概要・あらすじ
1185年(寿永4年)3月の壇ノ浦の戦いで、平氏は源氏によって滅ぼされた。しかし、平家滅亡の立役者であるはずの源九郎義経は、虚無感に襲われていた。目的を果たしたはずの九郎は、自分の望みがわからなくなっていたのだ。時は流れて、1189年12月。兄である源頼朝と対立した九郎は、追手を逃れて蝦夷地にいた。
しかしそこも安住の地ではなく、鎌倉からの刺客が九郎を襲う。九郎は壇ノ浦で手に入れた宝剣・草薙の剣でこれを一蹴。居場所を無くした九郎は、草薙の剣を船賃代わりに、商船に乗り込む。そこにやってきたのが、楯親忠。義仲四天王の一人で、主君・源義仲を討った九郎に復讐を果たすためにやってきたのだ。親忠の策略により、乗組員全員を敵に回した九郎だったが、鮮やかな身のこなしで親忠を討つ。
復讐のためだけに生きた親忠に、かつての自分の姿を見た九郎は、自らの人生がちっぽけなものだと感じる。やがて海は大荒れになり、船は難破。なんとか命拾いした九郎は、切り立った崖に漂着する。磨崖仏が刻まれた崖をよじ登った九郎は、その先に広大な大地を見る。
そこは中国大陸だった。視界を遮るものが何一つない土地に圧倒される九郎だったが、やがて腹の底から笑いだす。日本を離れ、自由を手に入れた九郎は、生まれ変わったつもりで、第二の人生を歩むことを決意。そしてこの広大な大陸を手に入れる野望を抱くのだった。数か月が経ち、九郎は「クロウ」と呼ばれ、金という国の、とある村に住む学者(先生)の世話になっていた。
言葉を学び、歴史書を読みつくすクロウは、狩りも一流の腕前。先生には一人娘がいたため、世間では、クロウは跡取りになるのではと噂されていた。しかし、クロウは、強国とはいえ、大陸の端っこの小さな国での生活には物足りなさを感じていた。そんなある日、クロウが狩りから一人で帰ると、村人は皆殺しにされていた。
あわてて家に戻ると、先生は虫の息で、娘はすでに亡くなっていた。先生によると、これは草原の遊牧民タタル人の仕業だという。クロウは、村に残された痕跡などから、タタル人たちは、極めて高い戦闘力を持った集団であると推測する。先生たちを看取って外に出たクロウは、不意をつかれてタタル人に捕まってしまう。彼らは、戦の楯として使うために若い男を集めていたのだ。
囚われの身となったクロウは、同じくタタル人の捕虜である、モンゴル部ジャダラン氏(遊牧集団)のジャムカと出会う。4回も脱走を繰り返したジャムカは、不敵な笑みを浮かべ、一緒に高原を統一しないかと、クロウを誘うのだった。
登場人物・キャラクター
源 九郎 義経 (みなもと くろう よしつね)
源氏の武将。源義朝の息子で、源頼朝の弟。長髪の男性。父である義朝を殺した平家への復讐に人生を捧げ、壇ノ浦の戦いで、ついに平家を滅ぼすに至る。兄・頼朝と対立し、命を狙われたため、三種の神器の一つである草薙の剣を持って逃亡。蝦夷地から船に乗ったところ、船が難破。中国大陸にたどり着き、第二の人生を歩むことを決意。 世界のすべてを手に入れる野望を抱く。身軽で武芸に秀でており、体力知力ともに優れる。実在の同名人物をモデルにしている。
楯 親忠
源義仲の家臣で、義仲四天王の一人。髭面の大男。主君・義仲が、宇治川で源九郎義経に討たれたことを恨みに思い、復讐のために九郎を襲う。蝦夷地の船上で、敵討ちの好機を得るが、返り討ちに合う。実在の同名人物をモデルにしている。
先生 (せんせい)
中国・金のとある村に住む学者。前頭部が禿げあがった男性。都の大学からの誘いを断り、村で子どもの教育に力を入れる。高麗との国境付近で、瀕死の状態にあった源九郎義経を助け、自宅で面倒を見る。一人娘がおり、クロウと娘が深い仲になっているのを容認している。
ジャムカ
モンゴル部ジャダラン氏(遊牧集団)出身の男性。長身で坊主頭。策略に長けた人物で、いつも不敵な笑みを浮かべて本心を見せない。タタル人の奴隷で、4回の脱走歴がある。実は、屈強なケレイト(モンゴルの西にある遊牧民の集団)と通じており、タタルを滅ぼそうと画策する。同じくタタル人に捕らわれていた源九郎義経と出会い、盟友になろうと申し出る。