あらすじ
異世界への召喚
バスケットボール部でキャプテンを務めている水樹晃一は、身長180センチのイケメンで友達も多く、女子からの人気も高い。受験シーズンを前に部活を引退したある日、晃一は自室に戻ると、ムラムラした体の疼(うず)きを治めるために自慰を始める。すると、「見つけたぞ」という大声を聞くと同時に、晃一は見知らぬ場所に移動していた。召喚術によって晃一が呼び出されたのは、異世界「ユステイル」の巨人の国「タイルダント」。そこは、晃一よりも遥かに大きな体を持った巨人たちが住まう国だった。そして、状況が飲み込めないまま困惑する晃一の目の前に、タイルダントの第一王子であるカイウス・ラオ・ビステイルが姿を現す。身長180センチの晃一より遥かに大きいカイウスは、晃一こそが運命の花嫁だとつぶやいて彼を抱え上げて自室のベッドに連れて行き、この状況を丁寧に説明し始める。次代の王として立場が約束されているカイウスは、古い掟により花嫁を娶(めと)る必要があった。しかし、結婚を目前に控えたある日、ユステイルの民と結ばれると大いなる災いが世界を覆うという神託が下されたことにより、婚約者との結婚が破談となってしまう。これにより、一時はすべてをあきらめなければならないのかと自らの人生に絶望しかけるものの、気を取り直したカイウスは、王の座も愛すべきものも必ずこの手でつかんでみせると決意。そして、失われた術式といわれている召喚術を使い、異世界から花嫁を召喚することを決めたのである。カイウスは、魔術師の塔にこもって異世界から晃一を見つけ出し、運命の花嫁として召喚したという経緯を説明すると、晃一に自分の花嫁となって子供を産み、共に国を治めて欲しいとせまる。そしてカイウスは晃一を熱っぽく見つめながら、優しく触れ始める。
獣人の国フォーバル
建国記念祭の直後、意識を失い倒れてしまった水樹晃一は、目を覚ましたところで、自分がカリナの毒に侵されてしまったことを知る。医師のマルトゥによれば、カリナの毒による倦怠感や発熱については薬で対処できるが、毒そのものを中和するにはカリナと対になるライサの果実が必要とのことだった。ライサは獣人の国「フォーバル」にしか生育しない貴重なもので、人工栽培されていない野生の果実ということもあり、どこにあるかもわからず手に入れるのは非常に難しい。さらにフォーバルと巨人の国「タイルダント」は友好国とは言い難い関係で、外交ルートで手に入れるにはかなりの困難が伴うことは容易に想像がついた。カイウス・ラオ・ビステイルは、この状況を察してマルトゥの制止も聞かず、自らがフォーバルに潜入することを決める。それを聞いた晃一は、自分もいっしょに連れて行って欲しいと懇願。病人を危険な場所に連れて行くことはできないと拒否するカイウスだったが、晃一のあまりの剣幕に圧され、結局二人は連れ立ってフォーバルに潜入することになる。その後、無事フォーバルへの入国を果たした晃一とカイウスは、なんとか日暮れ直前に宿に到着する。そんな中、必要以上に日没を気にするカイウスの様子に疑問を感じていた晃一は、自らの体調の変化をもってその理由を知ることになる。カリナの毒によって現れる変化の中には催淫効果があり、それは薬では解決することができないものだった。月の魔力を帯びたカリナは、その毒もまた魔力を帯びた特殊なものであり、月の満ち欠けに大きく影響を受けるため、陽が沈み、月が出るとそれに呼応して催淫効果が強く現れることになるのだ。カイウスは、晃一の症状を緩和させようと、一晩中性行為に励み、日中はライサの実のありかを知る者を探すため、商人をたずね歩く。月は日に日に満ちていき、体を休めることもできず、つねにカイウスと行動を共にしている晃一の体力は限界に近づいていた。そんな中、ライサの実のありかを知っているとカイウスに声をかけてくる者がいた。それは、見るからに怪しげな商人、ベリと護衛のバロ・バロウズだった。
世界の理
水樹晃一とカイウス・ラオ・ビステイルは、獣人の国「フォーバル」を脱し、無事に巨人の国「タイルダント」に戻って来た。晃一の体調も回復して一安心かと思いきや、バロ・バロウズが晃一たちの荷物の中に紛れて密入国を果たしたことで、再び大混乱が巻き起こる。バロを締めあげようとするカイウスだったが、これまでの行いをすべて謝ったということを理由に、晃一はバロを許すよう懇願。こうして、バロは医師のマルトゥのもとで助手として働かせてもらえることになった。その後、晃一はカイウスと甘い時間を過ごし、改めてカイウスから愛されていることを実感するが、約束の1か月を目の前にして、元の世界のことにも思いを馳せるようになる。晃一は、カイウスと一生離れ離れになることは考えられないと感じながらも、元の世界を捨てる覚悟もないことに悩み、タイルダントをもっと知りたいと思うようになっていた。そして、カイウスと共に町を見て回ったり、マルトゥからさまざまなことを教わるうちに、この世界についての見識を広げ、巨人族にとって異世界の花嫁がどれだけ重要な存在なのかを痛感するのだった。そんな中、カイウスは晃一に、これまでひた隠しにしてきた召喚術と、それが世界にもたらす影響に関する重要な情報を伝えようと決意する。晃一が最後の決断をする前にと、どこか苦痛な面持ちでカイウスが語り始めたのは、晃一にとっては聞き流すことができない、自分と母親の死にかかわる重要な事実だった。
メディアミックス
TVアニメ
2020年7月から8月にかけて、本作『巨人族の花嫁』のTVアニメ版『巨人族の花嫁』が、TOKYO MXで放送された。監督は石倉礼、キャラクターデザインは吉川真一が務めている。キャストは、水樹晃一を伊東健人、カイウス・ラオ・ビステイルを小野友樹が演じている。
登場人物・キャラクター
水樹 晃一 (みずき こういち)
バスケットボール部でキャプテンを務める男子学生。幼い頃に事故で父親を亡くし、2年前に母親の晃美を亡くした。その際、晃一の叔父からは、いっしょに暮らさないかと申し出を受けたが、自分の家にいたいと、その厚意に感謝しつつ断った。現在は晃美が残してくれたお金で生活している。晃美が亡くなったのは自分に原因があると考えており、母親の死を無駄にしないためにも、今後誰にも迷惑をかけることなく、立派な人間として生きて行くことを決意している。端正な顔立ちで、身長は180センチと高く、運動神経も抜群。それに加えて、男子なら誰もが羨む大きなイチモツを持つという四拍子そろったイケメンで、女子からは非常にモテる。現在特定の彼女はおらず、未だ童貞。受験を控え、部活も引退となった日に部屋で自慰をしていたところ、突然異世界「ユステイル」から召喚術により召喚されることとなる。呼び出された先は巨人の国「タイルダント」。次期王となる第一王子であるカイウス・ラオ・ビステイルの花嫁として召喚されたことを知り、子供を産んで欲しいという要求に断固拒否の姿勢を貫く。初めのうちは、巨人への畏怖によりカイウスとの性行為に恐怖心を抱くが、それに気づいたカイウスからの、同意を得ずに挿入はしないという誓いを受け入れる。その後、1か月間という制限時間を設定することを提案され、そのあいだに花嫁になる気にならなければ元の世界に帰すことを約束してもらった。当初は、巨人族の中での生活、そしてカイウスとの甘い時間に狼狽するが、少々強引にせまろうとするカイウスの、情熱的で優しく、真っ直ぐで誠実な姿に絆(ほだ)され、次第に彼を受け入れ始める。元の世界では大きかったはずの晃一の体のサイズは、タイルダント内では巨人族の10歳くらいの子供と同じ大きさであり、ユステイルにおいて絶滅した種族である小人になぞらえて、王宮の人々からは「小人の花嫁」と称されている。親友の志村陣とは、腐れ縁ながらもかけがえのない大切な友達として関係を築いていたため、なんの予告もなしに離れ離れになってしまったことを気にかけている。
カイウス・ラオ・ビステイル
異世界「ユステイル」にある巨人の国「タイルダント」の第一王子。本来なら次代の王として花嫁を娶る必要があり、メディナを妃に迎えることになっていたが、ユステイルの民と結ばれると大いなる災いが世界を覆うという神託を下されることになった。そのため、メディナとの婚約は破談。王の座も愛すべきものもあきらめたくないとあがいた結果、魔術師の手を借り、失われた術式といわれる召喚術を利用することを決断。異世界からの花嫁として水樹晃一を見つけ、召喚した。晃一には、自分の花嫁となって子供を産んで欲しいとせまるが、頑(かたく)なに拒絶されたため、1か月という期間を設けて理解を得るための努力を始める。そのうえでなお花嫁になる気持ちにならなければ、元の世界に帰すことを晃一に約束した。晃一に対しては、無理強いはしないことや、同意を得ずに挿入はしないと誓ったうえで、優しく、時には少々強引に性行為を求めて晃一の心も体も少しずつ自分のものにしていく。国内で騎士の位を持つ者の中でもっとも強く、身長250センチと巨人族の中でもひときわ体躯が大きい。豪快かつ情熱的でいて、愛情深く温厚で気は優しい。国民や周囲からの信頼も厚く、次代の王として大いに期待されている。獣人の国「フォーバル」では、カインスという偽名を使っており、同行した晃一にはマントで姿を隠させたうえで、妹夫婦の子供として扱っている。
メディナ
巨人の国「タイルダント」に住む巨人族、ローザス家の娘。明朗快活で、さっぱりした性格の持ち主。カイウス・ラオ・ビステイルの幼なじみであり、もともとは婚約者として王妃になるはずだった。しかし、カイウスが異世界「ユステイル」の民と結ばれると大いなる災いが世界を覆うという神託を受けた影響で、婚約が破談となったため、それ以来片田舎でひっそりと暮らしている。ある時、建国記念のパーティが開催され、王都からの招待状を受け取ったため、久しぶりにカイウスの前に姿を現した。カイウスとは、誰よりも長く共に過ごし、気の合う者同士としていい関係を築いており、今でもいい友人として互いを大切に思っている。カイウスから新たな花嫁候補として水樹晃一を紹介された際、表向きは友好的に接するが、予言さえなければカイウスの傍にいるのは自分のはずだったのにと、今でもカイウスに未練があるかのように振る舞った。しかし、実は二人の関係がなかなか進展しないという噂を聞きつけ、カイウスと晃一を焚きつけてやろうという気持ちで一芝居打っただけだった。王都では、国中から集まった巨人たちに、予言を聞くなり王子を捨てた最低な女と揶揄され、恥知らずと暴言を吐かれることもあり、嫌な思いをすることがわかっていながら、それでもカイウスと晃一に会いたい一心で王都にやって来た。実は最近新たな男性と婚約したばかり。相手はそんなメディナの悪評を聞いても気にも留めなかったという超イケメンで、メディナもそんな彼にゾッコン。
バロ・バロウズ
獣人の国「フォーバル」で暮らす、狼に似た獣人族の男性。ベリの護衛を務めている。用心深く、眼光が非常に鋭い。ベリがカイウス・ラオ・ビステイルに商談を持ち掛け、外に連れ出したスキにカイウスの部屋に忍び込み、荷を奪おうとした。しかし、部屋に残っていた水樹晃一がそれを阻止しようとした際、晃一が絶滅したはずの小人であることに気づき、荷物と共に連れ去った。徐々に晃一の様子がおかしくなったことで、発情期を迎えたものと勘違いし、手籠(てご)めにしようとしたが、カイウスによって阻止された。その後、カイウスからの指示でライサの実を取りに行くようにせまられ、身の危険を感じたため素直にそれに応じた。悪事に加担したことで、その後フォーバルにいられなくなったため、自国へ戻るカイウスの荷にひっそりと忍び込み、巨人の国「タイルダント」に侵入。その後見つかってカイウスを怒らせるが、これまでのすべての行いについて謝罪したことを理由に、晃一から許しを得られることとなり、マルトゥのもとで助手として働かせてもらえるようになった。お国柄もあり、何ごとも欲望のままに行動しがちで、問題行動も多いが、基本的に気のいい性格をしている。もともと雇用主の命令に従う流れ者。
ベリ
獣人の国「フォーバル」で暮らす、虎に似た獣人族の男性。バロ・バロウズに護衛を頼み、食料品の仕入れをしている商人。農家や猟師と交渉して肉や野菜、果実などを町に卸していると語っているが、実はかなりあこぎな商売を行っている。ライサの実を探している子連れの巨人がいるという噂を聞きつけ、カイウス・ラオ・ビステイルに声をかけた。自分からライサの実のある場所がわかると商談を持ち掛けたが、カイウスとその連れである水樹晃一を怪しみ、警戒している様子を見せた。その後、話し合いの末商談を成立させると、夜にカイウスを呼び出し、大勢の仲間を使ってだまし討ちにした。それと同時に、留守になるカイウスの部屋にバロを忍び込ませ、荷物を盗むよう命じて晃一を娼館に売るように指示した。
マルトゥ
巨人族の男性。巨人の国「タイルダント」の王宮で医師を務めている。建国記念祭のあと、体調に異変をきたした水樹晃一を診察し、カリナによる中毒と診断。解毒にはライサの実が必要であることを話した。その際、第一王子であるカイウス・ラオ・ビステイル自らが獣人の国「フォーバル」に乗り込もうとしたため、必死に引き止めようとしたが、叶わなかった。カイウスと晃一が帰国後、フォーバルからやって来た獣人族のバロ・バロウズを助手として傍に置かなければならなくなり、内心その扱いには困っている。その後もバロがいつまでも欲望のままに行動し、問題ばかり起こすため、巨人の文化や規律についての勉強会を開き、晃一も交えて教えることになる。
晃美
水樹晃一の母親。まだ晃一が幼い時に事故で夫を亡くして以来、女手一つで晃一を育てた。片親だからという理由で晃一に不自由な思いはさせたくないという一心で、亡き夫の分まで身を粉にして働き、何があっても晃一を守りたいと、晃一を心から大切にしていた。しかし、仕事で出張に向かう際、この出張が終わったらボーナスが出るからいっしょにおいしいものを食べに行こうと晃一と約束したにもかかわらず、出張先で倒れて、帰らぬ人となった。過労死だった。晃一には、社会人になるまで暮らしていくのに十分過ぎるほどの貯金を遺した。
志村 陣 (しむら じん)
水樹晃一の親友の男子学生。幼なじみであり腐れ縁で仲がよく、学校では同じバスケットボール部に所属している。漫画の貸し借りをしたり、勉強を晃一に教えてもらうなど、晃一が大好きで、いつも晃一にべったりくっついている。晃一の母親、晃美が不在時、晃一がカゼを悪化させて家で倒れた時は、病院まで晃一を担いで連れて行ったこともある。
晃一の叔父 (こういちのおじ)
晃美の弟。姉が亡くなった際、姉の息子である水樹晃一を心配し、いっしょに暮らすことを提案した。しかし、自分の家にいたいという晃一の気持ちを聞き入れ、保護責任者として陰ながらサポートすることに徹している。実は晃一の叔父自身の子供が三人おり、まだ幼いうえに祖母の介護も行っている。
場所
ユステイル
現代の地球とは時空の異なる異世界。かつて神々はこの大地に特定の概念を力の源とする生命を誕生させたと伝えられている。探求の概念からは耳長族が、欲望の概念からは獣人族が、繁栄の概念からは巨人族が誕生した。それぞれの民族は農耕を行いながら、さまざまなものを創造し、書や芸術に遊び、子を産み増やしながら種族を強くすることで、「ユステイル」そのものを活性化させることにつながっている。この地にはほかにも多種多様な種族が存在するが、中でも「小人」と呼ばれた種族は、遠い昔に絶滅したと伝えられており、召喚術によって呼び出された水樹晃一は、小人と同じサイズであることから、希少な存在として大切に扱われている。それぞれの種族は特徴こそ異なるものの、特定の概念を司る神の眷属(けんぞく)であるという点は共通している。そして、神とその眷属はつながった一つの命を共有する二つで一つの存在と考えられている。そのため眷属が、源となる概念に基づいた行動を取ることで、神が力を増し、神の力が増えれば従者全体の力も増える。力が増えれば生命力や気力、魔力が漲(みなぎ)り、力が減れば心身が衰え病が流行するというサイクルになっている。このサイクルにおいて、もっとも重要なのは王の存在。王は、神の代行者としてその力を借り受け、従者に分け与えるという重大な役割を担っている。そのため、どれだけの力を引き出せるかは王の力量と器の大きさによって、大きく左右されることになる。
タイルダント
異世界「ユステイル」にある巨人の国。巨人族は繁栄の概念を源としているため、この国では性交を積極的に行うことが推奨されている。愛し合う行為を人に見られることを厭(いと)わないため、国内では昼間でも、所かまわず愛し合う巨人たちの姿がそこかしこで見られる。最も大切にされているのは愛であり、つながり合うことは、巨人族にとって必要不可欠な営みとされているが、一方で夫婦にとって最も肝心なのは互いを愛し、高め合って共に前進するという考えを持ち、子をなすことだけがすべてではないと考えられている。しかし巨人たちにとって子供は、伴侶とならぶ繁栄の象徴となっている。巨人族はユステイルの中でもっとも頑強な肉体を持つが、繁殖力はそう高くないとされている。だが、国が性交を推奨するため子供の数はかなり多く、王宮では王家ゆかりの子供や、その乳兄妹を数多く目にすることができる。また古い神話では、男性が子供を産んだという言い伝えが存在する。「タイルダント」の王都は大きく四つのエリアに分かれており、中央広場は文字通り国の中心にあり、屋台なども出て賑やかで、人がもっとも多く集まる場所となっている。この国の民は皆祭りが大好き。食事に関しては、一工夫加えた料理が多く、種類も豊富。それは、素材をより多彩な味わい方で楽しめるよう、巨人族が長年模索した成果となっている。また国内では、巨人族だけでなくさまざまな種族を広く受け入れている。
フォーバル
異世界「ユステイル」にある獣人の国。獣人族は欲望の概念を源としているため、この国では欲望を貴び、すべてを力で奪い取るという考えを貴ぶ風潮にある。弱肉強食で、直情的な思考が当然とされるお国柄のため、ここで育った獣人たちにとって、法や礼節をわきまえ他者を尊重することは難しい。そのうえ、獣人族には学問を志す者はまずいないことから、他種族からは、よく言えば自然派、悪く言えば野蛮な者の集まりと揶揄されることもある。法を平気で破り、力ずくで己の欲望を満たそうとするケースが多いため、必然的に国内の治安は悪くなり、危険度はつねに高い状態となっている。また、巨人の国「タイルダント」と獣人の国「フォーバル」は友好国とは言い難く、その関係性は決してよいとは言えない状況にある。フォーバルにおける獣人族の食事は、より素材をダイレクトに味わうことができるシンプルな料理が主流となっている。
その他キーワード
カリナ
獣人の国「フォーバル」でのみ栽培される、月の魔力を帯びた特殊な果実。その実は非常に美味である反面、異世界「ユステイル」でもっとも頑強な肉体を持つ巨人族と、毒に対する強い抵抗力を持つ獣人族以外には有毒なものとされている。この実で作った白く甘いジュースは巨人族に好まれているが、巨人の国「タイルダント」にとってカリナは極めて希少な輸入品であり、王宮の食卓にもそうそう上がることのない高級品として扱われており、タイルダントの建国を祝う記念祭では、祝いの印にと大盤振る舞いされた。カリナの毒を摂取した際の主な症状は、発熱や倦怠感のほかに強い催淫効果が現れるとされている。発熱や倦怠感に関しては薬で緩和することができるが、催淫効果に関しては月の満ち欠けに大きく影響を受け、満月に近づくにつれて効果も強くなることが知られており、毒自体を完全に中和することでしかそれを解決することはできない。そのためには、フォーバルにのみ生息するライサの果実を摂取する必要がある。そもそも古い伝承によれば、ライサとカリナはもとは太陽と月を司る双子の神だったとされているが、何もかもが正反対の二人はケンカばかりしていた。これにより天空の太陽と月の運行が乱れ、ユステイル中に甚大な被害をもたらしたため、業を煮やしたほかの神々によってとうとう二人は植物へとその姿を変えられてしまう。しかし実のところ、二人の神は仲が悪かったわけではなく、愛し合っていたという裏事情があった。結ばれることが許されぬ間柄だったため、カリナはライサへの愛を忘れるため、さまざまな男たちと交わり、ライサは触れられないと知ってもなおカリナだけを愛し続けたと伝えられている。
ライサ
獣人の国「フォーバル」でのみ生育する、太陽の魔力を帯びた特殊な果実。その実には、カリナの実が持つ毒を中和する成分が含まれているが、この実自体の味はまずい。育てるのが困難とされているため、人工栽培がされず、存在するのは野生の果実のみとなっていて、この実を扱う商人はいない。そもそも古い伝承によれば、ライサとカリナはもとは太陽と月を司る双子の神だったとされている。だが、何もかもが正反対の二人はいつもケンカばかりしていた。これにより天空の太陽と月の運行が乱れ、異世界「ユステイル」中に甚大な被害をもたらしたため、業を煮やしたほかの神々によってとうとう二人は植物へとその姿を変えられてしまう。しかし実のところ、二人の神は仲が悪かったわけではなく、愛し合っていたという裏事情があった。結ばれることが許されぬ間柄だったため、カリナはライサへの愛を忘れるため、さまざまな男たちと交わり、ライサは触れられないと知ってもなおカリナだけを愛し続けたと伝えられている。
召喚術 (しょうかんじゅつ)
魔力で時空間を歪ませ、対象を強制的に術者のもとに手繰り寄せることができる技術。異世界「ユステイル」においては、すでに失われた術式とされている。対象が遠く、強く複雑なものほど術の発動は困難で、それに加えて膨大な魔力が必要となる。異世界は次元の壁を隔てた遠くに存在し、世界が自己の持つ因果や法則を乱さぬようほかの世界の干渉を避け、自らの有様を保とうとする性質を持つ。異世界の人間を召喚するということは、対象の世界に穴を穿(うが)ち、その一部を奪うことになり、傷ついた世界は自らの有様を保つために穿たれた穴を埋めようと働く。そのため、召喚者は術者と契約を結ばなければ1か月ほどで元の世界に引き戻されてしまう。この場合の契約とは、召喚者が術者の血あるいは精液を一定量体内に摂取した状態で、片方が契約の呪文を唱え、もう片方が同意することによって結ばれる。この契約がなされた場合、世界は代替方法として、召喚者が存在せずとも不都合がないように世界の記憶を書き換えることになる。ただし書き換えは、あくまで穴をふさぐための最も負荷の少ない方法が選択されるため、すでに死んだ者が蘇るなど、追加の書き換えが発生する事態は起こりえない。
書誌情報
巨人族の花嫁 7巻 彗星社〈Glanz BLcomics〉
(2020-03-17発行、 978-4434268397)
第3巻
(2021-05-18発行、 978-4434285868)
第5巻
(2023-03-17発行、 978-4434313783)
第6巻
(2023-12-18発行、 978-4434326905)
第7巻
(2024-08-16発行、 978-4434339608)