あらすじ
三周目 基礎編
人間嫌いの中学3年生の四谷友助は、前触れもなく突然に別地球へと飛ばされ、農民というジョブを与えられたプレイヤーとなった。混乱する友助だが、説明に現れたゲームマスターからクラスメートの新堂衣宇、箱崎紅末と共に「村長の依頼をこなすこと」というクエストを与えられ、まずはその任務を遂行するために行動を開始する。しかし、討伐対象のトロールにあっさり食い殺された衣宇を目にした友助は、紅末を村に残し、一人で森に入ってレベリングに勤しむ。自然の中でたった一人、思う存分体を動かすことに喜びを感じる友助だったが、そのあいだにトロールが村を襲い、紅末までもが食い殺されたことを知る。
四周目 コルトネル・デオック・ラドドーボ編
四谷友助たちは現実世界に戻り、日常生活の中で別地球のシステムについて考えていた。特に友助は、ゲームマスターからのクリア報酬で見せられた、10周目の映像について考察を繰り返す。そんな中、友助は突然ゲームマスターから、「時舘由香をナンパせよ」というミッションを与えられる。次回のクエスト成功率が左右されるというそのミッションを成功させた友助は、2週間後、新堂衣宇たちと共に三周目から数年後の別地球を訪れる。そこには、新たなプレイヤーとなった由香も含まれていた。「マップの5パーセント踏破」と「国際港ラドドーボに荷物を届ける」というクエストに挑む友助たちだったが、その矢先、衣宇と由香、箱崎紅末が盗賊に捕われてしまう。
五周目 災害の島ジフォン編
四周目のクリア報酬により、別地球の人間や魔物はすべて本物であると知った四谷友助は、殺人のストレスに苛まれていた。そこに突然、幼い少女の姿をしたゲームマスターが現れる。今度は何も説明のないまま、次に加入するプレイヤーの鳥井啓太が現れる場所に連れて行かれた友助は、啓太が殺人を犯そうとしていると知り、それを止めることに成功する。数日後に訪れた別地球で与えられた新たなクエスト「ジフォン・バフォをヴァイクダマニアで捧げる」に関する情報を集めるため、カハベルとの再会を果たした友助たちは、四周目から15年もの時間が流れていたことを知ってショックを受ける。惜しみつつもカハベルに別れを告げ、クエストの舞台となるジフォン島に渡った友助たちは、クエストクリアのためには島を支配するオークたちを倒さなければならないことを知る。
六周目 イハル・ネモア麻薬戦争編
五周目のクリア後、四谷友助は夏休みを利用して小学校まで過ごしていた九州の祖父母の家に帰省していた。地元の友人たちとの再会に心躍らせる友助だったが、友人たちと共に自主製作映画を撮りながら世界中を旅するアメリカ人女性、グレンダ・カーターが祖父母の家にホームステイしていた。グレンダは別地球とプレイヤーに関することを、すでにネットユーザーの情報を基に集めており、世界中に点在すると思われるプレイヤーとコンタクトを取るため、別地球を舞台にした短編映画を撮って発信することを提案する。新堂衣宇、箱崎紅末を巻き込んで収録した動画が公開され、家以外のプレイヤーとコンタクトが可能になった頃、友助たちは六周目に突入する。しかし、五周目から17年たった別地球で与えられたクエスト「ゴールディア王国における虹の階段の常用者を3パーセント未満にする」の達成には、国家間を含めて複雑に絡んだ因縁を刺激しないように進めることが重要だと知り、各自別行動を取ることにする。
七周目 ブラック労働王国編
夏休みが続く中、四谷友助、新堂衣宇、箱崎紅末、時舘由香は、勉強合宿を兼ねた海水浴に出掛けることになった。合宿の夜、友助はゲームマスターから「二繁羽樹の自殺を止めろ」というミッションを与えられる。羽樹の自殺を止めることに成功した友助は、衣宇たちと共に別地球を訪れる。新たなクエスト「インカバルト王国の鍛冶屋街の仕事を円満終了させ戴冠式を見届ける」に関する情報収集のため、一行はゴールディア王国を訪れる。しかしゴールディア王国や、イハル・ネモアはドラゴンによって滅ぼされており、友助たちは逃げ延びていた国民から、六周目から20年たっていることやインカバルト王国の場所に関する情報を得る。たどり着いたインカバルト王国では3年前に「隣山の山頂に住んでいる巨大な魔物を倒した貴族を次期国王にする」というお触れが出されており、鍛冶業が盛んだが不眠不休の作業に疲れ果てている国民が多かった。さらに信仰されているカゼオ教の影響で、プレイヤーが優遇されておらず、友助たちは初めて情報収集で苦戦を強いられる。
コラボレーション
いらすとや
本作『100万の命の上に俺は立っている』は、コミックス第5巻の発売日である2018年6月18日から、フリー素材サイト「いらすとや」とのコラボレーションが実施された。「漫画は読まないと魅力がわからないが、魅力がわからないから買いたくない」という矛盾に着目し、第5巻のすべてのコマを一冊丸ごと「いらすとや」のフリー素材に差し替え、「ワケあり無料版」としてダウンロードおよびシェアフリーにして配布している。また、この「いらすとや」とのコラボレーションはTOKYO MXなどで放送されたTVアニメ第1話でも行われており、アニメ第1話が丸ごとフリー素材で描かれた。こちらもYouTubeで「ワケあり版」として無料公開されている。
メディアミックス
TVアニメ
2020年10月から、本作『100万の命の上に俺は立っている』のTVアニメ版『100万の命の上に俺は立っている』がTOKYO MX、BS11ほかで放送された。時舘由香がプレイヤーとなる四周目までの内容となっているが、最終話では四谷友助がゲームマスターの指示で鳥井啓太に会いに行く直前で終わっている。キャストは、四谷友助を上村祐翔、新堂衣宇を久保田梨沙が演じているほか、ゲームマスターは若本規夫や草尾毅など、毎回違う声優が演じている。
登場人物・キャラクター
四谷 友助 (よつや ゆうすけ)
中学3年生の少年。黒髪短髪で、金色の目を持つ。突然、別地球に飛ばされてプレイヤーとなったが、ゲームマスターや新堂衣宇から説明を受けて短時間で状況を把握し、順応する適応力の高さを見せた。小学生の頃に暮らしていた地元への愛が深く、東京と東京の人間を嫌っている。マイペースな性格で単独行動を好み、他人にまったく興味がない。合理主義者でもあり、基本的にクエストクリア以外には時間と労力を費やそうとしないため、衣宇たちと意見が食い違うことも多い。身体能力は高いものの、棒やボールを用いた動きに適しておらず、素手が一番実力を発揮できる。衣宇と箱崎紅末が三つ目のクエスト攻略を目指す三周目から、衣宇たちのパーティーに加わった。別地球でのジョブは農民からスタートして料理人、魔術師(生物)、鍛冶屋、魔術師(熱)にジョブチェンジしている。ゲームマスターからは「ゆー君」と呼ばれている。
新堂 衣宇 (しんどう いう)
中学3年生の少女で、四谷友助のクラスメート。腰まである金髪を一部サイドテールにしている。スカウトされ、モデルとして活躍している。最初のクエスト攻略を目指す一周目から別地球に飛ばされ、プレイヤーとなった。父親と兄が暴走族であることから、小学生になった頃から教師たちにいじめられ、味方してくれる仲間こそが力であると確信している。学校の成績はいいが、学校で習う以外のことに興味がなく、発想力に欠けている。しかし、身体能力が高く物覚えも早いため、戦闘においては重要な戦力となっている。別地球でのジョブは魔術師(風)からスタートし、戦士(剣)、上級戦士(剣)にジョブチェンジしている。
箱崎 紅末 (はこざき くすえ)
中学3年生の少女で、四谷友助のクラスメート。おかっぱの黒髪で、体育の授業は毎回休まなければならないほど体が弱い。また暴力を嫌っており、力を私欲に使用する男性に苦手意識を持っている。新堂衣宇が二つ目のクエスト攻略を目指す二周目から別地球に飛ばされ、プレイヤーとなった。別地球では体が自由に動くため、少しでも鍛錬しようと特訓を重ねているが、剣のように重いものを持った経験がなく、振り上げることさえできずにいた。カハベルから剣の稽古を受けるようになってからは、弱いながらもゴブリンなどを打ち倒せるようになったが、殺害するたびに泣きながら謝罪している。友助が東京での人間関係を嫌っていることや、自分たちと距離を置きたがっていることを早い段階から察しており、友助をよく観察している。別地球でのジョブは戦士(剣)からスタートし、重装戦士(剣)にジョブチェンジしている。
時舘 由香 (ときたて ゆか)
高校生の少女。背中までの黒髪をローツインテールにしており、眼鏡を掛けている。動画配信サイト「ミッコウ動画」の生放送配信サービスの配信者であり、男性アイドル育成ゲームにハマっているオタク。強い者の味方につくことや、共通の敵を作ることで立場を築き上げてきた人物で、基本的に打たれ弱い。四谷友助のことは自己中心的であると嫌っているが、その発想力や機転に関しては一目を置いている。友助らプレイヤーたちが、四つ目のクエスト攻略を目指す四周目から別地球に飛ばされ、時舘由香自身もプレイヤーとなり、衣宇たちのパーティーに加わった。別地球でのジョブは魔術師(熱)からスタートし、狩人にジョブチェンジした。
鳥井 啓太 (とりい けいた)
無職の青年で、年齢は19歳。金髪のロングヘアで、一見するとホストのような容姿をしている。中学を中退しているが非常に協調性があり、誰とでもすぐになかよくなれる。父親が多額の借金を作っており、その返済のために闇金融業者から麻薬密売人の殺害を持ち掛けられたが、四谷友助に助けられる。また、直後に闇金融業者が逮捕されて借金が無効になったことで、友助に感謝している。頭が悪く物覚えもよくないが、命の大切さは痛感しているため、特に子供が犠牲になることについては怒りをあらわにする。友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目から別地球に飛ばされ、鳥井啓太自身もプレイヤーとなり、衣宇たちのパーティーに加わった。別地球でのジョブは戦士(槍)。
グレンダ・カーター
アメリカ人の女性。金髪のショートボブで背が高く、中性的な容姿をしている。自主製作映画を撮りながら世界中を旅しており、その過程で四谷友助の祖父の家にホームステイしていた。同性愛者であり、男性に興味がない。「別地球に行って戻ってきた」と自称するネットユーザーを複数知っており、その内容に高い類似性が見られることから信憑性の高さを感じていた。ゲームマスターに出会う前から別地球やプレイヤーについての知識があった。世界中に点在すると思われるプレイヤーとコンタクトを取るため、別地球を舞台にした短編映画を撮って発信することを提案する。友助らプレイヤーたちが六つ目のクエスト攻略を目指す六周目から別地球に飛ばされ、グレンダ・カーター自身もプレイヤーとなり、衣宇たちのパーティーに加わった。別地球でのジョブは戦士(斧)。鳥井啓太からは「グレさん」と呼ばれている。
二繁 羽樹 (ふたしげ はばき)
ブラック企業に勤めている男性。ボサボサの黒髪に眼鏡を掛けており、目の下にクマがある。会社に迷惑を掛けたため、その責任を取って自殺しようとしていたところ、四谷友助に止められた。しかしその直後、友助が会社に乗り込んでパソコンをすべて破壊したことで会社が破産し、無職となった。誰かに指示されないと動くことができないが、指示されたことは最後までやり通す意思の強さを持つ。友助らプレイヤーたちが、七つ目のクエスト攻略を目指す七周目から別地球に飛ばされ、二繁羽樹自身もプレイヤーとなり、衣宇たちのパーティーに加わった。別地球でのジョブは魔術師(風)。
ゲームマスター
別地球にプレイヤーを送り込んでいる男性。全裸で股間は大きな黒い星マーク、両乳首は黒い手形で隠されており、頭部の目元から上が存在しない。「ゲームマスターと申しま。」など、言葉を中途半端に途切れさせる特徴的な話し方をする。プレイヤーがクエストを攻略するごとに報酬として質問を受け付けており、四谷友助たちの知人に依頼されて友助たちを別地球に呼んだことが判明する。特殊な手段を使用して、特定条件を満たしたパラレルワールドを観測、移動することができる。現実世界に現れる際には腰まである黒髪に麦わら帽子、白いワンピースを身につけた幼い少女の姿や、スキンヘッドの成人男性の姿をしている。
カハベル
別地球に住む騎士の女性で、長い金髪を三つ編みにしている。非戦闘時はワンピースを、戦闘時は銀の甲冑を身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、四つ目のクエスト攻略を目指す四周目で出会い、都市国家コルトネルで友助に剣の稽古をつけた人物。基本的に物腰が柔らかく親切ながら、生きている肉を切るのが大好きという理由で騎士となった危険な思考を持つ。友助たちの目的地である国際港ラドドーボまで案内する代わりに、友助たち四人に剣の稽古をつける過程で、死なない程度に全員の肉を切り刻む約束を取り付けた。カミルトーによって罠にはめられた際に瀕死の重傷を負ったが、友助によって救われたことで好意を寄せるようになる。四周目から15年たった五周目でも登場したが、その頃には右腕を失って騎士を引退しており、二児の母となっていた。
フォフセル
別地球に住む宣教師の初老男性。金髪のおかっぱヘアで、黒いカロッタとキャソックを身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、四つ目のクエスト攻略を目指す四周目で出会った。デオック王国が禁教令を発令しているアルテロス教を布教した罪で、国際港ラドドーボで処刑されるため、移送されていた。友助に、同じく処刑される予定の男児だけでも助けてほしいと頼んでいる。
カミルトー
別地球に住む下級兵の壮年男性。デオック王国の副伍長で、口ひげを蓄えている。四谷友助らプレイヤーたちが、四つ目のクエスト攻略を目指す四周目で出会った。フォフセルをはじめとしたアルテロス教の信者を国際港ラドドーボで処刑する命を受け、移送の指揮を執った。デオック王国の侵略は、国民の生活向上を実現するための正しい行いだと信じており、王を侮辱されると激昂する。
ファティナ
別地球に住む大魔法使いの女性。黒髪のロングヘアで、サリーのような黒い布を巻き付けた姿をしている。200年以上生きているが、見た目が非常に若々しい。巨大なスピアを武器にしており、乗り物として霊獣の「王梟(オウル)」や「妖精猫(ケットシー)」を使役している。四谷友助らプレイヤーたちが、四つ目のクエスト攻略を目指す四周目では時舘由香を手助け、五周目ではカンティルを助けている。またプレイヤーのことや、周回のことも理解している様子を見せる。
ヤーナ
別地球のジフォン島で、田楽巫女「ヴァイクダム」を務める女性。年齢は27歳。黒髪のロングヘアで、白いミニスカート丈の着物に赤いまな板帯を結んでいる。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。ジフォン島を支配するオークが年々増加していることから、傭兵に討伐を依頼した。
アォユー
別地球のジフォン島で、田楽巫女「ヴァイクダム」を務める女性。年齢は25歳。黒髪のロングヘアで、赤いミニスカート丈の着物に白いまな板帯を結んでいる。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。ジフォン島を支配するオークが年々増加していることから、傭兵に討伐を依頼した。友助に好意を抱いている。
カンティル
別地球に住む傭兵の男性。背中までの白い髪と顎ひげを蓄えており、左目を縦に裂く傷痕がある。4年前に滅んだ国家の将校で、これまで指揮した七つの戦争ではすべて敗北している。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会い、ジフォン島のオーク討伐クエストにおいて、オークを相手にした戦闘経験者であることから指揮官となって戦闘訓練などを行っていた。オークとの戦闘時では、津波にさらわれたが一命を取り留めた。五周目から17年たった六周目でも登場したが、その頃にはファティナに弟子入りし、魔法使いの修業をしていた。
ロール
別地球に住む傭兵の男性で、年齢は33歳。黒髪のベリーショートヘアで、黒い肌を持つ。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。傭兵歴22年のベテランで、弓兵であるために非常に目がいい。ジフォン島のオーク討伐クエストにおいては、副リーダーとなって島民に弓矢の訓練を行った。
ライス
別地球に住む傭兵の男性で、年齢は28歳。外ハネ癖のある金髪を短髪にしている。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。傭兵歴は4年で、もともとはカンティルと同じ国の歩兵だった。並はずれた俊足で転倒した体制からでも、間近にせまったオークを振り切って逃げることができる。暗い雰囲気を明るくすることができるムードメーカー的な存在。ジフォン島のオーク討伐クエストにおいては囮の役目も担っているが、戦闘能力は低い。
カッツ
別地球に住む傭兵の少年で、年齢は15歳。黒髪をポニーテールにしている。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。ジフォン島のオーク討伐クエストが傭兵としての初仕事で、鳥井啓太と恋愛話に花を咲かせるほどなかよくなった。地図製作が得意で、プロ並の精度で地図を作製できるが、製図中はハイテンションになりすぎる欠点がある。
サンザマー
別地球に住む傭兵の男性で、年齢は28歳。黒髪を逆立て、ソフトモヒカンにしている。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。傭兵歴は15年で、もともとはジフォン島の住人だったが、ジフォン人の性質や狭い土地を嫌い、15年前に島を出た。巨大なバスターソードを使用しているために機動力は劣るが、鉄のように硬いオークの指を一刀両断することができる。
ラジー
別地球の竜術士の男性。禿頭で顔に隈取りのような紋様が浮かんでおり、一重の切れ長な目をしている。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。幼少期から頭脳明晰で、ジフォン島の村の設計なども手がけていた。ジフォン島にオークたちが流れ着くように仕組んだ犯人で、黒き鱗に覆われた大翼竜を火山口から呼び出し、オークや島民たちの生命力を黒き鱗に覆われた大翼竜に与えていた。
黒き鱗に覆われた大翼竜 (だらぁっすうぇどどらごん)
別地球に住むドラゴン。山の麓からでも姿を確認することができるほど巨大で、黒い鱗を持つ。四谷友助らプレイヤーたちが、五つ目のクエスト攻略を目指す五周目で出会った。ラジーが血の儀式を行ったことで、ジフォン島の火山口から姿を現した。ただし万全ではなく、オークや島民の生命力を吸収しており、攻撃を受けない限り微動だにしない。一度は地中に戻ったが、七周目でイハル・ネモアとゴールディア王国を滅ぼしたドラゴンではないかといわれている。
バンタ
別地球に住む壮年男性で、ゴールディア王国で麻薬捜査官を務めている。白髪でひげを蓄え、制服を身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。麻薬取り締まりが遅々として進んでいないこともあり、友助たちに情報の提供やアドバイスを親身に行った。
テビチ
別地球のゴールディア王国で、麻薬捜査官を務める女性。背が低くふくよかな体型で、黒髪のおかっぱヘアに制服を身につけている。少々舌足らずで、「いまひた」「なのでふ」などと発音する。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。幼い頃から、衣食住が保証されている公務員にあこがれていた。
ホブル
別地球のゴールディア王国で、麻薬捜査官を務める青年。彫りの浅い顔立ちで、制服を身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。生まじめな性格で家族に誇れるような仕事をしたいと考えていたが、3か月前に家族がマフィアの人質にされ、密偵にされてしまう。
マリタ
別地球に住む少女。金髪のショートボブヘアに、カチューシャをつけている。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。イハル・ネモアの自警団の一人で、カルテルの人間を殺害して回っている。「勇者」と呼ばれている友助たちが、カリストと接触しているのを目にして敵になるかもしれないと判断し、友助たちと共にカリストを殺害しようと考えていた。物事を深く考えることが苦手で、衝動的に動く癖がある。しかし、友助が自警団をはじめとするイハル・ネモア国民に教育を施すようになると、考えることの大切さを実感するようになる。六周目から20年たった七周目でも登場したが、その頃にはカンティルに弟子入りしたあと、魔物の肉を摂取しすぎたために狂戦士となっていた。
カリスト
別地球に住む男性で、金髪をオールバックにしている。イハル・ネモアにある最大カルテル、ゲレーロハグァの幹部の一人で、闘技場を運営している。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。マリタたち自警団によって闘技場に放火された際、顔面の左半分に大きなケガを負った。鳥井啓太を気に入り、幹部待遇で仲間にした。また、茶葉である「レイハーブ」を麻薬「虹の階段」に加工する技術とその秘密を知っている。
アダン
別地球に住む男性。短い黒髪を逆立てており、全体的にひげを蓄えている。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。イハル・ネモアにある第二カルテルのレヴォルスィナリオの幹部で、一人娘の護衛としてグレンダ・カーターを雇った。しかしグレンダの言動が、レヴォルスィナリオにとって利益のないものであるとわかると、グレンダに味方した娘ともども殺害しようとする冷徹な一面を持つ。
エピファニオ
別地球に住む竜術士の男性。黒髪で左前髪を残してアップにしており、切れ長のつり目をしている。四谷友助らプレイヤーたちが、六つ目のクエスト攻略を目指す六周目で出会った。イハル・ネモアにある第二カルテルのレヴォルスィナリオの幹部で、プレイヤーの情報にも詳しい。判断力が高く、魔法に対する耐性も持っている。イハル・ネモアで血の儀式を行おうと、国内やゴールディア王国で戦争が起こるように誘導していた。
バスマ
別地球に住む成金の男性。長い黒髪をうなじでまとめており、小さな丸眼鏡を掛けている。四谷友助らプレイヤーたちが、七つ目のクエスト攻略を目指す七周目で出会った。商人からの成り上がりで、経済を学んで財務大臣を経験してから、再び商人となっている。鍛冶屋と貴族を結ぶ仲介業者を務め、その収入でインカバルト王国では王よりも金を持っていると噂されている。ビジネスパートナー以外の相手には興味がなく、プレイヤーであっても金を払わなければいっさい取り引きに応じない。
ジャードゥー
別地球に住む魔法使いの男性。肩までの黒髪をハーフアップにしており、着物に似た服を身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、七つ目のクエスト攻略を目指す七周目で出会った。カンティルの弟子で、マリタの弟弟子にあたる。狂戦士となって人々を襲っているマリタを討伐するため、インカバルト王国に滞在している。
ジャンガニー・ヴィキ
別地球に住む貴族の男性。長い黒髪をポニーテールにしており、和服のような修行着と錫杖を身につけている。四谷友助らプレイヤーたちが、七つ目のクエスト攻略を目指す七周目で出会った。15年前に家督争いに負けて家を飛び出し、山を崇拝するカゼオ教の僧侶になった。魔法使いで、霊獣の「妖精猫(ケットシー)」を使役している。次期国王に挑戦できる権利を持つ者の中では最有力候補ではないかと考えられているが、山で自然と共に生きる生活に満足しており、王位に興味がない。しかし山々を脅かす存在として、魔物討伐を行う決意を固めている。
集団・組織
ゲレーロハグァ
イハル・ネモアの最大カルテル。カリストが幹部の一人を務めており、構成員は約7000人といわれている。300年前はイハル・ネモアの正規軍だった。茶葉である「レイハーブ」を麻薬「虹の階段」に加工してゴールディア王国のマフィアに密輸していた。その目的は王国内の金と力を奪い、いずれゴールディア王国に戦争を仕掛けることである。
レヴォルスィナリオ
イハル・ネモアの第二カルテル。アダンが幹部の一人を務めており、構成員は約4000人といわれている。15年前までは自警団だったが、家族を守るという目的で多くの賛同者を得たことで制御しきれなくなり、現在は利益を貪るだけの無法者組織となった。茶葉である「レイハーブ」を麻薬「虹の階段」に加工してゴールディア王国のマフィアに密輸することで、私腹を肥やしている。
場所
別地球 (あなざーあーす)
ゲームマスターによってプレイヤーたちが飛ばされる世界。当初は「異世界」と呼ばれていた。中世ヨーロッパ風RPGのような世界で、トロールやゴブリンなどの魔物が存在するほか、魔法を使用することもできる。ゲームマスターによってクエストが設定されており、プレイヤーはクエスト完了後に元の世界に戻ることができる。このプレイヤーが挑むクエスト一つにつき「○周目」と表現されている。また、プレイヤーが別地球に行った時点から現実世界での時間はたっていない。しかし、周回ごとに別地球での時間は数年単位で経過している。完全攻略にはプレイヤーが10周する必要があり、最終的にプレイヤー10人でクリアすることになっている。なお、別地球の正体はゲームマスターが明らかにしており、46億年前に現在の地球と分岐したパラレルワールドである。しかし、原始の地球がパラレルワールドの分岐点となっているため、惑星としての名称や組織成分、地形、知的生命体の名称も異なっている。
国際港ラドドーボ (こくさいこうらどどーぼ)
別地球の町。メリ大陸の西端に位置する港町で、マランバという国に統治されている。四つ目のクエストで、なんらかの荷物を運ぶ目的地に設定されている。メリ大陸に隣接するイジャ大陸との貿易港となっているため、アルテロス教の信者が多くいると考えられている。
デオック王国 (でおっくおうこく)
別地球の国家で、メリ大陸統一を目指す独裁国。出自で人の階級を定めており、王を頂点に貴族、王国民、奴隷で構成されている。周辺小国に戦争を仕掛けては植民地化と奴隷化を推し進め、他国の領地をわが物顔で使用するため、カハベルから軽蔑されている。アルテロス教を禁止しており、他国の国民であってもアルテロス教徒を見つけ次第暗殺している。
ジフォン島 (じふぉんとう)
別地球の島。火山活動が活発で地震も頻発しているため、「災害の島」とも呼ばれている。イジャ大陸とメリ大陸の中間に位置しており、戦争のない平和な島だった。しかし、現在は5年前に難破船に乗ってやって来たオークによって支配され、人間がオークに捕食されないように、ジフォン島の特産品である高級食用家畜「ジフォン・バフォ」を差し出している。
ゴールディア王国 (ごーるでぃあおうこく)
別地球の国家。メリ大陸の北東にある大国で、マフィアが密輸販売している麻薬「虹の階段」が大きな問題となっている。隣国のイハル・ネモアとのあいだに掛かった橋に面する検問所が唯一の出入り口となっており、出入りする者は全員身体検査が義務づけられている。虹の階段の依存者は推定一万人前後にのぼり、刑務所に収容しきれないため、スラムに放置されている状況にある。300年前にイハル・ネモアを侵略、略奪して設立した国家であることから、イハル・ネモアの国民からは恨まれている。
イハル・ネモア
別地球の国家。ゴールディア王国とは大河を挟んで隣接する貧困国。300年前にゴールディア王国に侵略されて国土のほとんどを奪われたため、現在は難民キャンプ地がそのまま維持されている状況にある。そのため、土地区画の概念や行政によるゴミの収集といった制度がなく、死体も腐乱するに任せて放置されているほど荒れている。警察や軍隊の人数が少なく、国民の約半数がゲレーロハグァかレヴォルスィナリオのカルテルに所属しているといわれている。また自警団も存在しているが、自警団はカルテル側の人間を殺害するため、警察から取り締まりの対象にされている。警察、カルテル、自警団の三つ巴の戦いになっており、いつ内戦が起こるかわからない状況になっている。カルテルによって、麻薬「虹の階段」が製造されている。
インカバルト王国 (いんかばるとおうこく)
別地球の国家。ゴールディア王国とイハル・ネモアがあった場所から南に進んだ場所にあり、山々に囲まれているために領地が段々畑のように整地されている。最下層の土地でも標高1000メートル近い場所にある。3年前に「隣山の山頂に住んでいる巨大な魔物を倒した貴族を次期国王にする」というお触れが出されて以降、貴族が順番に大量の兵を伴って遠征し続けている。そのため、装備品を作る鍛冶屋が多いが、そのほとんどが休みなく働き続けている。山を崇拝するカゼオ教の町で、プレイヤーであっても優遇されないという特徴がある。
その他キーワード
風魔法 (ういんど)
新堂衣宇のジョブである魔術師(風)が使用する魔法。空気を移動させる力しかなく、低レベルの魔術師(風)は殺傷能力を伴う魔法として使用することができない。ただし低レベルの魔術師(風)であっても、瀕死の重傷を負った魔物に魔法の杖を突き立て、体内に風を送り込んだ場合は相手を殺傷することができる。
瞬間移動 (ふぁすととらべる)
瞬間移動の能力。五つ目のクエスト攻略を目指す五周目から加わったシステム。一度行ったことのある場所であれば、一瞬でワープ移動することができる。ただしルールが設けられており、全員が生存状態で1か所にそろっていることや全員いっしょにしか移動できないこと、別地球の人や生物、建物の移動は不可能なこと、一度使用すると24時間使用できないことなどが定められている。
血の儀式 (ちのぎしき)
竜術士が行う、ドラゴン復活のための儀式。六つの魔法陣が描かれた円形の範囲内にいる人間の魂をドラゴンに捧げるもので、「呪いによる対人限定の魂の大規模吸収」が行われる。血の儀式の効果範囲内では、人間の生命力が少しずつ吸い取られ続け、息絶えることで呪いが完成して魂が奪われる。もしくは血の儀式の効果範囲内で、人間が人間か魔物によって殺害された場合、その魂は即座に最寄りのドラゴンに吸収される。また、吸収された魂は輪廻転生することができなくなるため、血の儀式が発動し続けるとドラゴンの力が増強され続けるだけでなく、人間が生まれなくなるとされている。血の儀式は、最も人が多く死ぬ日に行うのが効果的だといわれている。「人々の魂を捧げる儀式」とも呼ばれている。
アルテロス教 (あるてろすきょう)
ジウシス神と聖女アルテロスを崇める宗教。生きているあいだに、仲間を守るためにどれだけの数の敵を倒したかで人の階級を定めており、デオック王国の制度と相容れなかったことから禁教令が発令された。アルテロス教の信者は「アルテリアン」と称されている。
プレイヤー
ゲームマスターによって別地球に送られている者たち。別地球においては「勇者」と呼ばれ、何かと優遇されている。別地球の住人はケガをすると血が出るが、プレイヤーは別地球にバーチャルな肉体で存在しているため、ケガをしても出血することがなく、武器や衣服も装備可能なものであれば自在に出現させることができる。また、痛覚も通常の36分の一となっている。プレイヤーにしか見えないステータス画面なども実装されており、経験値をつねに確認することができる。プレイヤーは別地球で殺害されても1分以内に生き返ることができ、パーティー全員が死ぬまで本当の死は訪れない。ただし、食い殺されたプレイヤーは排泄されるまで蘇生できない。プレイヤーが挑むクエスト一つにつき「○周目」と表現され、周回を重ねるごとにパーティーの仲間が一人ずつ増える仕様となっている。四谷友助は三つ目のクエストである「三周目」からプレイヤーとなり、衣宇たちのパーティーに加入した。海外にもプレイヤーが存在し、グレンダ・カーターの提案で撮影した短編映画によって、コンタクトが可能になった。プレイヤーの最終目標は、現実世界に攻め込める五体のドラゴン復活をもくろむ49人の竜術士が、その目的を果たす前に別地球で倒すことだと推測されている。
竜術士 (どらごんびしょっぷ)
ドラゴンの復活をもくろんでいる者の総称。魔法使いとはドラゴンに関連する見解の相違から敵対関係にあり、魔法使いを名乗る者をすべて暗殺している。また、他者に竜術士であることを知られると竜術士自身も魔法使いから命を狙われる可能性が高いため、能力を秘匿している。血の儀式を行うことで、ドラゴンの復活を招いている。また、血の儀式は最も人が多く死ぬ日に行うのが効果的だといわれているため、戦争や内乱、魔物による襲撃を起こさせようと暗躍している場合が多い。
カゼオ教 (かぜおきょう)
インカバルト王国で信仰されている宗教。山を崇拝し、山との一体化をするために修行を重ねる僧侶が多くいる。僧侶はインカバルト王国の周囲を囲む山脈のどこかで、たった一人で修行するため、探すのが非常に困難となっている。また、プレイヤーを通常の人間だと考えており、優遇はいっさいしない。
霊獣 (れいじゅう)
魔力を保有するが、凶暴化していない種族の動物。ファティナが使役している「王梟(オウル)」や「妖精猫(ケットシー)」、竜術士が使役する「小飛竜(ワイバーン)」などがそれにあたる。いずれも人間が背中に乗れるほど大きく、希少価値が高い。手懐けることは可能だが非常に難しく、じゃれつかれただけでもふつうの人間なら死亡してしまう。
虹の階段 (にじのかいだん)
ゴールディア王国の収入源となっている麻薬。原料は昔からイハル・ネモアの土地に自生していた「レイハーブ」という茶葉で、その栽培にはイハル・ネモア政府からの許可が必要となっている。精製方法はイハル・ネモアを実質支配しているカルテルであるゲレーロハグァやレヴォルスィナリオの一部の幹部だけしか知らず、末端の構成員には知らされていない。農家は茶葉として栽培しているだけなので、違法行為ではない。自由売買が許可されているため、カルテルでも販売されている。
レイハーブ
イハル・ネモアが建国される前から自生していた植物。「神の草」とも呼ばれており、イハル・ネモアはレイハーブが自生していることを理由に領地を決定したとされる。茶葉として使用されるほか、麻薬である「虹の階段」の原料になったり、レイハーブを漬けた酒にされたりすることもある。
クレジット
- 原作
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山川 直輝
書誌情報
100万の命の上に俺は立っている 20巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2016-10-07発行、 978-4063958102)
第2巻
(2017-03-09発行、 978-4063958782)
第3巻
(2017-09-08発行、 978-4065101841)
第4巻
(2018-01-09発行、 978-4065105474)
第5巻
(2018-06-08発行、 978-4065115732)
第6巻
(2018-11-09発行、 978-4065132456)
第7巻
(2019-04-09発行、 978-4065148709)
第8巻
(2019-09-09発行、 978-4065164433)
第9巻
(2020-03-09発行、 978-4065185131)
第10巻
(2020-09-09発行、 978-4065205921)
第11巻
(2020-12-09発行、 978-4065216774)
第12巻
(2021-07-09発行、 978-4065240168)
第13巻
(2021-12-09発行、 978-4065262726)
第14巻
(2022-05-09発行、 978-4065278314)
第15巻
(2022-10-07発行、 978-4065294031)
第16巻
(2023-03-09発行、 978-4065310359)
第17巻
(2023-08-08発行、 978-4065326022)
第18巻
(2024-01-09発行、 978-4065341650)
第19巻
(2024-06-07発行、 978-4065357927)
第20巻
(2024-11-08発行、 978-4065374214)