概要・あらすじ
未来の地球に作られた都市、「6月都市」で賞金稼ぎをして暮らすハッカーのエドベリと、廃棄されていた脳から作りなおされたサイボーグのエンヤ。エドベリが、封印されていた記憶を取り戻した時、人類史に干渉を行っていた精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)の存在が明らかになる。
外宇宙から来て、地球で遭難してしまった彼らは、人類をコントロールして、自分たちの帰還に用いるための「新種」を創りだそうとしていた。同時にエンヤは、自分の脳が「人間脳」と「人工脳」の結合体であることを知る。E・Eと戦おうとするエドベリ、人工知性と本来の自我の間で揺れつつエドベリを慕うエンヤ、彼らの思惑と激しい行動が錯綜し、物語は地球の歴史が動き変貌する方向へ進んでゆくのだった。
登場人物・キャラクター
エンヤ
脳だけで捨てられていたが、ハッカーのエドベリに拾われサイボーグとなり、エンヤという名前を付けられる。黒髪ショートカットの少年のボディ(推定年齢16歳)を与えられているが、脳のDNAは女性。当初は、地球の「6月都市」で賞金のかかった犯罪者を捕える仕事をエドベリと組んでやっていた。 ある日、ルシフェルと名乗る男がエンヤの前に現れ、エンヤはかつて、軍の研究施設で、人間の脳に人工脳を補完させて、より高度な情報処理を可能とするための実験体だったと告げる。ルシフェルとエンヤを含め、人工神経で繋がれていた実験体の兄弟たちは全部で5体おり、それぞれ悪魔の名前が与えられていた(ベルビュート、サタン、ルシフェル、ベリアル、アスタロトの5体で、エンヤがアスタロト)。 エンヤは「守護戦車(ガーディアン)」と呼ばれる兵器の中枢に配置されるが、部隊が任務の遂行に失敗して破壊され、廃棄物になった。エドベリが過去の記憶を取り戻し、失踪してしまったあと、エンヤはルシフェルの庇護のもとに入り、ルシフェルが王博士(わんはかせ)という偽名を使って運営する一星重工(いちぼしじゅうこう)の研究所で、最新の戦闘用ボディを手に入れる。 その後、エンヤはエドベリの敵である精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)と戦い、彼女の人間脳はE・Eにのみ反応するPSI能力を持っており、E・Eの求めていた「新しい種」であることが判明した。 だが、同時に彼女の人工脳部分の意識はE・Eに致命的な害を与えるものであることも判明した。一途にエドベリを想い、彼を助けたいと願うエンヤは、E・Eとのさらなる戦いの場へ足を踏み入れるのだった。 研究施設に入れられる前の名前は、アシェラ。
イリイ・C・エドベリ
金色の長い髪をした長身の青年。年齢は20代なかば。アルコール依存症気味で、ヘビースモーカー。当初は、地球の「6月都市」でハッカーや賞金稼ぎをしていた。そして、その前は犯罪組織「地獄の亡霊(コンデナード)」でハッカーをやらされていた。「飛び首(ウミタ)」はその時の呼び名。 (コンデナードもウミタも南米系の言葉)。首のうしろに、コンピュータと直接接続できるコネクターがある。8年前に家族を殺され、自分も宇宙に放り出されたという過去がエドベリにはあり、その犯人に復讐を誓っていたのだが、真相を追っていくうち、より大きな事実にたどり着く。実は彼は、56年前に月面で精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)と初めて接触した男、ナシル・エリィのクローンであった。 ナシルは、はじめは権力と引き換えにE・Eのために働いていたが、E・Eが地球や人類を支配・コントロールし、さらにその魂を食料にしているのを知り、抵抗を決意する。だが、その途端殺されてしまい、月植民地「レグルス」で準備されていたクローンが覚醒する。 これがエドベリで、ナシルの人格を隠すために別の人格データを上書きされていた。記憶を取り戻し、E・Eとの戦いにエンヤを巻き込むまいと失踪したが、エンヤがE・Eの求めていた「新しい種」であることがわかると、彼女を擁護しようとした。 しかしE・Eによって引き離されてしまい、長い戦いは続いている。記憶を取り戻してからは、念動力やテレポート能力を使えるようになる。
伯爵 (はくしゃく)
ハッカーで人工知能研究者。身体のほとんどを機械化している。生身が残っている顔は、老いた容貌の男性に見える。普段は女性型アンドロイドのマデリーンに、サイボーグやアンドロイド専門の闇医者をやらせているが、特別に呼ばれた時のみ、上の階から降りてくる。 ウィルスで機能停止したエンヤが世話になった。その後も度々人工知能がらみの話で登場する。
ハロルド
賞金稼ぎ。サイボーグで、ガッシリとした体格の黒髪の青年。左目を機械化している。トパーズという個体名称の、殺人アンドロイド(ジウリア型)を追っていて、エンヤとエドベリに遭遇する。メカフェチで、探査装置などがぎっしり詰まった車に乗り、自分や他のサイボーグの部品にとてもこだわっている。 ソニックというアンドロイドの相棒と組んでいる。
ソニック
賞金稼ぎのハロルドの相棒。アンドロイド。外見は業務用の「ローダー」だが、中身は禁止された「ジウリア型」。容貌は金髪の青年で、美形。「ジウリア型」なので、人間並みの人格を持ち、そのせいかいろいろ悩む。しかし、ハロルドはあまりアンドロイドの自我を認めていない。 なお作品中では、「人形」と書いて「アンドロイド」とルビが振られていることが多い。
ルシフェル
長身で黒い長髪の、アジア系の青年の容貌をしたサイボーグ。軍の研究施設でDr.ヘイズによる「人工脳の補完に人間の脳を使う」研究の過程で作られた、5人の実験体の3番目(5番目がエンヤ=アスタロト)。人工知能たちだけの国を作ろうとしており、昔の仲間としてエンヤを誘いに来た。 月の中央市(セントラル)にある、一星重工(いちぼしじゅうこう)の研究所を、ルシフェルは王博士(わんはかせ)という偽名を使って運営しており、アンドロイドたちや人工生命(A-Life)のシンパたちが働いている(エドベリ失踪後は、エンヤがここの世話になる)。 特にエレクトリック・エリィ社(E・E社)が、人工生命を迫害しようと工作を行っているので、水面下でそれへの対抗措置を取っている。ルシフェルは最終的に、自分の人間の脳のデータをすべて人工脳へ移してしまい、人工生命だけで外宇宙へ旅立つことを予定している。ヴァラクという人形のような小さいアンドロイドを、よく連れ歩いている。
クエロ
エドベリがかつて所属していた犯罪組織「地獄の亡霊(コンデナード)」の幹部。自ら「男娼上がり」と自嘲的に話す、女装をした若い男。要人暗殺に、足を洗ったエドベリを使ったつもりが、エドベリ=ナシルとエレクトリック・エリィ社(E・E社)との抗争に巻き込まれる。 このあと地獄の亡霊(コンデナード)から追われ、「グェスティア」という犯罪組織の頭目になっている。さらに、精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)と接触した時、「自分はアンバーで、爬虫類をベースに作られた実験体だった」という封印していた記憶が蘇り、そのような状況をもたらしたエドベリ=ナシルを逆恨みし、エドベリの命を狙う。 クエロは南米系の言葉で、「皮の化物」を表す。
蠍虫姉妹 (しえずしまい)
黒蠍虫(ヘイシエズ)<中国語>と紅蠍虫(ホンシエズ)の二人の女性型サイボーグ。「姉妹」と呼ぶが、実際は一人の脳を右脳と左脳に分け、それぞれに機械の身体を与えた実験体。エレクトリック・エリィ社(E・E社)の闇部署アンバーで作られた。二人とも、モノアイのような装置を顔につけている。 体から出ている、細い触手状の毒針で攻撃する。クエロに雇われた。
レイドラ
表向きはナシル・エリィ亡き後のエリィ財閥総領の金髪の女性だが、実際はナシル・エリィの孫の身体に、精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)が憑依したもの。エドベリ=ナシルの抹殺と、自分たちが母星に帰還するために必要な、「新しい種」であるエンヤの奪取を目論んでいる。
シファ
姿はナシル・エリィのひ孫の若い女性だが、実際は精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)が憑依したもの。エドベリ=ナシルの抹殺を引き受け、合成生命体のビーストとともに月に降りる。月でエドベリだけでなく、一星重工(いちぼしじゅうこう)の研究所で、最新の戦闘用ボディを手に入れる。 その後、エンヤのPSI能力の発現である「巨大な天使の羽」を目の当たりにして興奮する。ビーストとシファは、結局エンヤとエドベリのタッグに負けてしまうが、その後も月を襲う。
ジガー
若い男性の身体に憑依した、精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)の一人。クエロと組んで、エドベリを捕獲し、さらにエンヤも捕まえようとする。
ギー
月の中央市(セントラル)にある、一星重工(いちぼしじゅうこう)の研究所に所属する、若い男性の容貌をした戦闘用アンドロイド。人工生命を迫害しようとするE・E社の工作員と戦う。アンドロイドだが自我があり、いろいろ悩む。左の頬に、認識票が付いている。
エターナル・エクジスタンス (えたーなるえくじすたんす)
『GLAMOROUS GOSSIP』に登場する生命体。精神生命体。まだ灼熱のマグマにまみれていた太古の地球に、彼らの乗った宇宙船が激突し、彼らの本体である鉱物が月に取り込まれ、自由に動けなくなってしまう。仕方なく、彼らは地球の生物の進化に干渉し、自分たちの手足となるような人類を発生させた。E・Eは、人類の科学技術を発展させて月まで呼び寄せることに成功する。 協力者としてナシル・エリィを選び、彼にエレクトリック・エリィ社(E・E社)を設立させ、以後人類を掌握する。母星フィルダウスへの帰還を何億年もの間切望しており、帰還に必要な「新しい種」を人類から生み出そうとしている。人間社会で行動する際は、人間の肉体に入って行動する。 特別なことがない限り、巨大衛星キリエの内部にいる。エネルギーを使い果たすと、長い眠りに入る。E・Eは人間の精神を食らうが、アンドロイドなどの人工知性の精神は反物質のように働き、E・Eと融合すると消滅する。
集団・組織
エレクトリック・エリィ社 (えれくとりっく・えりぃしゃ)
『GLAMOROUS GOSSIP』に登場する組織。精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)の指示でナシル・エリィが設立した会社。E・Eのオーバー・テクノロジーで、超人工頭脳「ERIE(エリィ)」を作り、あっという間に地球経済に君臨する存在となった。作品中ではエリィ財閥の管理する企業の一つになっている。 非合法部署の一つに「アンバー」があり、E・Eに敵対する存在やE・Eに害をなす人工知能を持つアンドロイドらを迫害・排除しようとする。「アンバー」は、様々なサイボーグやクローンの実験体を作っており、実験体の脳には短い寿命がセットされている。
場所
キリエ
『GLAMOROUS GOSSIP』に登場する施設。エレクトリック・エリィ社(E・E社)によって建造された、巨大な人工衛星。ラグランジェ・ポイントの一つに存在している。精神生命体E・E(エターナル・エクジスタンス)の棲み家。内部には様々な実験設備や、E・Eが生息できる電脳空間を内包する施設がある。