何かと正反対な二人の女性
奈々美は会社の誰からも一目置かれる、現実主義者のバリキャリ女子。それは私生活でも変わらず、家事もきっちりとこなす。一方のかえでは、天真爛漫（らんまん）ながら基本的にはぐうたらで満足に仕事もせず、生活のすべてを奈々美に頼り切っている。だが奈々美は、かえでに頼られるのが嬉しく、彼女のことを放っておけない。本作は、そんなまるで正反対の二人の日常生活が、時にトラブルを巻き起こしながらも、穏やかに描かれる。
奈々美の本当の気持ち
奈々美は同性愛者であることを隠し、地元の彼氏と遠距離恋愛をしていた。だが、いつまでも結婚話が進まないことに業を煮やした彼氏から、別れを告げられてしまう。人生設計が狂ったことに落ち込む奈々美だったが、彼氏が間髪入れずに新しい彼女を作ったことをきっかけにすっぱりと気持ちを切り替え、東京での生活をさらに謳歌（おうか）し始める。そんな日々の中、当初はかえでのことを年上ながら放っておけない妹のような存在だと考えていた奈々美は、いつしか彼女への募る思いを自覚するようになる。
形成されていく複雑な人間関係
念願叶（かな）って漫画家としてのデビューが決定したかえでの前に、なぜか彼女を一方的にライバル視する同人漫画家の城山恋由姫が現れる。そんな恋由姫は、何かとかえでに絡んでくるが、天真爛漫な彼女にいつしか惹（ひ）かれていく。一方の奈々美の前には、どこか浮世離れした雰囲気を漂わせた辻堂葵が姿を現す。葵は冗談とも本気ともつかない態度で奈々美にせまるが、実は彼女は、かつてのかえでの同居相手であり、当時かえでに思いを寄せていたという過去があった。奈々美とかえでの関係が遅々として進まない中、複雑な人間関係が構築され、二人の思いの行方は混迷を極めていく。
登場人物・キャラクター
香月 奈々美 (かづき ななみ)
とある会社に勤務する女性。年齢は25歳。かえでと同じマンションに同居しており、家事を一手に担っている。黒髪ロングヘアで長身の颯爽（さっそう）とした美人。仕事も家事もてきぱきとこなし、若手ながら会社の中心人物として社員たちに一目置かれている。一方で、いわゆる「意識高い系」にアレルギーがあり、そういう人々の交流会に参加する時間があったら、その分仕事をした方がマシという実利主義者。福岡出身で、プライベートでは博多弁でしゃべる。地元では、結婚して家庭に入ることが女性の幸せと考えられており、両親からもそう言われていたが、東京で成功したいと強引に上京した。実は同性愛者で、上京したのは地元の彼氏から離れるためでもあった。彼氏のことは、自分の人生の成功における最後の頼みの綱として大事にしてはいたが、結婚の話が一向に進まないことが理由で破局することとなった。当初は好みのタイプではないという理由で、かえでのことはなんとも思っていないつもりだったが、のちに実際は彼女に惹かれていることに気づく。
藤村 かえで (ふじむら かえで)
漫画家を生業とする女性。年齢は27歳。小柄な体型の童顔で、明るい色の髪を適当に伸ばし、ボサボサのままにしている。元々は葵という女性と同居していたが、とある理由から彼女に出て行かれた。かえで自身はずぼらな性格で生活力が皆無のため、上京してきた奈々美を拝み倒して、新たに同居生活を始めたという経緯がある。漫画家として担当編集者はついているものの、いつもネームが通らず、当初はデビューもできずにいた。だが、いざその気になると凄（すさ）まじい集中力を発揮する。実力派の同人漫画家、恋由姫と知り合ってからは、彼女にライバル視されつつもなんだかんだと意気投合し、漫画の実力をさらに伸ばして雑誌掲載を勝ち取るなど、その名を世に知らしめていく。
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