概要・あらすじ
普段は大学で分子生物学の教鞭を執っている駒田と越ヶ谷一郎。しかし二人はその裏で、通称「バイオ・ハンター」として、人間の肉体を乗っ取り改造するデモンウイルスの研究と退治を続けていた。二人の周囲ではつねに奇怪な事件が起き、異形の者たちとの戦いが跡を絶たない。二人がまず手がけたのは、人面疽のデモンウイルスに乗っ取られた少女の救出。
さらには体内に死人憑きを宿した大物政治家との対決や、大学の研究所に持ち込まれた金目羅の血液サンプルを巡る事件などが、次々と二人に襲いかかる。
登場人物・キャラクター
駒田 (こまだ)
大学で分子生物学を教えている研究者の男性。実際は、越ヶ谷一郎と共にデモンウイルスについての調査・研究を行っている。自身もデモンウイルスに感染したものの、免疫のある体質のため肉体を乗っ取られる事なく、自在に変身できる力を持つようになった。いったん変身すると多大な養分を消費してしまうため、一時的に大量の食物を摂取したがる。 デモンウイルスの感染者が接近すると、自然と涙が出る体質を持つ。越ヶ谷とは対象的に女性に対しては奥手で、越ヶ谷からは「朴念仁」と評されている。
越ヶ谷 一郎 (こしがや いちろう)
大学で分子生物学を教えている研究者の男性。実際は、駒田と共にデモンウイルスについての調査・研究を行っている。駒田と違ってウイルスには感染していないものの、薬剤を利用してバイオ・ダイビングをする事ができる。小柄な体格で口ひげをたくわえており、駒田には「チンチクリン」呼ばわりされているが、女性からの人気が高い。 越ヶ谷一郎自身も女好きで、複数の女性と関係を持っている。
真理絵 (まりえ)
肩に人面疽を宿してしまった女性で、親分の娘。人面疽の影響で食欲に異常をきたしており、腹を空かして男友達を二人食い殺したあとに、駒田にも襲いかかる。人面疽に肉体を支配され、やがて精神面も取り込まれていき、自己の意思をかろうじて残すだけのレベルにまでなってしまう。
親分 (おやぶん)
肩に人面疽を宿してしまった娘・真理絵を助けるため、バイオ・ハンターの二人に助けを求めた男性。変身して真理絵と戦闘する駒田の姿に驚き、発砲して結果的に真理絵を逃してしまうことになる。真理絵をもとの姿に戻すためなら手段を問わず、のちに駒田と越ヶ谷一郎を脅迫しようとする。
人面疽 (じんめんそ)
デモンウイルスの一種。もともとは腫瘍として人間の関節部などにできるが、徐々に大きくなりやがてその腫瘍が人面のような形をとる。真理絵の体から複数体が出現し、まず肉体を支配してそのあと完全な乗っ取りを目指そうとする。
さやか
村上卜堂の孫娘。卜堂を追っている多部正十郎と、その手下の美川によりつけ狙われている。美川によって捕らえられそうになったところを、駒田に救われたことで知り合う。卜堂の居場所を知っており、駒田や越ヶ谷一郎を卜堂と引き会わせた。その後、卜堂がヘリで拉致される際、ヘリに飛び込んで自らも監禁されることとなった。
村上 卜堂 (むらかみ ぼくどう)
芸能人やプロ野球選手までもが頼りにする易者で、さやかの祖父。占いだけではなく、人に手をかざしたり触れたりすることで、対象のヒトゲノムを読む力を有している。そのため対象の体質や寿命などあらゆる事象を言い当てることが可能。過去に親友を自殺に追い込んだ多部正十郎への恨みを晴らすため、多部の体内の死人憑きを目覚めさせる丸薬を飲ませた。 その後、自らの体の異変を不審に思った多部に拉致されてしまう。
多部 正十郎 (たべ しょうじゅうろう)
自由共和党幹事長を務める男性で、次期首相の有力候補。体内に死人憑きを宿しており、本来であれば死ぬ運命であった。しかし、村上卜堂が怨恨を晴らすために死人憑きを覚醒させて強制的に延命させたことで、さまざまな不調に苦しんでいる。その原因を知るため、美川に命令し卜堂を拉致させた。
美川 (みかわ)
多部正十郎の側近の男性で、怪力の持ち主。さやかを拉致しようとするが、デモンウイルスにより変身した駒田によって未然に防がれてしまう。その後、村上卜堂のかつての内弟子を襲撃して居所を聞き、卜堂とさやかの拉致に成功。卜堂を拷問にかけて多部の体の真相について吐かせようとする。
死人憑き (しびとつき)
デモンウイルスの一種。死人に憑き、相手が死んだことに無自覚なまま生きているかのように行動させる性質を持つ。同時に宿主本来の良心は消え去って凶暴さが増してしまい、生肉を食べたいという欲求が発現する。また宿主の肉体は滅していくため、死臭が生じるようになる。多部正十郎に宿っており、本来は多部の寿命が尽きると同時に消滅するはずだった。 だが、村上卜堂が飲ませた丸薬の効果によって覚醒し、結果として多部の寿命を伸ばすことになった。
石上 (いしがみ)
駒田のコンピュータ解析を手伝っている女子大学生で、駒田に淡い好意を抱いている。研究室に実験データと弁当を届けに来た際、金目羅のデモンウイルスに感染してしまい、駒田に襲いかかる。
ライセ
金目羅をまつる神官の家の娘。先祖は金目羅の一族と言い伝えられているが、越ヶ谷一郎には実は源頼政の末裔ではないかと目されている。幼い頃、夜の森で道に迷った際、金目羅に助けられた経験がある。金目羅そのものを見ることはできないが気配を察知することが可能で、境内から金目羅がいなくなっているのを感じ、追いかけていた最中にバイオ・ハンターの越ヶ谷や駒田と出会った。 暴走し人を襲い始めた金目羅に対し、かつて源頼政が金目羅を射ったと言い伝えられる大鏑を鋳造し直した破魔の懐剣で立ち向かう。
金目羅 (きめら)
デモンウイルスの一種。細胞の中にさまざまな生物の遺伝子が混在していることから、駒田と越ヶ谷一郎に変種と位置づけられた。日本古来の妖怪「鵺(ぬえ)」と同一視されている。外見は当初、さまざまな動物が混合した姿で目撃されたが、石上らが発現した際は、何本もの触手状の物が絡み合った脳のような形であった。1000年近くライセの一族以外との接触はなかったものの、夜の山道において越ヶ谷のゼミの学生の車に衝突された事に怒り、人間を襲うようになる。 その後、学生が持ち込んだ血液から発現して石上の体を乗っ取り、駒田に襲いかかった。
集団・組織
バイオ・ハンター (ばいおはんたー)
デモンウイルスの駆除を行い、感染対象者を救出する組織で、具体的には駒田と越ヶ谷一郎の二人組のことを指す。ちなみに、本人たちが自主的にそう名乗っているわけではなく、この名称は通り名的なもの。その活動内容も、悪霊や物怪(もののけ)の退治をしているという、ざっくりとした噂で知られている程度。
その他キーワード
バイオ・ダイビング (ばいおだいびんぐ)
駒田と越ヶ谷一郎が開発した特殊な薬剤により、ウイルスに侵された相手の体内に自分の意識を送り込む行為。効力は一時間のみで、駒田が使用する。体内では侵入した相手のタンパク質のマークをコピーし、キラー細胞の攻撃から身を守ることができる。人面疽との対決の際に用いられた。
デモンウイルス
駒田と越ヶ谷一郎が名付けた、レトロウイルスの一種。自らの遺伝子を人間の遺伝子に組み込み、対象の体を変化させる力を持つ。最終的に脳細胞まで生成するため、乗っ取られた対象は自我を失い、別の生物になってしまう。世界で語り継がれているドラゴンや鬼、天狗などの怪物や妖怪も、デモンウイルスの発現によって人間が変身したものとされている。