虹、甘えてよ。

虹、甘えてよ。

青木琴美が、長期連載となった『カノジョは嘘を愛しすぎてる』完結から5ヵ月後にスタートした作品。県立若田部高等学校を舞台に、性犯罪被害に遭って男性恐怖症になってしまった山城虹と、安藤岳にひそかな思いを抱いているゲイの長谷川日和、そして虹と日和が付き合ってるとカンちがいし、虹への切ない思いを胸に抱く岳。三人三様それぞれの立場と思いが交錯し、複雑に絡み合う恋愛ミステリー。小学館「Cheese!」2017年9月号から2020年10月号にかけて掲載の作品。コミックス第1巻と第9巻の巻末には、同作者の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の番外編が収録されている。「Cheese!」2018年5月号に付録として『虹、甘えてよ。』のドラマCDが付属され、安藤岳を岡本信彦、山城虹を内田真礼が演じている。

正式名称
虹、甘えてよ。
ふりがな
にじ あまえてよ
作者
ジャンル
推理・ミステリー
 
恋愛
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊9巻
関連商品
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ヒロインが遭遇した性犯罪事件

県立若田部高校の周辺エリアでは過去にも性犯罪事件が発生し、三件の被害届が出されていた。その三件の事件は共に、髪の長い女の子がガムテープで目隠しをされ、暴行を振るわれており、同一犯の犯行である可能性が極めて高いと考えられているが、犯人は捕まっていない。犯人は被害者を後ろから抱きすくめ、口をふさいで人気のない路地へと引きずり込むと、最初に靴を脱がせ、靴下を脱がせてから下着を脱がせるという決まったルーティンがあることが判明している。山城虹も部活帰りに同様の被害に遭い、学校近くの人気のない場所で暴力を振るわれたが、レイプには至らなかった。虹は犯人の手に嚙み付いて応戦したが、この事件で心身共にダメージを受けて死を考えるようになり、男性に対する恐怖心が強くなった。

ゲイであることをカミングアウト

長谷川日和は安藤岳にひそかな思いを抱いている。初めて岳と出会ったのは、中学時代の柔道の大会の決勝戦だった。開始5秒で投げられて負けてしまうが、岳の凛とした姿に日和は心を奪われる。高校進学後も岳と共に柔道部に所属している。そんな中、日和は岳への感情を抑えきれなくなり、自分がゲイであることを自覚する。その事実は信頼する虹にだけ打ち明けるが、カミングアウトする姿を偶然目撃した岳から、虹が日和の告白を受け入れて交際を始めたと誤解されてしまう。日和は自分がゲイであることを岳に知られて気持ち悪がられることを恐れ、虹との関係を誤解されたままなら、自分がゲイだと気づかれることなく岳といっしょにいることができると考えていた。そして虹に了承を得たうえで、その関係性を利用している。

なかよし三人組の三角関係

虹と岳、日和はクラスメートで同じ柔道部に所属している。学校でもいっしょに過ごすことが多く、とても仲がいい。しかし岳に思いを寄せる日和は、その気持ちを隠すために虹との交際を隠れ蓑にしており、虹に思いを寄せる岳は日和との関係を大切にしたいとの思いから、虹への思いを隠しながら二人を応援している。虹は自分を信じてゲイであることをカミングアウトしてくれた日和の気持ちを大切にし、表向きは日和と付き合っているように振る舞うことを了承した。お互いを思いやってつくられた三角関係は、周囲も巻き込んで複雑に絡み合っていく。その後、岳は虹への思いを抑えることができなくなり、一方の虹も岳の気持ちを自覚する。そして、日和も現状に耐えきれずにゲイであることを岳に打ち明けるが、日和を狙っていた数学教師の桐生の出現で、三角関係の歯車が狂っていく。

登場人物・キャラクター

山城 虹 (やましろ にじ)

県立若田部高等学校に通う3年生の女子。同じクラスの安藤岳、長谷川日和と仲がよく、いつも三人で行動している。柔道部に所属しており、副部長を務めている。「柔道部の姫」を自称しているが、実際は腕っぷしの強さから「クマ」のような扱いを受けている。元気オーラを発する明るい性格で、勝気で男勝りな一面がある。ある日の部活帰りに、パーカーを着た男性による性犯罪被害に遭ってからは、それがトラウマとなり、男性を基本的に受けつけない体質になってしまう。事件後も以前の自分を演じようとしているが、心が恐怖で支配されてしまい、周囲の言動に過剰反応するなど自分自身をコントロールできない状態に思い悩むようになる。日和とは表向きは交際しているフリをしているが、実は日和がゲイであることを隠すためのウソで、山城虹自身の気持ちは岳に向いているが、なかなか一歩を踏み出すことはできないでいる。

安藤 岳 (あんどう がく)

県立若田部高等学校に通う3年生の男子。眼鏡をかけている。山城虹、長谷川日和と仲がよく、いつも三人で行動している。柔道部に所属しており、部長を務めている。虹に思いを寄せているが、日和が虹にカミングアウトする姿を見て、二人が交際を始めたと思い込んでいた。ある日の部活帰りに、虹が性犯罪被害に遭うが、自分が意地を張って虹を自宅まで送らなかったことが原因だと、自責の念に駆られている。虹のことを何よりも大切に思って心配しているが、素直になれない性格が災いして自分の気持ちをうまく伝えることができずにいる。実は中学時代はかなりの不良で、今でも一人で八人の高校生を病院送りにした伝説が語り継がれている。何度も警察に捕まった経験があり、親しい警察官も多い。以前から柔道の実力者と知られていたが、あまりにも強すぎて周囲から怖がられる存在だった。そのため、ガラの悪い連中から目を付けられ、よくケンカを売られている。

長谷川 日和 (はせがわ ひより)

県立若田部高等学校に通う3年生の男子。柔道部に所属している。山城虹、安藤岳と仲がよく、いつも三人で行動している。実は岳にひそかな思いを寄せており、その気持ちを自覚したことで自分がゲイだと認識する。岳に嫌われたくないという強い思いから、ゲイであることを虹にだけカミングアウトしている。そのカミングアウトする姿を目撃した岳から、長谷川日和の告白を虹が受け入れたとカンちがいされる。それを逆手に取って虹との交際を隠れ蓑にして、自分がゲイであるという事実を隠しながら岳といっしょにいたいと考えている。のちに、岳に自分の気持ちを伝えるが、結果的に居場所を失って自分を追いつめることになり、数学教師の桐生と関係を持つことになる。

書誌情報

虹、甘えてよ。 9巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2017-10-26発行、 978-4091396884)

第2巻

(2018-02-26発行、 978-4091398772)

第3巻

(2018-06-26発行、 978-4098700790)

第4巻

(2018-10-26発行、 978-4098702541)

第5巻

(2019-02-26発行、 978-4098703937)

第6巻

(2019-06-26発行、 978-4098704903)

第7巻

(2019-10-25発行、 978-4098706556)

第8巻

(2020-04-24発行、 978-4098708079)

第9巻

(2020-11-26発行、 978-4098710744)

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