概要・あらすじ
吹奏楽と野球の名門校として名高い北海道札幌市立白翔高校に入学した小野つばさ。いつかトランペットで甲子園のスタンドに立って野球部を応援するのが夢だった。トランペット初心者のつばさは何度もくじけそうになりながら、同級生で野球部員の山田大介に励まされながら成長していく。二人で夢見た、甲子園で大介がプレイをし、つばさがトランペットを吹く光景を実現させるために。
登場人物・キャラクター
小野 つばさ (おの つばさ)
やや小柄で気の弱い女の子。北海道札幌市立白翔高校に入学し、吹奏楽部に入部。楽器はトランペット。3月2日生まれ。小学生の頃に、甲子園で野球部を応援するブラスバンドをテレビで見て心を奪われた。「いつか自分も」と思っていたが、厳しいので止めた方がいいと周囲から制止されてきたが、白翔高校入学を機に吹奏楽部に入部。 だが、そこは厳しい練習、厳しい先生、厳しい先輩、厳しい部則、馴染めない同級生という状態であり、まったくの初心者であるつばさはお荷物扱い。同じ1年の水島亜希からは「辞めてほしい」とまで言われてしまう。以前から俯いて靴を見るクセがあり、クラスメイトで野球部の山田大介が上履きに描いた笑顔マークが心の支えとなっていた。 二人で目標を話しているうちに、甲子園でプレイする大介と、応援のためにトランペットを吹いているつばさの光景を共有するようになった。それから大介に励まされながら、少しずつ部員として成長していく。甲子園への予選敗退の原因となったエラーをした大介のため勝手にトランペットを吹いたり、腱鞘炎を隠していた先輩の家に通いつめたり、多くの騒動の中心となる。 その結果、本人も意識しないうちに部の精神的な中心となり、杉村からは「部員を団結させたいときにはつばさを怒ろう」とまで言われるようになる。演奏者としては3年になってもレギュラーギリギリというレベル。それでも調子の悪い水島くらいになった。 好意を抱いた大介に対して、1年の夏に1回目、2年の夏に2回目の告白をした。1回目はそれどころではないと断られたが、2回目はしばらく後に大介からも告白されて両思いに。修学旅行の自由時間に、二人で甲子園に行くなど、楽しい思い出も増えてきている。ついに3年の夏、甲子園出場が決まり、大介と共有していた夢の光景が実現した。 当初は気弱でオドオドしていたが、一方で思い込みの激しい頑固者。問題にはとことんぶつかって、くじけない。
山田 大介 (やまだ だいすけ)
小野つばさの1年と2年のクラスメイト。1月20日生まれ。大きな体で坊主頭。野球部員で、ポジションはキャッチャー。右投げ右打ち。中学時代から注目されており、先輩を慕って白翔高校に来た。甲子園出場を夢見ている。巨人ファンの父とのキャッチボールの延長でリトルリーグに入り、その監督からお前はキャッチャーだと指名された。 それ以来、自分はキャッチャーだと思ってきたという一途な性格。1年の夏には補欠でベンチ入り。予選大会で怪我をした正捕手に代わって出場したものの、サヨナラエラーをしてしまい敗退。その際小野つばさが独断でトランペットを吹いて励まそうとした。1年の秋には練習中に骨折して、選手生命が危ぶまれた。 復帰後は怪我の驚怖から調子を崩し、期待されていたにもかかわらず2年ではベンチ入りもできなかった。2年の秋からはキャプテンとなる。3年でついに甲子園大会出場を果たした。中学から野球部で一緒のピッチャーの城戸保志とは親友。野球部のキャプテンとなって以降は特に厳しく鍛えた。 人前では滅多に弱音を吐かないため「超人」とも言われるが、やはり不安を抱えていた。そのような際、初心者として吹奏楽部で頑張ろうとしているつばさに共感し、元気をもらう。はたから見るとつばさが励まされてばかりに見えるが、くじけないつばさに応援されている。1年の夏につばさから告白されたときは、それどころではないと断り、2年の夏の告白は返事はいらないと言われたが、後日、自分も好きだと告白。 ただし、「付き合うのは甲子園に行ってから」とした。
脇田 陽万里 (わきた ひまり)
小野つばさの1年と2年のクラスメイト。背の高い美人。つばさとは同じ中学出身だが、クラスが異なったため交流はなかった。ただ、中学時代はバスケ部で目立つ存在だったため、つばさは彼女のことを知っていた。高校では大学進学のために部活はやらないことにしている。つばさの頑張る姿に感動し、恋と部活の両方をサポート。 山田大介と城戸保志の勉強の面倒も見る。2年の夏に城戸から告白されるが、友達としか思えず断る。それでも城戸が自然に接してくるので少し気になっている。3年になって、チアリーダーが足りないと声をかけられ、参加することにした。
城戸 保志 (きど やすし)
小野つばさの1年と2年のクラスメイト。野球部員で、ポジションはピッチャー。右投げ右打ち。技巧派で、ややスタミナに不安がある。「一生懸命頑張っても結果が伴わなかったら」と考え本気で努力することができずにいたが、脇田陽万里の励ましにより猛練習に打ち込むようになった。3年でエースになり、夏の大会の予選では肩を壊しかけるが、1試合を休んで復活。 甲子園行きを決めた。脇田のことを早くから気にしていたが、2年では本気になってしまい、夏に告白。友達としか思えないと振られた。だが、つばさが1年で大介に振られた後の気持ちを聞いて、これまで通りでいることを決意。自分の活躍をアピールし続けている。 お調子者の側面があるものの、ここというところでは外さない。
水島 亜希 (みずしま あき)
小野つばさと同学年の吹奏楽部員。楽器はトランペット。3年ではクラスメイト。10月26日生まれで、星占いではつばさの運命の人。白翔高校入学時は小柄で線が細く、つばさには完全に女子と思われて「亜希ちゃん」と呼ばれそうになった。10歳でニニ・ロッソの演奏をテレビで見て、自分はプロになると確信したという。 演奏経験者で、実力は文句なしのトップクラス。本人も自信を持っている。中学の吹奏楽部でやる気のない部員たちと衝突したことがトラウマ。それもあってつばさに対して、「ついていけなくなるなら、いまのうちに辞めてほしい」とまで言ってしまう。つばさの本気度を知って、後日謝った。 1年の秋からパートリーダーを任されたが、自分ほど上手くないと判断している上級生との関係がうまく築けず苦心した。1学年上に対しては人間も演奏も尊敬できないと公言。一方で、長所も把握していた。その後、入部してくる後輩のほとんどは水島が憧れだが、自分のようには吹けないと断言。鬼教官ぶりを発揮する。それほどうまくないことを承知の上で、つばさを3rdトランペットのスペシャリストに育てようと考える。 このとき、初心者だとは思っていないと断言。3年になるとき、わずかにつばさに弱音を吐くほど信頼するようになっていた。音楽以外には無頓着で、女子としての振る舞いをまったく意識していない。つばさのリップクリームを借りて、平然とそのまま返却した。 つばさとは間が悪く、つばさの失言をことごとく聞いてしまう。
杉村 容子 (すぎむら ようこ)
白翔高校吹奏楽部]の顧問。国語教師で28歳独身。吹奏楽部OGで、テナーサックスを担当していた。1年のときからコンサートメンバーで、3年連続全国金賞を獲得している。口数が少なく、厳しくて怖い。ほとんど笑顔を見せることすらない。ここ数年吹奏楽部のコンクールでの成績が芳しくないことの責任を、教頭先生などから厳しく追及されている。 小野つばさたち34期の生徒で全国を目指すために、なりふりかまわない指導に専念。生徒たちからは怖がられながらも慕われている。
森 優花 (もり ゆうか)
小野つばさの2学年上の吹奏楽部の先輩。楽器はトランペット。ややふくよか。初心者のつばさの指導を担当した。根っからの吹奏楽ファンで、CDのコレクションをしている。腱鞘炎が悪化したため秋のコンクールのメンバーから外され、部を辞めると言い出す。つばさの必死の説得と、それに引っぱられた部員たちの声に退部を取り消す。 腱鞘炎は手術で完治したが、吹奏楽部は予選で敗退したため、全国出場はできなかった。
高橋 マルコ (たかはし まるこ)
小野つばさと同学年の吹奏楽部員。楽器はトロンボーン。つばさとは春の合宿後に友人となり、一緒に故人練習をする仲になる。同期の吹奏楽部員・水島亜希が中学の頃から好き。2年の冬に告白して振られ、つばさに部をやめるかも、とこぼす。実は退部するつもりはなく、山田大介とうまくいっているつばさへのやつあたりだった。 ただ、同時に吹奏楽部でなくても友達だとつばさに告げる。いつでも表情は笑顔だが、目が笑っていないこともある。
真木 奈々子 (まき ななこ)
白翔高校吹奏楽部]の副顧問。顧問の杉浦容子の後輩と思われる。白飛高校吹奏楽部のOGで、トランペットを担当していた。小野つばさらの入学の前にスキーで骨折したため、つばさたちの前に現れたのは1学期の終わり。杉村から小野つばさの鍛練を託される。当初は1対1で毎休み時間の指導で鍛えたが、他の部員から不公平だという声があがり、多くの生徒を指導することになってしまった。 杉村ほど厳しくなく、笑顔も多い。それでも、もの覚えの悪いつばさの指導には、ため息や怒声が絶えなかった。
横山 香織 (よこやま かおり)
小野つばさの1学年上の吹奏楽部の先輩。楽器はトランペット。目が据わっている。水島亜希が1年の秋にパートリーダーに抜擢され、順番を飛ばされた形になった。その鬱屈した気持ちが、演奏もできないのに上級生にかわいがられたように見えるつばさへと向かい、かなりきつく当たる。面と向かって「大ッきらい」と罵倒したこともある。 1年のとき2年に陰口を叩かれていたことが影響していたらしい。性格もかなりキツく、攻撃的で敵意を隠さない。同学年の部員たちからも怖いと言われることがある。
多能 (おおの)
小野つばさと同学年で野球部のマネージャー。山田大介と城戸保志のつばさの話で、自分の苗字の多能と聞き違えたために、なにか言われていると勘違いしたことから3人を意識する。つばさが大介に過剰に干渉してくることを快く思っていない。部員に対する憧れなどでマネージャーになったと思われるのを嫌がっているようだ。
瀬名 俊行 (せな としゆき)
小野つばさの1学年下の吹奏楽部の後輩。楽器はトランペット。経験者で演奏力はかなり高い。水島亜希に憧れてやってきたこともあり、つばさに指導されることが不満。指導方法も含め思っていた通りでないことを理由に練習に来なくなる。つばさの説得と、やめるのなら才能をちょうだい、という叫びに心を動かされ復帰。 水島と同様にあけすけな性格で、特につばさには失礼な発言が多い。ところが自身のことには弱く、たいへんなチキンハート。本番を前につばさを抱きしめて落ち着いたこともある。つばさのよいところを「執念深いところ」と認識。憧れの水島の言葉にはまったく逆らわない。
葛西 心愛 (かさい ここあ)
小野つばさの2学年下の吹奏楽部の後輩。楽器はトランペット。前髪で目を隠している。つばさに憧れて入部した初心者。中学のときに聞いた白飛高校吹奏楽部の演奏会で、当時1年のつばさが吹くマネだったのに、2年のときには吹いていたことに気付き、興味を持つ。小中学校で合唱部だったが思った通りの音が出ないため口パクばかりで、吹奏楽部ならと思って入ってきたという。 指導役の憧れの先輩ということでつばさがしばらく見栄を張ってしまったが、そうした事情を知って垣根が外される。耳はよく、つばさの練習のパートナーとして有能。やや内気。
場所
北海道札幌市立白翔高校 (ほっかいどうさっぽろしりつしらとこうこう)
創立72年で、吹奏楽と野球の名門として知られる。野球部は、甲子園出場12回(春5回、夏7回)、吹奏楽部は全国大会金賞16回。しかし、近年はいずれも芳しくない。野球部は山田大介が3年のときに10年ぶりの甲子園出場を決定させた。吹奏楽部は小野つばさたちが34期にあたる。 吹奏楽部の旗には、10年連続金賞の後、銀賞に終わったときの先輩が、後輩たちのために送った「一心不乱」の文字が記されている。