吸血鬼の王を決める壮大な戦い
本作『血と灰の女王』は、「真祖」と呼ばれるヴァンパイア同士の抗争が主なテーマとなっている。真祖たちはヴァンパイアに変化した人間たちを率いて互いに殺し合い、最後まで生き残ったヴァンパイアに「王」として君臨する権利が与えられる。ヴァンパイア同士の戦争は再三行われており、もっとも古い戦争は2000年前に発生したイタリアでの戦いだった。戦争が始まる際には世界のどこかにある火山が噴火するシステムで、今回は富士山が噴火したため戦場は日本に限定されている。特別な吸血鬼の一人であるドミノ・サザーランドは、人間の佐神善や狩野京児といった下僕を率いて、元国会議員の日ノ元士郎や巧みな話術とパフォーマンスで人間の信奉者を集めようとするエデン・ワイスなど、強大な力を持つ真祖たちに立ち向かう。
火山灰によって得られる超人的な能力
真祖同士の争いの引き金となる火山の噴火は、特殊な火山灰を周囲に撒き散らすという特徴がある。この灰を浴びた人間はヴァンパイアに身体が変質し、強靭な身体能力と強い闘争心が宿るとされている。富士山の噴火後は、関東地方でかつて人間だったヴァンパイアの手による凄惨な事件が至るところで発生している。また、ヴァンパイア化しても正しい心を失わなかった善は、ドミノの傘下に入りながらも、自らの力を人を守るために使うことを決意している。ドミノや京児は表向きはその思想を軽視しつつも、彼の信念を認めている。なお、善はヴァンパイアが持つ「遺灰物」と呼ばれる器官を食べることで、その持ち主の能力を模倣でき、七原健は自分自身や触れた者を加速させることができるなど、火山灰を浴びた一部の人間は、ほかのヴァンパイアにはない特殊な能力を得る場合もある。さらに、成長するにつれて「D・ナイト」と呼ばれる必殺技を習得できるようになる。
主人公を支える頼もしい仲間たち
当初ドミノは、傘下のヴァンパイアが善や京児しかおらず、ヴァンパイアによる一大組織「燦然党」を束ねている士郎に比べると圧倒的に戦力が不足していた。だが、燦然党の非道な振る舞いに嫌気が差してドミノ側に寝返った健や、士郎の娘でありながら父親の打倒を志す明など、頼りになるメンバーが加入する。さらに「創血式」と呼ばれる儀式でヴァンパイアとしての力を高め、やがて燦然党にも匹敵する力を得る。なお、善と京児は対照的な性格から当初はウマが合わず、温厚な善が京児に「あなたが好きではない」と直接告げるほどだった。しかし破天荒ながら京児に信頼が置けることを知り、自分の親友で彼の弟でもある京介を大切に思っていたことを察すると京児を見直し、やがて相棒として信頼を築くようになる。
登場人物・キャラクター
ドミノ・サザーランド
「真祖」と呼ばれる、特別な吸血鬼の一人。見た目は若い少女ながら、300年以上もの時を生きている。ほかの吸血鬼を凌駕する力を持ち、佐神善が苦戦を強いられた吸血鬼を、本気を出さないままに圧倒した。自らの力に絶対の自信を持ち、誰に対しても高圧的な態度で振る舞う。配下に加えた吸血鬼を「下僕」と呼ぶなど、傍若無人な性格をしている。一方、自らの立場と力にふさわしくあるための努力と誇りを重んじているため、最初の下僕である狩野京介の兄・狩野京児は、その気高さに強く惹かれている。真祖の吸血鬼同士の争いに参加し、ほかの真祖を負かすことで吸血鬼のトップに立つことをもくろんでいる。そのための戦力として、富士山の火山灰を浴びたことで吸血鬼になった善を仲間に引き入れる。
佐神 善 (さがみ ぜん)
とある高校に通う男子。年齢は17歳。富士山の火山灰を浴びたことで、吸血鬼に変身する力を身につけた。そんな中、親友の狩野京介を悪しき心を持つ吸血鬼に惨殺され、怒りのあまり初の変身を果たし、その様子を目撃したドミノ・サザーランドから仲間に勧誘される。心優しい性格で、ドミノや狩野京介の兄・狩野京児からは「甘い」と評されつつも、その人柄に好感を抱かれている。他者を傷つけることを嫌っているが、自分の大切なものを奪おうとする相手には容赦をしない。のちに、戦いの中で倒した相手の能力や装備をコピーする「模倣」の能力を修得する。ドミノからは、京児に続いて二番目の仲間として認められたことから「下僕二号」と呼ばれている。
書誌情報
血と灰の女王 22巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2017-05-12発行、 978-4091276032)
第2巻
(2017-07-12発行、 978-4091276520)
第3巻
(2017-11-15発行、 978-4091278166)
第4巻
(2018-03-19発行、 978-4091282163)
第5巻
(2018-09-19発行、 978-4091285300)
第6巻
(2019-02-19発行、 978-4091288400)
第7巻
(2019-05-10発行、 978-4091291967)
第8巻
(2019-09-19発行、 978-4091294029)
第9巻
(2020-01-17発行、 978-4091295378)
第10巻
(2020-03-19発行、 978-4098500420)
第11巻
(2020-08-19発行、 978-4098502257)
第12巻
(2021-01-19発行、 978-4098504350)
第13巻
(2021-05-19発行、 978-4098505807)
第14巻
(2021-09-16発行、 978-4098507054)
第15巻
(2021-12-10発行、 978-4098508310)
第16巻
(2022-04-19発行、 978-4098510818)
第17巻
(2022-08-19発行、 978-4098512430)
第18巻
(2022-12-12発行、 978-4098514465)
第19巻
(2023-06-12発行、 978-4098520046)
第20巻
(2023-12-12発行、 978-4098530557)
第21巻
(2024-03-12発行、 978-4098531509)
第22巻
(2024-07-11発行、 978-4098534388)