あらすじ
第1巻
女子高校生の岩國夏子は、週末になるたびにウエットスーツを身につけて海に入り、魚を銛で突いて獲る魚突きに夢中になっていた。彼女に毎回付き合いつつも、ダイビングや釣りなどの一般的な海の楽しみ方にまるで興味を見せず、魚突きの腕をひたすら磨き続ける夏子の姿勢にふと夏子の父親は疑問を抱く。「どうして魚突きなんだ」と問いただす父親に対し、夏子は少し悩みつつ「血が沸く」と返答するのだった。納得のいく釣果があがらないまま、帰宅の時間を迎えた夏子だったが、そのタイミングで磯のスターであるイシダイを発見。岩場に隠れたイシダイを工夫を凝らして獲った夏子は、父親といっしょにイシダイを焼き、パリパリの皮をはじめとした、海のスターの味を堪能するのだった。(第1突き「イシダイ」。ほか、5エピソード収録)
第2巻
岩國夏子と庄内秋子が魚突きをしている最中に、突如後ろから現れて獲物を銛で突いた外国人の少女に対し、その行為は非常に危険だと、夏子の父親は指摘して注意する。そして夏子の父親は、適当にごまかそうとする少女の父親をねじ伏せ、少女本人から夏子に謝罪をさせるのだった。ミーオ・シアーズと名乗った白人の少女は、夏子や秋子と同じ高校に通っていた。成り行きからみんなでいっしょに魚を食べることになった一行は、タカノハダイとカサゴの料理で舌鼓を打つ。夏子から一人で魚突きをしていることを指摘されたミーオはついムキになり、秋子に対し「私とバディになろう」と言い出す。さらに秋子がすでに自分のバディであることを主張する夏子に、ミーオは勝った方が秋子をバディにできる魚突き勝負を挑む。(第7突き「Spearfishing Girl」。ほか、5エピソード収録)
登場人物・キャラクター
岩國 夏子 (いわくに なつこ)
黒髪の女子高校生で、凛とした佇まいをした無口な少女。年齢は16歳。まじめな性格で礼儀正しく、同年代の生徒に対しても敬語を使ってしゃべる。どことなくミステリアスな雰囲気を漂わせているため、同級生からはいいところのお嬢様ではないかと、見当はずれな推測をされている。週末になると夏子の父親といっしょに海へ繰り出し、趣味である銛で魚を獲る魚突きに励んでいる。もともとは父親とダイビングを楽しんでいたが、いつの頃からか魚突きに傾倒するようになった。女子高校生らしからぬ趣味なため、父親からも少し不思議がられている。本人曰く、「(魚突きは)血が沸く」とのこと。週末の自由な時間を魚突きに充てていることから、同年代の友達がほとんどおらず、父親からはそのことを少し心配されている。一人での魚突きを謳歌していたが、その最中に海キャンプをするためにやって来た女子高校生の庄内秋子と出会い、彼女といっしょに魚突きをするようになった。秋子とバディを組んで共に魚突きをすることで、友人と魚を獲って、獲った魚をみんなでおいしくいただく楽しさへと目覚めていく。魚突きをしているときはとても凛々しいが、学校では非常におとなしい。そのため、秋子からは学校で見ると小さなお人形みたいだと言われていた。秋子やミーオ・シアーズといるときは、言動がかなり子供っぽくなる。集中して魚を見ているためか観察力が非常に高く、魚の絵を描くのも得意としている。魚突きで獲って食べた魚の骨は海へまき、ほかの動物の餌にすることで、海へと還している。
庄内 秋子 (しょうない あきこ)
岩國夏子と同じ高校に通っている少女で、さばけた性格をしている。年齢は16歳で、栗色の髪を持つ。海岸付近でキャンプをする「海キャンプ」を趣味にしている。一泊二日の予定で海キャンプにやって来て、夕食用の魚を調達するために海釣りをしていた際に、魚突きをしていた夏子に落ちたバケツを拾ってもらった。その縁で夏子と友達になり、夏子とバディを組み、いっしょに魚突きをするようになる。魚突きをして獲った魚を調理して食すまでを体験し、「まるで原始人になったみたい」と、興奮して口走っていた。海キャンプで得た経験により、魚の調理が得意で、釣った魚を上手に調理する名人。包丁さばきもみごとで、魚をおろすのもお手のもの。夏子やミーオ・シアーズと比較すると大人っぽく包容力もあり、二人からは何かと頼りにされていた。魚突きはズブの素人だが、初潜りの段階で優れたセンスを発揮していた。
ミーオ・シアーズ
白人の女子高校生で、見た目は子供っぽい。若干わがままな性格をしている。日本育ちなため、見た目に反してネイティブな日本語を話すことができる。魚突きを趣味にしており、休みの日にはミーオの父親といっしょに海に入り、魚を獲っている。使っている銛は4万円もする高級品。岩國夏子と庄内秋子が魚突きをしている際に、後ろから獲物を突くという危険行為をしたことで夏子に謝罪。秋子とバディになるという条件のもと、夏子と魚突き勝負を挑み、それが縁となって夏子たちと友人になった。魚突きの腕にプライドを抱いており、出会った当初は夏子の腕を下手と評していた。魚突き自体が好きで、獲った魚を食べることはあまり好きではなく、特に生魚は苦手。そのため、ミーオの父親に獲った魚を食べてもらっていた。しかし、夏子たちが調理するおいしい魚料理に魅せられ、それ以来獲った魚を積極的に食べるようになり、食べ物の好き嫌いも減る。中学生の頃に魚突きの趣味を残酷だとクラスメートに糾弾されてから、学校で魚突きの話をしないようにしている。
ヨーコ
魚突きの用具を取りそろえたスピアショップ「OCEAN CLUB」の店員を務める女性。本名は「陽子」。ヨーコ自身も魚突きを得意としており、健康的に日焼けをした細身の体型をしている。自作の銛も作成できるその道のプロで、魚突きに対する知識量も非常に豊富。店内には彼女が魚を獲った写真が大量に飾られていた。若い女性を魚突きの世界に引き込みたいと考えており、岩國夏子に付き合ってショップを訪れた庄内秋子に自作の銛を貸し出していた。銛を貸し出す条件として秋子に「ログブック」を渡し、海に潜った時間やその時の天候、使った道具、さらには赤裸々な生の体験記を書かせて、もろもろのリサーチをしていた。なお、リサーチの目的は不明。
夏子の父親 (なつこのちちおや)
筋骨隆々で体格のいい短髪の男性で、岩國夏子の父親。海が好きで、特にダイビングを嗜む。夏子といっしょにダイビングを楽しんでいたが、いつの間にか夏子が魚突きに魅了されため、週末は夏子に付き合って魚突きに勤しんでいる。高校に入ったあとも、同世代の友人ができない夏子のことを心配している。自然の厳しさと海の過酷さを熟知しており、魚突きの際も決して油断はしない。海の危険性と安全管理の重要性を、夏子に何度も口酸っぱく説いていた。魚突きを通じて夏子に、庄内秋子やミーオ・シアーズという友人ができたことを喜んでいた。
ミーオの父親 (みーおのちちおや)
体格のいい外国人の男性で、ミーオ・シアーズの父親。子煩悩で、休みの日はミーオといっしょに魚突きをしており、魚を食べるのが好きではないミーオに代わり、獲った魚を食していた。ミーオが危険行為で岩國夏子に迷惑を掛けた時は、笑ってごまかしてミーオのことをかばおうとしていたが、夏子の父親からバックブリーカーを仕掛けられて悶絶する。ミーオが夏子となかよくなったのをきっかけに、いっしょに魚突きを楽しむようになる。
その他キーワード
魚突き (さかなつき)
銛を携えて素潜りし、魚を突いて獲ることを指した言葉。殺気を消して魚に近づいたり、魚が近づいてくるのをじっと待ったりするなど、さまざまなテクニックを駆使して魚を突く。泳ぐのが速い魚に対しては、逃げる軌道を読んで未来の位置に銛を突くテクニックが必須。タコやアワビなど、漁業者の許可なく獲ってはいけない魚もいる。イシダイやイカはなかなか突けないかなりレアな獲物。ミーオ・シアーズは魚突きのことを「スピア」と称している。
バディ
魚突きの際、二人で組んで互いの安全を見張り合うこと。一人が潜っている際にもう一人が水面から見守って、トラブルが起こったらすぐに救助に向かうルールになっており、安全管理の徹底には欠かせない。
書誌情報
銛ガール 全2巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第1巻
(2019-04-26発行、 978-4049124910)
第2巻
(2019-10-26発行、 978-4049128345)