あらすじ
第1巻
時は幕末、大政奉還が成立したあとの時代。信州にある小栗藩は、幕府に従って官軍と戦う道を選び、幕臣の勝海舟からそのための助言を受けていた。勝と行動を共にしていた馬並平九郎は、官軍と戦うのではなく、強力な兵器を見せつけて戦意を奪う策を提案し、西洋の密貿易船からガトリング砲を調達。そのガトリング砲を船で輸送するため、小栗藩の田村新八郎は、平九郎と共に横浜を訪れる。だが、横浜で彼らを待っていたのは、平九郎と旧知の伊藤梅乱だった。かつて安田恵命という師のもとで共に兵学を学んだ平九郎と梅乱だったが、日本を戦乱の世にしようと望む梅乱は、ガトリング砲を輸送する平九郎や新八郎らの乗る船を執拗に追う。死闘の末に、平九郎達は梅乱を振り切る事に成功するが、梅乱の背後に西洋列強から送り込まれたロビンス率いるイギリス軍が潜んでいると知る。
第2巻
小栗藩の要請でガトリング砲を輸送していた馬並平九郎達は、船で河口まで入り込んだが、そこには大村益次郎率いる長州軍が待ち受けていた。平九郎は、田村新八郎と共に大型バイクで船から飛び出し、自らを囮として長州軍から船を逃がす事に成功。しかし、ロビンス率いるイギリス軍は、その混乱に乗じて巨大飛行戦艦「B-12」を出撃させ、爆弾を投下して日本の町を攻撃するのだった。平九郎達は「B-12」に飛び移り、その内部でロビンスや伊藤梅乱達と対決し、ついに「B-12」を撃墜する事に成功する。その頃、勝海舟は、薩摩軍の西郷吉之助と密かに会談を行っていた。そして西郷に、日本が西洋列強から狙われており、北海道の蝦夷地に自ら共和国を樹立すると告げる。
第3巻
江戸城は開城され、日本には新政府が樹立した。しかし、勝海舟は密かに江戸幕府の資金を用い、北海道の蝦夷地に要塞、五稜郭を築いていた。そこに、馬並平九郎や田村新八郎らも合流。一方で、北海道まで転戦していた新撰組の副長、土方歳三は、あくまでも日本を守るのは侍の刀であると主張し、平九郎達と対立する。そんな中、ロビンスの父親であるダグラスは、最終兵器「サターン」を搭載した飛行戦艦「ユル・シーズ」を駆って北海道への侵攻を開始した。それを迎え撃つため、平九郎と新八郎は五稜郭から出撃。だが、そこへ伊藤梅乱が現れて「サターン」を奪い、世界征服のために独自に動き出すのだった。
登場人物・キャラクター
馬並 平九郎 (うまなみ へいくろう)
勝海舟に付き従う浪人の男性。かつて安田恵命のもとで軍学と兵学を学び、勝をして日本で西洋軍学を語らせれば一番と評価される。日本人ではあるが、西洋の合理的な思想を持ち、武器も刀ではなく数々の銃火器をあやつる。そのような従来の日本人とは異なる価値観のため、武士道を重んじる田村新八郎や土方歳三とは意見が合わず、対立する事も多い。
田村 新八郎 (たむら しんぱちろう)
小栗藩の剣術指南役を務める男性。剣術の無双新流の達人で、武士の魂を何よりも重んじる。そのため、西洋の合理的な思想を持った馬並平九郎とは、当初は反りが合わずケンカが絶えなかった。だが、やがて平九郎の思想を認め、同じ日本人として共に苦境を乗り越えようと決意する。
勝 海舟 (かつ かいしゅう)
幕臣の男性。幕府に仕える身分でありながら、現在の幕府には日本を統べる能力はないと断じ、将軍の首であっても必要ならば差し出すと言い切るほど。日本を植民地化しようとする西洋列強の動きを察知し、馬並平九郎と共に日本を守るために活躍する。実在の人物、勝海舟がモデル。
伊藤 梅乱 (いとう ばいらん)
幕府軍に対抗する官軍側で、戦闘指揮官を務める男性。かつて馬並平九郎と共に安田恵命のもとで軍学と兵学を学んだが、自身の目的達成のために、師である安田を殺害した。日本を混乱の世に陥れる事を目的とし、そのためには人の命を奪う事も厭わない冷酷非情な人物。
安田 恵命 (やすだ けいめい)
かつて私塾を開いていた男性。馬並平九郎や伊藤梅乱が共に師事した。幕末の日本において50年以上も進んだ思想の持ち主であり、平九郎に大きな影響を与えた。先見の明に優れた人物だったが、必要な知識と技術を手に入れた梅乱に殺害される。
ロビンス
イギリス軍の指揮を執る男性。伯爵の爵位を持ち、イギリス軍の中でも高い地位に就いている。また剣術においてはイギリス国内でも屈指の腕前を誇る。日本を植民地化する西洋列強の先鋒だが、日本人を支配するよりも、日本人の生命を奪う事を主な目的としている。
黄鹿 (きじか)
伊藤梅乱の配下の女性。飛行体、竜飛鳥をあやつる。梅乱の命令で馬並平九郎達を襲撃するが、逆に捕らわれて平九郎に説得され、平九郎側に寝返る。くノ一として高い戦闘技術と諜報能力を持っており、平九郎側についたあとは、その能力を駆使して活躍する。
西郷 吉之助 (さいごう きちのすけ)
薩摩軍の指揮をとる男性。江戸城の開城を求めて勝海舟と会談に臨んだ。日本人同士争っている時ではない、という勝の主張については共通の認識だったが、ロビンス率いる欧米諸国が日本を植民地化しようとしている事実は知らされていなかった。実在の人物、西郷隆盛がモデル。
大村 益次郎 (おおむら ますじろう)
長州軍の指揮をとる男性。のちに日本の近代軍隊の祖と呼ばれる人物。数々の軍略を駆使する智将でもある。馬並平九郎の操る銃火器や巨大船など、これまでの戦術の常識を大きく逸脱した数々の兵器に圧倒されつつも、これこそが日本の近代戦の夜明けだと狂喜する。実在の人物、大村益次郎がモデル。
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
新撰組の副長を務める男性。北海道の蝦夷地に築かれた五稜郭へ新政府軍と戦いながら到達する。当初は、武士の地位を重んじ、自分達と異なる思想・価値観を持つ馬並平九郎とはことごとく対立していた。だが、共に戦ううちに最終的には平九郎を認め、新しい日本人の姿を彼の中に見出す。実在の人物、土方歳三がモデル。
ダグラス
ロビンスの父親。「B-12」や「ユル・シーズ」など、数々の超兵器を開発・実用化した武器商人。戦争において、いかに合理的に人間の生命を奪うかを何よりも優先する人物で、自身の開発した兵器の実験場として日本を利用しようと思いつく。
集団・組織
小栗藩 (おぐりはん)
信州にある小さな藩。明治政府が樹立したあとも、幕府に従って戦う道を選んだ。資金難のため満足に武器を揃えられなかったが、馬並平九郎の活躍により、格安で大量の武器と、それを運ぶための船を手に入れる事に成功する。
場所
五稜郭 (ごりょうかく)
北海道の蝦夷地に勝海舟が、江戸幕府の隠し資産を投じて築き上げた鉄壁の要塞。内部にはロケット砲など数々の超兵器が内蔵されており、兵員の宿舎や兵器を研究開発する場所まで完備されている。線路や港など外部との連絡が可能な設備も充実しており、非常時の脱出も容易な設計になっている。
その他キーワード
B-12 (ばーどじゅうに)
イギリスが開発した飛行戦艦。ロビンスが指揮を執っている。動力源は風力で、数十人もの乗員を乗せて飛行できるほか、機関砲などさまざまな火器で武装している。軽量化を突き詰めて設計されているため装甲は薄く、防御力が弱いという欠点がある。
竜飛鳥 (りゅうひちょう)
伊藤梅乱が考案した一人乗りの飛行体。風を受ける翼と方向を変える可変翼とで構成されている。原理は凧と同じで、風を翼に受けて空を飛ぶ事ができ、可変翼を操作して方向を変える。武装はないため、主に偵察などの諜報活動に用いられる。
ユル・シーズ (ゆるしーず)
ダグラスが艦長を務める巨大飛行戦艦。石炭を動力として動き、100人以上もの搭乗員を乗せた状態での飛行が可能。内部には数十機の飛行戦艦「B-12」を格納しており、「B-12」同様に数十門もの機関砲で武装している。
サターン
ダグラスが考案した毒ガス兵器運搬装置。どんな生物であっても一瞬で死に至らしめる毒ガスを散布できるよう設計されている。「サターン」自体が破壊された場合も、その瞬間に毒ガスが撒き散らされる仕組みになっている。巨大飛行戦艦「ユル・シーズ」に搭載されているが、操縦系統は独立しており、単体での操縦が可能。