大阪環状結界都市

大阪環状結界都市

「Oシステム」と呼ばれる防犯システムが大阪環状線に活用されている近未来の大阪が舞台。存在を隠されてきたモンスターのみぎわもんに触れることで、15年前に起きた妹の坂上しおりの行方不明事件の真実に迫っていく女性警察官、森かなたの活躍を描いたSFパニック作品。

正式名称
大阪環状結界都市
ふりがな
おおさかかんじょうけっかいとし
作者
ジャンル
モンスター・異生物
 
その他SF・ファンタジー
関連商品
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世界観

近未来の大阪が舞台。大阪環状線に「Oシステム」と呼ばれる防犯システムが導入され、痴漢やスリなどの犯罪を厳しく取り締まっているほか、道頓堀でのナンパも禁止されるようになった。また、2036年には大阪でのオリンピック開催が予定されている。一部の人間には「みぎわもん」と呼ばれるモンスターが認識されており、みぎわもんを実体化させることのできるはつみや、みぎわもんを倒す組織「さかみ」などが存在する。

あらすじ

第1巻

大阪府警察に勤める森かなたは、大阪環状線で痴漢行為を発見し、その実況見分のために防犯システム「Oシステム」のビューアーを使用していた。しかし、その最中にシステムエラーが発生し、痴漢の証拠をつかめぬまま痴漢の犯人を帰宅させてしまう。納得のいかないかなたは、Oシステムの管理および運営などを一手に引き受けている国立研究開発法人Oシステム総合研究所に乗り込む。だがかなたは、そこで出会った野坂広夢に目をつけられてしまう。

第2巻

Oシステムが防犯のためのシステムではなく、本来みぎわもんというモンスターを国立研究開発法人Oシステム総合研究所に送信するために作られたことを知った森かなたは、野坂広夢の思惑によって、痴漢などの実況見分を行うと同時にみぎわもんの退治をすることになった。そんなかなたをたまきが生み出した、みぎわもんを実体化させる能力を持つ能力者のはつみが襲撃する。

第3巻

森かなたは妹の坂上しおりと再会した直後、たまきに捕縛されてしまう。古代の世界を大阪環状線で廻り続ける「大阪環状シミュレーション」に意識を囚われ、かなたは生き別れた頃のしおりとの旅を楽しむ。しかし、共にたまきに囚われたヨースケによって、なんとか正気を取り戻し、たまきの本拠地から脱出を試みる。

登場人物・キャラクター

森 かなた (もり かなた)

大阪府警察京橋署に勤務する警察官の女性。階級は巡査長。肩まで伸びた黒髪にシャギーを入れている。両親が離婚したため、母親の姓を名乗っている。15年前、いっしょに大阪環状線に乗っていた妹の坂上しおりが、目の前から忽然と消えたことをきっかけに警察官を志した。防犯システム「Oシステム」の録画記録を利用して、痴漢やスリなどの犯罪の実況見分を行う「O課」に所属している。痴漢の実況見分中、Oシステムの記録が破損しているとのエラー告知を受け、立腹して国立研究開発法人Oシステム総合研究所に乗り込んだ。また、システム管理者権限を使用するためのパスワード入力ウィンドウで、気まぐれに「shiori」と打ち込んだところ、管理画面に入ってしまい、Oシステムに現れたみぎわもんの存在を知った。しおりからは「かなっちゃん」と呼ばれている。

野坂 広夢 (のさか ひろむ)

防犯システム「Oシステム」の開発者であり、天才といわれている男性。茶髪のロングヘアにしている。さかみの本家を継ぐ長男で、本来は当主の座についているはずだったが、みぎわもんを顕現させてしまうはつみの目を抉ることで、最速の対処をしようとするさかみのやり方に納得できず、縁を切った。しかし、みぎわもんに対処する志を同じくしているという点において合意し、情報の交換のみを行っている。目を抉られたあとでもはつみとしての感覚が残っている叔母の小坂さとみの感覚を利用し、Oシステムを作り上げた。ふだんは標準語で話すが、感情が高ぶると関西弁になる。阿藤カツ子からは「ぼん」、網坂磨砂流からは「野坂っち」と呼ばれている。

坂上 しおり (さかがみ しおり)

森かなたの妹。15年前、大阪駅へ向かう大阪環状線の中で行方不明になった。ロングヘアの両サイドを三つ編みにしていた。かなたの妹だが、当時は両親が離婚していなかったために父親の姓を名乗っている。類い希なる力を持ったはつみで、顕現させたみぎわもんに命令して行動させることができる。幼い頃からみぎわもんが見えているが、母親からもウソつき呼ばわりされるために誰にも相談できずにいた。行方不明になった日、無事に大阪駅に着けばさかみによって目を抉られることを知った野坂広夢によって、秘密裏に保護されていた。防犯システム「Oシステム」に組み込まれている人工知能「HTAI(はったい)」は坂上しおりの知覚を再現したもの。そのため、国立研究開発法人Oシステム総合研究所内にあるビューアーでは、記録されたみぎわもんがすべて実体化する。野坂への知覚提供後に本来は帰宅する予定だったが、芦屋道利によってさらわれた。その後、芦屋を父親として慕って育ち、おおはつみを実体化させることが世界を救う方法だと信じている。大人になってからはベリーショートヘアにしている。

幸島 (ゆきしま)

私設のみぎわもん対策会社「フェニックス警備」に勤める男性。長身で体格もいいため、初対面の人間すべてが威圧される。国立研究開発法人Oシステム総合研究所の警備員としても働いており、つねに野坂広夢の手足となって動いている。先祖はさかみの指令によって役行者に弟子入りした修行僧で、さかみの分家筋の当主として刀術を受け継いでいる。野坂を主君として忠誠を誓っている。森かなたからは当初「黒服」と呼ばれており、網坂磨砂流からは「ユッキー」と呼ばれている。

網坂 磨砂流 (あみさか まさる)

私設のみぎわもん対策会社「フェニックス警備」に勤める青年。茶髪のロングヘアで、複数のピアスをつけた遊び人っぽい、チャラい見た目をしている。名目上は野坂広夢の指令でみぎわもんと戦っているが、基本的には一匹狼で、さかみには属していない。周囲には自ら「アミ」と呼んでくれと申し出ている。

阿藤 カツ子 (あとう かつこ)

私設のみぎわもん対策会社「フェニックス警備」に勤める老齢の女性。十三の妹。ライダースーツにスカーフ、頭にバンダナを巻いている。みぎわもんと戦うさかみだが、10代で当時のさかみのやり方に愛想を尽かし、出奔した。みぎわもんと戦う際は、主にアーチェリーを使用する。自動運転AIのヨースケが搭載されたバイクに乗っている。また、ヨースケは野坂広夢が開発しており、10年前に死んだ阿藤カツ子の夫の人格がそのまま組み込まれている。かつて夫婦でバイクショップを営んでいた。戦時中、空襲から逃げる最中にみぎわもんを発見し、見るだけでみぎわもんを消滅させたと十三が証言している。網坂磨砂流からは「カッツン」と呼ばれている。

ヨースケ

阿藤カツ子のバイクに搭載されている自動運転AI。10年前に死んだカツ子の夫の人格そのものだが、カツ子はあくまで夫ではないと拒絶し、気に入らないと言っている。ふだんはカツ子によってAIビジュアルがオフモードに設定されているが、オンになると作業着を着て頭にバンダナを巻いた、ヒゲ面の男性の姿になる。森かなたと共にたまきに囚われた際には、たまきのシステムに侵入し、かなた救出に尽力した。

ウサギ

ウサギのぬいぐるみの形をしたみぎわもん。少々ゴツゴツしており、幼少期の森かなたからはかわいくないと言われていた。坂上しおりの言葉によって、ウサギの形になった。しおりが行方不明になってからは、ずっとしおりの部屋に放置されていたが、かなたが持ち出したことで再び動くようになった。かなたの声としおりの声を聞き間違えており、かなたの指示にも従う。しおりからは「ビリケンさんのようにじっとして動かないウサギ」という意味で「ウサケンさん」と呼ばれている。

佐々木 慎二 (ささき しんじ)

大阪府警察京橋署に勤務する警察官の男性。O課の課長を務めている。痩せた体型で、眼鏡をかけている。以前から上から目線で対応してくる国立研究開発法人Oシステム総合研究所には腹を立てており、防犯システム「Oシステム」のビューアーが痴漢の実況見分中にエラーを出したのを幸いに、森かなたに乗り込ませた。坂上しおりが行方不明になった事件では、幼かったかなたの証言の聞き取りを行っており、その頃からかなたを見守り続けている。Oシステムが本来、大阪環状線の治安維持のために作られたものではないことを知ると、だまされていたことに激怒した。

萩野 (はぎの)

大阪府警察京橋署に勤務する警察官の男性。O課に所属している。階級は巡査。ウェーブがかった短髪にしている。森かなたと共に防犯システム「Oシステム」を使って痴漢現場の実況見分をしていた際、ビューアー内に現れたみぎわもんによって大ケガを負わされた。入院中からずっとみぎわもんに関する発言を禁止されていたが、芦屋道利がさかみの本拠を襲撃して以降、かなたからOシステムの真の存在理由を聞かされ、みぎわもんに関連しそうな事件の情報を洗い出す手伝いをしている。

橘 薫流 (たちばな かおる)

大阪府警捜査四課に務める男性。非常に恰幅がよく強面で、ヤクザ者にしか見えない。森かなたの同期で、かなたとは仲がよく、いっしょに飲みに行っていた。一度みぎわもんと対峙した直後のかなたを目撃しており、その時には現場の惨状が人間業ではできないことを理解したうえで、かなたが犯人なのではないかと疑ってしまう。

小坂 さとみ (こさか さとみ)

さかみ本家の離れで暮らしている女性。野坂広夢の叔母で、長い黒髪を高い位置でシニョンにまとめており、その一部をポニーテールのようにしている。元はつみだが、さかみの人間に目を抉られ、盲目となった。しかし現在も、みぎわもんの気配を察することができる。

芦屋 道利 (あしや みちとし)

たまきのリーダーを務める男性。陰陽師として知られる蘆屋道満の子孫。白髪交じりの長い黒髪をうなじでまとめている。はつみの能力を化学的に解明およびコピーして、誰でも擬似的にはつみの能力を使えるようにした。かつてはautumn-10で、はつみの知覚について野坂広夢と共同研究を行っていたが、野坂に研究成果を奪い去られたと話している。野坂によって一時的に保護され、研究に協力後の坂上しおりを誘拐した。しおりを育て上げたことから、しおりからは義理の父親として「おとうさん」と呼ばれている。

十三 (じゅうぞう)

阿藤カツ子の兄。さかみのリーダーを務めている。禿頭で、作務衣を身につけている。本来は野坂広夢がリーダーだが、野坂がさかみと縁を切ったため、残っているメンバーを取り仕切っている。古来からのさかみのやり方を貫いており、はつみだと判明したものの目を例外なく抉っている。しかし第二次世界大戦中、カツ子がはつみではないかと疑いをかけられた際には必死にかばったこともある。

集団・組織

さかみ

みぎわもんを退治している組織。1300年ほど秘密裏にみぎわもんの対処をしており、堀江に本家を構えている。表向きには江戸時代から続く目薬屋として知られ、坂見商事という薬問屋も経営している。本来ははつみの逆で、見るだけでみぎわもんを消すことができる者のことを「さかみ」と呼ばれていた。安倍晴明が本物のさかみだったとされているが、現在の組織としてのさかみには、本物のさかみはいない。

たまき

芦屋道利が率いる、みぎわもんをあやつろうと考えている組織。もともとはさかみに仕える組織だったが、250年前、平賀源内が発明したエレキテルを知り、みぎわもんをあやつる研究を始めたとされている。おおはつみを実体化させて大阪を破壊することを目的としており、はつみである坂上しおりの能力を科学的に解明およびコピーし、多くのみぎわもんを実体化させている。

場所

国立研究開発法人Oシステム総合研究所 (こくりつけんきゅうかいはつほうじんおーしすてむそうごうけんきゅうじょ)

防犯システムOシステムの開発および運営から解析に至るまで、すべてを掌握している組織。学研都市に広大な敷地の研究所を構えている。内部には重厚な扉で守られたOシステムのビューアーがあり、全自動でみぎわもんを処理する場として活用されている。

autumn-10 (おーたむてん)

播磨の山間部にある放射光施設。ドーム状のメイン施設を中心に複数の建物からなる施設で、巨大な環状蓄積リングで加速させた強烈な光を使用して、極小の世界を視認することでさまざまな研究を行っている。野坂広夢と芦屋道利は、ここではつみの目が持つ特殊な光需要色素タンパク質について共同研究を行っていた。

その他キーワード

Oシステム (おーしすてむ)

大阪環状線車両内で起きたことを、すべてスキャンおよび記録するシステム。車両内の天井と床に2本ずつ溝が走っており、特殊カメラと不可視光が乗客たちを3Dスキャンしている。線路の途中には中継施設として黄色いゲートが建っており、データをリアルタイムで送信している。例え警察であってもOシステムのデータを容易には閲覧できない。警察などの施設内には巨大な立体ビューアー装置が置かれており、痴漢やスリなどの犯罪を、その場に居合わせたように間近で実況見分することができる。本来は環状線から外に出ようとするみぎわもんをデータとして捕捉、国立研究開発法人Oシステム総合研究所に転送し、人工知能「HTAI(はったい)」がビューアーにビジュアライズして、処分するために作られた。

みぎわもん

大阪に湧いて出るモンスター。2000年前まで海の底にあった大阪に、砂の層ができる際の命のうごめきが正体だとされている。幻のようなものだが、それをはっきりと視認できるはつみが見ることによって実体化する。一部だけでもはつみが見てしまうと、あとは誰が見ても実体化が進む。大阪環状線自体がみぎわもんに対する結界となっており、環状線の内側で発生したみぎわもんを閉じ込めている。形状や特性から「アミダ」「ウラジロ」「ワニ」などの区分が存在する。

はつみ

みぎわもんを見て、実体化させることができる能力者の総称。坂上しおりや小坂さとみがこれにあたる。さかみははつみを見つけると、みぎわもんの出現を減らすために目を抉る対処法を取る。野坂広夢はこのやり方に反発し、はつみの目を抉らずともみぎわもんに対処できるようにと、防犯システム「Oシステム」を開発、大阪環状線の治安維持のためという表向きの理由をつけて実用化させた。たまきはおおはつみを顕現させるため、多くのはつみを人工的に作り出した。

おおはつみ

大阪の地下に眠っているとされる、巨大な目の形をしたみぎわもん。このおおはつみが、みぎわもんのもととなる命のよどみを見ることによって、地上にみぎわもんが湧いて出る。おおはつみが実体化すると「時の輪」と呼ばれるものが完成し、大阪環状線の内側にいる者は過去にいけるとされている。そのため、たまきに所属している者たちからはタイムマシンのようなものだと考えられている。

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