概要・あらすじ
高校野球のメッカ、そしてプロ野球セントラルリーグ阪神タイガースの本拠地である大マンモス球場・阪神甲子園球場。その球場の名を持つ藤村甲子園が少年期、高校、大学、プロ野球と成長を重ね、個性豊かなライバル達と死闘を繰り広げていく。
登場人物・キャラクター
藤村 甲子園 (ふじむら こうしえん)
南波高校野球部投手、背番号1。東京大学野球部投手、背番号1。阪神タイガース投手、背番号111。左投左打。昭和29年5月5日、甲子園球場の隣の藤村家に長男として誕生。甲子園球場と阪神タイガースをこよなく愛する祖父・藤村球之進にその名を命名された甲子園球場の申し子。 南波高校に入学し、豆タンこと捕手・岩風五郎と出会い、黄金バッテリーとなる。だが、南波高校野球部は不良の吹きだまりで、そこでは恒常的な賭博野球が行われていた。学生右翼同盟を率いるヤクザの息子・丹波左文字と全国番長連盟を率いる東海の竜こと神島竜矢、その両陣営との激しい抗争を繰り広げながら、人間的魅力で信頼を勝ち取り、新生南波高校野球部を誕生させる。 壮絶な闘いを繰り広げながら、念願の甲子園大会での優勝、そして東京六大学野球での優勝を経て、あこがれの虎の縦縞ユニフォームを着て、幼い頃からの宿敵・読売ジャイアンツの長島茂雄と対決する。
岩風 五郎 (いわかぜ ごろう)
南波高校野球部捕手、背番号2。東京大学野球部捕手、背番号100。阪神タイガース捕手、背番号222。右投右打。藤村甲子園とバッテリーを組み共に壮絶な野球人生を歩む「恋女房」(捕手を意味する)。高校一年の秋、事故で一時失明するが、剛球の音を頼りに甲子園の投げるボールを捕り続ける。 3年夏の地方大会直前、謎の剛球仮面の投げたボールを顎に受けた衝撃で、偶然視力を回復させた。南波高校を卒業後、一般入試で東京大学に入学し、甲子園と共に東京六大学野球史上初の東大優勝に貢献する。甲子園が東大を中退したため、甲子園と決別することになる。 だが、その直後東大を中退、プロテストに合格して阪神タイガースに入り、プロの世界で黄金バッテリーを復活させる。
藤村 球之進 (ふじむら きゅうのしん)
藤村甲子園の祖父。甲子園球場の球場職員。大正13年に完成した甲子園球場の工事に日雇いとして加わり、その後そのまま働くようになる。それ以来、30数年甲子園球場を愛し苦楽を共にしてきた。初孫が生まれた日、美しく雄大な甲子園球場を目の当たりにし、孫の名前を甲子園とすることを決意する。 娘婿・藤村秀人に必死に反対されるものの、甲子園の名前で出生届けを提出してしまう。思い込んだら一直線の性格は、そのまま孫・藤村甲子園に受け継がれた。甲子園に阪神タイガースのユニフォームを着せ、ミスタージャイアンツ・長島茂雄をキリキリ舞いさせるのが夢。 口は悪いが、孫の甲子園をこよなく愛している。
藤村 秀人 (ふじむらひでと)
藤村甲子園の父。婿養子のサラリーマン。東西電機、勤務。東京大学卒業の秀才。義父・球之進が娘の虎子の婿として気に入って結婚させたが、それは名前がシュートと読めるという理由から。婿養子という立場上、いつも球之進のいいなりになっていたが、さすがに息子の名付けの際は甲子園という名前ではかわいそうと反抗した。 甲子園が野球強豪校の明和高校の入試に落ち、高校野球での活躍の道が閉ざされたかに見えた時は、こっそりと南波高校入試の願書を提出していた。また、甲子園が高校3年の秋、読売ジャイアンツにドラフト指名を受けた際は、母校東京大学への進学を勧め、入試予想問題を作り上げる。
丹波 左文字 (たんば さもんじ)
南波高校野球部一塁手。左投左打。大阪大博徒の一つ、丹波組三代目。8歳の時、神戸・鬼塚組の丹波組組長宅奇襲により右目右腕、そして母・志乃を失う。南波高校で、学生右翼同盟の大日本愛国高校生連盟南波支部を率い、藤村甲子園を自分の片腕にするために近づく。 東海の竜こと神島竜矢率いる番長連合、そして甲子園や結城が結成した南波高校全共闘との間で三つ巴の抗争を繰り広げるが、藤村甲子園の人間的魅力に引き寄せられ、南波高校野球部に入部する。その後も神島竜矢らとの抗争は続くが、紆余曲折のすえ和解。 新生南波高校野球部を築き上げ、初の甲子園出場を勝ち取る。だが、南波高校理事長の策略により、甲子園大会の第一試合の途中で出場辞退に追い込まれることになる。更にかつての子分達の裏切りにもあい、南波高校野球部ナイン達と共に縞の道中がっぱをまとい、東海道行脚の修行の旅に出る。その後、丹波組三代目を襲名し、春の選抜大会を舞台とした野球賭博を企む大和組・飛鳥組・河内組連合を東海の竜と共に壊滅させ、南波高校野球部を引退する。 甲子園の高校最後の大会では、野球部監督として夏の甲子園大会で全国制覇を果たす。
神島 竜矢 (かみしま りゅうや)
南波高校野球部遊撃手。右投右打。暴力団の親分を親父に持ち、空手の達人。過去、30人程を半殺しにし、鑑別所へ15回、脱走10回、転校した学校は13校にも及ぶ。最終的に南波高校へ転入し全国番長会南波支局を統括、活動の基盤を築き始める。丹波左文字が率いる大日本愛国高校生連盟と対立し、全国をも統括する大型勢力の中心となる。 南波高校野球部主将・大熊を従える。しばらく左文字が自分との勝負を差し置き、子供騙しの野球の特訓に甘んじることが理解出来ないでいたが、藤村甲子園の人間的魅力にうたれ、南波高校野球部に入部する。職員の中から美人という理由で新人女教師・早乙女を指名し、無理矢理、野球部部長にするが、その後早乙女と恋仲となってゆく。 南波高校初の甲子園出場のメンバー。春の選抜大会を舞台とした野球賭博を企む大和組・飛鳥組・河内組連合を丹波左文字と共に壊滅させ、南波高校野球部を引退する。 その後、朝野あゆみ、元プロ野球の「大物」と共に甲子園球場をフランチャイズとした新球団設立を画策する。
結城 翼 (ゆうき つばさ)
南波高校野球部遊撃手、二塁手。右投右打。南波高校で、丹波左文字率いる学生右翼同盟と東海の竜率いる全国番長会の両者が対立する中、野球部に入部することで一時争いを鎮める。夏の地区大会決勝で起きた暴動で南波高校野球部が出場停止となったことで、更に激化した丹波左文字と東海の竜の抗争では、南波高校全共闘を結成し両陣営に対抗する。 藤村甲子園の人間的魅力にうたれ、南波高校野球部は新生野球部として再生するが、そこでも丹波左文字と東海の竜の主将を巡る対立が発生する。だが、丹波左文字が提案した、結城の主将就任案を全員が了承したことで、チームは本来の野球部として機能し、まとまってゆくことになる。
大熊 牛吉 (おおくま うしきち)
南波高校野球部投手、三塁手。右投右打。当初、野球部主将として登場。野球部を利用し賭博野球をやっていたが、八百長試合で起きた暴動後に一時野球部を離れ、全国番長会南波支局を率いる東海の竜こと神島竜矢の配下となる。そして東海の竜のスパイとして野球部に潜入しチームの足を引っ張るが、元野球部主将としての野球に対する情熱や闘志を完全には忘れていない。 その後、全国番長会南波支局と丹波左文字率いる学生右翼同盟の争いが再燃し、再び野球部を離れるが、丹波左文字と和解した東海の竜と共に野球部に復帰する。翌年夏に南波高校初の甲子園出場のメンバーとなり、ナインと共に東海道行脚の旅をする。 留年し4年まで高校に通い、卒業した後、3代目丹波左文字が率いる丹波組に就職する。
千曲 ちあき (ちくま ちあき)
南波高校野球部三塁手。右投右打。当初は男装をしていたため、丹波左文字に男子生徒に間違われ野球部に入部させられる。だが藤村甲子園の奮闘する姿に「女」として目覚める。以降、藤村甲子園への一途な想いは加速し、藤村甲子園のためなら自らの体を差し出しすることさえいとわない。 その想いが丹波左文字の心を動かして南波高校野球部を救い、更には藤村甲子園の命さえ救うことになる。しかし甲子園にはライバル校、明和高校のマドンナ朝野あゆみしか目にはいらない。決して叶わぬ恋心を抱いて、蔦のからまる甲子園球場の外壁にすがって一人、涙を流した。
鬼頭 哲 (きとう てつ)
藤村甲子園が先生と尊敬する真の剛球剛腕の持ち主。元プロ野球投手。かつて八百長事件でプロ野球を永久追放された。南波高校の八百長試合をきっかけに起きた町の暴動の際、機動隊からその剛腕により甲子園と岩風を助け、新生南波高校野球部発足の際は、未登録の監督として夏の甲子園大会予選の開幕前日まで南波高校ナインを指導する。 その後、姿をくらますが、数年後阪神タイガースに入団した甲子園にかつての球のキレを戻すべく姿を現し、名無しの権兵衛として助言をする。
池畑 三四郎 (いけはた さんしろう)
北城中野球部投手。明和高校野球部投手。東城大武蔵高校野球部投手。早稲田大学野球部投手、捕手。右投右打。中学・高校・大学を通じた藤村甲子園のライバル。甲子園とはチームメイトだった北城中時代からのライバル。 高校以降はライバル校のエースとして甲子園と対戦する。剛球一直線の甲子園とは対象的な、「七色の変化球」と呼ばれる多彩な変化球を操るアンダースローの軟投派投手。複数回の甲子園出場があるものの、甲子園との直接対戦をはじめ、ここぞという勝負でことごとく敗退する。失意のどん底から復活することを決意し、自らの一切のスタイルを捨て去り、「剛球仮面」と名乗って東京の東城大武蔵の剛球投手として現れる。 3年夏の甲子園大会決勝で、甲子園率いる南波高校と対戦し、甲子園大会史上最大の激闘を演じる。
朝野 あゆみ (あさの あゆみ)
藤村甲子園の剛球一直線を愛する女。その剛球のためなら長い黒髪も切り落とし、辱めに屈することにも耐える。藤村甲子園の中学時代からの憧れの女性。だが、藤村甲子園の前では、藤村甲子園のライバル・池畑三四郎にキスをするなど気のないそぶりを演じ続けた。後に金貸しの息子・権藤金次郎と政略結婚し、権藤あゆみとなる。 後に金次郎とは死別した。
神宮 響 (じんぐう ひびき)
慶應義塾大学野球部右翼手。右投右打、背番号5。1年の春季リーグから4番を打つ慶應の主砲。自ら削ったバットを使用する。ボールをゴムまりのように場外まで軽々と運ぶ超長距離砲。当初、ヤクルトスワローズの秘密兵器だったが、プロ野球ドラフト会議で阪神タイガースが指名したため入団を拒否。 六大学野球の慶應へ進む。彼をライバル視する藤村甲子園が東大へ進学し、早大・鬼塚幽次郎を含めた六大学野球を舞台とする三つ巴の闘いが展開される。鬼塚幽次郎からまだまだ子供野球だと揶揄されるが、秋季大会優勝決定戦では藤村甲子園の剛球を確実に捉え、三打席連続でスタンドへ運んだ。 投手・藤村甲子園にとって最大最強のバッター。
鬼塚 幽次郎 (おにづか ゆうじろう)
早稲田大学野球部投手。両投右打、背番号1。神戸を中心に全国に組織を持つ暴力団・鬼塚組の跡取り。鬼塚組と因縁がある丹下組三代目・丹下左文字から命を狙われる。3本指の左腕から投じられる変化球(陰)と右腕の剛球(陽)からなる陰陽球を操る。 陰陽球はノーサインで投じられるため、普通の捕手では捕球出来ない。また陰陽球を投球する際はグラブは使用しない。後に改良した新陰陽球も開発する。藤村甲子園との対戦で、甲子園にバットを投げつけ肋骨を粉砕し意識不明の重体とする。打者・藤村甲子園にとって最大最強のピッチャー。
クレジット
- 原作
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佐々木 守