あらすじ
第1章
コミュニケーション能力に乏しく、クラスの中でも浮いた存在だった男子高校生の南雲ハジメは、ある日、クラスメートたちと共に異世界のトータスへと召喚される。有無を言わさず魔人族との戦争に加勢してくれと請われたハジメたちは、さっそく戦闘訓練のためにオルクス大迷宮に挑むことになった。しかし、クラスメートたちがトータスの人間からすれば超人的ともいえる能力や天職を持っていると判明する中、ハジメの天職は錬成師という、地味で戦闘に向かないものだった。そんな中、以前からハジメに好意を持っていた少女の白崎香織は、オルクス大迷宮で危機に陥っても必ずハジメを助けると約束する。だが、オルクス大迷宮に挑んだ初日、檜山大介の不注意によって高ランクの魔獣が召喚される罠が発動してしまう。錬成術を使用してなんとか魔獣を食い止めたハジメだったが、何者かによって、オルクス大迷宮の奈落の底に突き落とされてしまう。強力な魔獣たちに囲まれながらも必死に錬成技術を磨き、魔獣の肉を食らって生き延びたハジメは、元の世界とはまったく違う容姿と性格に変貌していく。
第2章
オルクス大迷宮に封印されていた少女ユエと共にオルクス大迷宮を脱出した南雲ハジメは、亜人族の少女、シア・ハウリアと出会う。本来魔力を持たないはずの亜人族でありながら魔力を持って生まれたために、一族もろとも亜人族の国「フェアベンゲン」を追われたシアは、ハジメに助けを求める。最初はメリットのなさに素っ気ない態度を見せていたハジメだったが、次に向かう七大迷宮の一つの入り口だと考えられる場所「ウーア・アルト」がフェアベンゲンで聖地とされていることを知り、シアたちハウリア族が道案内をするという条件で依頼を受けることにする。一度はほかの亜人族と衝突しかけるものの、オルクス大迷宮を攻略した証である宝物庫を所持していたことで、長老の一人であるアルフレック・ハイピストに認められたハジメは、堂々とフェアベンゲンに滞在できることになった。しかし、ウーア・アルトを入り口とする迷宮は、ほかに四つの迷宮をクリアしないと開かないことを知り、ハジメたちは仕方なく、ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮を探し始める。
第3章
ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮を無事に攻略した南雲ハジメたちは、ミレディ・ライセンから教えられた次の七大迷宮へ向かうため、再び旅立ちの準備を進める。その途中、世話になった冒険者ギルドの受付嬢キャサリンの勧めもあり、ハジメたちは大陸一の商業都市として知られるフューレンに立ち寄ることにする。そこでユエやシア・ハウリアを狙う貴族やほかの冒険者たちと騒動を起こしたハジメは、事情聴取のために冒険者ギルドに連行されてしまう。しかし、そこでギルド長のイルワ・チャングから切り出されたのは、消息不明となっている貴族の子息であるウィル・クデタの捜索依頼だった。シアたちの身分証明書であるステータスプレートを、無償発行するなどの条件と引き換えに依頼を受けたハジメは、偶然、畑山愛子が率いる数人のクラスメートと再会する。ハジメの変貌ぶりに驚愕するクラスメートたちを尻目に、ハジメは愛子だけに現在知り得ているトータスの真実を教える。その翌日、ウィルの捜索に出発するハジメたちを待ち受けていたのは、装備を調えた愛子たちだった。
第4章
ウィル・クデタを無事にフューレンへと連れ帰った南雲ハジメたちは、イルワ・チャングから約束どおりの報酬と、高ランク冒険者の称号を与えられる。勝手に仲間になったティオ・クラルスの扱いにも困る中、シア・ハウリアが畑山愛子を魔獣の軍勢から守ったご褒美にと、丸一日のデートを要求した。ユエからの許可もあり、シアとの水族館デートに出かけたハジメは、その途中、奴隷商人から逃げ出した亜人族の少女ミュウを保護する。一度はミュウを保安署に預けたハジメたちだったが、直後に保安署が襲われ、再度ミュウが奴隷商人に捕まったことを知って救出に向かった。結果的にミュウを故郷であるエリセンまで送ることになったハジメたちは、道すがら、オルクス大迷宮に最も近い冒険者ギルドへと手紙を届けることになる。いい思い出のない町からさっさと立ち去ろうとするハジメだが、そこでクラスメートの遠藤浩介と再会し、天之河光輝たちが窮地に立たされていることを知らされる。
関連作品
小説
本作『ありふれた職業で世界最強』は、白米良の小説『ありふれた職業で世界最強』を原作としている。原作小説版はオーバーラップ文庫から刊行され、イラストはたかやKiが担当している。また、原作と同時にミレディ・ライセンを主人公にした、反逆者たちの物語を描く外伝『ありふれた職業で世界最強 零』も刊行されている。
TVアニメ
2019年7月から、本作『ありふれた職業で世界最強』のTVアニメ版『ありふれた職業で世界最強』がAT-Xほかで放送された。TVアニメ版では、遠藤浩介に助けを求められた南雲ハジメが、オルクス大迷宮で白崎香織たちと再会するまでの内容が描かれている。天之河光輝の髪型など、漫画版とは細かい部分に設定の差異が見られる。キャストは、ハジメを深町寿成、ユエを桑原由気、シア・ハウリアを高橋未奈美が演じている。
登場人物・キャラクター
南雲 ハジメ (なぐも はじめ)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は錬成師。本来は黒髪で背が低く、他人と波風が立つことを嫌う穏やかな性格ながら、戦闘訓練のために入ったオルクス大迷宮で何者かに奈落の底へ突き落とされてからは、敵に対していっさいの容赦をしない冷徹な性格と荒々しい口調に変貌した。また、魔物の肉を食った直後に激痛を伴う肉体破壊と再生が立て続けに起こったため、本来の黒髪から白髪になり、身長も劇的に伸びている。右目と左の二の腕から先はオルクス大迷宮で魔物に食われて失っており、錬成した義手と神結晶で作った義眼で補っている。魔物を食うことで「纏雷」「天歩」など数々の特殊技能を取得しており、アーティファクトを作り出すこともできる。その結果、特殊技能を利用した拳銃「ドンナー」など、オリジナルアーティファクトを作り出した。ユエと両思いで、シア・ハウリアから告白された際にもきっぱり断っている。ミュウに対しては当初父親扱いされることにとまどっていたが、非常に過保護に接し、溺愛するようになった。元の世界では父親がゲームクリエイターで母親は少女漫画家だったことから、両親の仕事を手伝って夜更かしすることが多く、学校ではよく居眠りしていた。その件に加え、校内で男女を問わずあこがれの存在である白崎香織から何かと世話を焼かれていたために嫉妬されることも多く、クラスメートとの関係は良好とはいえなかった。ハウリア族からは「ボス」、ティオ・クラルスからは「ご主人様」、ミュウからは「パパ」と呼ばれている。
ユエ
異世界「トータス」の吸血鬼族の少女。見た目は12歳の少女だが、実年齢は323歳。天職は神子。腰の下まであるあざやかな金髪で、その色が月の光に見えたことから南雲ハジメによって「ユエ」と名づけられた。300年前に滅んだとされる吸血鬼族の生き残りであり、オルクス大迷宮の50階層に封印され続けていた。先祖返りで、12歳の頃に首を切り落とされてもすぐに回復し、魔法陣や呪文を使用することなく魔法を行使することができる力に目覚めた。17歳には当時の吸血鬼族の女王として君臨していたが、23歳で叔父によって王位を簒奪(さんだつ)され、オルクス大迷宮に封印された。ハジメとは両思いで、いつかハジメと共に地球に行くことを望んでいる。
シア・ハウリア
異世界「トータス」の亜人族の少女で、年齢は16歳。天職は占術師。ウサギの亜人であるハウリア族の族長の娘で、青みがかった白髪が腰まであり、もみあげのみ低い位置でまとめている。また、ほとんど人間と変わらない見た目だが、人間の耳のほかに頭部にはウサギの耳もある。亜人族は本来魔力を持たないが、シア・ハウリアは未来視という固有魔法を使え、さらに魔法陣や呪文を使用することなく、魔法を行使することができる。そのため忌み子として嫌われ、ハウリア族そのものが亜人族の国「フェアベンゲン」から追放された。身体強化に特化しており、ユエからは鍛錬次第でさらに強化できると評価されている。窮地を救ってくれた南雲ハジメに好意を抱いており、あからさまにアプローチを繰り返しているが、雑に扱われている。武器としてハジメが製作した戦槌型のアーティファクト「ドリュッケン」を使用する。
ティオ・クラルス
異世界「トータス」の亜人族の女性。見た目は20歳前後の女性だが、実年齢は563歳。天職は守護者。ドラゴンの亜人である竜人族の姫で、長い黒髪を一部だけ頭頂部でお団子にしており、袖が分離した着物のような服を身につけている。また、竜化という固有魔法を使用して巨大な黒いドラゴンの姿に変身することができる。竜人族は500年前に滅んだといわれていたが、隠れ里でひっそりと生き延びていた。ティオ・クラルスは異世界からの来訪者を調査するため、人里近くまでやって来ていた。しかし、疲労で眠っていたところを清水幸利にあやつられ、ウィル・クデタが同行していた冒険者パーティーを殺害した。南雲ハジメとの交戦がきっかけで正気に戻ると、以来行動を共にするようになるが、同時にドMにも目覚めた。
ミュウ
異世界「トータス」の亜人族の少女で、年齢は4歳。魚の亜人である海人族。薄青色の長い髪で、人間の耳がある場所にヒレが付いている。もともとは海人族の町であるエリセンで暮らしていたが、母親とはぐれてしまい、奴隷商人に捕まっていた。スキを突いて逃げ出したところを南雲ハジメとシア・ハウリアに保護され、再度奴隷商人に捕まったあともハジメによって救出されている。その後はハジメたちに護衛されながらエリセンに送還されることになるが、父親が早世していることから、ハジメを実の父親のように慕うようになる。
白崎 香織 (しらさき かおり)
異世界「トータス」に召喚された女子高校生で、年齢は17歳。天職は治癒師。長い黒髪をハーフアップにしている。トータスに召喚される前から、南雲ハジメの自己分析能力や努力家なところに惹かれており、他人とかかわろうとしないハジメに対して積極的にコミュニケーションを取っていた。ハジメがオルクス大迷宮の奈落の底に落ちてから数か月たっていても、ハジメを捜索する目的でオルクス大迷宮に挑み続けている。
八重樫 雫 (やえがし しずく)
異世界「トータス」に召喚された女子高校生で、年齢は17歳。天職は剣士。長い黒髪をポニーテールにした髪型で、きつい印象の目つきをしている。白崎香織の親友で、剣道の大会では負けなしの強さを誇る。南雲ハジメからは「現代に現れた美少女剣士」と評されている。戦闘時においては天之河光輝よりも冷静で、さらに命を奪うことについて覚悟を持っており、魔人族からは光輝よりも勇者に向いているのではないかと評価されている。
畑山 愛子 (はたけやま あいこ)
異世界「トータス」に召喚された女性教師で、年齢は25歳。天職は作農師。茶髪のおかっぱヘアで、非常に背が低いために実年齢よりも幼く見える。教科は社会科を担当している。南雲ハジメたちが魔人族と戦うことに反対し、大人としてハジメたちの身の安全を確保しようとした。ハジメがオルクス大迷宮の奈落の底に落ちてからも心配し続けており、ハジメがウィル・クデタの捜索のために立ち寄った町で再会した際には、すぐに合流しなかったことを激怒した。しかし再会した夜に、ハジメから正教教会の信仰するエヒト神がトータスを戦争遊びのために創ったことや、反逆者が本来は世界を救う「解放者」だったことを教えられ、正教教会の言いなりでは元の世界に帰ることはできないだろうと忠告を受けた。トータスの人間からは「豊穣の女神」とあだ名されている。
天之河 光輝 (あまのがわ こうき)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は勇者。無造作な茶髪で、オルクス大迷宮の奈落の底に落ちてからの南雲ハジメの髪型と似ている。誰にでも優しく、正義感が強い性格ながら、白崎香織に好意を持っているため、ハジメに対してだけは敵意を向けている。頭脳明晰で身体能力も高く、女子生徒から非常にモテることから、ハジメからは「完璧超人」と評されている。
坂上 龍太郎 (さかがみ りゅうたろう)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は拳士。刈り込んだ短髪で、非常に筋肉質な体型をしている。天之河光輝の親友で、大柄なために南雲ハジメからは「熊のような体格の持ち主」と評されている。
檜山 大介 (ひやま だいすけ)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は軽戦士。赤みがかった茶髪をもみ上げ部分だけ延ばしている。白崎香織に好意を抱いており、かねて何かと南雲ハジメに食ってかかっている。
清水 幸利 (しみず ゆきとし)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は闇術士。目が隠れるほど前髪を伸ばしたショートヘアで、黒のローブを着込んでいる。ライトノベルなどを愛好しており、異世界への召喚や勇者として活躍することを夢見ていた。しかし、実際には天之河光輝が勇者であり、清水幸利自身は脇役に過ぎないことにひどく落胆していた。畑山愛子が作農師として招かれた町に護衛として同行していたが、ある日、魔人族から愛子と町の住人を殺せば魔人族の勇者として迎えると勧誘され、魔獣6万匹を率いて町を襲う計画を立てていた。
遠藤 浩介 (えんどう こうすけ)
異世界「トータス」に召喚された男子高校生で、年齢は17歳。天職は暗殺者。目が隠れるほど前髪を伸ばしたショートヘアにしている。南雲ハジメからは世界一影が薄いと評されているが、自動ドアは三回に一回は開くと反論していた。生まれ持った影の薄さと天職のスキルを生かし、ハジメがオルクス大迷宮の奈落の底に落ちてからは天之河光輝のパーティーで偵察と斥候として活躍していた。しかし、オルクス大迷宮に現れた魔人族の女性によって光輝たちが全滅の危機に陥った際、応援を依頼するために最寄りの冒険者ギルドに駆け込んでいる。その際にハジメと再会し、さらにハジメが高ランク冒険者となっていることを知って助けを求めた。
イシュタル・ランゴバルト
異世界「トータス」の人間の老齢男性。非常に長い白髭を蓄えており、瘦せた体型をしている。正教教会の教皇を務めている。南雲ハジメたちがトータスに召喚されて最初に出会った人物であり、トータスにおいては正教教会の信仰するエヒト神が絶対的存在であることを印象づけた人物でもある。ハジメたちの意思よりもエヒト神の意思が最優先だと考えており、エヒト神を盲目的に崇拝している。
メルド・ロギンス
異世界「トータス」の人間の男性。ハイリヒ王国で騎士団長を務めている。オールバックにした黒髪に顎髭を蓄え、つねに銀の鎧を身につけている。南雲ハジメたちの戦闘教育者であり、愛情深くその成長をサポートしている。檜山大介によってオルクス大迷宮に高ランク魔獣が出現した際にも囮を引き受け、ハジメたちを先に逃がそうと奮闘した。天之河光輝たちをトータスでの戦いに巻き込んだことを強く後悔している。
アルフレック・ハイピスト
異世界「トータス」の亜人族の老齢男性。フェアベンゲンの長老の一人であり、長い金髪をオールバックにしている。また、エルフであることから非常に長く、尖った耳をしている。反逆者を「解放者」と呼んでおり、南雲ハジメがオルクス大迷宮のクリア報酬アイテムの宝物庫を所持していたことを理由に、本来亜人族以外の立ち入りが許されないフェアベンゲンに滞在を許した。さらに本来は忌み子であるシア・ハウリアを匿った件でハウリア族全員が処刑されるべきところを、ハジメと敵対することを恐れ、処刑を免除している。
ミレディ・ライセン
異世界「トータス」に伝わる反逆者の一人で、人間の女性。故人ながらゴーレムに精神を保存しており、ゴーレムとして南雲ハジメたちの前に現れた。登場時は巨大な騎士の鎧型ゴーレムだったが、ハジメたちがミレディ・ライセンのドキワク大迷宮を攻略後、フード付きローブをかぶった丸顔のゴーレムの姿になって再び現れている。ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮の製作者で、会話する相手をわざとイライラさせるような話し方をする。ハジメたちに、居場所が伝えられていない七大迷宮すべての場所を教えた。
キャサリン
異世界「トータス」の人間の壮年女性。恰幅がよく、茶髪のショートカットヘアにしている。南雲ハジメがユエ、シア・ハウリアを伴って初めて訪れた町であるブルックで、冒険者ギルドの受付嬢を務めていた。マップ製作が趣味で、ガイドブックと見紛うほど詳細な地図を冒険者に無料で配布している。かつて王都のギルド本部で、ギルドマスターの秘書官を務めていた。辞職後もギルド運営にかかわる役職の教育係に就いていたこともあり、現在のギルド支部長の大半がキャサリンの教え子となっている。ハジメのことを「有望だがトラブル体質」であると評しており、ほかの町のギルド支部長に対し、目をかけてやってほしいと書いた紹介状を渡した。
イルワ・チャング
異世界「トータス」の人間の中年男性。瘦せた体型で、金髪をオールバックにしている。大陸一の商業都市として知られるフューレンの冒険者ギルドで支部長を務めている。キャサリンの教え子でもあり、市民と衝突した南雲ハジメがキャサリンの紹介状を持っていることを知り、ギルド支部に招待した。その際、消息不明となったウィル・クデタの捜索を依頼している。ただしハジメから交換条件として、ユエとシア・ハウリアのステータスプレートを無償発行し、その内容について他言しないことや、今後ハジメたちが正教教会と対立し、指名手配された際にはイルワ・チャングの持つすべてのコネクションを使って、便宜を図ることを約束させられた。
ウィル・クデタ
異世界「トータス」の人間の若い男性。茶髪のショートカットヘアにしている。大陸一の商業都市として知られるフューレンの貴族で、クデタ伯爵家の三男。冒険家にあこがれ、イルワ・チャングの勧めで高ランクの冒険者パーティーと共にクエストに挑んだが、予定していた帰還日程を大幅に過ぎてもフューレンに戻らず、消息不明となっていた。南雲ハジメの捜索によって無事発見されたが、突然襲いかかってパーティーを全滅させたティオ・クラルスを憎んでいる。
集団・組織
正教教会 (せいきょうきょうかい)
異世界「トータス」で、人間が信仰している宗教組織。イシュタル・ランゴバルトを教皇として、エヒト神を信仰の対象としている。トータスの人間社会においてかなりの権力を持っており、正教教会に反発したり刃を向けたりすることは忌避されている様子がある。
場所
トータス
南雲ハジメたちが暮らしていた世界の、下位の存在とされる異世界。そのため、ハジメらトータスに召喚された者は、全員がトータスの人間よりも優れた能力を持っている。人間と魔人族が南北を二分する戦争を続けているが、近年、魔人族が魔物を使役するようになったため、人間が滅びの危機に瀕している。また人間と魔人族のほか、東にある巨大な樹海の国「フェアベンゲン」には亜人族が暮らしている。反逆者はトータスの実体を「神が人間、魔人族、亜人族を駒にした戦争遊びをするために作られた世界」だと突き止め、神を討てる者を育てるために七大迷宮を生み出した。
フェアベンゲン
異世界「トータス」にある、亜人族の国。アルフレック・ハイピストなど複数の長老によって政治が行われており、トータスの東にある巨大な樹海を国土にしている。また、長老たちには迷宮の紋章を持つ者と敵対しないことや、その者を気に入った場合は望む場所へ連れて行くことなどが口伝されている。最深部にある大樹「ウーア・アルト」は聖地とされている。
オルクス大迷宮 (おるくすだいめいきゅう)
異世界「トータス」にある巨大迷宮で、七大迷宮の一つ。南雲ハジメたちがトータスに到着したあと、メルド・ロギンスの指導のもと、戦闘教育のために利用された。全100階層あるといわれているが、最高到達記録は65階層となっており、ハジメたちは当初、20階層が目標地点とされていた。またオルクス大迷宮の50階層には、ユエが封印されていた。オルクス大迷宮のクリア報酬は宝物庫と、現在のトータスでは失われている神代魔法で、鉱物に魔法を付与する技能だった。
ウーア・アルト
フェアベンゲンの最深部にある大樹。亜人族の聖地として崇められており、あまり人が寄りつかない。また、ウーア・アルトの周辺は非常に濃い霧で覆われており、亜人族でも方角を見失うため、一定周期で訪れる霧が弱まるときでなければ訪問することもできない。七大迷宮の入り口が隠されているが、ほかに四つの迷宮を攻略してからでなければ扉が開かないようになっている。
ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮 (みれでぃらいせんのどきわくだいめいきゅう)
異世界「トータス」にある巨大迷宮で、七大迷宮の一つ。ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮の内部では体外に放出する魔法が分解されるために使えなくなり、使えたとしても中級以下の魔法が数秒間発動するだけとなっている。また、挑戦者の神経を逆なでするような文言の石版が至る所に立っており、挑戦者を苛立たせる。ルート次第でスタート地点に戻されるうえ、内部構造が一定時間ごとに変化するため、来た道を戻ることすらできない仕様となっている。ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮のクリア報酬は現在のトータスでは失われている神代魔法で、重力を操作する魔法だった。南雲ハジメには「ライセン大迷宮」と呼ばれている。
その他キーワード
魔人族 (まじんぞく)
異世界「トータス」の南側を支配している種族。特に人間と敵対しており、長い間決着のつかない戦争を続けている。しかし、この数十年のあいだに魔獣を従える力を得て、人間社会を激しく動揺させ始めた。また清水幸利や天之河光輝たちを魔人族の勇者として迎えるため、繰り返し勧誘している。
亜人族 (あじんぞく)
異世界「トータス」の東にある巨大な樹海の国「フェアベンゲン」に暮らしている種族。総じて魔力を持たないが、種族によって能力や性質が異なっている。しかし、シア・ハウリアのように魔力を持つ者は忌み子として迫害し、匿った者は全員処刑するという苛烈な一面も持っている。人間からは魔力を持たない亜人族は神に見放された種族とされ、迫害を受けている。
竜人族 (りゅうじんぞく)
異世界「トータス」で、500年前に滅んだとされている亜人族の部族。トータスの守護者と謳われ、あらゆる国や種族を受け入れて平和を築いたとされる。しかし、正教教会が信仰するエヒト神を討とうと画策したことで、エヒト神によって煽動された人間たちが竜人族の国を侵略し、ほとんどの竜人族が殺害された。だが、ティオ・クラルスをはじめとする数人の竜人族は隠れ里に逃げ延びており、エヒト神を討てる者が現れるのを待ちわびていた。
アーティファクト
異世界「トータス」において、神代の遺物とされている物の総称。神が地上で暮らしていた頃に作られた物と伝えられており、市井の人間は道具の構造や原理などを理解していない。唯一、正教教会だけが製作することができるといわれていたが、南雲ハジメは自在にオリジナルのアーティファクトを製作し続けている。
纏雷 (てんらい)
南雲ハジメが取得している技能で、主に右腕や装備に雷をまとわせることができる能力。ハジメが錬成した拳銃ドンナーを発砲する際に発動することで、弾丸を電磁加速し、小型レールガン並の威力を与えることができる。二尾のオオカミ型魔獣を食ったことで取得した。
天歩 (てんほ)
南雲ハジメが取得している技能。空力をあやつって空中に足場を作り、さらに瞬間移動にも見える高速移動法の縮地を組み合わせることで、本来通行できない場所でも移動が可能となる。弾丸のような高速移動をするウサギ型魔獣を食ったことで取得した。
反逆者 (はんぎゃくしゃ)
異世界「トータス」において、神代に神に挑んだ神の眷属の総称。世界を滅ぼそうとした者たちとして伝わっているが、神によってもくろみを見破られ、それぞれが世界の果てに逃亡したといわれている。また、その逃亡先がオルクス大迷宮を含む「七大迷宮」であり、最深部には反逆者のすみかがあるとされている。南雲ハジメやフェアベンゲンの長老たちは「解放者」と呼んでいる。
七大迷宮 (ななだいめいきゅう)
異世界「トータス」にある、七つの巨大迷宮の総称。神に逆らった反逆者が神から逃亡するために作ったとされ、その最深部に反逆者のすみかがあるといわれている。実際は、トータスの実体を「神が人間、魔人族、亜人族を駒にした戦争遊びをするために作られた世界」だと突き止めた反逆者によって、神を討てる者を育てるために生み出された。
ハウリア族 (はうりあぞく)
人間の耳とウサギの耳を持つ、亜人族の部族。争いが苦手で、平和を愛する温厚な種族として知られている。魔物と同様の魔力を持つシア・ハウリアが生まれたため、亜人族の国「フェアベンゲン」を追われることになった。だが、逃げた先で仲間が人間たちに捕えられ、さらに魔物にも襲われたため、南雲ハジメに助けを求めた。しかしその結果、ハジメから過酷な戦闘訓練を受け、戦闘時には過剰なまでに好戦的な姿を見せるようになった。人間からは「兎人族」と呼ばれている。
宝物庫 (ほうもつこ)
宝石の付いた指輪で、アーティファクトの一つ。オルクス大迷宮の攻略時に入手した。取り付けられた宝石にはオルクスの紋章が刻まれており、宝石の中には重さや大きさを問わずあらゆる物を保管することができる。また、収納した物は使用者の半径1メートル以内の任意の場所に出現させることができる。「オルクスの指輪」とも呼ばれている。
ステータスプレート
異世界「トータス」における身分証明書で、アーティファクトの一つ。カード大の薄い金属プレートで、微量の血をなすりつけることで所有者を登録できる。名前や性別、天職や技能などを数値、明文化して表示してくれる。
ドンナー
南雲ハジメが錬成した六連の回転式弾倉を備えた大型リボルバー式拳銃。全長約35センチ。高い硬度と靱性を持つタウル鉱石を銃身と弾丸に加工しており、弾丸内には粉末にした燃焼石が圧縮されている。
オルニス
南雲ハジメが錬成した無人偵察機。鳥に似た姿で上空から遭難者など、ターゲットの痕跡を探ることができる。ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮で獲得した重力魔法を付与しているため、自由に空中を飛行する。さらに頭部にはゴーレム騎士の眼球を組み込んでおり、オルニスが映している光景をそのままハジメの義眼で見ることができる。
燃焼石 (ねんしょうせき)
異世界「トータス」の鉱物。密閉した場所で燃やすと爆発し、その威力は燃焼石の量と圧縮率に比例して大きくなり、上位の火属性魔法にも匹敵する。南雲ハジメが錬成した拳銃ドンナーに用いる弾丸にも、圧縮された燃焼石の粉末が詰められている。
神結晶 (しんけっしょう)
異世界「トータス」の謎の鉱石。青白い鉱石で、オルクス大迷宮で魔物に追い詰められた南雲ハジメが、偶然発見した。鑑定しても正式名称が判別できなかったため、ハジメは当初「ポーション」と仮に名づけていた。神結晶から染み出る水を飲むと体力と魔力が回復するだけでなく、毒などの状態異常も取り除いてくれる。ハジメは神結晶を持ち歩いており、水を集めて水筒にも入れている。ユエによって正式名称が「神結晶」であることや、水を「神水」と称すること、また神結晶そのものが伝説級の秘宝であることが判明した。
緑光石 (りょくこうせき)
異世界「トータス」の鉱物。魔力を吸収すると淡い緑色の光を放つ特性を持っている。吸収した魔力に応じて長時間光るが、魔力を溜め込んだ状態で粉砕すると光が一気に放出されて閃光弾のように使用することができる。
フラム鉱石 (ふらむこうせき)
異世界「トータス」の鉱物。摂氏50度ほどで融解し、タール状になる。また、タール状のときに摂氏100度で発火し、その熱は3000度に達する。南雲ハジメは融解したフラム鉱石を筒状の入れ物に詰め、焼夷手榴弾型のアーティファクトとして使用している。
シュタル鉱石 (しゅたるこうせき)
異世界「トータス」の鉱物。魔力を込めれば込めるほど耐久度が増すという特殊性を持っている。オルクス大迷宮において、南雲ハジメがユエの封印を解いた直後に現れた、巨大なサソリ型の魔物の外殻を構成している。
アザンチウム鉱石 (あざんちうむこうせき)
異世界「トータス」の鉱物。トータスで最も硬い鉱石とされている。南雲ハジメが武器やアイテムを錬成する際、安全性を上げたい部分などに高い確率で使用されている。特にミュウがバイク型のアーティファクト「シュタイフ」に乗りたいと言い出した際には、二輪用チャイルドシートのボディに使用することを検討していた。
クレジット
- 原作
-
白米 良
- キャラクター原案
-
たかやKi
- 構成協力
-
藤代 百
書誌情報
ありふれた職業で世界最強 14巻 オーバーラップ〈ガルドコミックス〉
第1巻
(2016-12-25発行、 978-4865541830)
第5巻
(2019-06-25発行、 978-4865545050)
第7巻
(2020-10-24発行、 978-4865547702)
第8巻
(2021-04-25発行、 978-4865548983)
第9巻
(2021-12-25発行、 978-4824000712)
第10巻
(2022-05-25発行、 978-4824002013)
第11巻
(2023-01-25発行、 978-4824003997)
第12巻
(2023-07-25発行、 978-4824005694)
第13巻
(2024-01-25発行、 978-4824007230)
第14巻
(2024-05-25発行、 978-4824008411)