聖なる花嫁の反乱

聖なる花嫁の反乱

少女は、神に仕える巫女である9番目の「花嫁」に選ばれた。その真の意味を知った幼なじみの青年は、少女を残酷な運命から救おうと奔走する。離れ離れになりながらも、過酷な戦乱の世で世界を巻き込む運命に立ち向かう2人の姿を描く王道のハイファンタジー。WEBコミックサイト「MiChao!」への掲載を経て、「FlexComixフレア」2010年5月号から2014年6月号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
聖なる花嫁の反乱
ふりがな
せいなるはなよめのはんらん
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

外界から閉ざされた楽園「エーレ」で生まれ育ったエリセ・イルマイアは、9番目の名誉ある「花嫁」に選ばれた。11年ごとに選ばれる花嫁は、聖殿に2年間勤めた後、晴れてその任を解かれ私生活に戻ることを許される。しかしエリセの幼なじみであるリオン・シュリエルは、務めを終えた9番目の花嫁は神に命を捧げる運命にあることを知り、聖殿からエリセを奪還し、エーレからの逃亡を図るが失敗。

罰として、戦乱により荒廃した外界への国外追放処分を受ける。この事実をのちに知ったエリセは、リオンを助けることを決意して聖殿を脱走し、彼女もまた外界へと旅立つのだった。2人は互いの無事を願いながら、未知の世界でさまざまな人物と出会い、神と花嫁の真の意味を知ることになる。

登場人物・キャラクター

エリセ・イルマイア (えりせいるまいあ)

エーレの代表として9番目の花嫁に選ばれた16歳の少女。世間知らずで自由奔放な性格。猪突猛進型のおてんば娘で、頭で考えるよりまず行動するタイプ。一方で人の命を大切にする心優しい面を持ち、人々から慕われる器を持つ。幼なじみのリオン・シュリエルが大好きで、幼い頃から1日としてリオンの顔を見ない日はなかったほど親しくしている。 9番目の花嫁の真の意味を知らないまま、自分のせいで追放されたリオンを探すため、外界へと旅立つ。

リオン・シュリエル (りおんしゅりえる)

エーレの族長の息子で、エリセ・イルマイアの幼なじみ。博識で心優しい、20歳の青年。女性と見まごうばかりの美青年で、一見すると弱々しいが、常に冷静で強い精神の持ち主。9番目の花嫁の行く末を知り、エリセを助けようと聖殿からの略奪を図るも失敗。花嫁をかどわかし、エーレの平和を脅かす危険を犯した罪により、一振りの短剣とパンのみを手に、目隠しされ、両手を縛られた状態で国外追放の刑を受ける。 左側脇腹にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

ザディアス

エーレの聖殿の執行官を務める20歳の青年。幼い頃、聖殿長のザキルに拾われ、9番目の花嫁を神に捧げるという使命のもと、聖殿で暮らしてきた。真面目な性格で、立場的にもシリアスな役回りを果たすはずが、エリセ・イルマイアの自由奔放な性格に手を焼き、何かと振り回されることが多い。聖殿から逃げたエリセを連れ戻すため、外界へと旅立つ。 ほどなくしてエリセと再会を果たすが、ひょんなことからシエナを託され、2人で旅をすることになる。右腕にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

マイラ

11年前、8番目の花嫁に選ばれた女性。聖殿で2年間の務めを果たし、街に戻った。その後は普通の女性と同じように結婚し、2人の子供にも恵まれ幸せに暮らしている。

ザキル

エーレの聖殿の前執行官であり、聖殿長を務める男性。赤ん坊だったザディアスにアンゲロスの神託があることを発見し、保護した。ザディアスの師であり、育ての親。外界を旅した際、トラブルに見舞われたザディアスを身を挺して守った結果、両腕を失ってしまう。

ヴァン

アナベルの兄で、外界で暮らす流れ者の青年。エリセ・イルマイアが花嫁であることを知り、世界の情勢や地理に詳しいことを主張してエリセに自分を雇うように持ち掛け、行動をともにすることになる。金にうるさいが処世術に長けており、広い人脈を駆使してエリセの保護のみならず、リオン・シュリエルの捜索・保護のために奔走する。 一般的に悪党に分類されるようなたちの悪い傭兵などに知り合いが多く、顔が広い。幼い頃に妹が描いた走り書きのメモを大切に持ち歩くほど妹思いだが、自分の身内のことに触れられるのを嫌う。

シエナ

9歳の戦災孤児の少女。外界の街で傭兵団に絡まれていたところをエリセ・イルマイアにより助けられる。ひょんなことからザディアスと2人きりで長きにわたり旅をすることになる。性格は控えめで大人しい。心の中で祖母に話しかけるとさまざまな答えを得ることができるという不思議な力がある。背中の左肩付近にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

アナエル

外界にある「ハオマ村」で護衛を務める、自分に厳しい正義感溢れる女性。1人で歩いていたエリセ・イルマイアを、花嫁を名乗る詐欺師と思い込む。傭兵を生業とする家庭で幼い頃から育ったため、女性でありながら勇敢で勇ましい。

緋の貴婦人 (ひのきふじん)

外界の街「アンシエル」の城の女主人で、旧帝国貴族の末裔であるモルウェン・ベルナエル・グランデル候夫人。美青年を探し求めて買い取っては、「人形」と呼び鞭や拷問具を使っていたぶり殺すことを繰り返している。自分に逆らうようなら容赦なく鞭で打ち、その苦しむ様子を見ては喜びを感じるという狂気の人物。城の地下牢には首のない死体が山となっていると噂され、近隣住民の間で怖れられている。 リオン・シュリエルを気に入って買い取るも、彼が自分の思い通りにならないことに腹を立て、常軌を逸した執着を見せるようになる。

ロリー

緋の貴婦人の城で侍女として働いている少女。麓にある村の出身だが、この仕事に就いて以降、城の外とは一切コンタクトを取ることができず、実家の家族とも連絡が取れない状態が続いている。精神的孤独と、慣れない仕事が理由で心が折れそうになっていたなかで、リオン・シュリエルを助け出すために城に忍び込んできたヴァンと知り合い、彼の手助けをすることになる。

バルト

60人の兵士で構成される「ブラックゴート傭兵隊」の隊長を務める男性で、やり手の隊長として有名。エリセ・イルマイアを花嫁と知り、金銭目的で捕らえることに成功する。その際、エリセと一緒にいたアニキ、マッジを殺そうとするが、エリセから、神に仕えるお付きの人間であると嘘の説明を受け、嘘であると察しはするものの、仕方なく生かして連れ歩くことになる。

アニキ、マッジ

外界の街「シャイタン」で、ヴァンからエリセ・イルマイア宛ての伝言を届けた2人組の男性。エリセが何者であるかは知らされていないが、金になるということだけはヴァンから聞いていたため、彼女を売るために行動をともにする。その道中でバルト率いる「ブラックゴート傭兵隊」に捕らえられて殺されそうになるが、エリセに助けられ、以降は彼女を「姐さん」と呼び慕うようになる。

グウィン

バルト隊長率いる「ブラックゴート傭兵隊」の小隊長を務める男性。エリセ・イルマイアを捕らえた後、彼女が逃げるかどうかを探る、監視の役割を任されていた。実際に逃げ出したエリセを捕らえるも、隊長を裏切って連れて逃げようと画策する。実は、外界で生き延びたエーレ人の子孫であり、かつては聖殿で執行官を務めていた人物で、花嫁が現れるのを信じて待ち続けていた。

シド

ヴァンの友人で、アイラの父親。人目を避けて暮らしている。鼻の頭付近に大きな傷跡がある。鍛冶職人の家庭に生まれ育ったが、刑吏の家庭に生まれた女性を愛して妻に迎えたことで、刑吏の仕事に就くこととなり、罪人の死刑執行や、遺体の処理を行っている。拷問と尋問の専門家とも言われ、拷問で弱った体の治療もこなす。人体に詳しく、薬の知識に関しては誰にも引けを取らない。 その豊富な知識を頼ってヴァンとともにやって来たリオン・シュリエルの瀕死の体を癒すために尽力する。足のふくらはぎ付近にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

アイラ

シドの12歳の娘。よく父親の手伝いをしているため、傷の手当てもこなすことができる。幼い頃に川で溺れかけたところをヴァンに助けられて以来、ヴァンとの交流が続いている。父親の職業を理由に忌み嫌われ、彼女と関わりを持とうとする者が誰もいないため、いつも孤独に苛まれ、暗い影と戦っている。そんななか、優しいリオン・シュリエルと出会い、慕うようになる。

聖殿長 (せいでんちょう)

外界で生き延びたエーレ人の末裔。エーレ人の末裔たちが集う「隠れ里」の聖殿で聖殿長を務めている64歳の男性。9番目の花嫁が現れることを信じ、待ち続けていた。左手の甲にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

シャノワール

「デュナメイス帝国」にとっては敵国にあたる「カサドゥヤ」の王子。左鎖骨付近にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。これが因果となり、「敵国の邪教のしるしを持つ」と、国内から不信の目を向けられている。ヴァンに依頼して花嫁を探すことで、自分に課せられた運命を解決しようと目論んでいる。

アナベル

ヴァンの妹。ヴァンがシャノワール王子の依頼を受けて花嫁を探している間、裏切りを働かないようにするための人質の意味も込め、シャノワール王子のもとに身を寄せている状態にある。のちにヴァンの消息と花嫁の噂を確認するため、シャノワール王子とともに「カサドゥヤ」を出て、港町「トロヤ」にやってくる。アナベル自身は兄を心から信じ、またシャノワール王子のことを慕っている。

キーラ・ドレイク (きーらどれいく)

七頭の大蛇隊に所属する有名な女性旗手。アナエルの友人であり、美しく正義感に溢れる優しい人物。エリセ・イルマイアが敵に囲まれた絶体絶命のピンチを、彼女の存在が大きく変え、エリセを救うことになる。その後もエリセと行動をともにする。

イアン・ゼラム (いあんぜらむ)

傭兵団「七頭の大蛇」の隊長を務める42歳の男性。外界の「ガラド地方」の小領主の息子として生まれた。青年の頃、地下牢で拷問を受けたことがきっかけとなり、「他人に支配されない力が欲しい」という思いを胸に、隊を率いるまでに上り詰めた。正義感が強く、いくら金を積まれても、悪人のために剣は取らないことを心に決めている。エリセ・イルマイアからの要望で彼女と行動をともにし、守ることになる。 左胸にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

アーロン・エルダミア (あーろんえるだみあ)

外界の港町「トロヤ」に住むエルダミア候の息子で女たらし。女装して偽の花嫁となったリオン・シュリエルを匿っている屋敷で、生活をともにしている。リオンの美しさに魅了され、心を奪われている。

アーサー・プロフェット (あーさーぷろふぇっと)

外界の港町「トロヤ」にいる浮浪者の男性。ヴァンとは夢の中で何度も会っていると語る不思議な人物。背中の右側にアンゲロスの神託をかたどったアザを持っている。

集団・組織

七頭の大蛇 (ななとうのどらごん)

イアン・ゼラム隊長が率いている最強の傭兵団。キーラ・ドレイクが女性でありながら旗手を務めていることでも有名。花嫁を我が物にしようと追っていたが、花嫁を捕らえようとする他の傭兵団とにらみ合いになった際、エリセ・イルマイアが七人衆のメダルを持っていたことで状況が一変。エリセ自らがこの傭兵団を雇うことを申し出たため、その後はエリセと行動をともにし、彼女を守る大切な役割を果たす存在となる。

場所

エーレ

エリセ・イルマイアや、リオン・シュリエルの生まれ育った国。「マグナダ」「セヌス」「ダブロナ」「ラベルス」「エブラナ」「東レギナ」「西レギナ」の7つの街から成っており、それぞれに同じ名前の一族が族長を中心として暮らしている。外界は戦乱で荒廃し、人が生きていくには厳しい世界となっているが、「アンゲロスの滝」で隔たったエーレは、穏やかな気候の、争いのない平和な国。 「閉ざされた楽園」とも言われている。森の王を信仰しており、11年に一度、花嫁を選び出して神に捧げている。もともとエーレは、外界のデュナメイス帝国の宗教儀式を司ってきた司祭の一族が住む土地だった。代々聖殿長や、100年昔に選ばれた9番目の花嫁もこのエーレの民から選出された。 しかし、その花嫁が逃げ、儀式が失敗に終わったため、神が怒り、帝国の中心は海に沈み、エーレの土地は残ったものの民は2つに分裂。一方は世界の果てへ赴き「楽園エーレ」を築いた。これがエリセやリオンが住んでいたエーレにあたる。残った民は迫害を怖れ移住を繰り返しながら作った「隠れ里」に移り住み、100年後に9番目の花嫁がもう一度姿を現すと信じ、待ち続けていた。 これがグウィンや聖殿長が暮らす「隠れ里のエーレ」である。

デュナメイス帝国 (でゅなめいすていこく)

エーレの前身ともいえる国。繁栄の約束と引き換えに8人の花嫁を神に捧げた。しかし9番目の花嫁が逃げ出したため儀式は失敗に終わり、神との約束を破ったことで、「燃える星」に焼かれ、海の底に沈んだと伝えられている。

聖殿 (せいでん)

花嫁が神への務めを果たす場所。楽園エーレと、エーレの民の「隠れ里」に存在する。エーレの聖殿には、枯れた巨大なご神木を中心として、8本の小さな生きた木の柱が存在する。代々8人の花嫁が2年間の務めを果たし神に認められると、もともと枯れていた小さな木の柱が芽吹いたと言われている。そのご神木が存在する「王の柱の間」を中心として、その周辺は迷路のようになっており、青空がのぞいたり、柱が続いたと思えば本物の木立であったりと森なのか建物なのかわからなくなるような不思議な構造になっている。 一方「隠れ里」の聖殿は、エーレのものとは異なる質素な造りの建物となっている。

その他キーワード

花嫁 (はなよめ)

森の王の花嫁として神に仕える巫女。11年ごとにエーレで一番綺麗な性格の良い少女を選出する。エーレに住む少女なら、誰もが憧れる名誉なもので、選ばれた花嫁に拒否する権利はない。花嫁に選ばれると、2年間巫女として聖殿での務めを果たすが、聖殿での実務をすべて取り仕切っている執行官が教育係となって儀式や舞、作法などを教わることになる。 花嫁の額にはその印となる暗黒の翼の使者をかたどった入れ墨が施される。森の王たる神に仕える花嫁であるがゆえに、聖殿に務める2年間は男子禁制となっており、執行官以外の男性には話しても触れてもならないと決められている。万が一花嫁に近付く男性がいれば、その男性はエーレを追放される罰を受けることになる。 また、噂では神の花嫁を奪おうとする男性は呪われ、神罰によって死んでしまうとも言われている。しかし一方で、花嫁を手にしたものは世界を手中にできるという言い伝えもある。祖先が現在のエーレに移住して100年余り、この国の気候が良く、作物が豊かに育ち、平和で戦乱の外界から隠されているのは代々花嫁が神に仕えてきたためと考えられている。 通常、花嫁は2年間の務めを終えると聖殿から街に戻り、幸せな結婚をするといわれているが、9番目の花嫁は、エーレの末永い繁栄と平和を約束する最後の花嫁として、2年後には自らその命を神に捧げなければならない。

森の王 (もりのおう)

世界と宇宙のすべてを支配する神。デュナメイス帝国時代からエーレで崇められている。どんな願いも叶えてくれる霊験あらたかな神だが、従わない者や裏切りには容赦なく罰を下す。優しく恵深い平和な神と崇められる一方で、敵には災いを与え、味方をも罰する苛酷な戦いの神という2つの面を持つ。

暗黒の翼の使者 (あんこくのつばさのししゃ)

神に捧げる最も神聖な花嫁の印として、花嫁の額に施される入れ墨の形。これに命が宿ると、中心部分に白い玉のようなものが浮かび上がると言われている。このしるしは、花嫁を儀式の日まで守り、傷つけようとするものに天罰を下すと伝えられている。

神の足跡 (かみのあしあと)

神がこの地を創造したとき、初めて地上に降りてこられた場所のこと。この世に人間が生まれる前から存在する聖地で、神の祝福で清められた天国のように豊かな土地であると伝えられており、神の足が地上に触れた時、天まで届く巨木が生えたと言われている。

忌み地 (いみち)

100年前、エーレと呼ばれていた土地。廃屋ばかりで、人の気配のない、薄気味悪い場所。100年前の9番目の花嫁の出身地ともいわれており、デュナメイス帝国が海底に沈んだ後も、エーレは水没を免れていたが、神の呪いにより、人が二度と住めない土地になってしまったと伝えられている。しかし一説には帝国の生き残りが逃げた花嫁を恨み、村を襲ったとも言われている。

アンゲロスの神託 (あんげろすのしんたく)

神の言葉や予言を記すための神聖で特別な文字。神の姿は人の目で見ることを許されていない神聖なものだったため、神像や絵姿の代わりに不思議な記号や図形を使い、神の存在や予言を表していた。この文字のアザを体に持つのは、神聖な者であり、神に花嫁を捧げる役割を担った選ばれし者の証であるとも言われている。

七人衆のメダル (しちにんしゅうのめだる)

エリセ・イルマイアがヴァンからもらったメダル。傭兵団「七頭の大蛇」において、「七人衆」と呼ばれた大きな功績を残した中心メンバーだけがその証として持っていたとされるもので、それを譲り受けるには合言葉が共に託されることが決められている。その証を持つ者に対して、「七頭の大蛇隊」は助力を惜しまないと約束されている。

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