織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました

織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました

森田季節の小説『織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました』のコミカライズ作品。「《オダノブナガ》」という謎の職業を得たアルスロッド・ネイヴルが、その力で地方の小領主から成り上がっていく姿を描くファンタジーアクション戦記。「マンガUP!」で2018年7月から配信の作品。

正式名称
織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました
ふりがな
おだのぶながというなぞのしょくぎょうがまほうけんしよりちーとだったのでおうこくをつくることにしました
原作者
森田 季節
漫画
ジャンル
ファンタジー
 
戦国
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

オダノブナガという職業

聖獅子王国には、成人すると神殿での職業授与式を経て、神から個々人の適正に合わせた「職業」が与えられるという風習があった。尾連丘(フォードネリア)県のわずか1群半を領する領主の異母弟であるアルスロッド・ネイヴルは、最強の職業である「《魔法剣士》」となることを夢見て、自らを疎んじる異母兄のガイゼル・ネイヴルのいびりに耐え、鍛錬を積んできていた。ようやく迎えた職業授与式の日、アルスロッドは姉弟のように育った乳母子にして側近のラヴィアラ・アウェイユに見送られて意気揚々と神殿へと赴く。だが、そこで神から告げられたのは「《オダノブナガ》」という、思わず神官が神に聞き直すほどに奇異な、それまで聞いたこともない響きの職業だった。

命懸けの籠城戦

アルスロッド・ネイヴルを疎んじる異母兄にして領主のガイゼル・ネイヴルは、アルスロッドが成人したことを理由に、彼に隣県の大国である美稲(ミネリア)領との最前線にある黒墨河(ナグラード)砦へ出兵するように命じる。砦の兵は250人、アルスロッドが連れて行けるのは100人ほど。それに対し、ミネリア軍は川を挟んで2000人の兵で対峙しているという。これは、万が一にも砦を防衛できればよし、失敗してもアルスロッドを処断できるというガイゼルの企みによる無理難題であった。そんな中、黒墨河砦に到着したアルスロッドは城将を務めるシヴィーク・クルートに面会し、川の対岸に敵の砦が築かれていること、2か月ものあいだ、ガイゼルが援軍要請にも応えず黒墨河砦を放置しっぱなしだったことを知る。さらに黒墨河砦には、敵の工作兵によって登攀路(とうはんろ)まで作られていた。その夜、内通者の導きによってミネリア軍がついに黒墨河砦を襲撃。絶体絶命の状況の中、アルスロッドは討ち死にする覚悟を決めるが、同時に「この程度なら乗り越えられる」という何者かの声を聞く。不思議な現象に勇気づけられたアルスロッドは、ミネリア軍に突撃。戦闘中に限り能力が2倍になる特殊能力【覇王の力】や、自分の所有物を守ろうとしたときにさらに能力が2倍になる特殊能力【覇王の矜持】を発動させ、一人でミネリア軍を撤退へと追いやることに成功する。この奮戦により、黒墨河砦の兵たちの人心をつかみ、シヴィークから指揮権をゆずり受けたアルスロッドは、逆に打って出ようと提案。内通者を処断し、ミネリア軍に情報が漏れるのを防いだうえで、防衛戦から2日後の深夜、川を渡って美稲領の高台に土の一夜城ならぬ一夜砦を建造。そして、攻めてきた敵をさんざんに痛めつける。さらに、ネイヴル軍優勢の報を聞いたガイゼルが黒墨河砦に援軍を送ったことで、前線は拮抗して互いに手が出せない状態となり、黒墨河砦はひとまずの平穏を得るのだった。任務を果たして凱旋したアルスロッドは、この功績により、ガイゼルから勝幡(ハルト)村とその両隣の計3村の所領に加え、男爵位を授かる。

子爵から伯爵へ

病弱な妹のアルティア・ネイヴルの療養を口実に、アルスロッド・ネイヴルは古くなった家を、大きくきれいで、いざというときには戦える設備も備えた屋敷に建て替えた。黒墨河(ナグラード)砦をみごとに防衛しただけでなく、美稲(ミネリア)領に攻め入って敵を叩きのめしたという、ネイヴル家始まって以来ともいえるその功績と武勇は領内に大きく広がっており、アルスロッドのもとに仕官を求める者は多く、その中には黒墨河砦で共に戦ったシヴィーク・クルートの姿もあった。さらに織田信長の提案により、領地で「ラクイチラクザ」を始めたことで経済的にも潤い、アルスロッドは力を蓄えていく。そんなアルスロッドの台頭を快く思わないガイゼル・ネイヴルは、アルスロッドを暗殺しようともくろむが、このことを予見していたアルスロッドは彼の計画をすべて看破。そしてガイゼルは、最後に自らだまし討ちにしようとしたところを、あっさりとアルスロッドに討ち取られるのだった。こうして、ガイゼルに代わって尾連丘(フォードネリア)県の清畑(ネイヴル)領の領主にして子爵となったアルスロッドは、手始めに隣接する岩蔵(マール)領へと触手を伸ばす。職業授与式を経て「《射手》」の職業を得たラヴィアラ・アウェイユの活躍もあり、マール子爵をあっさりと討って岩蔵領を併呑(へいどん)したアルスロッドは、それを皮切りにわずか半年ほどで尾連丘県全15群のうち7群を支配下におさめることに成功。さらに金の力で王家に手を回し、伯爵位も得るのだった。

妻は本当に才媛です

アルスロッド・ネイヴルが伯爵になってからしばらくたった頃、小康状態にある美稲(ミネリア)領の領主であるエイルズ・カルティスから、アルスロッドのもとに同盟の使者がやって来た。近隣の実力者であるエイルズに自らの力を知らしめると同時に、周囲の諸勢力を牽制するいい機会だと考えたアルスロッドは、どこかこちらを侮った様子を見せる使者に対して会談を快諾。自軍の威容を誇示するため、即座に精鋭からなるアルスロッド直属の親衛隊「赤熊隊」と「白鷲隊」を結成し、それぞれの隊長にオルクス・ブライトレイオン・ミルコライアを任じる。やがて迎えた会談の日、アルスロッドは意図的に進軍を遅らせたうえで一芝居打つことで、より多くの人に精強な軍隊を見せると同時に、その鉄の規律を知らしめるのだった。そんなアルスロッドと対面し、彼の器を自分の目で確認したエイルズは、強固な同盟を結びたいと、自らの娘であるセラフィーナ・カルティスとの縁談を申し出る。ラヴィアラ・アウェイユの進言もあり、アルスロッドは側室も持つことを条件に、この縁談を承諾。晴れて両家は強固な同盟を築き、カルティス家とネイヴル家はともに、後顧の憂いなく勢力を伸ばす体制を手に入れる。さらに商業においても便宜が図られ、互いの領内であれば商売がしやすくなるなど、両家は経済的にも強い結び付きを持つようになる。その後、祝言を挙げて城に戻ったアルスロッドに対し、セラフィーナは開口一番、拠点である城を大河に面した商業都市の鹿渡(マウスト)に移すべきだと進言する。それはアルスロッドがかねて考え、ひそかに計画を進めていたことと同じだった。さらにセラフィーナは、明るく気さくな言動で、これまでカルティス家を敵とみなしてきた、ラヴィアラをはじめとするネイヴル家の家臣を和ませ、その心を一瞬で掌握する。そんなセラフィーナの才覚を目の当たりにしたアルスロッドは、たとえ彼女が平民だったとしても自分の妻として迎えただろうと、彼女と出会えた幸運に感謝するのだった。それからほどなく、アルスロッドは尾連丘(フォードネリア)県統一の最大の難関となる、県最大の神殿を有する聖堂群へと狙いを定める。アルスロッドに敵対心をあらわにする聖堂騎士団に対し、アルスロッドは平原での緒戦で、数では劣りながら軍の精度によって圧倒。敗退した聖堂騎士団の団長は、大聖堂そのものと神官長を人質に立てこもり、ネイヴル軍に陣を作らせないように周辺の村を焼こうとしたりと見苦しいまねを繰り返す。さらには大聖堂を捨て、金品を持ち出して逃げようとするが、そこをファンネリア率いる忍者集団「ラッパ」によって暗殺されることとなる。こうして、大聖堂自体には損害を出さずに騎士団を壊滅させ、神官長たちを無事に保護したアルスロッドは、聖堂群からも好意的に受け入れられて勢力下に置くことに成功し、ついにあと3群で尾連丘県の統一を果たすというところまでこぎつける。

居城移転と跡継ぎ

尾連丘(フォードネリア)県統一を目前に控え、アルスロッド・ネイヴルは、かねて計画していた鹿渡(マウスト)への本拠地移転のため、町の大改修工事に取り掛かる。県統一後では他県の領主を刺激することが予測され、ここしかないというタイミングであった。時を同じくして、セラフィーナ・カルティスラヴィアラ・アウェイユが相次いで懐妊したという喜ばしい報告がもたらされる。指揮を受けている兵士の信頼度と集中力が5割上昇する特殊能力【覇王の道標】の効果を利用し、鹿渡の都市づくりの陣頭指揮を執りながら、アルスロッドは自分は世界で一番幸せな人間なのではないかと喜びをかみしめていた。そんな中、アルスロッドのもとに、尾連丘県の南に隣接する木路(オルビア)県の柿滝(ナーハム)領から、同盟の使者がやって来る。それは、領主のブランド・ナーハムが、アルスロッドの妹であるアルティア・ネイヴルとの婚姻を求めるものだった。アルスロッドとアルティアはブランドの器がどれほどのものか、彼を呼び出し、直接見て確かめることにする。

尾連丘(フォードネリア)県統一戦

アルティア・ネイヴルブランド・ナーハムのもとに嫁いだのち、アルスロッド・ネイヴルは拠点を鹿渡(マウスト)城へと移した。そこでアルスロッドは、尾連丘(フォードネリア)県を完全に手中におさめるべく、残る北部3群の攻略に取り掛かる。新参ながら勇猛な戦士にして優れた軍事手腕を持つノエン・ラウッドの活躍もあり、アルスロッドは破竹の勢いで地域を制圧していき、ついに残すはウージュ家が守る竹角(ホーライ)城のみというところまでこぎつけるが、緩流(ナグーリ)県との県境にある城ということもあって竹角城は堅固で、なかなか攻め落とせない。しかもウージュ家は緩流県をおさめるレントラント家と交わりがあり、時間がかかればレントラント家から援軍が派遣される恐れもあった。そんな中、突如先鋒のノエン隊が敵の奇襲を受けたという報がもたらされる。その相手は竹角城城主であるマイセル・ウージュ自らが率いる一隊だった。マイセルは、ノエンと彼の救援に駆けつけたオルクス・ブライトの二人を相手に大立ち回りを演じるが、アルスロッドの本隊が近づくのを感じ取るやすぐさま撤退。そしてマイセルは、領民と兵の保護を条件にアルスロッドに降伏を申し出て、自分を含む領主一族の身柄をアルスロッドにゆだねるのだった。当初は領主と主戦論者を処刑するつもりでいたアルスロッドだが、ノエンとオルクスの進言により、マイセルをノエンの配下として加えることを許可し、さらに今回制圧した北部3群の統治をノエンに任せることを決める。そして、セラフィーナ・カルティスラヴィアラ・アウェイユの勧めにより、マイセルの妹であるフルール・ウージュを側室に迎える。フルールは長いあいだレントラント家に人質に出されていた過去があり、アルスロッドが次の標的に据えていた緩流県、そしてレントラント家の内情に詳しかった。貴重な話をフルールから聞いたアルスロッドは、緩流県攻めの策を練る。

緩流県侵攻

アルスロッド・ネイヴルノエン・ラウッドのもとからマイセル・ウージュを借り受け、オルクス・ブライトレイオン・ミルコライアら親衛隊を中心とする少数の部隊を引き連れただけで、緩流(ナグーリ)県への進軍を開始。道中の砦はいずれも打ち捨てられており、これは領内深くの渓谷におびき寄せ、平野部と後方からの集中攻撃によって敵をせん滅するという、フルール・ウージュが語っていたレントラント家の得意とする戦術と符合していた。こうしてアルスロッドは大した抵抗も受けずに竜磐(サウラ)砦にたどり着くが、ここから敵の本拠である浜袋(モルカラ)城までの砦は改修されており、敵はここで集中攻撃をかけてくることが予見された。そこでアルスロッドは、戦力を分散させて山沿いに迂回し、各砦を裏から電撃的に攻略していく作戦をオルクスたちに明かす。当初はあまりにむちゃな作戦に困惑していたものの、アルスロッドの檄に応え、一行はすさまじい速さで次々に砦を落としていく。だが、そのうちの一つの砦には、レントラント家の奥の手とされる巨人が拘束されていた。拘束を解かれた巨人は、砦を攻めていたアルスロッドとマイセルの二人を同時に相手にしながらも圧倒。二人がピンチに陥る中、レイオン・ミルコライアも救援に駆けつけるが、三人がかりでも巨人の猛攻は止められない。だが、重傷を負いながらも命懸けで立ち上がり、自らを体を張って守るマイセルを前に、アルスロッドは、味方に命を懸けて守られた場合、攻撃力と素早さが眼前の敵の2倍になるという特殊能力【威光、幕下に満ちる】を発動。その存在を後世に語り継ぐためにと、巨人に「ヤスケ」と名を付けたうえで、アルスロッドはついに死闘に終止符を打つ。切り札を失い、またアルスロッドが少数の兵しか率いていないという情報に油断していたレントラント軍は、その直後にシヴィーク・クルート率いる後方部隊と合流して大軍となったネイヴル軍に手も足も出ず敗走を重ねる。さらにアルスロッドの調略で分家筋の裏切りに遭って拠点の浜袋城を失い、当主のコルト・レントラントと重臣たちは自害。こうして尾連丘(フォードネリア)県を統一してからわずか2か月で、アルスロッドは緩流県をも平定し、聖獅子王国でも数えるほどしかいない、2県をおさめる領主となるのだった。そしてアルスロッドが領土拡大に伴う政務に追われる中、セラフィーナ・カルティスのもとに男の子が、さらに2か月後にはラヴィアラ・アウェイユのもとに女の子が生まれる。

皇太子をかつぐ

現在、聖獅子王国は先代国王の弟のパッフス6世が王となっており、ハッセは先代国王の嫡男でありながら爵位を与えられないだけでなく、命を狙われる境遇にあった。手を尽くしてハッセを見つけたアルスロッド・ネイヴルは彼を鹿渡(マウスト)城に招き、皇太子として王位に就くように進言。これを受けてハッセは、鹿渡城に各地の諸侯を集め、皇太子としての名乗りを上げる。王都のパッフス6世がこれを認めるはずもなく、こうして「百年内乱」にあって火種がくすぶり続けていた聖獅子王国は、明確に王統が割れ、あらためて相争う状態になった。そんな中、アルスロッドはフルール・ウージュの推薦で、ハッセの近衛騎士であるケララ・ヒララとの面会を果たす。彼女はハッセが流浪の身だった頃から王家の行事などを差配していたゆえ、実に造詣の深い教養人で、彼女を大いに気に入ったアルスロッドは、言葉巧みにハッセのもとからケララを配下としてゆずり受けると同時に、彼女を自らの側室に迎え入れるのだった。それから一年ほどのあいだに、アルスロッドは王都への道を切り開くために道中の梨谷(イクト)県も平定し、3県をおさめる領主となっていた。そんな中、次なる標的を静馬(シャーラ)県に定めたアルスロッドは、強力な海軍を有する静馬県の有力領主にして知識人であるソルティス・ニストニアとの接触を図る。ケララの尽力もあり、ソルティスと協定を結ぶことに成功したアルスロッドは、満を持して静馬県に侵攻。ニストニア家と協力し、静馬県で最大の勢力を誇るアントワーニ家を南の隣県である神河(メルヤ)県へと追いやるのだった。こうして静馬県をほぼ手中におさめたアルスロッドは、ハッセから侯爵位を与えられる。さらにアルスロッドは、アントワーニ家が身を寄せた神河県領主のメルヤ家のお家騒動を利用し、ハッセの名のもと、当主のザイラン・メルヤに協力。これによってパッフス6世は、ザイランの弟を担いで反乱を起こしたメルヤ家の重臣たちに協力せざるを得なくなってしまう。この戦いを通じてアルスロッドは、メルヤ家はもとより、パッフス6世の戦力をも大きく削ぐことに成功。ここに至ってはもはやアルスロッドの勢いを止められる者はおらず、パッフス6世は一族と共に西へと落ち延びるのが精いっぱいであった。こうしてアルスロッドはハッセを伴い、ついに王都へと足を踏み入れる。

新王擁立

ハッセが新たに王に即位した祝賀会などが終わった翌日、アルスロッド・ネイヴルはハッセから摂政に任じられ、王国の実権をその手ににぎることとなった。するとハッセはさっそく、アルスロッドに自分の妹であるルーミーとの縁談を申し出る。当初は困惑していたものの、セラフィーナ・カルティスに快く背中を押されたアルスロッドはルーミーを正室へと迎え、名実ともに王家とのつながりを確固たるものとするのだった。そんな中、アルスロッドは自身の支配体制を盤石なものとするため、官僚登用試験「科挙」を実施。家柄によらず、才能を重視した官僚機構の構築と、自らの意を反映しやすい国づくりを推し進めていく。そしてアルスロッドは、科挙に応じた商人のヤーンハーン・グラントリクスの導きのもと、「茶式」において自らの心の深層で、織田信長との初めての対面を果たす。

大聖堂との戦い

王都の西に隣接する城西(じょうさい)県を支配するオルセント大聖堂は、純粋な兵力で2万人、信者をかき集めれば10万人を超えるともいわれる、強大な勢力を誇っていた。オルセント大聖堂の指導者である大僧正カミトは、アルスロッド・ネイヴルハッセが王都を目指していた際には表面上は中立を保ちつつも、裏では協力を申し出るなど友好的な立場を取っていた。だがカミトと会見したアルスロッドは、不気味でスキを見せない彼の背後に、前王パッフス6世の影を見る。もともとカミトは、大聖堂の権威と信仰を武器に、有力な領主のいない王都周辺にその勢力を拡大し「神税」と称して財を蓄えており、その既得権益を守るために、パッフス6世とも関係を持ち続けていた。それを見抜いたアルスロッドは、ハッセから王都周辺のいくつかの町の徴税権を獲得してカミトを挑発したうえで、王に歯向かった者が潜んでいるという名目で、城西県を越えた先にある長岳(シンジュー)県に出兵。そしてアルスロッドがわざと長岳県の攻略を遅らせていると、オルセント大聖堂は、アルスロッドたちの退路を断つ形で兵を挙げるのだった。これを予期していたアルスロッドは突如侵攻を早め、長岳県の有力領主を制圧。長岳県に反抗の機運がなくなると即座に兵を返し、オルセント大聖堂軍との戦いに突入する。カミトを動かすため、アルスロッドはあえて少ない兵力で出兵していた。現地で兵を召集するものの兵の数ではオルセント大聖堂軍に大きく及ばず、神の名のもと、死を恐れないオルセント大聖堂軍との戦いは熾烈(しれつ)を極める。だが、あわやというところでアルスロッドが仕掛けておいた策が成る。この出兵に際し、アルスロッドはケララ・ヒララに、ハッセの功名心をあおって国王軍を増援として差し向けるように指示を出していたのである。しかもハッセは名目だけではなく本気で、アルスロッド軍と挟撃すべくオルセント大聖堂軍の背後に軍を動かしていた。こうして形勢は一気に逆転し、アルスロッドはついに直々に戦場に出向いていたカミトを捕える。アルスロッドは信者たちの怒りの矛先がこちらに向いては面倒だとその場ではカミトを見逃すが、戦後処理において、王に歯向かったという名目で、オルセント大聖堂の勢力や財力を大いに削ぐことに成功するのだった。それから数か月後、アルスロッドは先祖の墓参りも兼ね、鹿渡(マウスト)城へと戻る。アルスロッドがしばらく留守にしているあいだ、鹿渡の城下町やアルスロッドの故郷である清畑(ネイヴル)は、フルール・ウージュの政治手腕によって飛躍的な発展を遂げていた。だがその一方で、エイルズ・カルティスブランド・ナーハムを筆頭に、周辺の領主たちはアルスロッドに恐怖を覚えると同時に妬み、反抗心を隠そうともしなくなっていた。

関連作品

小説

本作『織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました』は、森田季節の小説『織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました』を原作としている。原作小説版はSBクリエイティブ GAノベルから刊行され、イラストは柴乃櫂人が担当している。

登場人物・キャラクター

主人公

尾連丘(フォードネリア)県の清畑(ネイヴル)領領主であるガイゼル・ネイヴルの弟。金髪ショートヘアで、利発な顔立ちをしている。10代の頃から、自らを疎んじるガイゼルに戦場に送られて生きるか死ぬかの日々を... 関連ページ:アルスロッド・ネイヴル

織田 信長 (おだ のぶなが)

職業「《オダノブナガ》」として、つねにアルスロッド・ネイヴルと共にある中年男性。自らを「覇王」と称している。無造作にまとめた総髪で、立派な口ひげと顎ひげを生やし、甲冑を身につけた精気あふれる人物。性格は豪快そのもので、気が向いたときに姿を現し、空中をふわふわと漂いながら、アルスロッドにアドバイスをしたり、軽口を叩いたりしている。その姿は人から認知されることはなく、アルスロッドにもふだんは声だけしか届いていない。ただし、のちに「《センノリキュウ》」の職業を持つ商人のヤーンハーン・グラントリクスの導きのもと、アルスロッドが「茶式」に臨んだ際、アルスロッドの心の深層で対面を果たし、互いにそれまで以上に意気投合することとなる。織田信長自身、なぜ自分がこのような状態になったかはわからないものの、自分が職業そのものであることは理解しており、戦乱の世に生きるアルスロッドに助力することを惜しまない。時には、「《アケチミツヒデ》」の職業を持つケララの処遇についてなど、アルスロッドと意見を異にすることもあるが、基本的にはアルスロッドの判断を尊重し、見守っている。実在の人物、織田信長がモデル。

ラヴィアラ・アウェイユ

アルスロッド・ネイヴルに側近として仕えるハーフエルフの女性。職業は「《射手》」。アルスロッドの乳母子として幼い頃から共に育ち、年齢は1歳年上ながら、まるで兄妹のように仲がいい。金髪のロングヘアをポニーテールにしており、胸が少々小さめなことがコンプレックス。戦闘の際にはアルスロッドの近くに控え、その卓越した弓術で彼の背中を守る。当初は職業を得ていなかったが、アルスロッドが子爵になった際に「職業授与式」を行い、「《射手》」の職業を得る。もともと卓越した弓の腕前を持っていたものの、《射手》の特殊能力によってその技にさらなる磨きがかかり、「強弓のラヴィアラ」の異名を取るようになる。この時、アルスロッドからネイヴル軍のエルフ隊の指揮を任されるほか、エルフの間者を従えて周辺諸国の諜報活動も行うなど、軍事面においてはアルスロッドの右腕ともいうべき存在。アルスロッドとは互いに思い合っており、彼が美稲(ミネリア)領主のエイルズ・カルティスの娘であるセラフィーナ・カルティスを正室に迎える際にはその決断を後押しし、自らはアルスロッドの側室となった。以降は胸の大きさについてセラフィーナにからかわれたりしつつも、彼女とはアルスロッドを支える室として互いに友人のような家族のような、よい関係を築く。同様に、そのあと側室となったフルール・ウージュやケララ・ヒララ、新たな正室となった王妹ルーミーとも親しい関係を築いている。結婚から間もなく、セラフィーナが懐妊したのと同時期に身ごもり、妊娠期間が長いハーフエルフということもあって、セラフィーナから2か月遅れて女の子を出産。この時、母子ともに生死の境をさまようほどの難産だったものの、戦場でアルスロッドのとなりに立つことが忘れられず、子供を産んだあとはすぐに、将として前線に復帰する。

シヴィーク・クルート

尾連丘(フォードネリア)県の清畑(ネイヴル)領の黒墨河(ナグラード)砦で城将を務める初老の男性。白髪のセミロングヘアを首の後ろで一つにまとめ、口ひげと顎ひげを生やした精悍な人物。大国である美稲(ミネリア)領との最前線にある黒墨河砦を守り続けてきただけあって、軍略に長け、援軍として現れたアルスロッド・ネイヴルの奇抜なアイデアもすんなり受け入れるなど、柔軟な考え方の持ち主。アルスロッドが、内通者が出てあわや陥落の危機に陥った黒墨河砦を最前線で奮戦して守り切っただけでなく、一夜城ならぬ一夜砦を築いてミネリア軍を退却させるなど、並はずれた手腕を存分に発揮する姿を見て彼に心服。のちに、黒墨河砦防衛の功績によって三つの村の所領と男爵位を得たアルスロッドのもとに、砦にいた手勢を引き連れてはせ参じ、以後はアルスロッドの側近として補佐役を務めるようになる。その後もアルスロッドに付き従って各地を転戦し、数多くの武功を立てていく。最古参の将としてアルスロッドには心から信頼されており、ある意味では父親のように慕われてもいる。

オルクス・ブライト

アルスロッド・ネイヴルの近衛隊である「赤熊隊」の隊長を務める青年。非常に大柄な体型で、鬼のような二本の角の生えた額当てをつけ、ワイルドな顎ひげを生やした精悍な顔つきをしている。外見的には中年に見えなくもないが、実はまだ若く、年もアルスロッドより下。もともとは黒墨河(ナグラード)砦に詰めていた兵士で、黒墨河砦防衛の功績によって三つの村の所領と男爵位を得たアルスロッドのもとに、シヴィーク・クルートに付き従ってはせ参じた。身の丈ほどもある幅広の大剣を軽々と振り回す見た目どおりの力自慢で、アルスロッドに重用されることとなった。怖いもの知らずな非常に豪快な性格で、同じくアルスロッド親衛隊の白鷲隊隊長であるレイオン・ミルコライアとはいいコンビとなっている。

レイオン・ミルコライア

アルスロッド・ネイヴルの近衛隊である「白鷲隊」の隊長を務めるエルフの青年。金髪のセミロングヘアを後頭部で一つにまとめたクールな顔立ちの美形だが、右頰に大きな傷痕がある。30年ほど傭兵稼業をしたのちにネイヴル軍に入ったという経歴の持ち主で、エルフにしては若手ながら、見た目に反してかなり年は行っている。岩蔵(マール)領攻めにおいて、アルスロッドが士気高揚のために先陣を切って特攻を仕掛けた際、彼の盾役を買って出てその武勇を知らしめ、アルスロッドに重用されることとなった。長弓と短刀の使い手で、冷静沈着ながら肝が据わっており、同じくアルスロッド親衛隊の赤熊隊隊長であるオルクス・ブライトとはいいコンビとなっている。

ノエン・ラウッド

アルスロッド・ネイヴルの配下の男性武将。黒髪をオールバックにして、右目には大きな傷痕があり、眼帯をつけている。もともとは他家に仕えていたが、主家が滅んだあとに、尾連丘(フォードネリア)県全土をほぼ手中におさめつつあったアルスロッドの配下となった。細身の双剣の使い手で、非常に高い戦闘力を持つ。ネイヴル軍にとっては外様という立場にあるが、アルスロッドに対する忠誠心は強く、自ら率先して危険な前線に赴き、軍内での信頼度を高めていく。

マイセル・ウージュ

尾連丘(フォードネリア)県の竹角(ホーライ)城の城主を務める、ウージュ家の当主の青年。爵位は子爵。淡い色のショートヘアで、左目の下にほくろがある。領地が尾連丘県最北端ということもあって、隣接する緩川(ナグーリ)県を支配するレントラント家とかかわりが深く、尾連丘県において一番最後までアルスロッド・ネイヴルの支配に抵抗した。マイセル・ウージュ自身、もともとアルスロッドの勢いを止められるとは考えていなかったが、自ら領民を守るために戦うことが貴族としての責務であるとの考えのもと、アルスロッドに抵抗を続けていた、貴族としての矜持をしっかりと持ち続けている気高くも勇猛な人物。長槍の使い手で、攻撃魔法も使いこなし、その実力はノエン・ラウッドの部隊に少数部隊で奇襲を仕掛け、ノエンを相手に手傷を負わせたほど。また、強化魔法をかけた鎧を身につけており、かなりの打たれ強さを誇る。マイセル個人が高い戦闘能力を誇るだけでなく、配下の兵士たちも精鋭ぞろいとなっている。ノエンの部隊と一度剣を交えたあとは、領民の安全と引き換えに投降し、自分を含む一族の身柄をアルスロッドにゆだねる。ノエンやオルクス・ブライトにはその実力と人柄を高く評価されており、その後はノエンたっての願いで彼の配下の将となり、ネイヴル軍に加わる。以来、妹のフルール・ウージュを側室に迎えてもらったこともあり、アルスロッドに心からの忠誠を誓い、彼のために命懸けでその力を振るう。フルールのことを心から大切に思っており、彼女の笑顔を見ることが、戦場から生きて帰る大きなモチベーションとなっている。

ケララ・ヒララ

アルスロッド・ネイヴルに皇太子として担がれたハッセの、近衛騎士を務めていた女性。職業は「《アケチミツヒデ》」。白銀のショートヘアと浅黒い色の肌を持つ凛とした美人で、故事に造詣が深い教養人。その才能で幼い頃からハッセを支えてきたが、「亜人」ということでハッセからは差別され、まともな人間扱いをされていなかった。初めてアルスロッドと会見した際、彼に「今まで自分の近くにいなかった類の才能」と高く評価されると同時にその美貌にも惚れ込まれる。その結果、ケララ・ヒララを気に入っていなかったハッセから、アルスロッドのもとに家臣としてすんなりゆずられ、王都式の儀礼や学問について、アルスロッドの教師役を務めることとなった。また、ファンネリアと並んでネイヴル家の政務にも大きくかかわるようになる。この時、アルスロッドの側室としても迎えられるが、ケララ自身はほかの妻たちとは一線を引いており、あくまで家臣としての立場を崩すことはない。職業柄、直接戦闘において取り立てて優れた特殊能力を持つわけではないにもかかわらず、戦場に出て小一時間ほどで敵将の首級を三つも持ち帰るなどその軍略はすさまじく、軍事方面でも才能を発揮。一大勢力であるオルセント大聖堂との戦いにおいては、ハッセの国王軍を援軍に出すように要請する任務を任されるなど、アルスロッドには非常に信頼されている。一方で織田信長には、自らを裏切って死に至らしめた明智光秀と同じ匂いがすると、ケララを初めて見た時から強く警戒されている。

ファンネリア

アルスロッド・ネイヴルの配下で、清畑(ネイヴル)領の財務官僚を務める青年。黒髪のショートヘアでモノクルを掛け、黒い猫のような耳としっぽを生やしている。もともとはしがない油売りだったが、アルスロッドが領地に出した「ラクイチラクザ」のお触れを受けて商売を手広く広げ、さまざまな品目を扱う豪商となった。その経歴をアルスロッドに評価され、領地の商業を管理するため、財務官僚として協力することとなった。アルスロッドに「ラッパ」と呼ばれる、獣人で構成された忍者軍団を率いており、調略や暗殺なども得意としている。

ヤドリギ

ファンネリアが率いる「ラッパ」と呼ばれる獣人で構成された忍者軍団の隊長を務める女性。黒髪ショートボブで犬のような耳があり、細身ながら筋肉質な体型をしている。ヤドリギを含め、ラッパのメンバーは狼のような姿に変身することが可能で、その特徴を生かし、調略や暗殺の任に就いている。ヤドリギ自身は、ふだんはメイドのような姿でアルスロッド・ネイヴルの近くに控えており、彼の命令に応じて情報収集したり、献策をしたりすることもある。

オルトンバ

王都近郊に住むドワーフの鍛冶師の男性。職業は「《クニトモシュウ》」。白髪を角刈りにし、立派な口ひげと顎ひげを生やしている。王都を奪還したアルスロッド・ネイヴルが体制強化のために取り組んだ官僚登用試験「科挙」に応じ、一次試験を優秀な成績で合格。二次試験の面接で国を富ませる手段を尋ねられた際に、武器を作ることだと回答し、自ら発案、製造した「鉄砲」を売り込んだ。もともと、住んでいた集落が山賊の襲撃を受けることが多く、女子供でも対処できるようにとの思いで鉄砲を開発。時に事故によって死にかけながらもみごとに完成させたという、優れた技術と根性の持ち主。特に織田信長に大いに気に入られて合格となり、役人ではなく、技官としてアルスロッドのもとで働くこととなった。この時、鉄砲のあまりの威力に驚愕したアルスロッドから、集落の税を半額にするという優遇措置も受ける。その後は財務官僚のファンネリアと協力して鉄砲の増産と改良に勤しむ。

ヤーンハーン・グラントリクス

ほかの大陸出身の竜人種の女性。職業は「《センノリキュウ》」。ストレートロングヘアで頭に東洋の竜のような角を二本生やし、同じく竜のようなけば立った耳を持つ。いつも笑みを浮かべ、穏やかながらどこかつかみどころのないひょうひょうとした性格で、何かと語尾を伸ばす特徴的なしゃべり方をする。76年前に聖獅子王国へやって来て、今では薬の商人として王都に店を構えている。王都を奪還したアルスロッド・ネイヴルが体制強化のために取り組んだ官僚登用試験「科挙」に応じ、一次試験を優秀な成績で合格。二次試験の面接において、自分の内面と向き合うという「茶式」を提唱し、アルスロッドに強い興味を抱かれることとなる。この茶式が、アルスロッドと織田信長が直接対面を果たすきっかけとなった。以後は職業柄さまざまな人脈を持つことからアルスロッドに意見を求められ、相談役のようなことをしていたが、のちに官僚として財務にも携わるようになる。

セラフィーナ・カルティス

濃岐府(ブランタール)県・美稲(ミネリア)領領主であるエイルズ・カルティスの娘。職業は「《聖女》」で、そばにいる者の幸運を三割引き上げる特殊能力を持つ。黒髪ロングヘアの勝ち気な顔立ちをした美女で、胸が大きくスタイルもいい。尾連丘(フォードネリア)県の大半を手中におさめ、伯爵位を得たアルスロッド・ネイヴルのもとに、正室として嫁ぐこととなった。エイルズによる半ば政略結婚のようなものではあったが、セラフィーナ・カルティス自身、初対面でアルスロッドの才覚にほれ込み、同時にセラフィーナの利発さを見いだしたアルスロッドにも強く求められ、周囲の誰からも祝福されながらネイヴル家の一員となった。ラヴィアラ・アウェイユがアルスロッドと思い合っていることは把握しており、ラヴィアラの胸のサイズをからかったりと軽くちょっかいをかけながらも、アルスロッドを支える室として互いに友人のような家族のような、よい関係を築く。同様に、そのあと側室となったフルール・ウージュやケララ・ヒララとも親しい関係を築いている。のちにアルスロッドが新たな正室として王妹ルーミーを迎えることになった際には、自分の望みは妻として英雄を支えることのみと自ら身を引いて側室となるが、同じ室として、ルーミーのことも家族のように温かく迎えた。政略や軍略にも優れた見識を持ち、アルスロッドに頼りにされると同時に、その才覚を愛されてもいる。結婚から間もなく、ラヴィアラの懐妊と同時期に男の子を身ごもり、アルスロッドが尾連丘県に加えて緩川(ナグーリ)県を手中におさめるのと時を同じくして出産する。

フルール・ウージュ

マイセル・ウージュの妹。アルスロッド・ネイヴルに敗れたウージュ家の領主一族が彼に投降した際、セラフィーナ・カルティスやラヴィアラ・アウェイユの勧めにより、アルスロッドが側室として迎え入れた。セミロングヘアのおとなしく控えめな女性で、胸が大きい。尾連丘(フォードネリア)県の北に接する緩川(ナグーリ)県をおさめるレントラント家で、長いあいだ人質になっていたという経緯があり、緩川県およびレントラント家の内情について詳しい。また人質の身でありながらレントラント家の国防戦略や戦術についてもしたたかに情報を集めていたりと気丈で聡明な一面を持ち、アルスロッドはもちろん、セラフィーナやラヴィアラにも、その才覚を愛されている。長年の人質生活によってつねに感情を殺し、心からの笑顔を見せることをためらう癖があり、セラフィーナやラヴィアラがフルール・ウージュを側室に勧めたのは、アルスロッドに彼女の心を癒してもらおうという算段もあった。これまでのフルールの苦労は兄のマイセルにも痛ましく思われており、アルスロッドのもとで幸せになることを心から望まれている。アルスロッドが王都奪還のために旅立ったあとは、その政治手腕を発揮し、ネイヴル家の新たな拠点となった鹿渡(マウスト)城下の発展に尽力。すさまじい規模の大都市へと育て上げる。

ルーミー

ハッセの妹。金髪のロングヘアを頭の上で大きなお団子にしている。非常に小柄でまだ少女とも呼べる幼さだが、ハッセのたっての願いで、アルスロッド・ネイヴルに正室として迎えられることとなった。それまで正室だったセラフィーナ・カルティスの立場をおもんぱかったアルスロッドは、当初はやんわり抵抗していたが、妻として英雄を支えることのみが自身の望みであるというセラフィーナの覚悟を聞き、自らの権力を拡大するために前向きにハッセの申し出を受け入れた。ハッセが王都を奪還し、王として即位するまでは、修道院に預けられていたという過去がある。ルーミー自身は屈託のない性格で、アルスロッドのことを「怖い人かもしれないが悪い人ではない」と評するなど、人を見る目も確か。その人柄はセラフィーナやラヴィアラ・アウェイユ、フルール・ウージュなど、アルスロッドのほかの妻たちからも愛され、まるで本当の妹のようにかわいがられている。ちなみに性知識には乏しく、セラフィーナなどはそれを利用して、よくアルスロッドをからかう材料にしている。

ガイゼル・ネイヴル

尾連丘(フォードネリア)県の清畑(ネイヴル)領領主で、アルスロッド・ネイヴルの異母兄。爵位は子爵、職業は「《戦士》」で、金髪ショートヘアの凡庸な青年。卑屈で自己中心的な性格で、ガイゼル・ネイヴルにとっては自己保身が何より最優先される。幼い頃から優秀なアルスロッドのことを疎んじており、彼が成人する前から何かと理由をつけては戦地に送り、亡き者にしようとしてきた。大国である美稲(ミネリア)領との最前線にある黒墨河(ナグラード)砦からの援軍要請を無視し続けた挙句、成人して職業を得たばかりのアルスロッドを派遣し、砦が防衛されようが落ちてアルスロッドが死のうが、自分にとって特になるように差配するなど小賢しいところがあるが、基本的に視野が狭く短慮。目先のことしか頭になく、国が滅びようが自分さえ助かればいいというその考え方は、当然のことながらアルスロッドに強い反感を覚えられている。黒墨河砦防衛の功績により、アルスロッドに与えた三つの村が半年あまりで飛躍的な発展を遂げたうえ、アルスロッドが軍備を拡張していることに恐怖を覚え、のちに彼の暗殺を画策。だが、そのもくろみは当然のごとく看破され、アルスロッドをだまし討ちにしようとしたところを返り討ちにされる。

アルティア・ネイヴル

アルスロッド・ネイヴルの実の妹。病弱だが心優しい性格で、血のつながった唯一の親族として、アルスロッドに非常に大切にされている。古びた家で豊かとはいえない生活をしていたが、アルスロッドが黒墨河(ナグラード)砦防衛を成功させ、所領を得て新たな屋敷を構えてからは、病も快方に向かっていく。その後は、スポーツ「エアーボール」ができるほどに元気になり、木路(オルビア)県の柿滝(ナーハム)領領主であるブランド・ナーハムのもとへと嫁ぐことになる。のちにブランドとのあいだに、女の子をもうける。

エイルズ・カルティス

濃岐府(ブランタール)県の美稲(ミネリア)領領主の男性で、セラフィーナ・カルティスの父親。爵位は伯爵で、濃岐府県のほぼ全域を手中におさめていることから「濃岐府伯」の名でも呼ばれる。白髪のロングヘアをオールバックにして後ろで一つに束ねた偉丈夫で、眉間から右目の下にかけて斜めに大きな傷がある強面。アルスロッド・ネイヴルにとっては近隣における最大の脅威であり、一方でいつかは越えるべき壁と見なされている。アルスロッドが頭角を現し始め、尾連丘(フォードネリア)県の大半を手中におさめて伯爵位を得た頃、彼を見定めるために同盟を申し出て、直接対面を果たす。この時にアルスロッドの器を認め、正式に同盟を結ぶと同時に、彼のもとに正室としてセラフィーナを嫁がせた。のちにアルスロッドに担がれたハッセが、皇太子を名乗って立ち上がった際には、招集に応じてハッセのもとにはせ参じて侯爵位を授けられ、同時に王国南部鎮撫総督に任じられる。

ブランド・ナーハム

木路(オルビア)県の柿滝(ナーハム)領領主の青年。職業は「《盗賊》」。明るい色の髪を逆立て、快活な性格をしている。もともと政略結婚のつもりで、尾連丘(フォードネリア)県をほぼ手中におさめたアルスロッド・ネイヴルに、彼の妹であるアルティア・ネイヴルとの結婚を打診した。だが、実際にアルティアと会ったところで明るく美しい彼女にほれ込み、あらためてアルスロッドに願い出て、みごとに結婚を認められることとなった。アルスロッドにはその先読みの鋭さを認められ、小規模領主相手なら後れを取ることはないと高く評価されているが、一方で織田信長には「浅井長政」に似ていると評され、ブランドとアルティアの行く末に懸念を持たれている。

ヤスケ

緩川(ナグーリ)県をおさめるレントラント家が砦に閉じ込めていた剣闘士。身の丈はふつうの人間の優に3倍以上もある巨人で、褐色の肌をしており、体中に傷痕がある。一晩の試合で30人もの剣闘士をたった一人で殺したという実績の持ち主で、アルスロッド・ネイヴルが攻めてくることを見越していたレントラント家の当主であるコルト・レントラント伯爵が用意していた奥の手。武器を持たず肉弾による格闘術で戦うが、その破壊力や耐久力は桁違いなうえ、常人をはるかに上回る敏捷(びんしょう)性も併せ持つ。その実力は、精鋭で知られるアルスロッドの親衛隊に大きな被害を出しただけでなく、アルスロッド、レイオン・ミルコライア、マイセル・ウージュの三人を同時に相手にして圧倒するほど。戦いの最中、アルスロッドに仲間になるように誘われるが、自分は強い奴を殺せればそれでいいと固辞。もともと名前を持たなかったが、その実力を惜しんだアルスロッドに、存在を後世に伝えるためと、「ヤスケ」と名づけられた。アルスロッドたちを相手に互角以上の戦いを繰り広げていたが、マイセルに命懸けで守られたことで、攻撃力と素早さが目の前の敵の2倍になる特殊能力【威光、幕下に満ちる】を獲得したアルスロッドの前に敗れる。

ハッセ

先代国王の遺児の青年。先代国王の弟にして現在の王パッフス6世にないがしろにされ、爵位すら与えられずにいた。その境遇もあってどこか卑屈でぼんやりしており、育ちのよさから鷹揚(おうよう)で危機感に疎いところもあるが、つね日頃から自分こそが王になり、中興の祖になると大それた野望を口にしていた。尾連丘(フォードネリア)県、緩川(ナグーリ)県の2県を手中におさめ、勢力を急拡大させたアルスロッド・ネイヴルに皇太子として担がれ、パッフス6世を簒奪(さんだつ)者と称して戦いを挑む。アルスロッドの尽力のもとパッフス6世から王都を奪還したあとは、ハッセ自ら王を名乗り、アルスロッドを摂政に任じて、妹のルーミーを彼のもとに正室として嫁がせ、ネイヴル家との関係の強化を図る。

ソルティス・ニストニア

静馬(シャーラ)県の有力領主の中年男性。長めの髪を後ろでしばって眼鏡を掛け、細身の体型をしている。強力な海軍を有してニストニア港を押さえており、さまざまな文物を海外から取り寄せていることもあって、周辺の貴族とは一線を画す教養と価値観を持つ。皇太子ハッセと彼を担ぐアルスロッド・ネイヴルに招かれ、彼らが居を構えていた緩流(ナグーリ)県の鹿渡(マウスト)城へ訪れた。そこでアルスロッド率いるネイヴル軍の威容を目の当たりにし、彼らに協力することを決断。王都奪還を目指すアルスロッドたちが静馬県に入る際には、道先案内人を務めることを約束する。

カミト

城西(じょうさい)県を領有するオルセント大聖堂の、大僧正の地位にある男性。計算高く腹の内をいっさい見せない食わせ者で、王都に入ったハッセや、摂政となったアルスロッド・ネイヴルに臣従する様子を見せながらも、裏では王都を追われて逃げた前王パッフス6世とつながっている。領地である城西県のみならず、周辺の信者からも「神税」と称して金を集め、その資金を元手に非常に強い勢力を誇っており、戦力は平時で2万人、全国から信徒を総動員すれば10万人にも及ぶ絶大なものとなっている。その力を危険視したアルスロッドの挑発に乗り、ついにアルスロッドを討つために挙兵。だが、ハッセを動かして国王軍と大義名分を味方につけたアルスロッドの前に敗れる。もともとカミト自身はアルスロッドに対して脅しをかける程度の認識で、本当に殺そうとは考えていなかった。その殺意のなさと、カミトを殺すことで信者の憎悪を向けられることを避けたいアルスロッドの意向もあって、その場で命を取られることはなかった。だが、新たな王であるハッセに歯向かった賠償金として多額の金を払ったうえ、かなりの数の都市から手を引くことを余儀なくされ、その勢力は大きく縮小することとなった。

場所

聖獅子王国 (さーうぃるおうこく)

アルスロッド・ネイヴルが暮らす国。「百年内乱」と呼ばれる、王統が割れては互いに争う状態が続いており、現在は、先代国王亡きあと弟のパッフス6世が王位を継いでいるが、先代国王の遺児であるハッセには爵位も与えられずにないがしろにされており、未だ火種はくすぶったままとなっている。国体としては、全国が60の「県」に、各県が10前後の「群」に分けられており、それぞれ領主である貴族による自治が認められているという特徴がある。ちなみに尾連丘(フォードネリア)県の清畑(ネイヴル)領は当初1群半しかなく、アルスロッドは一地方貴族に過ぎなかった。また、聖獅子王国には、成人すると神殿での「職業授与式」により、神からその人物に適した職業を授かるという風習があり、各職業に応じた特殊能力により、もともと持っていた能力をさらに向上させることができる。ただし、職業授与式は誰もが必ず受けるというものではなく、中には成人していても職業を持っていない者もいる。

その他キーワード

職業 (しょくぎょう)

聖獅子王国において、成人した者が神殿での「職業授与式」を経て神から授けられるもの。一般に言う「職業」とは意味合いが異なり、個人が秘めた素質のようなものである。職業を授かると、その職業に応じた特殊能力を身につけることができ、もともとその人が持っていた能力に、特殊能力の分が補正されるという効果がある。例えば「《射手》」ならば、特殊能力により「弓矢の攻撃力が3割上昇」「命中率が大幅上昇」という効果を、「《盗賊》」ならば「状況判断力が3割上昇」「素早さが5割上昇」という効果を得ることができる。そのため、職業ごとの特殊能力を生かすためには、ベースとなる個人の能力も重要となる。ちなみに、職業ながらに明確に人格を持っているのは織田信長のみと考えられているが、「《センノリキュウ》」の職業を持つヤーンハーン・グラントリクスは「茶を世界に広めよ」という趣旨の声を幻聴のように聞いていたりと、「《オダノブナガ》」を職業に持つアルスロッド・ネイヴルほどではないにせよ、一部の特殊な職業が、当人になんらかの影響を与えているケースもまれに見受けられる。また、中にはオルトンバの「《クニトモシュウ》」のように、個人ではなく特定の集団が職業になっている場合もある。このように、これらの人名や集団名を冠した特殊な職業は、なぜか日本の戦国時代、すなわち信長と同時期に活躍した人や集団のものしかない。

《オダノブナガ》

アルスロッド・ネイヴルの職業であり、織田信長自身。この職業を授かることによって得られる特殊能力は、いずれも生前の信長が身につけていた能力に由来したものとなっている。ただし、職業を授かることで自動的に習得できる一般的な特殊能力とは違って、「《オダノブナガ》」の特殊能力はアルスロッド本人が成長することで引き出されるものであり、それを信長が追認する形で特殊能力として確定するというシステムになっている。その特性上、《オダノブナガ》の特殊能力は、戦闘中に限って身体能力が2倍になる【覇王の力】、自分の所有物を守ろうとした時に【覇王の力】に加えてさらに攻撃力が2倍になる【覇王の矜持】、立ちはだかる敵を威圧して能力を2割減退させる【天下を獲る男】、指揮を受けている兵士の信頼度と集中力が5割上昇する【覇王の道標】、都市や交易に関する経済感覚が信長並みになる【覇王の見通し】など、非常に強力で数も多い。またアルスロッドの成長により、【覇王の見通し】に優れた能力を持った人物を把握することができるという追加効果が発動したりと、その性能が上書きされてさらに強力になることもある。ちなみに神殿の音声診断によれば、「《オダノブナガ》」とは「魔王なる者」を意味する言葉とされている。

クレジット

原作

森田 季節

キャラクター原案

柴乃 櫂人

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