あらすじ
ホールスタッフ編
ある理由から多額のお金が必要となった白浜和美は、郊外にあるリゾートレストラン、緑心庵でのアルバイトに応募した。和美は同じくアルバイトとしてやって来た黒嶺ユメに、簡単な業務であるにもかかわらず時給1万5000円という好待遇には裏があるのではないかと、ユメに協力関係になるよう持ちかける。しかし、ユメは和美の不真面目な勤務態度から、その話に取り合わずに馬鹿馬鹿しいと一蹴する。しかしその夜から和美は、森の中で散歩している最中に不気味な女を目撃する不思議な夢を見ては、誰かに呼び起こされる日々を送るようになる。そんな中、和美は緑心庵のオーナーから会わないようにと言われている、オーナーの妻らしい姿を目撃し、驚愕(きょうがく)するのだった。
ビル警備員編
白浜和美は、黒嶺ユメが中学生の頃の同級生だったことを思い出す。それをきっかけに、二人は裏バイターとしてバディを組むことにする。バディとしての最初の仕事は、黒黒ビルの夜間警備員。初日からすべてを任されることになったユメと和美は、前任の西本から言われていたとおり、すべての階の見回りを始める。特に念入りに確認するように言われた7階に近づくにつれて、ユメは危険の予兆を知らせる臭いを感じ始めていた。尻込みするユメを置いて7階へ足を踏み入れた和美は、空きフロアのはずの部屋で、残業していたブラック企業の過度なパワハラをやめさせようとする。しかし、ユメによって正気に引き戻された和美は、7階で見たすべての出来事が幻覚だったことを知る。そして翌日、二人は西本が昨夜自殺したことを伝えられる。
個人向け配送業編
ある団体から鞄を運ぶ依頼を受けた白浜和美と黒嶺ユメは、用意された軽自動車を使って指定場所へと向かう。小旅行気分の二人だが、その道すがらユメは周囲の視線が自分たちに集まっているような異様な違和感を覚え始める。その日の夜、道中の安ホテルに泊まった二人の部屋に、和美たちを追いかけていた女性が侵入する。翌朝、部屋から鞄が消えていることに慌てる二人が目にしたのは、一回り大きくなった鞄と、その傍で顔をすりおろして息絶えている女性の姿だった。薄気味悪い感覚を抱きながらも仕事を続行することを決めた和美たちは、地元を通ることになり立ち寄ることにする。しかしそこでも和美たちは、中学生時代の二人を知る教師だと名乗る女性に鞄を奪われてしまう。
治験編
感謝を忘れない病院で1週間の治験に臨んだ白浜和美と黒嶺ユメは、同じく治験に参加している崎村ゆう、石見絵里となかよくなる。制約の多い不自由な生活を強いられる中、1週間で300万円という報酬が貰(もら)えると盛り上がる四人は、やがて求人欄に追記されていた「扉を開けた人間には追加で300万円を支払う」という表記に気づく。やはりこの治験はなにか怪しい実験なのではないかと訝(いぶか)しむが、なにかあった際には互いに助け合うことを約束する。しかしその翌日、起床した絵里は明らかに正気を失い、「扉を開けた」と告げる。和美とユメは、絵里を心配してその後の様子を観察していた直後、絵里がその場にいたことも、自分たちがなにをしていたのかさえも完全に忘れていた。
人形供養編
感謝を忘れない病院での治験終了後、白浜和美と黒嶺ユメは葬儀社博愛ノココロでの人形供養の裏バイトに応募していた。その仕事内容は、全国から人形を集めて供養してリユースするというものだったが、部門長の黒柳によって、和美たちは同じく裏バイトに参加していたシャーロット天ノ崎、そしてただならぬ雰囲気のフランス人形と共に一戸建て住宅に監禁されてしまう。人間不信で人形愛好家のシャーロットは、フランス人形を抱いて2階の一室に閉じこもってしまうが、その直後から、動かないはずのフランス人形が尋常でない動きを見せ始める。やがてシャーロットは衰弱し、意識を失ってしまう。
自然保護監視員編
馬岡のもとで白銀神山の自然保護監視員の裏バイトを始めた白浜和美と黒嶺ユメは、立ち入り禁止区域の調査を進めていた。山岳信仰が盛んな白銀神山では、リゾートホテル「ホテルHAKUGIN」が建った今でも地元住民による反対運動が続いていた。調査中、馬岡と懇意にしている地元住民たちと会話した和美たちは、ホテルHAKUGINの建設中に大きな雪崩が起きた際、ホテル関係者が大勢変死していたことを聞かされた。その後、和美たちは吹雪の中で、得体の知れないなにかが自分たちを追いかけている気配を感じ、偶然遭難していた少女のミキもつれて山小屋へと逃げ込む。そして二人は、得体の知れないなにかを撮影した画像データと引き換えに、この調査の本当の目的を馬岡に聞き質(ただ)すが、馬岡の説明は理解しがたいものだった。
助勤巫女編
新年、福音神社の助勤巫女(みこ)として働くことになった白浜和美と黒嶺ユメは、参拝者たちの様子に驚愕していた。賽銭(さいせん)箱には札束が投げ入れられ、高額な縁起物も次々と売れていく。福音神社のある離島、福音島の島民は有名企業の社長や会長など資産家ぞろいで、福音神社の御利益で大成功を収めているため、利益の一部を福ノ神に返しているのだという。自分たちとかけ離れた金銭感覚に戸惑いを覚えつつも仕事を進める中で、和美たちと共に助勤巫女の未帆が行方不明となってしまう。島民たちの新年会の手伝いに参加したあと、神隠しに遭ったのではないかと説明される中、未帆の友人、真琴だけは必死の捜索を続けていた。そして真琴と和美は、福音神社の境内にある井戸の中から血だらけの未帆が姿を現す夢を見る。
水族館スタッフ編
白浜和美が赤川から次に紹介された裏バイトは、水族館MAOのバックヤードの機械管理と、バックヤードツアーの参加者の受付業務だった。至極簡単な裏バイトではあるものの、かつて別の裏バイトで知り合った篠月橙が参加すると知り、和美は不安を覚える。しかし各自がなんのために裏バイトに従事しているのかの話をしている中で、黒嶺ユメは橙の言葉をきっかけに、危険の予兆を知らせる臭いがバックヤードに鳴り響いている音だと気づく。耳栓をして対策をしたユメたちが仕事をこなす中、水族館MAOを訪れた女性客が、水槽の中で不思議なものを目にしていた。
学校用務員編
花角中学校で住み込みの用務員として働くことになった白浜和美と黒嶺ユメは、就任早々、教師の安居から厄除けの儀式だと称して仏壇に髪を捧げさせられる。特に危険のない仕事のはずなのにといぶかしがる二人だったが、その日生徒の明里から、これまでの用務員が全員1週間以内に辞職していることを知らされる。花角中学校に出る幽霊、いちょうさんを目撃したからだとの噂を聞いた二人は、その日の夜から複数の怪異を目撃する。不審者である可能性を考えた二人は通報も検討したが、安居から「よくあることなのでかかわらなくていい」と一蹴されてしまう。せめて前任者から話を聞けないものかと考えた二人だったが、前任の男性は用務員を辞めたあとすぐに死亡していた。
探偵助手編
赤川の紹介で白浜和美と黒嶺ユメは、篠月橙や緑澤由紀と共に八木のもとで探偵助手を務めることになった。死んでも問題のない人間が欲しいという要望があったと聞いて不安を覚える四人だったが、その仕事内容は国民的な人気を誇る俳優、吾妻史郎の素行調査だった。二交代制で史郎の尾行をする業務だが、「史郎のことは本名で呼ばず、イニシャルのAと呼ぶこと」「尾行に気づかれたら死ぬと思え」と厳命され、和美は由紀と、ユメは橙とのコンビで尾行を始める。そんな中、史郎に気づいたり、正面から史郎の姿を見た生き物や人間が次々と突然死する様子を目の当たりにする。そして和美たちは史郎が散策している場所が、魔の九番街と呼ばれて恐れられていることを知る。
温泉宿スタッフ編
白浜和美の目の前で緑澤由紀が死亡してから数日後、和美と黒嶺ユメは温泉宿乳海の女中として働いていた。由紀を亡くした心の傷がまだ癒えていないのではないかと心配するユメをよそに、和美は何もなかったかのように仕事に打ち込んでいた。そんな中、温泉宿乳海に八木がやって来る。若返りの効果があると噂されている夢ノ湯の調査に来たと話す八木だったが、和美とユメの業務にはまさにその夢ノ湯の清掃も含まれていた。警戒しながら二人が夢ノ湯の湯栓を抜こうとすると、夢ノ湯の水面が不自然に波立つのを目撃する。一方の八木は、夢ノ湯の清掃に入ったスタッフが溺死体となって発見されていることを知る。
ラジオ局AD編
温泉宿乳海の火事から1週間が経過したが、緑澤由紀に次いで武藤まで目の前で亡くしたことに、白浜和美はひそかにストレスを感じていた。しかし、それを黒嶺ユメには打ち明けないまま、今度はラジオ番組「お悩みボックスアワー」のADを務めることになる。放送開始直前に番組スタッフ以外の社員が一斉退社し、さらにパーソナリティーが次々逃げるという異様な状況を不気味に思いつつも仕事を進める中で、がまずみというリスナーからのメールが届き始めたのをきっかけにスタッフの一人が大量出血して倒れるという怪奇現象が起こる。その結果、番組のパーソナリティーが逃亡し、和美がパーソナリティーを務めることになってしまう。
ブライダルスタッフ編
オールスターウェディングでは人形や家電を相手に結婚式を行なう、ニッチなニーズにも応える企画が提案されている。中でも特殊なのが冥婚で、故人の魂を呼び寄せ、人形に取り憑(つ)かせて式を執り行っていた。しかし冥婚の式の直前、白浜和美や黒嶺ユメ、西と共にブライダルスタッフとして雇われていた田所が姿をくらましてしまう。正社員の今は冥婚に怖(お)じ気づいて逃げ出したのだろうと話すが、西は冥婚の最中、新郎役の人形が生き物のように蠢(うごめ)き、花嫁を殺害する幻覚を目にしていた。しかもその幻覚を今に相談した西は、歓喜した様子の今に腹部を刺されてしまう。
ファミレス店員編
泊まり込みでファミリーレストラン・マストの夜勤バイトをすることになった白浜和美と黒嶺ユメは、そこで和美を「不死身の白浜」として尊敬する裏バイターの青木広瀬、黄崎リサと出会う。業務的に順調な滑り出しを予感する和美たちだったが、ガラス越しに来店客への嫌がらせを行う男性に注意した直後、店のガラスを割られてしまったのをきっかけに異変を感じ始める。しかし、割られたはずのガラスは無傷で、ほかの店員たちにもガラスの割れた音は聞こえていなかった。その後、八木からは、来店客に嫌がらせを行っていた男は15年前、「爆龍真拳」と名乗ってファミリーレストラン・マストを襲撃し、自らが放った火に巻き込まれて死亡したことを知らされる。
家政婦編
篠月橙が見つけてきた家政婦の裏バイトに応募した白浜和美と黒嶺ユメは、山奥にある葵邸へとやって来た。朗らかではあるものの奇抜な衣装を身につけた葵桐子と、不気味な雰囲気を漂わせて表情の乏しい葵高吉に出迎えられた三人は、地下室への立ち入りを禁じる以外は自由に仕事に励んでいた。しかしある日、ユメは使用を禁じられている地下室から叫び声のような異様な音を耳にする。さらに初日以降、だんだんと橙が和美たちを避けるようになっていき、ついには姿を見せなくなってしまう。そんな中、ユメは高吉のある姿を目撃する。
空き地探し編
白浜和美と黒嶺ユメは、封鎖されている小坂井町で空き地を探す裏バイトに参加していた。そんな二人に、崎村えりと高階朱美がバイトの共闘を持ちかける。空き地を一つ見つけるたびに報酬が100万円だが、複数人が同じ空き地を発見した場合は折半というルールのため、辞退を考えていた和美たちだったが、朱美が以前から何度も小坂井町を訪れていると聞いて共闘の申し出を承諾する。何事もなく一件目を探し当てた四人だったが、やがて町の中から、ほかの参加者の悲鳴が聞こえ始める。さらに、体が半壊しているにもかかわらず逃げていく人影と、それを追いかけてはひねり潰している黒い着ぐるみを目撃する。とっさに黒い着ぐるみが入り込めない狭い路地に逃げ込んだ和美たちだったが、朱美は開けた場所へと駆け出してしまう。
登場人物・キャラクター
白浜 和美 (しらはま なごみ)
裏バイターの女性。金髪ショートヘアにしている。年齢は21歳。酒好きに加えて不真面目でサボり癖があり、かなり適当な仕事ぶりをしている。金に対して強い執着心を見せており、命の危険があるとわかっている職場でも最初の給料をもらうまでは絶対に辞めようとしない。黒嶺ユメとは中学生の頃のクラスメイトだったが、なんらかの理由があり、なかなかユメのことを思い出せなかった。しかし、ユメが危険を臭いとして察知できる能力を持つことを知ると、裏バイターのバディに誘った。また、ユメと組んでからはどんなに危険な裏バイトをしても無傷で帰ってくることから、「不死身の白浜」とあだ名されるようになった。父子家庭育ちだが、すでに父親も亡くなっていることから、誰かに置いて行かれることがトラウマになっている。当初は自分第一で他人の命を軽視する姿も見られたが、のちにユメに影響され、いっしょに裏バイトに従事した仲間のことを心配する様子も見せ始めた。また、白浜和美自身の命とユメの命が一番大切だと発言するなど、信頼している。ユメからは「ハマちゃん」と呼ばれている。
黒嶺 ユメ (こくりょう ゆめ)
裏バイターの女性。長い黒髪をサイドでまとめている。巨乳の持ち主で、年齢は21歳。対応能力を超えた厄介ごとの予兆を臭い臭いとして知覚する能力があり、同じように安全な場所や物も臭いで見極めることができる。ただし対応能力を超えた出来事が起こると、目を開けたまままったく動かなくなるため、この癖が出た際には白浜和美に何度も助けられている。さらに、目を見開いたまま眠る癖もある。和美とは中学生の頃のクラスメイトで、黒嶺ユメ自身は和美のことを記憶しており、再会当初から彼女が危険な目に遭わないようにと気にかけていた。和美からいっしょに裏バイターをしようと誘われた当初は誘いを断っていたが、和美がユメのことを思い出したのをきっかけに、和美を危険から守るために了承した。かかわった人間すべて守ろうと行動する思いやりがあり、和美からは少々危なっかしく心配されている。両親が多額の借金を残して失踪したことから、幼い弟と妹を養うために裏バイトの世界に足を踏み入れた。篠月橙からは名前を覚え間違えられており、一時は「黒龍先輩」と呼ばれていた。
篠月 橙 (しのつき だいだい)
裏バイターの女性。黒髪を肩下までの長さに伸ばしている。白浜和美とは昔、ふつうのアルバイトをしていた際に知り合い、それ以来先輩として慕っている。あまり難しいことは理解できず、人の話も大事な部分だけ聞き逃し、自分の欲求に素直なために人にだまされやすい。そのため、和美からは「脳みそモンキー」と評されているが、黒嶺ユメからは裏表がなく純粋な人物だと評されている。また、常軌を逸したポジティブ思考の持ち主でもある。かつてボクサーだったため、腰の入った鋭いパンチを放ち、敵意を感じた際には反射的にこのパンチが繰り出される。友人から「連帯保証人になってもいいよ」と言われ、それならばと篠月橙自身も連帯保証人になったため、多額の借金返済を一人で背負うことになり、裏バイトの世界に足を踏み入れた。しかし現在も、橙自身は友人にだまされたことに気づいていない。
赤川 (あかがわ)
裏バイトの仲介屋をしている中年女性。八木の姉。ウェーブがかった髪を肩まで伸ばし、眼鏡をかけている。異常なまでの甘党で、コーヒーシュガーをそのまま食べ続けており、他人が一つでも取ろうとすると激怒する。白浜和美がバディに選んだ黒嶺ユメに興味を持っているが、一度も会ったことはない。金銭への執着心が強く、篠月橙が赤川を介さず裏バイトを見つけてきた際には怒り狂い、力尽くで阻止しようとした。
八木 (やぎ)
裏専門の探偵を生業とする中年男性。赤川の弟。頰が痩(こ)けており、顎を中心に無精ひげが目立つ。常軌を逸した猫舌で、少しでも温かい食べ物を苦手としている。またギャンブル好きで、一人の時はほとんどラジオで競馬実況を聞いている。オカルト的な知識が豊富で、八木自身は依頼を受けても自らが動くことはあまりないが、雇った裏バイターからの報告から仮説を立て、真相を導き出すことを得意にしている。また、裏バイターを募集する際には危険度を隠すことなく、「死んでも問題のない人間」などストレートな条件を出している。
緑心庵のオーナー (りょくしんあんのおーなー)
リゾートレストラン「緑心庵」を経営している中年男性。黒髪をオールバックにして口まわりにひげを蓄えており、オーバーオールを身につけている。緑心庵の2階に病気の妻と住んでおり、妻の療養のために移住して来たと話している。仕事をサボりがちな白浜和美に対しても笑顔を絶やさず柔和に接している。しかし、黒嶺ユメがあまり眠っておらず、さらに和美も途中で起きていると知ってからは怪しい態度を見せ始めた。
西本 (にしもと)
黒黒ビルの夜間警備員をしていた初老の男性。たれ目で、目尻や額にシミが目立つ。黒嶺ユメと白浜和美の前任者で、ユメと和美が警備員に入ったその夜、首吊り自殺した。7階を念入りに見回るように言い置いており、自殺の直前にはむしろ生き生きとした様子でスーツを身につけていた。
石見 絵里 (いしみ えり)
感謝を忘れない病院で行われた治験に参加した女性。年齢は21歳。茶髪の長い髪を内巻きにしている。他人との距離感が近く、赤の他人にも物怖(お)じなく話しかけ、すぐにあだ名を付けて気やすく接する。治験に参加した理由は彼氏から強要されたためで、DVを受けている様子がある。
崎村 ゆう (さきむら ゆう)
感謝を忘れない病院で行われた治験に参加した女性。年齢は22歳。肩までの黒髪を低い位置でツインテールにしている。報酬が300万円の治験に危機感を持っており、危険を回避するため、黒嶺ユメや白浜和美、石見絵里に協力を持ちかけた。また、看護師から渡された薬も飲んでおらず、あとからすべて吐き出している。
シャーロット天ノ崎 (しゃーろっとあまのざき)
葬儀社博愛ノココロの人形供養の裏バイトに参加した少女。黒髪を肩まで伸ばして左目を隠している。黒いボンネットに、ロリータ調の喪服を身につけている。人間不信の人形愛好者で、フランス人形のようにただならぬ雰囲気の人形を探すために、この裏バイトに参加した。最初はフランス人形を渡された時点で、フランス人形を持ち逃げしようとしたが、監禁されていることを知るとフランス人形と共に2階の一室に閉じこもった。黒嶺ユメと白浜和美がフランス人形が危険らしいと諭しても、一向にフランス人形を手放さない頑固な一面がある。
黒柳 (くろやなぎ)
葬儀社博愛ノココロで、人形供養部門の部門長を務めている男性。黒髪をキノコのようなヘアスタイルにしている。ただならぬ雰囲気の人形を、依頼人から一体200万円の報酬を受け取り供養しているが、黒柳自身は供養に参加していない。裏バイトに応募してきた参加者を、ふつうではない人形と共に一つ屋根の下に閉じ込めることで供養が終わるのを待っている。また、監禁中の裏バイターたちの様子は監視カメラで観察しており、絶対に外に出ないように注意を払っている。
馬岡 (まおか)
自然保護監視員を務めている男性。短髪黒髪で眼鏡をかけ、顎ひげを蓄えている。白銀神山にある山小屋に滞在しており、山の清掃や整備などを行っている。一方で、立ち入り禁止区域に立ち入った者が誰も生きて帰っていないことを知りながらも、立ち入り禁止区域に裏バイターを派遣しては、その死の謎を追究し続けている。
ミキ
ホテルHAKUGINに宿泊していた少女。黒髪のおかっぱ頭で、幼稚園児から小学校低学年程度の容姿をしている。スキーコースを外れた集団について歩いていたが、はぐれて吹雪の中で遭難しかけ、黒嶺ユメと白浜和美に救助された。ユメのことを命の恩人だと感謝している。
未帆 (みほ)
裏バイターの女性。黒髪を肩下まであるストレートヘアにしている。真琴とは以前からの友人で、福音神社の助勤巫女として働いた際に黒嶺ユメ、白浜和美と知り合った。つねに笑顔を絶やさず、他人が困っていれば見返りを求めずに手助けするお人好しな一面がある。何年間も蒸発していた父親が数百万円の借金を背負って突然帰宅したが、喜んでその返済に協力している。
真琴 (まこと)
裏バイターの女性。黒髪を前下がりボブヘアにしている。未帆とは以前からの友人で、福音神社の助勤巫女として働いた際に黒嶺ユメ、白浜和美と知り合った。正義感が強く世話好きな性格で、主義に反することは許せない気質を持つ。未帆が裏バイターに身をやつしている理由や経緯も承知したうえで、未帆の負担を軽くする手助けと、未帆を危険から守るためにバディを組んでいる。福音神社で行われた新年会のあと未帆が行方不明になってからも、定期的に神社を抜け出して未帆の捜索を続けている。
秋津 豊彦 (あきつ とよひこ)
福音島の住人の男性。全体的に禿げ上がっているが、側頭部のみ髪が残っている。左目の下に大きな泣きぼくろがある。福ノ神に生贄(いけにえ)を捧げる前に行われる味見と呼ばれる行事を楽しみにしており、被害者の血の味で処女かどうか判別することもできる。
福ノ神 (ふくのかみ)
福音神社の境内にある井戸に住んでいるといわれている怪異。非常に分厚い福耳と、なでつけられたような黒髪に、古墳時代の衣服を身にまとっている。黒日の丸のうちわを所持している。井戸の中に供物を入れると幸運をもたらすとされており、特に清純な女性を生贄として捧げると、捧げた者の運気を望むままにしてくれる。
安居 (やすい)
花角中学校の教員を務める中年女性。新任用務員への説明などを請け負っており、用務員の相談相手にもなっている。用務員が夜の見回りの際に、怪異や不審者に出くわしても通報は許可しておらず、「よくあることなので何もかかわらなくていいし、そのための高い給料だ」と一蹴している。
明里 (あかり)
花角中学校に通っている女子中学生。茶髪のショートカットで、左側頭部だけパッチン留めている。校内の異常な空気に気づき、なにかに怯(おび)えている様子を見せている。黒嶺ユメと白浜和美には気やすく接し、いちょうさんの怪談のことも二人だけに話しており、ユメと和美には絶対に用務員を辞めないで欲しいと懇願していた。
いちょうさん
花角中学校に伝わっている怪談の登場人物。異常に背が高く、身長が3メートルほどある。黒いコートでツバ広帽をかぶっており、頭が非常に大きい。死んだ生徒や教師、戦時中の軍人ではないかと言われており、性別も不明。髪の毛を媒体にして、1週間の約束を相手と交わす。もしその約束を破ってしまった場合はいちょうさんに殺されてしまうが、助かるためにはほかの人間にもいちょうさんと約束を交わさせ、約束を破らせなければならない。
緑澤 由紀 (みどりざわ ゆき)
裏バイターの女性。目の下にクマがあり、長い黒髪で前髪が左右で長さが違う。オドオドとした態度でネガティブな発言が目立ち、自己評価が異常に低い。緑澤由紀自身の人生を最悪だと考えており、生まれてきた時から不幸だったと嘆いている。失敗を恐れるあまりに失敗を繰り返すタイプで、何度就職してもすぐにクビになっていた。そのため気づいた時には借金まみれになっており、裏バイターに身をやつしている。
吾妻 史郎 (あがつま しろう)
国民的人気のある俳優の男性。さわやかな印象のイケメン。八木が吾妻史郎の所属事務所に依頼され、素行調査を行っていた。調査には黒嶺ユメ、白浜和美、篠月橙、緑澤由紀が一人100万円の報酬で採用されたが、募集の際には「死んでも問題のない人間」が条件に挙げられていた。素行調査での尾行の際は、「史郎のことは本名で呼ばず、イニシャルの「A」と呼ぶこと」「尾行に気づかれたら死ぬと思え」と厳命されていた。ユメたちは数日間、何時間も史郎を尾行しているにもかかわらず真後ろからの姿しか見ていない。また、真後ろの姿なのにそれを史郎だと確信できることに、ユメたちはただならぬ気味の悪さを感じている。
武藤 (むとう)
温泉宿乳海の女将を務める老齢な女性。肩までの白髪をうなじでシニヨンにまとめている。かつて難病を患っていた息子を夢ノ湯に浸からせ、全快させたことがある。しかし、夢ノ湯の効能にはなにか代償があるのではないかと疑っており、夢ノ湯の調査を八木に依頼した。礼儀作法には厳しいが、黒嶺ユメと白浜和美のことはかわいがっており、夢ノ湯の清掃を二人が無事に続けているのを見て安心している様子がある。
三上 (みかみ)
MikaMikaラジオの社員の男性。ラジオ番組「お悩みボックスアワー」のプロデューサーを務めている。肩まで届くワンレングスの金髪で、顎ひげを蓄えている。がまずみのメールや怪現象にひどく怯えているが、一度も「お悩みボックスアワー」を降板すると言い出したことはなく、責任感は非常に強い。
がまずみ
ラジオ番組「お悩みボックスアワー」に、大量のメールを送っているリスナーの女性。本名は「寺井しのぶ」。かつて三上につきまとっており、その末に電波塔から投身自殺した。しかし死後も、「お悩みボックスアワー」宛てにがまずみからのメールが届き、その際にはほかのメールはすべて文字化け状態となり、読めなくなってしまう。毎回番組の最初は意味の理解できる文章を送ってくるものの、時間が経つにつれてがまずみ自身がいかに孤独であるかを主軸にした支離滅裂な文章を送りつけてくる。しかしその内容を無視したり、がまずみの意に沿わない返答をすると、その人間が突然大量出血する。
今 (こん)
オールスターウェディングの正社員で、初老の女性。ふくよかな体型で、後ろ髪を刈り上げたマッシュルームボブヘアをしている。感激屋で涙もろく、結婚式では当事者や親族以上に涙するが、特に冥婚ではこの反応が顕著となっている。その一方で、離婚したカップルの話を聞くと急激にテンションが下がる。西が冥婚の際、新郎として用意された人形が動いて見えたことを告白すると、異常に歓喜して西を刺し殺そうとした。
西 (にし)
裏バイターの女性。金髪のベリーショートヘアをしている。オールスターウェディングのブライダルスタッフとして黒嶺ユメ、白浜和美と共に働いていた。オドオドとして引っ込み思案な性格で、自分の考えを自発的に発言できない。冥婚のスタッフとして参加した際、新郎役として用意された人形が動く姿を目撃したことを今に告白した直後、彼女に腹部を刺された。
田所 (たどころ)
裏バイターの女性。ふくよかな体型で、長い髪を高い位置でお団子にまとめている。オールスターウェディングのブライダルスタッフとして黒嶺ユメ、白浜和美と共に働いていた。細かな気配りができる性格ながら、冥婚式の直前にトイレに行ったきり姿を消してしまう。
清水 健司 (しみず けんじ)
ファミリーレストラン・マストのオーナーを務めている男性。黒髪を七三分けになでつけ、つねに愛想笑いを浮かべている。ある理由から、数年前から夜勤として裏バイターを雇っている。また、ファミリーレストラン・マストの調査を八木に依頼している。
青木 広瀬 (あおき ひろせ)
裏バイターの男性。茶髪のベリーショートヘアで、両耳にピアスをつけたチャラい雰囲気を漂わせているが、非常にまじめで礼儀正しい振る舞いをする。ファミリーレストラン・マストの夜勤として黒嶺ユメ、白浜和美と共に働いていた。黄崎リサと婚約しており、休憩時間には二人で性行為に耽(ふけ)ることも多い。ヤクザからの借金返済のため、裏バイトの世界に足を踏み入れた。また、数々の危険な裏バイトをこなしていると噂される和美を尊敬している。
黄崎 リサ (きざき りさ)
裏バイターの女性。黒髪のロングボブヘアで、前髪を真ん中に寄せている。300万円で豪邸が買えると思っているほどの世間知らずながら、仕事に対しては非常に真面目に取り組み、臨機応変に対応することができる。ファミリーレストラン・マストの夜勤として黒嶺ユメ、白浜和美と共に働いていた。青木広瀬と婚約しており、休憩時間には二人で性行為に耽ることも多い。ヤクザからの借金返済のため、裏バイトの世界に足を踏み入れた。また、数々の危険な裏バイトをこなしていると噂される和美を尊敬している。
爆龍真拳 (ばくりゅうしんけん)
ファミリーレストラン・マストに嫌がらせのために訪れる中年男性。年齢は38歳。本名は「山田二郎」。頭頂部が禿げ上がった長髪で、全体的に薄汚れた服を身につけ、滑舌が非常に悪い。15年前にファミリーレストラン・マストを襲撃し、来店客を惨殺したあと、自らも焼死したとされている。
葵 桐子 (あおい きりこ)
デザイナーを生業とする老齢の女性。長い髪を後頭部で大きなシニヨンでまとめており、市場には出回っていない個性的な服を身につけている。朗らかな性格のおしゃべり好きで、笑顔を絶やすことがない。しかし、空気を読むことや言外の要求などには鈍感で、何事も言葉にされないと理解しない。デザイナーとしては「コシウラ・ヨリコ」を名乗っている。
葵 高吉 (あおい たかよし)
葵桐子の夫。スキンヘッドで、目元にだけ非常に濃いアイメイクを施している。非常に無口で存在感が薄く、なかなか自分の意見を口に出すことができない。食べ物に好き嫌いがあるもののそれも言い出せずにいたが、口に出さずともそれに気づいてくれた黒嶺ユメを気に入っている。
崎村 えり (さきむら えり)
裏バイターの女性。肩までの髪を右サイドでまとめている。高階朱美の友人で、小坂井町に何度も訪れている朱美から空き地の情報を聞き出すために同行している。数々の危険な裏バイトをこなしていると噂される白浜和美を知っており、小坂井町でいっしょに行動しないかと声をかけた。自己中心的な考えの持ち主で、朱美が黒い着ぐるみに追いかけられた際には朱美の身に危険が及ぶかもしれないことも承知のうえで、黒い着ぐるみが襲ってくる範囲を試すなど非情な一面を見せる。
高階 朱美 (たかしな あけみ)
崎村えりの友人の女性。肩下までの黒髪をしている。面長で左目の下に泣きぼくろがある。小坂井町に友人が住んでいるが、音信不通になったうえに町そのものが封鎖されたため、友人の安否を確かめるべく小坂井町の空き地を探す裏バイトに応募した。
黒い着ぐるみ (くろいきぐるみ)
小坂井町に出現する謎の着ぐるみ。全身毛むくじゃらで非常に大柄な体型をしている。両腕が地面につくほど長く、唇が大きい。小坂井町を歩いている人間を見つけると襲いかかり、両手で捕まえてひねり潰したり体をバラバラにする。しかし、被害者の体からは血が流れておらず、意識も保たれたままとなっている。
場所
緑心庵 (りょくしんあん)
緑心庵のオーナーが経営しているリゾートレストラン。時給1万5000円。深い森の中にあるログハウスで、アルバイトはホールスタッフとしての業務を求められている。三食賄い付きながら、相部屋で数日間泊まり込みとなる。以前から緑心庵の従業員がたびたび行方不明になっているが、一人も発見されていない。
黒黒ビル (くろぐろびる)
7階建てのオフィスビル。近所の飲食店従業員には、黒黒ビルに幽霊が出ることは知られており、しかもその目撃情報のほとんどが7階であることも有名となっている。黒嶺ユメと白浜和美は警備員として、時給1万円で雇用された。現在7階は空きフロアとなっているが、以前浮浪者が住みついていたことから、より念入りに見回るようにと前任者の西本から言い置かれていた。昼の警備員には、夜勤の警備員がよく自殺すると認識されている。
感謝を忘れない病院 (かんしゃをわすれないびょういん)
とある薬の治験が行われている病院。所属している看護師や医師が、折に触れて「ありがとうございます」を口にする特徴がある。被験者は3種類の薬を飲んだあとは眠らずに安静にしている必要があり、トイレに行く際にも車椅子が使用される。また、午前中だけで10回の採血が行われるなど、その内容は非常にハードなものとなっている。報酬は1週間で300万円だが、別途「扉を開けた人間には追加で300万円を支払う」と追記されている。ただしこの扉がどんな扉で、どこにあるかなどの説明は被験者にいっさい行われていない。
葬儀社博愛ノココロ (そうぎしゃはくあいのこころ)
人形供養部門のある葬儀会社。日本中から送られてくる不要になった人形を供養し、海外向けにリユースしている。ただし、ただならぬ様子の人形の場合、日給15万円で雇われたアルバイトがしばらく人形と同じ家に住み、人形を人間同様に扱いながら過ごさなければならない。また、その家は外側から鍵がかかっているほか、窓が非常に分厚く、鍵穴も溶接され塞がれている。
白銀神山 (しろがねしんざん)
山岳信仰の対象であり、古くから神が住むと伝えられている山。地元の住人からは「しらかみ様」と呼ばれて崇(あが)められている。神のいる場所として言い伝えのある区域は立ち入り禁止となっており、その区域へ調査に赴いた人間は誰も生きて帰って来たことはない。馬岡はこの事実を伏せたまま、実地調査の名目で立ち入り禁止地区の調査を日給15万円で黒嶺ユメと白浜和美に依頼した。
ホテルHAKUGIN (ほてるはくぎん)
白銀神山に建っている高級リゾートホテル。神の祟(たた)りが下るという地元住人の反対を押し切って建設されており、建設途中にはさまざまなトラブルが起こり、幾度となく工事が中断されていた。また大きな雪崩も起こり、その際に巻き込まれた人々が死亡している。その遺体がすべて一部欠損、または皮だけを残して中身を吸い取られた状態だったことから、神としても崇められている白銀神山の祟りではないかと噂されていた。しかしホテル関係者はこの祟りを否定しており、ホテルの営業を開始してからも地元の抗議団体との衝突を繰り返している。クリスマスにはグランドクリスマスパーティーの開催を予定している。
福音島 (ふくいんじま)
本州から離れた場所にある小さな島。人口も少なく、知名度もほとんどない。しかし、島民は有名企業の社長など著名人が多く、資産家ばかりが住んでいる。全員が福音神社の氏子であり、福音神社に詣でたことをきっかけに成功を収めている。
福音神社 (ふくいんじんじゃ)
福音島にある神社。境内の中央に井戸があり、この井戸の中には福ノ神が住んでいるとされており、初詣に来た客は全員ここの井戸を覗き込んでいく。初詣客を捌(さば)くための助勤巫女には、日給100万円が支払われる。島民が資産家ぞろいのため、賽銭箱に札束が次々と投げ込まれたり、50万円もする破魔矢が売れることも珍しくない。島民全員が集まって行う新年会の会場にもなっており、新年会の締めとして福ノ神への供え物が投げ込まれる。また、新年会の夜は助勤巫女が一人神隠しに遭うとされている。
水族館MAO (すいぞくかんまお)
日本海に面した場所にある大規模な水族館。バックヤードツアーという特別企画も行っている。しかし、バックヤードには一般従業員は決して立ち入ろうとしないため、バックヤードの管理やバックヤードツアー参加者の受付のためだけに、黒嶺ユメ、白浜和美、篠月橙を時給10万円で雇っている。機械の不具合があった際には、和美たちがいちいち状況を写真に収め、ほかの従業員たちに口頭で説明する面倒な手順を踏むことになる。
花角中学校 (はなかどちゅうがっこう)
用務員の入れ替わりの激しい木造の中学校。用務員用の宿直室の中には仏壇のような物が備え付けられており、用務員になった者はそこに自らの髪を供えなければならない。それは夜の見回りの際に不可思議な出来事が起こるため、その厄除けのまじないだと説明されている。用務員は裏バイターが雇われており、住み込みで夜の見回りと敷地内の雪かきを条件に日給9万円が支払われる。黒嶺ユメと白浜和美の前任者を含め、これまでの用務員は全員1週間以内に辞めている。
魔の九番街 (まのきゅうばんがい)
吾妻史郎が散策している街。何年かにわたって、事故死や小動物の変死が毎日起こっていることから、「魔の九番街」と呼ばれている。近隣住人や魔の九番街で働いている人々は気味の悪さを感じており、転職して別の街に住むことを考えている住人も多い。
温泉宿乳海 (おんせんやどにゅうかい)
とある温泉街にある、一番人気の温泉宿。武藤が女将(おかみ)を務めている。若返り効果があるとされる秘湯、夢ノ湯が人気で、夢ノ湯を目当てに何度も温泉宿乳海に通うリピーターも多い。黒嶺ユメ、白浜和美は夢ノ湯の清掃作業を含めた女中として、1か月250万円で雇われた。
夢ノ湯 (ゆめのゆ)
温泉宿乳海にある会員限定の秘湯。何度も温泉宿乳海に通うことで、会員になることができる。若返りの効能があるとされているが、実際は湯に浸かった者を全盛期の肉体に戻し、難病も完治させる。しかし、夢ノ湯に清掃に入った多くの人々が溺死体となって発見されているため、その調査を八木が依頼された。夢ノ湯への入り口はふだんは隠されており、壁の一部を取り外すことで通路が現れる。
オールスターウェディング
結婚式場運営会社。今が正社員を務めている。ふつうの結婚式以外にも、人形や動物、家電、架空のキャラクターとの結婚式など、ニッチなニーズにも応える企画が提案されている。故人との結婚式を行う冥婚では、故人の魂を呼び寄せて人形に取り憑かせて行われる。黒嶺ユメ、白浜和美、西、田所はブライダルスタッフとして時給5万円で雇われていた。しかし、オールスターウェディングでの冥婚後、出席者が冥婚の当事者を殺害する事件が何度か報じられている。
ファミリーレストラン・マスト
清水健司がオーナーを務めるファミリーレストラン。数年前から22時から翌朝7時までの夜勤帯に裏バイターを雇っており、1週間で210万円が支払われる。ただし、期間中は裏バイターは敷地内から出ることができず、駐車場に設置されているプレハブ小屋に住み込むことが条件となっている。夜勤時間にたびたび爆龍真拳が嫌がらせに訪れる。
葵邸 (あおいてい)
葵桐子と葵高吉が暮らしている豪邸。山奥の、まったく人目につかない場所に建っている。家事手伝いを行う家政婦を日給79万円で募集したところ、篠月橙が黒嶺ユメと白浜和美を誘って応募した。基本的に楽で待遇もいいが、地下室には絶対に入ってはいけないと厳命されている。
小坂井町 (こさかいちょう)
つねに静まりかえっている町。町内は徒歩での移動が推奨されている。小坂井町につながる道はすべて壁で封鎖されており、小坂井町の空き地を探す裏バイトに応募しなければ足を踏み入れることはできない。空き地を発見すると一件につき100万円が支払われるが、同じ空き地を複数人が発見した場合は報酬は折半となる。
その他キーワード
鞄 (かばん)
アンティーク調の革製スーツケース。黒嶺ユメと白浜和美が個人配送業を請け負った際に、2日かけてこの鞄を運んだ。絶対に中身を見てはいけないと厳命されており、もしも鞄を紛失したり、受け渡しの時間に遅れた場合はただでは済まないと警告されている。鞄を運ぶ者以外がこの鞄を目にすると、理性を失って、犯罪行為を犯してでもこの鞄の中身を見たくてたまらなくなる。ただし実際に中身を見た者は、その中身に恐れおののき、見てしまったことを後悔するあまりに顔面を壁や地面ですりおろしてしまう。また、その不幸な状況が起こったあとは、鞄が大きくなっている。この鞄の配送料は2日間で50万円だった。
フランス人形 (ふらんすにんぎょう)
葬儀社博愛ノココロに供養を依頼された人形。肩までの金髪で異常に目が大きく、ピンク色のエプロンドレスに、同色のボンネットをかぶっている。勝手に動き回り、気に食わないことをされると血が出るほどの強さで嚙みつく。
グランドクリスマスパーティー
白銀神山のホテルHAKUGINで行われるパーティー。誰でも参加ができ、来場者全員に無料で豪華な料理が振る舞われるのに加えて芸能人も登場するため、開催を心待ちにしている住人も多い。地元の抗議団体もグランドクリスマスパーティーに合わせて大規模なホテル撤退要求デモを行う予定を立てており、大量の人々がホテルHAKUGINに集まる。
バックヤードツアー
水族館MAOで行われている特別なサービス。一人300万円で参加することができる。水族館の裏側を見ることのできるツアーで、本来は来館客が見ることのできない特別な生き物を見られる。しかし、見えるのは巨大で真っ黒な水槽ばかりで、中に魚がいるかどうかも定かではない。バックヤードにはつねに「ドッドッドッ」と巨大な音が鳴り響き、この音を聞くとなぜか不思議と安心する作用がある。
お悩みボックスアワー (おなやみぼっくすあわー)
MikaMikaラジオで、水曜日の夜に1時間放送されているラジオ番組。リスナーから悩みを募集し、パーソナリティーがその解決方法を伝授する形式で構成されている。この番組が放送される直前になると、プロデューサーの三上と二人を残してMikaMikaラジオの従業員が一斉に退社してしまう。黒嶺ユメと白浜和美はADとして1か月200万円の報酬で雇われたが、和美は初回から代理パーソナリティーに抜擢され、「がまずみ」というリスナーのメールに回答する役目を担った。がまずみから大量のメールが届き、がまずみの意に沿わない回答をすると、ひどいハウリング音がする。がまずみにとって不快な行動をした者が突然大量出血するなどの怪現象が起こるため、担当スタッフのほとんどが逃げ出している。
書誌情報
裏バイト:逃亡禁止 14巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2020-06-18発行、 978-4098501472)
第2巻
(2020-11-12発行、 978-4098503339)
第3巻
(2021-02-19発行、 978-4098504619)
第4巻
(2021-06-17発行、 978-4098506002)
第5巻
(2021-10-12発行、 978-4098507511)
第6巻
(2022-02-10発行、 978-4098508891)
第7巻
(2022-06-10発行、 978-4098511600)
第8巻
(2022-11-10発行、 978-4098514007)
第9巻
(2023-03-10発行、 978-4098517473)
第10巻
(2023-07-19発行、 978-4098525546)
第11巻
(2023-12-12発行、 978-4098530571)
第12巻
(2024-04-11発行、 978-4098532063)
第13巻
(2024-07-11発行、 978-4098534395)
第14巻
(2024-11-12発行、 978-4098536979)