あらすじ
極・クエスト
男子高校生のヒロは、将来になんの展望も持てず、日々を自堕落に過ごしていた。そんな中、ようやくフルダイブRPG「ファイナライジング・クエスト35」の発売日を迎えた。ヒロは進路指導で教師の熱気にあてられ、親友の貴文には仮想世界に逃避していると諭され、さらにはクラスメートのヤンキーの三科と谷城に、ファイナライジング・クエスト35を買うための小遣いをカツアゲされてしまう。重い足どりで帰路に就く中、見るからにインチキ臭い「ゲームショップ如月」を見つけたヒロは、なんとなく店内に足を踏み入れる。手持ちのお金で買えないか、一縷(いちる)の望みをかけてファイナライジング・クエスト35を置いていないかと尋ねるヒロに、店員のレオナは言葉巧みにフルダイブRPG「極・クエスト」を売りつけるのだった。
詰みゲー
ヒロは「極・クエスト」をプレイしようと、レオナに電話をかけるが、彼女が電話に出ることはなかった。仕方なく一人でプレイを開始したヒロは、仮想空間でありながらまるで現実さながらの世界に驚愕する。そんな彼の前に、幼なじみ設定のアリシアと、彼女の兄でヒロの親友設定のマーチンが現れる。二人との会話によって、ヒロは自分がいるのがテッドという町で、町から外に出ることを固く禁じられていると知る。ゲームを楽しむためにヒロは町から出たいと主張するが、そんな彼をアリシアとマーチンは必死に止めようとする。そうこうしているうちに、誤ってマーチンを殺してしまったヒロは、錯乱したアリシアに襲われ、慌ててその場から逃げ出すのだった。逃走中、レオナがようやく姿を現し、「極・クエスト」についてヒロに説明を始める。ここに至ってヒロは、リアリティを重視したこのゲームはリセットしてやり直すことができず、ゲーム開始早々に親友を殺してお尋ね者になった自分が、ただでさえ超高難度のこのゲームにおいて、ほぼ「詰んだ」状態にあることを知る。そんなヒロにレオナは、ヒロと同様にゲーム序盤で親友を殺した「ギンジ」というプレイヤーがいることを教え、彼のアドバイスを受けるように勧めるのだった。レオナの助けを得て、自らの命を執拗に狙うアリシアの追跡を逃れながらテッドの裏道を進む中、ヒロは一人の薄汚れた男性と出会う。
関連作品
テレビアニメ
2021年4月から、本作『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』の原作小説『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』のテレビアニメ版『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』が、AT-X、TOKYO MXほかで放送された。監督は三浦和也、シリーズ構成と脚本は猪原健太が務めている。キャストは、結城宏(ヒロ)を山下大輝、如月玲於奈(レオナ)を竹達彩奈、アリシアをファイルーズあいが演じている。
登場人物・キャラクター
ヒロ
とある高校に通っている2年生の男子。黒髪ショートヘアの凡庸な少年で、本名は「結城宏」。周囲からは「ヒロ」と呼ばれている。VRゲームハード「VR・NX」の登録名も同様のため、フルダイブRPG「極・クエスト」の中でも「ヒロ」と呼ばれている。フルダイブRPGをプレイするのが趣味だが、周囲には現実逃避と見られており、ヒロ自身もそれを自覚しているため、「逃げる」という言葉に非常に敏感。ゲームショップ如月で、レオナに極・クエストを売りつけられ、ちょっとした行き違いからゲーム中でいきなり親友のマーチンを殺害。ただでさえ高難度を誇る極・クエストを、これ以上ないというほど厳しい環境の中、プレイすることとなった。実はかつて陸上をやっていたことがあり、足が非常に速い。
レオナ
「ゲームショップ如月」で働く女性。本名は「如月玲於奈」だが、周囲には「レオナ」と呼ばせたがる。ロングヘアで胸が非常に大きいスタイル抜群の美女で、明るい性格ながら押しが強い。新作のフルダイブRPG「ファイナライジング・クエスト35」を求めて店を訪れたヒロに、言葉巧みに10年前に発売されたフルダイブRPG「極・クエスト」を売りつけた。極・クエストの中では蝶に似た羽が生えた小さな妖精のような姿となって登場し、ヒロの案内役を務める。
アリシア
フルダイブRPG「極・クエスト」の登場キャラクターの女性。ヒロの幼なじみの少女で、マーチンの妹。金髪のセミロングヘアで、左右の髪を小さく編み込みおさげにしている。明るい性格の世話好きで、ゲームを始めたばかりで自分たちの暮らすテッドの町のことをよく知らず、町から出ると言い出したヒロをたしなめていたが、目の前でヒロにマーチンを殺されて逆上。以来、マーチンが死亡した際に凶器となった果物ナイフを手に、「『地獄の果物ナイフ使い』アリシア=フォン=ローターゼン」と名乗り、ヒロの命を執拗に狙う。もともとはヒロに思いを寄せており、その気持ちが錯乱に拍車をかけている節がある。なお、プレイヤーに応じて幼なじみ役の名称は変わるが、一般的なプレイヤーであれば、本来はアリシアの位置づけにある幼なじみを仲間にすることがセオリーとされているほどの素早さを誇る。
マーチン
フルダイブRPG「極・クエスト」の登場キャラクターで、リンゴの農場を経営している男性。ヒロの親友で、アリシアの兄でもある。高身長で、金髪のセミロングヘアをハーフアップにしたイケメン。誰もが認める好青年で腕っぷしも強く、素手でのケンカではヒロも歯が立たない。ゲームを始めたばかりで自分たちの暮らす町であるテッドのことをよく知らず、町から出ると言い出したヒロを体を張って止めた。しかし、ヒロに不意打ちで反撃されて倒れた際に、手に持っていた果物ナイフを口に刺して死亡する。これによってヒロが「親友殺し(ベストフレンド・キラー)」の称号を獲得し、テッドの町で指名手配されることとなった。なお、プレイヤーに応じて親友役の名称は変わるが、一般的なプレイヤーであれば、本来はマーチンの位置づけにある親友を仲間にすることがセオリーとされている。
ギンジ
フルダイブRPG「極・クエスト」のプレイヤーで、背が低く小太り体型で髭を蓄えた中年の男性。柔道経験者ということもあり、見た目と裏腹に戦闘力は非常に高い。ゲーム最序盤でヒロと同様に親友を殺しただけではなく、逆上した幼なじみも殺してしまい、「ひとでなし(ノット・ヒューマン)」の称号を獲得した。以来10年にわたって極・クエスト内のカジノに入り浸っている。アリシアに追われて、打開策を求めていたヒロと偶然に出会い、彼に極・クエストの世界について説明した。だがその後、指名手配犯となっていたヒロを町内衛兵隊に売り渡す。
貴文 (たかふみ)
高校2年生の男子で、ヒロのクラスメート。ショートヘアで勝ち気な顔立ちをしたスポーツマン。ヒロのことは常日頃より友人として気にかけており、不良のクラスメートに絡まれているヒロを心配している。かつてヒロといっしょに陸上に取り組んでいたことがあり、陸上を辞めたヒロがフルダイブRPGに逃避していることを歯がゆく思っている。
場所
テッド
フルダイブRPG「極・クエスト」のスタート地点となる町。恐ろしいモンスターであるゴブリンから住民たちを守ることを目的に、町の四方に巨大な堀を巡らせて外の世界との交渉を隔絶している。そのため、町から外に出ることは固く禁止されており、出入りできるのは特別な許可を得た使いの者のみ。町民は「町を出る」と口にしただけで町内衛兵隊に捕まり、「脱町(だっちょう)」の罪に問われるため、鎖国ならぬ「鎖町」の通称で呼ばれている。プレイヤーが多い全盛期にあっても、格闘技経験者や極端に頭の切れる大学生などを除くと、ほとんどのプレイヤーがテッドから出ることすら叶わなかったため、プレイヤー間では「行き止まりの町」とも呼ばれている。
その他キーワード
極・クエスト (きわめ くえすと)
ヒロが「ゲームショップ如月」でレオナに売りつけられたフルダイブRPG。略称は「キワクエ」。VRゲームハード「VR・NX」を通して現実の自分をスキャンし、VR電脳世界に転送してプレイする。そのため、現実の能力がゲーム中のプレイヤーにも反映される。レオナによれば「究極のフルダイブRPG」「大人のフルダイブRPG」とのことで、ゲーム中にはプレイヤーの五感が完全に再現されており、登場するキャラクターも、超高速汎用人工知能「アールエヴォ」の処理により、自我と自由度、洞察力まで実際の人間そのもの。また、殴れば血も出るうえ、傷を負えばそのまま死んでしまう場合もある。例えば薬草を持っていたとしても、使い方がわからなければ傷を癒すこともできず、仮に正しい処置をしたとしても、回復するまでに2~3日はかかる。リセットしてやり直すなどのゲーム的なお約束は徹底的に排除されており、プレイヤー自身のステータスを確認することもできず、唯一ゲームの進捗状況が「称号」として、首に下げたペンダントに表示されるようになっている。ちなみに、戦闘中以外ならばログアウトして現実世界に戻ることは可能。10年前に国内限定で発売され、現在はメーカーのサポートも打ち切られているが、ギンジのように、少ないながらもプレイヤーは未だに存在する。
クレジット
- 原作
-
土日 月
- キャラクター原案
-
よう太
書誌情報
究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら 全2巻 KADOKAWA〈MFコミックス アライブシリーズ〉
第1巻
(2021-05-21発行、 978-4046805942)
第2巻
(2022-01-21発行、 978-4046809414)