概要・あらすじ
フランスの貴族パトウ家には、青い瞳の女性は20歳前後で非業の死を遂げる、ラ・コンテス・ブリュー(青い女伯爵)の呪いがあると信じられてきた。父の死で跡継ぎとなった少女ソレイユ・ルナ・ド・パトウは呪いを恐れ、また自分の子にその苦しみを味あわせないため自分以外の者を跡継ぎにするべく、過去に失踪した叔父、伯母の手がかりを求めてアルジェリアへと赴く。
そこで傭兵となっていた叔父カスパールと、伯母の息子ウルージ、シナーンと出会ったソレイユは、彼らをパリに連れ帰り、いずれかを後継者にしようとする。しかし呪いの影響か、彼女らの周囲にさまざまな事故が起こるようになる。カスパールと共にパトウ家の呪いの原点を追ったソレイユは、呪いが600年前の後継争いに端を発していることを突き止め、呪いの浄化を試みるのだった。
登場人物・キャラクター
ソレイユ・ルナ・ド・パトウ (それいゆるなどぱとう)
フランスのボルドー地方を治めるパトウ家の跡継ぎである男装の麗人。青い瞳を持ち、それがラ・コンテス・ブリュー(青い女伯爵)と呼ばれる、20歳前後で無惨な死をとげる呪いであることを知り、自分以外の後継者を探している。物語序盤は恋人であるギルマーと幸せに過ごすため、無理やりにでも他の後継者をたてるような強引な性格だった。 しかし、その気の強さから、やがて呪いから逃げるのではなく、呪いに正面から挑むようになり、アルジェリアで再会した叔父のカスパールや、霊能力者クルアーンの力を借りて、パトウ家になぜラ・コンテス・ブリューの呪いがかかったのかを解明する。
ヴァンクリフ・カスパール・ド・パトウ (ゔぁんくりふかすぱーるどぱとう)
ソレイユの叔父であり、アントワーヌ、アデライードの兄。過去にパトウ家の使用人の女性と駆け落ちする形で出奔し、アルジェリアにて行方不明になっていた。フランス外国人部隊に所属しており、そこではレイス・ジョスランという偽名を使ってアルジェリア独立戦争に関わっている。ソレイユ同様に青い目をしていて、優秀な指揮官であることから、現地では青の魔人と呼ばれて恐れられていた。 ソレイユと再会したことでフランスに戻り、彼女と共にパトウ家を取り巻く呪いの解明に取りかかっていく。
アデライード・ド・パトウ (あでらいーどどぱとう)
先代パトウ家公爵が妾に産ませた女性。カスパールの妹で、ソレイユの叔母にあたる。異母兄弟の兄で、かつソレイユの父であるアントワーヌとは近親相姦の関係にあり、彼の子を身ごもったところを謀殺されかかり、アルジェリアに国外逃亡する。アルジェリアで子シナーンを産み、さらに現地部族の長と結婚してウルージを産む。 その後、事故で他界する。ソレイユが彼女の足跡を追ってアルジェリアに赴き、カスパール、ウルージ、シナーンを発見しフランスに連れ帰ったことから、呪いをめぐるパトウ家の隠された事実が明らかになっていく。
ウルージ・アル・ハサン (うるーじあるはさん)
アルジェリアに逃亡してきたアデライードが、現地部族の長との間にもうけた子供で、肌の色などは現地人のそれだが、パトウ家の青い瞳を持っている。アルジェリア部族の若きリーダーとしてフランス軍と争う立場にあったが、偶然の事故からソレイユを助けたところ青い瞳に気づかれ、フランスに連れていかれる。 パリのエッフェル塔などを見てフランスとアルジェリアの格差に打ちのめされるが、フランスの軍事力・技術力をアルジェリアに持ちかえるために士官学校へ入学する。ソレイユと過ごすうちに少しずつ彼女に恋心を抱くが、彼女が呪いの謎を解く過程でシナーンを間接的に死なせたことから、ソレイユに愛憎入り混じった複雑な感情を持つようになる。 呪いが消え去ってアルジェリアへと戻る時、ソレイユをフランス勢力の手先と断じて爆殺しようとするが未遂に終わる。
シナーン
パトウ家から逃げ出したアデライードが、アルジェリアで産んだカスパールとの子供。ウルージの異父兄で、ソレイユの従姉弟にあたる。生まれつきとても体が弱く、ウルージからは常に心配されている。医学の知識を持つソレイユの見立てで、そのままではいくばくももたないとされ、治療の名目でソレイユにパリへと連れてこられる。 しかし、もともと霊媒体質で霊にとりつかれやすく、パトウ家に来たことでそこに漂っていた霊たちに魅入られてしまい、たびたび憑依されるようになる。そのことからシナーンはますます衰弱し、心臓手術を受けるもののあえなく死亡。彼の死はウルージの心に強烈なトラウマを残した。
クルアーン
ウルージの姉であり、アルジェリアの独立を勝ち取ろうとする部族の一員。巫女のような役目を任されており霊媒体質が非常に強く、ウルージを追ってパリに来たところでパトウ家に漂う呪いの存在に敏感に気づく。青い目の赤ん坊が殺されていた岩場で、妖刀に霊を集めて浄化し、パトウ家の呪いを解くことに成功する。
伊集院 詳吾 (いじゅういん しょうご)
フランス外国人部隊に所属しているカスパールの仲間。成り行きからソレイユやカスパールに同行することとなる。元薩摩藩士で示現流の達人。あだ名のハヤトは薩摩隼人から。西南戦争で敗北して海外に落ち延びていた。妖刀村正を所持しており、パトウ家にとどまるようになると、この刀が霊を呼び寄せるようになるが、それが最終的に呪いを浄化するきっかけにもなった。
アルビオン
ソレイユの婚約者セルレイネのボディガードだったが、アルジェリアに赴くソレイユに同行し、以降も陰に日向にソレイユをサポートする。アルジェリアに戻るウルージがソレイユの乗った船を爆破した際、身を挺して彼女を守り命を落とす。
集団・組織
パトウ家 (ぱとうけ)
『風の城砦』に登場する伯爵家。フランスのボルドー地方に領地を持つ。数百年前、跡継ぎをめぐる問題から1人の女が悪魔と契約し、世継ぎとなった女性を呪い殺したという伝説から、世継ぎとなる青い目をした女性は若くして非業の死を遂げるラ・コンテス・ブリュー(青い女伯爵)という呪いがあると長らく信じられてきている。
その他キーワード
ラ・コンテス・ブリュー (らこんてすぶりゅー)
『風の城砦』に登場する用語。パトウ家に伝わる「青い女伯爵」という意味の用語。それにまつわる呪われた伝説がある。青い瞳を持って生まれてきた女児は跡継ぎになると決して長く生きられず、20歳前後で無惨な死を遂げるというもので、ソレイユはこの呪いから逃れるため、後継者候補のいるアルジェリアへと旅立った。呪いの実態は過去の後継者争いで死んだ女の呪いを恐れて、パトウ家の人間が、青い瞳で生まれてきた女の赤ん坊を殺してきたことによって発生した怨みだった。 ウルージの姉で霊能力者のクルアーンによって赤子たちの霊が浄化されたことにより、呪いは消滅する。