あらすじ
第1巻
キャバレー「蝶々」の用心棒をしている土方彪は、ある日、町でチンピラにいじめられているヒメカを助けた事で、「蝶々」でいっしょに暮らすようになった。彪は函館に出没する妖人と呼ばれる怪物達と、夜な夜な戦いを繰り広げていたが、ある日、突如として現れた「ヒメガミ」を名乗る覆面の女性に救われ、あこがれを抱くようになる。彼女の正体は実はヒメカなのだが、ヒメカはその正体を隠したまま、密かに彪を支援するようになる。その戦いの中で、ヒメカと彪は隻腕の妖人を二度にわたり撃退する。
第2巻
函館の近くの南無内(ナンムナイ)という小さな村が妖人によって襲われ、占拠されてしまう。妖人達は「壬生狼を出せ」と言って、土方彪を村に誘い寄せようとする。「オーウェン・パウエル大尉」と呼ばれる妖人が率いる「虐殺(マサカー)中隊」の集団は強敵であったが、加勢に現れた三人の正体不明のヒメガミの協力によって、これを撃破する事に成功する。
第3巻
函館の歓楽街である蓬莱町に新たにできた娼館「黒後家楼」のために、キャバレー「蝶々」は閑古鳥状態となり、蝶々の従業員の一人、メラニーが偵察のために黒後家楼に潜入する。メラニーを心配した土方彪とヒメカは黒後家楼へ向かい、新撰組の生き残りである永倉新八や原田佐之助らと出会う。そして同時に、妖人、ゴワイヨンによる、人々を半妖人に変えて函館を壊滅させる計画を察知する。しかし、半妖人が増えすぎたために「新撰組の封印」が解け、彪はその力と精神を暴走させてしまう。
第4巻
暴走した土方彪はヒメガミ達と戦闘寸前にまでなるが、ヒメカの説得によって自分を取り戻し、和解する。永倉新八、原田佐之助、警官の倉田などと共闘して半妖人達と戦うヒメガミらと彪は、その戦いの中でゴワイヨンから「新撰組の封印」の本当の秘密について聞かされる。彪はヒメカと協力し、そして師匠である沖田総司から受け継いだ刀によって、巨大化して大暴れするゴワイヨンを打ち破る。
第5巻
ゴワイヨンを倒した事で訪れた束の間の平和は、あっという間に破られる。ヒメガミの能力を奪い取る力を持った女妖人の襲撃によってヒメガミ達は壊滅し、ヒメカも連れ去られてしまう。新撰組の元隊士達や倉田らと共にヒメカの奪回に向かった土方彪は、隻腕の妖人に傷を負わされて虫の息の状態のヒメカをかろうじて救出する。ヒメカは、沖田総司がその身に残った力を分け与えた事で、かろうじて一命を取り留め、ヒメガミとして復帰。そして彪とヒメカは女妖人を打倒するのであった。
登場人物・キャラクター
土方 彪 (ひじかた ひょう)
土方歳三の遺児である剣客の少女。沖田総司に剣術を少しだけ教わっているが、持ち方と振り方くらいしか身につけていないので、技は荒く、戦闘能力はあまり高くない。背中に刺青のような痣(あざ)があるが、実際には刺青ではなく、妖人の力を封じた新撰組の封印であり、その痣は函館にいる妖人の数に対応し、数と広がりが変化する。 函館では「壬生狼」とあだ名され、また妖人からは「妖人狩り」と呼ばれる事もある。ヒメカから向けられる恋愛感情のような態度に対し、まんざらでもないという態度を取っている。
ヒメカ
土方彪が函館で出会い、「蝶々」に預けた若い女性。普段は蝶々で踊り子をしているが、その正体はヒメガミの一人。彪からは彼女個人の呼称としても「ヒメガミ」と呼ばれている。ヒメガミに変身すると、身体に密着したボンデージのような奇妙な全身衣装に身をまとい、戦闘能力が劇的に向上する。彪に対して恋愛感情のようなそぶりをしばしば見せている。
倉田 (くらた)
函館の警官達の指導者である若き警部長。素性を隠しているが、「黒後家楼」に潜入した事がきっかけで、女性である事が判明する。土方彪と互角に渡り合ったり、惨殺死体から下手人の力量を分析したりと、剣の腕は一流。正義感が強く、一般人の犠牲者が出ると憤りを隠さない。
沖田 総司 (おきた そうじ)
元「新撰組」幹部の男性。生前、ごく短い期間であるが土方彪に剣術を教えていた。人間の身としてはすでに死亡しており、現在は亡霊のような状態で、戦闘能力は持たない。死後、ヒメガミの指導者となって、ヒメカらの教育に努めた。実在の人物、沖田総司がモデル。
永倉 新八 (ながくら しんぱち)
元「新撰組」幹部の中年男性。「黒後家楼」の用心棒をしていたが、沖田総司からの伝言を土方彪に伝えるため、函館にやって来る。新撰組でも屈指の実力を持つ剣客であり、黒後家楼における戦いでは多くの妖人を倒した。実在の人物、永倉新八がモデル。
原田 佐之助 (はらだ さのすけ)
元「新撰組」幹部の中年男性。戊辰戦争において死亡したと思われていたが、実は生きており、「黒後家楼」の常連客になっていたところで、旧知の永倉新八と再会する。メラニーとは馴染みの間柄であるが、初心な性格である事から肉体関係は持っていない。実在の人物、原田佐之助がモデル。
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
元「新撰組」副長を務めた男性。土方彪の父親。函館戦争において戦死しており、すでに故人である。その墓は五稜郭の地下に密かに隠されている。彪の先代の「新撰組の封印」の所有者であり、彼自身は、京都で新撰組として活動していた頃、その手で斬り殺した相手からその封印を受け継いだ。実在の人物、土方歳三がモデル。
ゴワイヨン
若い女性の姿をした妖人。フランス領事館の副領事をしている。副領事として表向きの舞台に出る時は男装している。妖人達の中ではかなり大きなグループの指導者を務めているが、ほかの妖人グループに対して友好的ではなく、襲撃を行う事などもある。黒後家楼を開いて、人間達を半妖人に変えるべく策謀する。正体は巨人のような姿をしている。
隻腕の妖人 (せきわんのようじん)
片腕が刀のようになっている妖人。その腕をヒメガミ(ヒメカ)によって斬り落とされ、以後執念深くヒメガミをつけ狙う。女妖人と手を組み、女妖人によって囚われの身となっていたヒメカを襲って、致命的な深手を負わせたが、救出にやって来た土方彪に討たれた。
女妖人 (おんなようじん)
若い女性の姿をした妖人。ヒメガミの変身能力を奪い取る能力を持つ。奪った化身に自らが変じる事もできるし、そのヒメガミに固有の技などを使う事もできる。最後は自分が盗んだヒメカの技を破られ、土方彪の手によって討ち取られた。
集団・組織
ヒメガミ
妖人と戦う覆面の戦士達。沖田総司が率いており、ヒメカ、アイカ、キリカ、ランカの四人がいる。妖人との違いとしては、人間形態に戻る変身ができるという事があげられる。しかしその能力の本質は、実は妖人のそれと同じものである。
新撰組 (しんせんぐみ)
幕末の京都で活動していた治安組織。佐幕派に所属していて、京都で治安維持のための活動をしているというのが表の顔であった。実は裏の顔としては、妖人との戦いを繰り広げる集団であった。「壬生狼」という異名で呼ばれる事もある。
場所
函館 (はこだて)
土方彪らが暮らしている国際都市。戊辰戦争において最後の戦いとなる函館戦争の終結後、蝦夷の資源を求めて諸外国から開拓民が殺到して、外国人居留地が誕生した。かつては寂れた漁村だったが、無国籍都市の様相を呈する巨大都市になった。函館戦争で使われた五稜郭は現在も函館で見る事ができる。
蝶々 (ちょうちょう)
函館の共同居住区にあるキャバレー。店の正面の入り口には「Butterfly」という看板がある。土方彪は普段は男装して、ここで用心棒として働いている。女性達が際どい服装で踊るのを鑑賞して楽しむサービスが売りだが、売買春はご法度となっている。店の主人は彪からは「おかみさん」と呼ばれているが、本人は「マダム」と名乗っている。
黒後家楼 (くろごけろう)
函館の歓楽街である蓬莱町に作られた娼館。「ブラックウィドウ」とも呼ばれている。客をもてなす女は全員が異国人で、しかも料金が破格という事もあり、大評判になっている。だが、その実態は妖人、ゴワイヨンの手による、客を半妖人に変えて函館を壊滅させる事を目的とした施設である。
その他キーワード
妖人 (ようじん)
元人間の怪物達。ほとんどが人間に近い形状をしているが、巨大であったり、腕が何本もあったりなど、人間とは異なるさまざまな特徴を持つ。殺せば、人間に戻す事ができる。人間から妖人を生み出すには儀式などを伴い、手間と時間がかかる。また、一度に大量に生み出す事もできない。
半妖人 (はんようじん)
妖人に見た目はそっくりな怪物。理性を失った元人間で、人間を襲うなどの共通点はあるが、通常の妖人と違って、元の人間に戻す事ができる、というのが最大の相違点である。元を辿ればゴワイヨンによって生み出された者達なので、ゴワイヨンを倒せばすべてが人間に戻れる。
新撰組の封印 (しんせんぐみのふういん)
人を妖人に変えるための力を封じ込めている力。土方彪は、五稜郭の中にある「土方歳三」の墓が「新撰組の封印」だと教えられていたが、実際には、彪の背中にある痣(あざ)のようなものこそが封印されたものである。封印は人から人へと受け継がれる仕組みになっており、彪は父親である土方歳三からこれを受け継いだ。