治世は平穏だったが、本院が病没すると、顕仁上皇を再び帝位につけようとする派閥を抑え切れず、帝位を争う戦に巻き込まれる。実在の人物、近衛天皇がモデル。

本院 (ほんいん)

帝の父親。顕仁上皇の父親でもあるが、妻は輿入れの際に既に顕仁上皇を宿していた。そのため顕仁上皇を疎んじており、息子と思っていない。下に実子が生まれたので、強引に帝位を顕仁上皇からはぎ取り、今の帝に与えた。帝が幼いため、政治の場から表向きは退いているが、影響力は持っていた。しかし、病で没する。実在の人物、鳥羽天皇がモデル。

祇王 (ぎおう)

都で評判の若く美しい白拍子の女性。龍媛の使い魔の、魔のもので、正体は成人に幾重にも巻き付くほど大きい二首の蛇の片割れ。人の姿をとる際には、この首がそれぞれ別れ、もう一つの首である祇女とつねに行動を共にする。顕仁上皇に協力し、対立している帝の側近達を呪い殺したうえ、平清盛にも色仕掛けで迫ろうと画策。 だが、邪な目が好みではないと跳ね除けられた。「妖花の酒」を用い、それを口にした者を意のままにあやつる。

祇女 (ぎじょ)

都で評判の若く美しい白拍子の女性。龍媛の使い魔の、魔のもので、正体は成人に幾重にも巻き付くほど大きい二首の蛇の片割れ。人の姿をとる際にはこの首がそれぞれ別れ、もう一つの首である祇王とつねに行動を共にする。顕仁上皇に協力し、対立している帝の側近達を呪い殺したうえ、平清盛にも色仕掛けで迫ろうと画策。 だが、邪な目が好みではないと跳ね除けられた。「妖花の酒」を用い、それを口にした者を意のままにあやつる。

(みさき)

龍媛の使い魔の、魔のもの。烏洞とは旧知の間柄で、みずらに髪を結った青年のような外見をしている。青白い不知火を伴って現れ、鋭い爪で攻撃する。平清盛の魂を奪って帰り、龍媛に烏洞の助命を願い出ようとするなど仲間思いな性格で、烏洞が裏切る原因となった明日菜を許せず、命を狙う。

その他キーワード

魔のもの (まのもの)

烏洞や岬など、人ではない妖(あやかし)。龍媛に忠誠を誓っている使い魔達であり、平清盛の魂を奪うよう命じられている。最初に派遣された烏洞が、明日菜に惚れて役目を先延ばしにし続けたため、祇王と祇女が、清盛の魂を奪って、烏洞に罰を与えるために、追って派遣された。

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