心霊マンションを舞台にしたコメディホラー
幽霊をいっさい怖がらない女性、東雲薫は、さまざまな幽霊を説得、捕獲、会話しながら所有する心霊マンションに幽霊たちを住み憑(つ)かせて、家賃を回収している。絵柄をはじめ作品の雰囲気はほのぼのとしたコメディながら、町に出没して人間を恐怖させる幽霊のおどろおどろしい描写が毎話入り、そのページだけを見ればホラー作品と遜色ない。読者の恐怖心を煽(あお)るホラーシーンと、それをあっさり覆すコメディシーンのギャップが本作の特徴でもあり、最大の魅力となっている。
不労所得を目的に幽霊を勧誘
働きづめの生活から心機一転、薫は貯金をはたいて一棟のマンションを購入し、残りの人生を遊んで暮らそうと決めた。しかし薫は、最初の内見客から幽霊が出ると苦情を受け、購入したマンションが心霊マンションだと知る。すると薫は幽霊を追い出すのではなく、むしろ幽霊をマンションの住人にして家賃を払わせることを思いつく。だが、このマンションは祓(はら)い屋一族として有名な日下部家が要注意物件としてマークしており、住人が増えるにつれてマンションの危険さ、薫の異常さが浮き彫りになっていく。
東雲マンションと薫の過去
東雲マンションには薫が住人としての幽霊を勧誘する以前から霊が頻出しており、祓い屋である日下部本家からは市場に出さないようにと、不動産会社に通告が出されていた。また、薫は幽霊にも当たり前のように声をかけるため、幽霊たちも彼女にすぐに心を開いてしまう。だが、家族のことに言及しようとすると片腕が震えるほど動揺するなど、マンションの由来と薫の過去が物語の根幹となっている。
登場人物・キャラクター
東雲 薫 (しののめ かおる)
働きづめの生活から心機一転、不労所得を夢見る女性。腰下までのロングヘアを金髪に染めており、生え際だけが黒い。貧乏な家で育ったため、アルバイト漬けの日々を送っていた反動で、残りの人生を遊んで暮らすために、35年ローンで東雲マンションを購入した。人間、幽霊、神を問わず分け隔てなく接し、当たり前のように幽霊にも話しかけるため、誰もが東雲薫にはすぐに心を開いてしまう。入居の決まった幽霊にはそれぞれに適した職の斡旋(あっせん)もしており、家賃の回収に余念がない。また幽霊の入居者募集が、怪異の相談窓口のようになっている。日下部ツヅミから家族について聞かれた際には、言葉を濁して誤魔化している。
日下部 ツヅミ (くさかべ つづみ)
祓い屋の名門と知られる日下部家に属する女子高校生。黒髪のロングヘアに大きな眼鏡をかけている。本家から市場に出すなと通達されていたはずの東雲マンションが売りに出されたうえ、大家の東雲薫がマンションに幽霊を集めていることを知り、薫に幽霊との接触をやめさせようとしている。最初は日下部家の掟(おきて)を第一に考えて行動していたが、薫と仲がよくなるにつれ、薫の考え方や精神力の強さを理解し、尊敬するようになる。祓い屋の一族ながら本来は怖いものが苦手で、東雲マンションの住人となった幽霊たちが、思わぬ場所から姿を現すたびに仰天している。
書誌情報
訳アリ心霊マンション 4巻 新潮社〈バンチコミックス〉
第1巻
(2022-10-07発行、 978-4107725332)
第2巻
(2023-05-09発行、 978-4107725950)
第3巻
(2024-01-09発行、 978-4107726742)
第4巻
(2024-09-09発行、 978-4107727466)