86 -エイティシックス-

86 -エイティシックス-

安里アサトの小説『86 -エイティシックス-』のコミカライズ作品。サンマグノリア共和国の最前線でレギオンと戦うシンエイ・ノウゼンと、スピアヘッド戦隊の指揮を務めるヴラディレーナ・ミリーゼの出会いや戦いを描くファンタジー。「ヤングガンガン」2018年5号から掲載の作品。2021年4月に原作小説版がTVアニメ化。

正式名称
86 -エイティシックス-
ふりがな
えいてぃしっくす
原作者
安里 アサト
漫画
ジャンル
ファンタジー
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

戦死者ゼロの戦場

星暦2139年、人類の大半が滅んだとされる世界で、大要塞壁群に囲まれたサンマグノリア共和国では、壁の中で暮らす国民たちが平穏な暮らしを送っていた。だが、その陰では隣国、ギアーデ帝国との戦争で、数多の命が失われていた。未知の帝国から差し向けられる完全自律無人戦闘機械「レギオン」に対抗するため、共和国が同型兵器として開発したのは「ジャガーノート」という無人機であった。この兵器により日々の戦いは死者を出すことなく、共和国は帝国軍を迎撃しその脅威を退けていた。だが、無人機や死者ゼロというのはあくまで表向きの情報であり、無人機とされるジャガーノートには共和国において差別対象の有色人種「86」の少年少女たちが搭乗させられ、過酷な戦いを続けていたのだ。86は、共和国全85区画の外にある第86区に追いやられて「人型の豚」と迫害された挙句、帝国軍との戦争でジャガーノートを操縦させ戦わせるための捨て駒のように扱われていた。共和国軍の若き少佐であるヴラディレーナ・ミリーゼは、差別政策に懐疑的であった父親の意思を継ぎ、自らが受け持つ部隊の兵士たちとも人間的に接しようと務めていた。しかし、その理想や認識は周囲の軍人とはかけ離れたものであり、家族にも理解されることはなかった。そんなヴラディレーナの新たな配属先である最重要防衛拠点・第一戦区を守るのは、優秀な精鋭部隊「スピアヘッド戦隊」であった。ジャガーノート搭乗者の生存率が著しく低いこの戦争で、何年も生き残っているスピアヘッド戦隊は、シンエイ・ノウゼンが戦隊長を務め、死地へ向かう若者たちを率いていた。だが、「アンダーテイカー」の異名を持つシンエイには、指揮管制官を精神的に追い込み死に導いてしまうという奇妙な噂があった。シンエイやスピアヘッド戦隊の噂を知りながらも、ヴラディレーナは特殊通信で彼らの指揮を執ることになる。

レーナと86

最前線で戦うスピアヘッド戦隊を率いるシンエイ・ノウゼンと、サンマグノリア共和国の指揮管制官を務めるヴラディレーナ・ミリーゼは任務の中で知り合い、遠く離れた地から音声のみのやり取りを続けていた。ヴラディレーナはシンエイが率いるスピアヘッド戦隊を救うために、シンエイはある宿願のために、互いの姿を見ることもないままで互いの任務をこなしていた。戦争の中で出会った二人は悲しい戦いの中で、激しい運命に翻弄されていくことになる。担当ハンドラーの交代は、過酷な戦場を長く生き残ってきた86たちにとって、特に珍しくもない出来事だった。そんな彼らにも、86を差別する立場にありながら積極的にコミュニケーションを取ろうとするヴラディレーナは、珍しく映っていた。いつレギオンとの交戦が起こるかわからない過酷な環境で、隊員たちは食料調達に出たり、読書をしたりと思い思いの時間を過ごす。狩り・食事作り・洗濯をはじめ、戦闘に身を投じるスピアヘッド戦隊にも、仲間と過ごす平穏で楽しい日常があった。過去や境遇を共にし、死線を乗り越えてきた仲間を大切に思うクレナ・ククミラは、シンエイにひそかな恋心を抱く一方で、かつて両親を無惨に殺害した白系種に恨みを抱いていた。そんなクレナは、突如として現れ隊員との交流を深めようと試みるヴラディレーナのことを、快く思えずにいた。毎晩接続される通信では、クレナをはじめ冷淡に接する隊員もいる中、カイエ・タニヤはヴラディレーナに興味を持ち、美しい星空や自分たちの暮らしについて語り出す。後日、スピアヘッド戦隊は密林地帯で新たな任務を開始していた。そんな中、湿地で始まった新たな戦闘で、苛烈な戦いがもたらす悲劇が、シンエイたちの運命を大きく変えることになる。

関連作品

小説

本作『86-エイティシックス-』は、安里アサトの小説『86-エイティシックス-』を原作としている。原作小説版はKADOKAWA 電撃文庫から刊行され、イラストはしらびが、メカニックデザインはI-IVが担当している。

メディアミックス

TVアニメ

2021年4月から、本作『86-エイティシックス-』の原作小説『86-エイティシックス-』のTVアニメ版『86 -エイティシックス-』が、TOKYO MXほかで放送された。監督は石井俊匡、総作画監督は川上哲也が務めている。キャストは、シンエイ・ノウゼンを千葉翔也、ヴラディレーナ・ミリーゼを長谷川育美が演じている。

登場人物・キャラクター

シンエイ・ノウゼン

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少年。スピアヘッド戦隊の隊長と第1小隊隊長を務める。年齢は16歳で、階級は大尉。黒の短髪と赤い瞳を持ち、空色のスカーフを巻いている。つねに感情の起伏が少なく寡黙で冷静な性格で、頼れる隊長として前線に立つ同じ86から慕われている。パーソナルネームは「葬儀屋」を意味する「アンダーテイカー」で、仲間たちからは「シン」の愛称で呼ばれている。サンマグノリア共和国の首都リベルテ・エト・エガリテ出身。幼少期にレギオン侵攻と共に86として強制収容所に送られ、両親が戦死後は兄のショーレイ・ノウゼンと離れ、収容所内の教会で神父に育てられていた。兵役に就いてからは戦場を生き延び続け、多くの仲間と共に戦い、時には死を見送ってきた。とあるきっかけから死んだ仲間の遺品に名前を刻むようになり、自分のジャガーノートにはこれまで戦死した500人以上の仲間の名前が記されている。生存率が著しく低いプロセッサーの中ではパーソナルネームを得たあとも長く生き残っており、天性の才能や数々の経験から高い戦闘力を持つ。その一方で無茶な操作をすることが多く、ジャガーノートの足回りをよく壊すために、整備班を困らせている。新たな指揮管制官となったヴラディレーナ・ミリーゼと任務を通して知り合うが、遠く離れた地から指揮を執る彼女とは直接会ったことがなく、互いの姿も知らない。過去のある体験をきっかけに精神感応系の異能力に目覚め、現在は黒羊などを通して死者の声を聞く力に変質している。この力で聞こえる死者の声は戦闘中も意識の中で響き、知覚同調で同調した者にも聞こえるようになる。この力の影響に耐えられない担当の指揮管制官はいずれも精神を病んで退役しており、自ら自害した者もいるため、指揮管制官を死に導くという物騒な噂が流れている。また異能力を使って広大な戦域を探り、敵の位置を知ることもできる。任期が近づく中で、戦死したショーレイの頭部を捜し続けている。兵士としては優秀な一方で生活能力は低く、料理も苦手。趣味は読書。身長は約175センチで、誕生日は5月19日。

ヴラディレーナ・ミリーゼ

サンマグノリア共和国軍に所属する軍人の少女。16歳の若さで少佐に上り詰めたエリートで、周囲からも期待と注目を集めている。銀髪のロングヘアで、ガーターベルトを愛用している美少女。共和国第1区出身で、愛称は「レーナ」。白系種の貴種として知られる「白銀種(セレナ)」の純血であり、貴族階級の名家、ミリーゼ家の令嬢でもある。共和国の差別政策に反対してきた父親のヴァーツラフ・ミリーゼの影響を受け、86の迫害に心を痛めている。また、幼少期に視察していた戦場で遭難した時にヴァーツラフを亡くし、86の青年に助けられたことがある。これらの過去から、自らが担当する部隊の86に対しても人間的に接しようとしているが、その行動や理想は周囲からまったく理解されず、奇怪な目で見られている。また、差別意識が強い母親のマルガレータからも理解されることがなく、早く軍人を辞めて名家に嫁ぐよう言われている。少佐となったあとにはその才能が上官の目に止まり、レギオンと最前線で戦うスピアヘッド戦隊の指揮管制官として配属され、任務を通してシンエイ・ノウゼンをはじめとするスピアヘッドの隊員たちと出会う。ほかの指揮管制官とは異なり、毎晩決まった時間に通信して隊員たちと話して交流を深めようとする行動から、隊員たちからは不思議に思われ、カイエ・タニヤからは興味を持たれている。しかしクレナ・ククミラをはじめ、白系種に強い恨みを持つ者からは警戒されており、カイエの死をきっかけにセオト・リッカからも反感を抱かれてしまう。この際にセオトから、隊員の本名を一度も聞いていないことを指摘され、シンエイを通して彼らの名前を知ることになる。これ以来、各隊員のことはパーソナルネームだけでなくそれぞれの名前で呼ぶようになり、少しずつ彼らの過去や境遇を知りながら距離を縮めていく。シンエイとの会話を通して、幼少期に救ってくれた恩人がショーレイ・ノウゼンであったことを知る。身長は約160センチで、誕生日は7月12日。

クジョー・ニコ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの青年。スピアヘッド戦隊第4小隊に所属している。パーソナルネームは「シリウス」。明るい性格で、隊の雰囲気を盛り上げるのを得意としている。ヴラディレーナ・ミリーゼの着任前、仲間の戦死によって落ち込んだ部隊を盛り上げるためにお月見を提案したが、嵐で中止となった日の激しい消耗戦の中で、自走地雷の爆発に巻き込まれ戦死した。

ライデン・シュガ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少年。スピアヘッド戦隊の副隊長と第2小隊隊長を務める。パーソナルネームは「ヴェアヴォルフ」で、年齢は16歳。大人っぽい性格で兵士としても優れた実力を持ち、副隊長としてシンエイ・ノウゼンを支えている。出身はサンマグノリア共和国23区近辺。私立校を営む白系種の老婦人に、友人たちと共に5年ほど匿われていたことがある。スピアヘッド戦隊では唯一、自分の誕生日を覚えている。身長は約185センチで、誕生日は8月25日。

クレナ・ククミラ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少女。スピアヘッド戦隊第6小隊隊長を務める。年齢は15歳。赤毛と金色の瞳を持つ。射撃を得意としており、飛び出しざまに戦車砲の基部に狙撃ができるほど。これらの技術を生かして、前衛部隊を巧みにサポートしている。パーソナルネームは「ガンスリンガー」。サンマグノリア共和国北福都シャリテの衛星都市出身。86として強制収容所に送られた時に、目の前で共和国軍人に両親を嬲(なぶ)り殺しにされた過去を持ち、白系種に激しい恨みを抱く。このため、86との交流を試みるヴラディレーナ・ミリーゼを警戒し、反感を抱いている。シンエイ・ノウゼンにはひそかに思いを寄せている。身長は約160センチで、誕生日は5月6日。

セオト・リッカ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少年。スピアヘッド戦隊第3小隊隊長を務める。年齢は16歳。愛称は「セオ」。明るい茶髪で、小柄で中性的な風貌をしている。クールな性格で、少々口が悪く皮肉屋なところがある。パーソナルネームは「ラフィングフォックス」。サンマグノリア共和国南側の旧国境付近出身。絵を描くのが得意で、任務がない時はスケッチをしている。また、部隊のパーソナルマークも制作した。白系種に恨みを抱き新任のヴラディレーナ・ミリーゼも警戒していたが、カイエ・タニヤの死をきっかけに彼女に反感をあらわにし、自分たちの名前を一度も聞いていないことを指摘して偽善者と非難する。しかし本音では、カイエの死がヴラディレーナのせいではないことをわかっている。身長は約165センチで、誕生日は4月20日。

ハルト・キーツ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少年。スピアヘッド戦隊に所属している。シンエイ・ノウゼンが率いる第1小隊の隊員。茶髪の短髪で、下心を隠し切れないお調子者なところがある。明るくやんちゃな性格で、時おり部隊のムードメーカー的な役割を担っている。パーソナルネームは「ファルケ」。

アンジュ・エマ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少女。スピアヘッド戦隊第5小隊に所属している。年齢は16歳。薄紫色のロングヘアで、左目下に泣きボクロがある。お淑(しと)やかだが戦闘においては過激な一面を見せることがあり、特にミサイルを使った面制圧が得意。パーソナルネームは「スノウウィッチ」。出身はサンマグノリア共和国東部にある小都市。強制収容所では虐待を受けていたため、背中に無数の傷痕が残っている。ダイヤ・イルマのことが気になっている。レースを編むのが趣味。身長は約170センチで、誕生日は10月2日。

ダイヤ・イルマ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少年。スピアヘッド戦隊第5小隊長を務める。明るい金髪の短髪と碧眼を持つ。パーソナルネームは「ブラックドッグ」。優しい性格で、拾って来た黒猫の面倒を見ている。プライベートも任務中でも、なぜかその時の状況のしわ寄せを食らうことが多い苦労人。同じ第5小隊に所属するアンジュ・エマのことが気になっている。

カイエ・タニヤ

無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーの少女。スピアヘッド戦隊第4小隊隊長を務める。年齢は18歳。黒のロングヘアをポニーテールにまとめている。少年のような口調で話し、生真面目で任務も実直にこなすが、ユーモアあふれる気さくな性格の持ち主。パーソナルネームは「キルシュブリューテ」。86と交流しようとするヴラディレーナ・ミリーゼに興味を持ち、自分たちの暮らしについて話すなど、彼女に対して最初に心を開いていた。しかしその後の任務中に、レギオン・戦車型によって首をはねられて死亡する。頭部は素材として、レギオンに持ち去られた。のちに、レギオンに脳を取り込まれた黒羊となり、シンエイ・ノウゼンたちの前に現れるようになる。誕生日は4月7日。

レフ・アルドレヒト

スピアヘッド戦隊の整備班長を務める初老の男性。階級は中尉。消炭色の髪で、サングラスをしている。口調は厳しいが、スピアヘッド戦隊のことをつねに気にかけている。無茶をしてジャガーノートの足をよく壊すシンエイ・ノウゼンには、よく頭を悩ませている。離れてしまった86の妻と、娘の市民権を取り戻すために兵役に志願したが、負傷して前線を離れているあいだに、妻と娘が戦死してしまった過去を持つ。

ファイド

スピアヘッド戦隊の補給支援を行うサポートメカ「スカベンジャー」の1機。戦場に赴いて、主にシンエイ・ノウゼンがプロセッサーを務める無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」の支援をしている。ほかのスカベンジャーと同様に予備のエネルギーや弾薬の補充を中心に行っているが、優れた学習能力を持つ。隊員たちとの簡単な会話を可能としているほか、破壊された機体の部品回収や戦死者の遺品回収などもできることから、部隊のみんなにかわいがられている。激戦をくぐり抜けることで得た学習能力から、シンエイたちの言葉をよく理解し、単なる作業機械に留まらない能力で活躍している。全長3.1メートルで、全高2.5メートル。

アンリエッタ・ペンローズ

サンマグノリア共和国軍の技術大尉を務める少女。戦場で戦う86との通信手段として使われている知覚同調の開発チーム主任を務める。知覚同調技術とレイドデバイスの開発に携わっていた、有名な脳科学者であるヨーゼフ・フォン・ペンローズの娘でもある。ヴラディレーナ・ミリーゼの親友で何かと相談に乗っているが、86を思う彼女の行動にはあまり賛同できず、たびたび忠告している。お菓子作りを趣味としている。

黒猫 (くろねこ)

スピアヘッド戦隊の隊員が面倒を見ている黒猫。元はダイヤ・イルマが拾った猫で、戦車砲で親猫や兄弟猫を失ったところを彼に発見され、スピアヘッド戦隊隊舎で飼われるようになった。ダイヤたちからは正式な名前を付けられておらず、それぞれが「クロ」や「シロ」など思い思いの名前を付けている。シンエイ・ノウゼンに一番懐いている。

ショーレイ・ノウゼン

かつて、無人式自律戦闘機械「ジャガーノート」のプロセッサーとして兵役に就いていた青年。シンエイ・ノウゼンの兄で、愛称は「レイ」。赤毛に黒い瞳とシンエイとは正反対の容姿を持ち、眼鏡をかけている。家族思いで、優しく温厚な性格をしている。パーソナルネームは「デュラハン」。年の離れたシンエイを溺愛していたが、母親が戦死した時に些細な行き違いから、やり場のない怒りを彼にぶつけてしまったことがある。罪悪感が癒えぬままシンエイと離れて兵役に就き、前線の戦隊長を務める中で、撃墜された偵察機から生き残った幼少期のヴラディレーナ・ミリーゼを救出し、彼女が白系種とわかりながらも基地で保護して優しく接する。この際にヴラディレーナに対し、弟のシンエイのことや生き残って彼と再会したいという強い思いを語っていたが、東部戦線で戦死した。成長したシンエイに発見されたが、遺体の頭部はレギオンに持ち去られ行方不明になっている。身長は約180センチ。

ジェローム・カールシュタール

サンマグノリア共和国の軍人で、師団長を務める男性。階級は准将。9年前のレギオン襲来で壊滅した共和国正規軍の数少ない生き残りで、ヴァーツラフ・ミリーゼとは親友同士だった。最年少で少佐に昇進したヴラディレーナ・ミリーゼを高く評価し、スピアヘッド戦隊の指揮管制官に抜擢する。ヴラディレーナに期待を寄せる一方、白系種を中心とした共和国維持のために86を駒として扱うことを容認しており、86と人間的に接しようとする彼女の行動にはあまり理解を示さず、あくまで軍人として任務に集中するよううながしている。

ヴァーツラフ・ミリーゼ

ヴラディレーナ・ミリーゼの父親。サンマグノリア共和国の軍人で、階級は陸軍大佐。9年前のレギオン襲来で壊滅した共和国正規軍の数少ない生き残りで、ジェローム・カールシュタールとは親友同士。白系種の男性だが、有色種を差別し86として強制収容する差別政策には強く反対していた。強制収用の際に残虐行為に走る徴収兵を制止し、両親を殺害された86の子供を助けたことがある。当時10歳だったヴラディレーナに戦場を見せようと、偵察機を85区外へ飛ばした際、レギオン・対空自走砲型によって撃墜されて死亡した。差別政策に懐疑的な姿勢は、成長したヴラディレーナに引き継がれている。

集団・組織

スピアヘッド戦隊 (すぴあへっどせんたい)

サンマグノリア共和国軍の部隊。東部戦線第1戦区第1防衛戦隊で、レギオン戦隊との攻防が最も激しい東部戦線第1戦区に配備され、隊長はシンエイ・ノウゼンが務める。軍全体からベテランを集めた精鋭部隊で、生存率が著しく低いレギオンとの戦いに何年も生き延びた猛者が多く所属し、その大半は10代の少年少女である。その一方で、指揮管制官を務める士官たちが、知覚同調を通して死霊の声に囚われ精神が壊れてしまうという不可解な現象が発生している。ヴラディレーナ・ミリーゼはこれらの奇妙な噂がある部隊の指揮官として新たに着任し、前線で戦うシンエイたちの管理と指揮を担うことになる。

場所

サンマグノリア共和国 (さんまぐのりあきょうわこく)

全85区画の行政区から成る共和国。首都は第1区にある「リベルテ・エト・エガリテ」で、通称「共和国」。他国からの移民を積極的に受け入れる多民族国家として発展していたが、ギアーデ帝国の侵略が始まってからは、「白系種(アルバ)」と呼ばれている人種以外を差別・迫害し、白系種以外の「有色種(コロラータ)」は国外に隔離するという差別政策を断行した。ギアーデ帝国が差し向けるレギオンの侵攻に86の少年少女を矢面に立たせることで戦い続けているものの、すでにレギオンの完全包囲下にあり、国土の半分以上も失っている。しかし国民は、大要塞壁群の中で安全な暮らしをしているために詳しい戦況は知らず、表向きは戦死者も出ておらず優勢状態ということになっている。共和国正規軍は9年前のレギオン侵攻ですでに壊滅しており、現在危険な前線で敵と直接戦っているのは、正規軍ではなく86の少年少女たちである。

ギアーデ帝国 (ぎあーでていこく)

サンマグノリア共和国の隣国。レギオンの開発に成功し、周辺諸国に宣戦布告を行った大国で、通称「帝国」。もっとも先進的な技術と強大な軍事力を有しており、レギオンによって大陸を戦乱に導いた。しかし、侵攻を開始してからしばらくあとに、通信電波がすべて途絶。レギオンのコントロールに失敗して自滅したと推測されている。主を失ったレギオンはその後も止まることなく、軍が最後に出した命令どおり周辺国への侵攻を続けている。

その他キーワード

知覚同調 (ぱられいど)

指揮官と戦場の兵士が通信や意思伝達手段として利用している、サンマグノリア共和国の特殊技術。人類すべてが共有するといわれている「人類種族の潜在意識」を頼りに、聴覚を中心とする知覚を接続することができる。距離や地形の影響を受けず、さらにジャミングの影響も受けずに通信が行える。この技術を用いて戦場に指揮を出す者は「指揮管制官(ハンドラー)」と呼ばれており、最前線で戦う兵士たちに対し、戦場から遠く離れた共和国の中央にある第1区から指示を出す。しかし、大半の指揮管制官は86を人間として見ていないため、彼らの命を軽視している。

レギオン

ギアーデ帝国が開発した世界初の完全自立無人戦闘機械(ドローン)。斥候型(アーマイゼ)、近接猟兵型(グラウヴォルフ)、戦車型(レーヴェ)など複数の戦闘タイプが存在し、それぞれが編隊を組んで行動している。戦術や判断力は人間に劣るが、物量と機動性は優れている。優秀な自律AIや流体マイクロマシンの神経網が搭載されており、敵性勢力を殲滅(せんめつ)するという命令を実行しながら、周辺諸国に混乱と打撃を与え続けている。このため、サンマグノリア共和国以外の他国はほぼ滅亡し、開発元であるギアーデ帝国すらも自滅したと考えられている。

ジャガーノート

サンマグノリア共和国がレギオンに対抗すべく開発した無人式自律戦闘機械。正式名称は「M1A4 ジャガーノート」。表向きは無人機扱いだが、実際は戦闘用AIの開発に失敗しており、AIの代わりに人として扱われていない86が搭乗している「有人搭乗式無人機」である。搭乗員は「プロセッサー」と呼ばれ、人間の操縦士ではなくジャガーノートの情報処理装置、つまりジャガーノートの部品として扱われている。通常のプロセッサーはアルファベットと数字によるコールサインで呼ばれているが、生存率1パーセントの厳しい戦場を1年間生き抜いた古参兵は、パーソナルネームを名乗ることが許されている。

大要塞壁群 (ぐらんみゅーる)

サンマグノリア共和国を取り囲む巨大な建造物。多数の要塞が連なって壁のように見える。共和国の防衛の要であり、開戦後に86を強制動員することで建設された。外敵から共和国85区と国民たちを守る砦となり、さらにその周囲には地雷原や自律式地対地迎撃砲などが大量に設置されている。また、第1区の共和国軍本部を除けば唯一部隊も配備されている場所だが、戦闘は前線の86に任せているため、実戦経験は皆無である。もっとも危険な最前線であるスピアヘッド戦隊の基地は、この要塞線からおよそ120キロメートル東にある。

86 (えいてぃしっくす)

サンマグノリア共和国において、国外にある「86区」と呼ばれている特別区画に追いやられた人々。開戦前から白系種以外の有色種は「コロラータ」の蔑称で呼ばれ差別されていたが、開戦以来、有色種が86区に強制収容され、「86」として扱われるようになった。多くの白系種からは人間ではなく家畜同然に見られ、共和国民としての権利も剥奪されているため、死亡しても死者として計上されない。さらには、制御AIの実用化に失敗したジャガーノートにプロセッサーとして搭乗させられ、5年間の兵役を強いられる。しかしレギオンとの戦いは厳しく、その大半は最初の1年すら生き延びることができず、次々と戦死している。強制連行の際に白系種から酷い差別や迫害などを受けた者が多く、中には家族や仲間を白系種に殺された者もいるため、白系種を「白ブタ」呼ばわりして恨んでいる者が多い。

黒羊 (くろひつじ)

死んだ人間の脳を取り込んだレギオンのこと。通常、製造元のギアーデ帝国により、5万時間(6年弱)で制御中枢が自壊するように設定されているが、戦死者の脳組織を取り込むことで機能維持に成功したレギオンは、自壊することもなく動作し続けている。素材として取り込まれた者の意識などは残らないが、異能力を持つシンエイ・ノウゼンは黒羊と接触することで、素材になった死者の亡霊のような叫びが聞こえる。また、損傷の少ない脳を取り込んだ黒羊は「羊飼い」と呼ばれ、ほかのレギオンを指揮できるほどの知性を有する。

クレジット

原作

安里 アサト

キャラクターデザイン

しらび

メカニックデザイン

I-IV

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