第9砂漠

第9砂漠

1000年前の大戦により砂漠化した世界に住む少年のマオが、行方知れずとなった父親の影を追い、外の世界へと旅立つ。旅を通じて世界の真相へとせまっていくマオの姿を描く、アクションファンタジー。「ジャンプスクエア」2020年3月号から掲載の作品。

正式名称
第9砂漠
ふりがな
だいきゅうさばく
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

1000年前の大戦によって荒れ果て、砂漠化した世界。八つに分かれた砂漠の国の一つである第1砂漠に築かれた大樹の街「ウィトルウィウス」で聖霊水と呼ばれる水の獣を狩り、水を回収することを生業にしていた少年のマオは、聖霊水の狩場で見たこともない古代遺物を拾う。その夜、謎の聖霊水の襲撃により、ウィトルウィウス中の水が奪われる事件が発生。聖霊水を退治するために出撃していたマオと、友人のリュカは謎の聖霊水の攻撃を受け、はるか遠くの砂漠まで飛ばされてしまう。渇きに苦しむリュカを連れ、ウィトルウィウスに戻ろうとしていたマオは、聖霊水に行く手を阻まれるが、先日拾った古代遺物の力を得ることにより、聖霊水を退けることに成功する。戦いのあと、ウィトルウィウスに帰還したマオは、古代遺物に、重量や障害物を無視して対象物を飛ばす弾道保護の力と、行方知れずとなった父親のメッセージが託されていることを知る。マオは、その弾道保護の遺物を手がかりにして父親の背を追い、外の世界へと旅立つことを決意するのだった。(#01「砂の海、水の獣」。ほか、2エピソード収録)

第2巻

第1砂漠の障害を突破したマオは、カナリアの故郷である第2砂漠へと向かう。そこは住人が天使と呼ばれる古代遺物に声をかけることで、重力をあやつることができる不思議な世界。特級天使と呼ばれる謎の存在に守護された、空に浮かぶ国だったが、特級天使をあやつれる特別な存在である「歌姫」の不在により、あと数時間で崩壊を迎える危機的な状態に陥っていた。マオが第1砂漠で会ったカナリアこそがその歌姫であったため、カナリアは自分の運命を受け入れ、特級天使の生贄(いけにえ)になろうとする。しかし、それをよしとしないマオは、カナリアを連れ出して逃走し、カナリアの父親である隊長と激しく対立する。怒った隊長は「一級天使」にしてカナリアの妹であるシロを呼び出し、マオに差し向けるのだった。(#04「赫の空、天国への調べ」。ほか、3エピソード収録)

登場人物・キャラクター

マオ

第1砂漠にある大樹の街「ウィトルウィウス」で暮らしている少年。聖霊水と呼ばれる水の獣を狩って、生活している狩人。冷静沈着だが好奇心が旺盛で、気丈な性格をしている。勘が非常に鋭く、誰も気づかない些細な違和感から、物事の本質を見極められる。狩人としての腕は一流で、弓を巧みにあやつり、単独で強力な聖霊水を狩ることができる。また、聴覚が人並外れて優れており、聖霊水が放つ音を完璧に聞き分け、接近のタイミングを正確に知ることができる。物心ついた時から母親はおらず、父親はマオが幼い頃に旅立ったまま行方知れずで、それ以来一人で生きてきた。狩人になってからはミケ、リュカといっしょに暮している。読書が好きで、小さい頃から外界について書かれた蔵書を読み漁っており、未知の外界への強い憧れを胸に抱いている。何かと頼りがいがあるため、弟分のリュカからはあこがれの対象になっている。ウィトルウィウスが聖霊水の襲撃を受け、外の砂漠へと飛ばされた際に、以前拾った古代遺物の力が目覚め、それに加えて外界へと旅立った父親のメッセージも託されていたことから、彼の背を追って外界へと旅立った。外の世界で謎の少女、カナリアと出会い、成り行きから彼女といっしょに世界を旅することになる。

カナリア

褐色の肌を持つ謎の少女。明るく楽天的な性格で、非常に思いやりがある。第1砂漠の森を探索していたマオのもとに姿を現し、以降は彼といっしょに旅をすることになる。自分が第1砂漠にきた経緯をまったく覚えておらず、マオを大いに困惑させるが、カナリア自身は未知の世界の冒険を心から楽しんでいた。その正体は、第2砂漠の首都アマルハムに住んでいた「歌姫」で、古代遺物である天使や特級天使を歌声でコントロールすることで、自在に重力をあやつることができる異能の持ち主。第2砂漠を守護する特級天使の生贄となる唯一無二の存在でもあるため、マオといっしょに第2砂漠へ帰還した際は、世界の崩壊を防ぐため、父親の隊長から特級天使の生贄になることをうながされていた。血のつながっていない妹のシロがおり、彼女を小さい頃から非常にかわいがっている。

シロ

白い肌を持つ「一級天使」の少女。第2砂漠の首都アマルハムルに住んでいる。カナリアと血のつながっていない妹で、彼女を誰よりも慕っている。ほかの第2砂漠の住人とは声の質が異なり、天使を使用した時の自らの反動がない。そのため、天使の能力を極限まで使いこなすことができ、ほとんどの人間を凌駕(りょうが)する強大な力を持つ。もともとは7歳の時に両親に捨てられた孤児で、「シロ」という名前も「アルビノ」に対する蔑称から付けられたもの。街中をあてもなくさまよっていたところをカナリアに助けられ、妹として育てられた過去を持つ。「歌姫」として特級天使の生贄になるはずだったカナリアを、ひそかに第1砂漠へと逃がした張本人。カナリア以外の人間は大嫌いと公言してはばからず、カナリアを奪おうとする者は誰であっても決して許さない。

隊長 (たいちょう)

カナリアの父親。第2砂漠の首都アマルハムルの住人を統率する男性。動物の頭骨で作られた仮面をつねにかぶっている。第2砂漠の崩壊を防ぐため、第2砂漠を守護する特級天使にカナリアを生贄として捧げようとしている。目的のためなら手段を選ばない苛烈な性格で、カナリアを生贄にすることに反対し、彼女を連れ去ったマオを亡き者にしようとする。

マオの父親 (まおのちちおや)

マオの父親。非常に好奇心の強い冒険者の男性。砂漠の外の世界に強い興味を抱いており、幼かったマオに対し、世界の起源とされる第9砂漠について語っていた。世界を旅するための飛行機を作るなど、冒険のための準備を着々と進めていたが、ある日を境に行方知れずとなった。マオの父親が語った夢の数々は、今なおマオの心に大きな影響を与えている。どんな天候であっても、紙飛行機をまっすぐに飛ばせる特技を持つ。

ミケ

第1砂漠にある大樹の街「ウィトルウィウス」で暮らしている老齢な男性。狩人を引き連れ、聖霊水から水を集める「水狩り衆」として働いている。両親がいない、マオやリュカといっしょに暮らしている。マオが外の世界へと旅立つ時に、マオの父親から託された弓を渡していた。

リュカ

第1砂漠にある大樹の街「ウィトルウィウス」で暮らしている少年。両親がおらず、マオやミケといっしょに暮らしている。マオの弟的な存在。日中は学校に通っているが、「水狩り衆」の帰還時には持ち帰った水を溶かすために働いている。マオにあこがれており、早く彼のような一人前の狩人になりたいと思っているが、まだ非力なため夢を叶えられずにいる。

(みこと)

東洋風の装束をまとった謎の青年。大きな笠をかぶっている。第1砂漠の最果てにある移民船墓場で足止めされたマオとカナリアの動向を観察していた。マオやマオの父親のことも知っていた。別の場所で起こった出来事を、離れた場所から「診る」ことができる特殊能力の持ち主。その行動の目的や素性は完全に謎のヴェールに包まれている。

フカ

東洋風の装束をまとった謎の少女。尊の付き人で、第1砂漠の最果てにある移民船墓場で足止めされたマオとカナリアの動向を尊と共に観察していた。花札が好きで、マオを観察している尊をよそに一人で花札に興じていた。

場所

第1砂漠 (だいいちさばく)

1000年前の大戦で砂漠化した世界の一部。「水の国」とも称される砂漠の国。各地にあるオアシスはすでに枯れているが、代わりに水でできた古代遺物である水の獣、聖霊水が跋扈(ばっこ)している。住人はこれらの聖霊水を狩ることで、生きるための水を得ている。

第2砂漠 (だいにさばく)

1000年前の大戦で砂漠化した世界の一部。首都アマルハムルを含めて、すべてが宙に浮いている重力の国。住人は古代遺物の天使に声をはじめとする音を与えることで、重力を自在にあやつっている。第2砂漠の住人はほとんどがアマルハムルに住んでおり、国の領域は星を一周するほど広大。特級天使と呼ばれる存在が国のすべてを守護しており、国を維持するために「歌姫」と呼ばれる生贄を定期的に守護天使に捧げている。

第9砂漠 (だいきゅうさばく)

人々から忘れ去られた起源の国。砂漠化した世界の謎が隠されている。歴史の闇に埋もれたミステリアスな国で、その存在は一般にはほとんど知られていない。マオの父親はこの砂漠の謎をつかむために第1砂漠から旅立ち、行方知れずとなった。

その他キーワード

聖霊水 (ひゅどら)

1000年前の大戦時に作られた古代遺物の一種。水が獣化したもので、第1砂漠のあちこちを徘徊(はいかい)し、遭遇した人々を襲撃して被害を与えている。姿形は聖霊水によって異なり、馬型やマンモス型など、さまざまな種類の聖霊水が存在している。第1砂漠の住人は、聖霊水を退治する専門の「水狩り衆」を組織し、聖霊水を狩ることで日々の水を得ている。体内で砂糖を分解することができないという弱点を持つため、狩人は砂糖を塗った矢じりを使い、聖霊水を攻撃するのがセオリーとなっている。倒したあとは急速に氷結するため、水狩り衆はこれらを氷塊として切り分け、オアシスへと運んでいる。

天使 (てんし)

重力をあやつる古代遺物の一種。第2砂漠に生息している。音を食する性質を持ち、第2砂漠で生まれた生き物の出す音を食べることで生きている。第2砂漠の住人は、食べた音によって天使がさまざまな反応を返すことを利用し、必要な音を組み合わせた歌を天使に与え、重力を自在にコントロールしている。

特級天使 (あまるはむる)

古代遺物の一種。第2砂漠の首都アマルハムルの正体。「歌姫」の歌を糧にして、広大な第2砂漠を無重力地帯とし、外界からの影響を遮断している。通常の天使と異なり、ふつうの人間ではあやつることができない。第2砂漠は、歌姫がいないと特級天使が生み出す結界を維持できないため、数百年にわたって資質のある歌姫を特級天使の生贄としてきた過去を持つ。

弾道保護の遺物 (だんどうほごのいぶつ)

宝石のような形をした古代遺物の一種。1000年前の大戦時に作られた。聖霊水を狩っていたマオが偶然拾った。未知の技術が使われている、強大な力を秘めた特殊な遺物で、撃ち出された弾丸などを完全に保護し、重さや障害物を無視して遠くまで飛ばすことができる。ほかにも未知の機能が搭載されており、マオの父親のメッセージも録音されていた。マオは弾道を保護する性質を利用し、敵を強化した矢で攻撃したり、弾丸で重いものを引っ張って運ぶなどの作業に利用していた。

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