Im~イム~

Im~イム~

棺より目覚めた伝説の大神官、イムホテプと神々の紛い物「マガイ」の戦い、そして創世神話の謎を描くエジプシャン・ファンタジー作品。古代エジプトに実在した神官のイムホテプをモデルとするキャラクターをはじめ、エジプト神話の神々が登場する。「月刊少年ガンガン」2015年2月号より連載の作品。

正式名称
Im~イム~
ふりがな
いむ
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

3000年前に神々の逆鱗に触れた事で世界から追放され、エジプトで封印されていた大神官のイムホテプは、アメン神官団により長き眠りから目覚める。イムホテプは神々の紛い物「マガイ」を祓う事を、九柱神から命じられる。日本に渡った彼は、幼少期に声を失った少女の羽羽方陽乃芽と出会い、陽乃芽の声を奪った原因が「マガイ」である事をすぐに見抜く。そして「呪いの館」と呼ばれる羽羽方家に赴き、彼女に取り憑いた「マガイ」を祓おうと試みる。イムホテプは彼女に取り憑いていた炎の「マガイ」であるマガイ・セクメトを祓う事に成功し、そのまま羽羽方家に居候するようになる。そしてイムホテプは「マガイ」をすべて祓うため、仲間と共にさまざまな戦いに身を投じていく。

第2巻

御空神社に現れた御空晴吾は、幼少期に「マガイ」に家族を殺された過去を持ち、「マガイ」が生まれた原因を作ったイムホテプの事を恨んでいた。晴吾との戦いをきっかけに、イムホテプは新たな決意を胸にする。その後、アメン神官団エジプト本部よりコンスが羽羽方家に来訪する。コンスの話を聞いたイムホテプは、親友であるジェゼルの肉体が、アメン神官団によって封印されている事実を知る。イムホテプは3000年前のジェゼルとの過去、そして禁忌を犯して「マガイ」が生まれる原因となった、凄惨な悲劇を語り出す。

第3巻

九柱神から下ったイムホテプへの新たな使命は、記録抹消大魔法を使ってジェゼルの存在をこの世から消滅させる事だった。羽羽方陽乃芽達を守るため、ジェゼル復活の阻止を決意したイムホテプだったが、復活してマガイの王となったジェゼルに遭遇する。ジェゼルは神を殺して世界を作り変えようと、イムホテプを仲間に引き込もうとする。再び親友のジェゼルと戦う事になったイムホテプだったが、わずかな迷いが生じ、彼への攻撃を躊躇してしまう。御空晴吾達と共にジェゼルと戦うものの、土人形でできたジェゼルの肉体は尽きかけ、その場を立ち去ってしまう。

第4巻

退院したイムホテプ御空晴吾は、コンビを組んで「マガイ」の回収を再開していた。アメン神官団日本支部に戻った晴吾は、同期の稲羽白達と再会する。そんな頃、アメン神官団の神官が次々と行方不明になる事件が起こり、晴吾達が父親と慕う日本支部長の八咫黒烏が何者かに誘拐されてしまう。事件の裏には、マガイ教によって復活させられた古代エジプト女王のクレオパトラの影があった。晴吾は八咫を救うために、イムホテプやラト達とチームを組んで砂鳥港に向かう。その道中の砂丘で、彼らはクレオパトラとマガイ教に遭遇する。

第5巻

八咫黒烏を救うため、イムホテプ御空晴吾達と共にマガイ教のアジトに乗り込んでいた。その中で15年前に御空神社で起こった、「マガイ」に関する事件と、八咫の過去が判明する。一方クレオパトラは、八咫の中に封じられている「マガイ」を復活させる事で、アメン神官団への復讐を目論んでいた。そして15年前に八咫の体に封じられていたマガイ・セトがついに復活し、世界に災厄を巻き起こし始める。イムホテプ達は協力して戦い、マガイ・セトを止める事に成功する。しかし、イムホテプが「マガイ」に関する情報を引き出そうとした瞬間、九柱神の一人であるセトが降臨する。

第6巻

八咫黒烏救出の任務から帰ったイムホテプは、延期となっていたエジプトへの帰還が決定し、その送別会が羽羽方家で行われる事になった。送別会のあと、羽羽方陽乃芽羽羽方麻柊と共にエジプトに行く事になる。そしてエジプトへと辿り着いたイムホテプ達は、アメン神官団エジプト本部へ向かう道中、上位神官のユートと出会う。観光を楽しみながら目的地へ向かう一行だったが、レストランで荷物が盗まれる事件が発生する。御空晴吾達はその犯人を追い詰めるが、犯人の体には謎のアザが浮かび上がっていた。

第7巻

ラムセス2世との戦いの中で、仲間を守りたいという強い思いを黄金の炎に変えた、羽羽方陽乃芽の力が覚醒する。かつて自分を蝕んだマガイ・セクメトの力をあやつり、ラムセス2世に立ち向かう陽乃芽だったが、戦いの途中で魔力を使い果たしてしまう。一方、アヌビス八上姫子黒アザの薬を発見し、イムホテプ達の任務は終了となる。ホテルに戻ってそれぞれが体を休める中、イムホテプ羽羽方麻柊に話を聞き、陽乃芽の出生の秘密と彼女の母親、羽羽方ひまわりについて知る。

第8巻

マガイ教の策略によって黒アザの薬がばら撒かれ、アメン大司祭国家の祭りでは、次々と人間が「マガイ」化していた。そんな中、羽羽方陽乃芽ハピによって連れ去られてしまう。「マガイ」の被害を止めようとするイムホテプは、アメン神官団エジプト本部の神官達と共に、「マガイ」化した人間を殺す事なく回収しようとする。一方、連れ去られた陽乃芽はユートの兄、アゥシルのもとで目覚める。アゥシルは陽乃芽に宿るマガイ・セクメトの炎を使い、人類の浄化を目論んでいた。

第9巻

アメン大司祭国家で起きた悲劇から数日後、気絶していたイムホテプは眠りから目覚める。しかし、人間が「マガイ」化した悲劇はすべて「なかった事」になっており、イムホテプが気絶しているあいだに、記録抹消大魔法が使われた事が判明する。その夜アメン大司祭国家では、悲劇を忘れるためのささやかな祭りが開催される。イムホテプは自分の中に潜む「もう一人の自分」の存在に悩む中、アポフィスからジェゼルを助け出したいという気持ちを、羽羽方陽乃芽に打ち明ける。そして九柱神と謁見し、アポフィスの目的を知ったイムホテプは、月の神殿に赴き、トトと対面する事となる。

第10巻

トトと対面したイムホテプは、ジェゼルを助けたいという思いを仲間に打ち明け、稲羽白達と改めて和解する。そんな中、コンスがジェゼルの遺体を持ち去ったという情報が舞い込む。コンスの動きの裏では、アポフィスを中心としたマガイ教が糸を引いていた。そしてイムホテプ達はヘシレラトの話を聞き、コンスの過去と彼が神々を恨み続けてきた理由を知る。イムホテプ達はコンスを追ってアポフィスの目的を阻止するため、羽羽方陽乃芽の力を借りてアポフィス達が潜む「原初の丘」へ突入する。

登場人物・キャラクター

イムホテプ

3000年前の古代エジプトにて、トトに仕える大神官だった少年。愛称は「イム」。褐色肌に、犬耳が生えた黒い帽子をかぶっている。九柱神の逆鱗に触れ、長らくエジプトで封印されていたが、九柱神とアメン神官団によって目覚めさせられ、新人下位神官として世界中に蔓延(はびこ)る「マガイ」の討伐を命じられる。さまざまな魔術を得意としており、お祓い箱によって回収した「マガイ」の力を、自身の魔術として使う事ができる。日本に渡って羽羽方陽乃芽と知り合い、彼女のマガイ・セクメトを祓った事をきっかけに、羽羽方家に居候するようになる。またのちに羽羽方家にやって来たアヌビスを弟子に取っている。3000年前に出会ったジェゼルと親友になり、ジェゼルがファラオに即位した際は宰相となり、共に平和な国を作る事を夢見ていた。しかしジェゼルが持つ生贄の[宿命]から彼を救おうとした際に、禁術「記録抹消大魔法](dv2jazx1a)」に触れ、「マガイ」が世に蔓延る原因を作り出した過去を持つ。このため、「マガイ」の被害に遭った一部の人間からは恨まれている。代々「トトの子」と呼ばれる神官の一人で、幼少期から、本を読んだだけですぐに内容を把握できるなど異常な学習能力を持っており、一部の人々から気味悪がられていた。このため、ジェゼルに出会う前は人との接触を避けていた。実在の人物、イムホテプがモデル。

羽羽方 陽乃芽 (はわかた ひのめ)

本作のメインヒロインの女子高校生。年齢は15歳。父親の羽羽方麻柊と二人暮らしをしている。8歳の頃に声を出すと炎を吐く謎の現象が起こり、周りから気味悪がられるようになる。このため他人との接触を長らく避け続け、学校でも孤立していた。イムホテプがマガイ・セクメトを祓った事により声を取り戻し、彼に気に入られて友人となる。また、声を取り戻した事をきっかけに、それまで接触を避けていた白花こぶしと親友となる。当初は厄介事を持ち込むイムホテプを毛嫌いしていたが、徐々に彼を信頼するようになる。のちにイムホテプ達とエジプトに渡った際、ラムセス2世との戦いをきっかけに覚醒する。これによりマガイ・セクメトの力をあやつれるようになり、ユートとの修行を経て、太陽の魔力を宿した黄金の炎で戦うようになる。

アヌビス

本作のマスコットキャラクターで、冥界の番狼、アヌビス神の子犬。神官のもとで修行を積み、将来は最強の守護神「マスター・アヌビス」になる事を目標としている。しかし不器用なため失敗が多く、神官やほかのアヌビス神からは役立たず呼ばわりされていた。アヌビス神よりイムホテプの監視を命じられ、日本に渡ったイムホテプを追い、彼に弟子入りする。エジプトに帰還した際にアゥシルとハピとの戦いをきっかけに覚醒し、死霊をあやつれるようになる。体は小さいが仲間思いで、強い根性を秘めている。

羽羽方 麻柊 (はわかた ましゅう)

羽羽方陽乃芽の父親。オカルトコレクターの家系に生まれ、オカルトマニアとして育った。青年時代にエジプトで出会った羽羽方ひまわりと結婚し、のちに生まれた一人娘の陽乃芽を大切に育ててきた。陽乃芽を「マガイ」から救ったイムホテプを歓迎し、家へと招き入れた。以来、イムホテプのことを「様」付けで呼んでいる。のちにアメン神官団にアルバイトとして入団する。

マガイ・セクメト (まがいせくめと)

黄金の炎をあやつるセクメト神の「マガイ」。黒いメスライオンの仮面をかぶった女性の姿をしている。羽羽方陽乃芽が8歳の頃に、彼女の宝物である箱庭を憑代にして取り憑き、彼女の声が出せない原因を作っていた。のちにイムホテプによって祓われ、お祓い箱に封じられるが、お祓い箱の中で浄化されて陽乃芽に再び移り、彼女の精霊として宿るようになる。正体は羽羽方ひまわりに宿っていたセクメト神の分霊で、ひまわりが陽乃芽出産の際に命と引き換えに移した事で、陽乃芽に宿っていた。

(りゅう)

御空神社でイムホテプたちが出会った少年。幼い頃に火事で母親を亡くした過去を持ち、「死人に会える」と噂の御空神社の「天国の呼び鈴」に呼びかけることで、母親を取り戻そうと考えていた。しかしそれが竜の魂を狙う「マガイ」による罠であることを見抜いたイムホテプたちに阻止され、命を救われる。

御空 晴吾 (みそら はるご)

アメン神官団日本支部所属の下位神官の男性。クールな一匹狼タイプで、年齢は21歳。15年前に御空神社で起こった「神主一家心中事件」の唯一の生き残りで、「マガイ」に両親を殺され、自身も右目を失った過去を持つ。御空家先祖の陰陽師、御空晴天の生まれ変わりでもあり、晴天とよく似た空色の髪を持つ。両親を亡くしてからは八咫黒烏に引き取られ、アメン神官団に入って「鴉の子」の一員となり、八咫の事を本当の父親のように慕っている。当初は「マガイ」と、「マガイ」が世に蔓延するきっかけを作ったイムホテプの事を憎み、毛嫌いしていたが、マガイ・セトやマガイ教との戦いをきっかけに和解し、仲間として共に戦うようになる。御空家に伝わる日本刀と、自身に宿る精霊「天空翼手」を使って戦う。

白花 こぶし (しらはな こぶし)

女子高校生で、羽羽方陽乃芽のクラスメイト。声を取り戻した陽乃芽と友人になった。誰にでも親切で周囲から好かれているが、本音では互いに遠慮せずにやり取りできる友人関係に憧れており、「一緒にいるのが疲れる」と友人から陰口を言われていたことを気にしていた。その心の隙間をセルケト神の「マガイ」に狙われ、取り憑かれてしまう。

ジェゼル

イムホテプの親友で、古代エジプトの王子。3000年前にイムホテプと知り合い、のちに二人で平和な国作りを夢見るようになる。しかし太陽神の御霊を持つ魂の宿命により、生贄としてアメン神官団によって地獄に心臓を落とされ、イムホテプや神官、神々を憎みながら命を落とす。この時に地獄に封じられていたアポフィスと融合し、マガイの王となる。長らく絶望と葛藤を続けながらも、心の中ではアポフィスが倒される事とイムホテプとの和解を願っており、イムホテプに呼びかけられたのをきっかけに、アポフィスに抗うようになる。本来の肉体は死亡した際にアメン神官団によって回収され、現在もミイラの状態で厳重に保管されている。幼少期は生贄としての宿命を果たすために家族から離されて幽閉されており、王子を辞めようと逃げ出した先でイムホテプと出会う。のちに首都から神官達の作り出した町に移され、その町で育った。勉学は苦手だが、太陽のように明るく社交的な性格で、民衆からも広く親しまれている。実在の人物、ジェゼル王がモデル。

マガイの王 (まがいのおう)

地獄から生まれた「マガイ」を率いて暗躍している謎の人物。3000年前に生贄となったジェゼルが死亡した際にマガイの王と融合し、一心同体となった。現在ではジェゼルの姿をした土人形を媒介に、「マガイ」とマガイ教を束ねている。日本に渡ったイムホテプの前に姿を現し、神殺しと世界の創り変えを持ち掛けたが、その真の目的は不明。 のちにクレオパトラとラムセス二世を復活させ、仲間とする。

コンス

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の男性。「コンス」という名前は偽名で、本名や来歴は不明。ナルシストな性格をしている。護衛として部下のラトとセドをいつも連れている。ヘシレとは新人時代からの友人。3000年の眠りから目覚め、牢に入れられていたイムホテプを解放し、彼の身柄引受人となった。のちに正式な新人下位神官となったイムホテプの上司となる。上位神官でありながら九柱神を中心とした神々を憎んでおり、神々を引きずり降ろすためにほかの神官を利用する事もある。体には黒アザを発症しており、その影響で魔法を使ったあとに吐血するなど、体が強く蝕まれている。

ラト

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の女性で、セドとともにコンスを守る側近。犬が苦手。「ラト」という名は偽名で、本名は不明。御空晴吾とは師弟のような関係で、一匹狼の彼を心配し、イムホテプとコンビを組ませてはどうかとコンスに提案する。実は八家の1つであるオシリス家の令嬢で、アゥシルの妹、ユートの姉でもある。

セド

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の男性で、ラトとともにコンスを守る側近。マスクで顔をおおっており、性格も寡黙だが、実は仲間想いで犬好きという一面を持つ。同僚のラトとは、ともにコンスを守ると誓い合った相棒で、深い信頼を寄せている。「セド」という名は偽名で、本名は不明。

クレオパトラ

マガイの王によって現代に復活させられ、マガイ教の仲間となった古代エジプトの女王。アメン神官団を憎んでおり、夫と息子、そして自身の無念を晴らすために八咫黒烏が持つマガイ・セトを手に入れようと企む。真名を知る相手を操ることができる魔術「イシスの言霊」を使う。実在の人物、クレオパトラ7世がモデル。

八咫 黒烏 (やた くろう)

アメン神官団日本支部所属の上位神官の男性で、日本支部の支部長を務める。幼くして家族を失った御空晴吾を引き取り、実の息子のように育ててきた。また稲羽白や八上姫子など、マガイに親を奪われた日本支部の神官たち「鴉の子」の父親的存在として、慕われている。御空家の家紋を刻んだ自分の身体にマガイ・セトを封印しており、その復活を目論むクレオパトラに誘拐されてしまう。

稲羽 白 (いなば しろ)

アメン神官団日本支部所属の下位神官の青年。「マガイ」に家族を殺された過去を持ち、「マガイ」に強い恨みを持つ。八咫黒烏に引き取られた「鴉の子」の一人で、彼を父親のように慕っている。御空晴吾の同期でもあり、当初は晴吾を毛嫌いしていたが、本音では彼と和解したいと思っていた。のちの八咫救出の際に、イムホテプの魔法で本音を吐き出した晴吾と和解する。同じ「鴉の子」である八上姫子と親しく、彼女を妹のようにかわいがっている。

八上 姫子 (やがみ ひめこ)

アメン神官団日本支部所属の下位神官の少女。小柄で体力はないが、優秀な新人神官。「マガイ」によって家族を失い、八咫黒烏に引き取られた「鴉の子」の1人で、彼を父親のように慕っている。幼い頃よりアメン神官団で育ち、あまり外にも出ずにいた。そのため普通の女の子としての振る舞い方がよく分かっておらず、クールな性格で何かと趣味が渋い。

思金 (おもいがね)

アメン神官団日本支部所属の上位神官の男性。クレオパトラに誘拐された八咫黒烏救出作戦の現場指揮を務めた。黒烏に育てられた神官による部隊「鴉の子」の隊長でもある。作戦実行に際し、ラトたちとともに砂鳥港に来たイムホテプに協力を求めた。普段は冷静だが礼儀には厳しい性格で、上官に敬語を使わない者に対しては荒々しい口調になる。

マガイ・セト (まがいせと)

九柱神の1人であるセトの「マガイ」。雷や嵐を操ることができる。古くから御空神社で封印されていたが、15年前に御空神社で起こった「神主一家心中事件」以来、八咫黒烏の体に封じられていた。御空晴吾の前世である御空晴天に封じられた過去を持ち、彼を強く恨んでいる。クレオパトラによって復活させられ、巨大台風を巻き起こす。

セト

九柱神第八の嵐神。黒いツチブタの頭を持つ男神の姿をしているが、現在は少年の体を器にしている。強大な嵐や雷をあやつる力を持つ。九柱神の中でもっとも荒々しい性格で、実の兄であるオシリスを惨殺した過去を持つ。御空晴吾に討たれたマガイ・セトにとどめを刺すと同時に、イムホテプ達の前に降臨する。その後もアトゥム達の許可なく、何度か地上に降臨している。器や宿命などのしがらみから人類を解放するため、九柱神の頂点に立つアトゥムの王座と、アポフィスの命を狙い続けている。

アトゥム

九柱神第一の男神。現在は人間の少年の体を「器」にしている。世界で最初に生まれた第一の創造神で、太陽神として世界に光をもたらす存在。のちに大気の神シュウと湿気の女神テフヌトを生み出し、彼らとともに世界を創造した。古くから神々のリーダーとして、九柱神をまとめている。

ラムセス二世 (らむせすにせい)

マガイの王によって、現代に復活させられた古代エジプトの王。「絶望王」「最強の王(ファラオ)」など、数々の異名を持つ。エジプトでの任務中だったイムホテプたちの前に姿を現し、羽羽方陽乃芽を連れ去ろうとする。実在の人物、ラムセス2世がモデル。

羽羽方 ひまわり (はわかた ひまわり)

羽羽方陽乃芽の母親で、羽羽方麻柊の妻。かつてエジプトで謎の集団に追われていたところを若き日のの麻柊に助けられ、のちに日本に渡って彼と結婚した。麻柊と出会った時点では愛情を知らない無表情な少女だったが、彼と接することで人間らしさを取り戻していった。自身の命と引き換えに陽乃芽を産み、20歳で命を落とした。

ユート

エジプトに帰還したイムホテプたちが出会った少年。ラトとアゥシルの弟。「ユート」は愛称で、本名は「ワジトユート・オシリス」。アメン神官団エジプト本部所属の上位神官で、八家の1つであるオシリス家の次男でもある。姉であるラトを溺愛するシスコン。左目に、人間に宿る精霊(カー)の質や状態を見ることができる「ウジャトの眼」を持つ。

ヘシレ

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の男性。コンスの友人。アメン神官団の特殊医療機関「ペル・アンク」の医者をしており、人間に宿る精霊の診察・治療も専門としている。謎の黒アザを発生させる毒薬が流通している事件から人々を守るため、イムホテプに協力を要請する。

アゥシル

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の男性。八家の1つオシリス家の長男で、現当主。ラトとユートの兄でもある。幼い頃より、オシリス家の嫡子としての宿命に強くとらわれており、神々に世界を返す救世主となることを願っていた。しかし現代に目覚めたイムホテプにその役目を奪われたと思い込み、彼を激しく憎んでいる。 ハピとともに、人類を焼き払って地上を浄化する人類抹殺計画「セクメト計画」を企てており、そのためにマガイ・セクメトに憑かれていた羽羽方陽乃芽を利用しようと目論む。

ハピ

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の男性。アゥシルの従者で、ユートの幼なじみでもある。関西弁で話し、「ハッピー」が口癖の軽い性格で、サボり癖がある。エジプト本部に帰還したイムホテプたちを案内した後、人類抹殺計画を目論むアゥシルの命令により羽羽方陽乃芽を連れ去る。

シストラム

アメン神官団エジプト本部所属の下位神官の少年で、上位神官イヒの息子。アメン大司祭国家にて「人間のマガイ化」が多発していた際に、帰還していたイムホテプと遭遇。かつて大罪人であったイムホテプのことを疑っていたものの、マガイ化した人間を殺さずに救おうとする彼の姿を見て考えを改め、協力するようになる。

イヒ

アメン神官団エジプト本部所属の上位神官の中年男性で、シストラムの父親。褐色肌に白い髭を生やしている。上位神官の中でも、部下から信頼されている。アメン大司祭国家で起こった黒アザの事件でイムホテプ達に協力する。

トト

九柱神に属さない創世神の一人で、イムホテプが仕える知恵と月の神。イムホテプと瓜二つの少年の姿をしている。創世前の混沌の時代にオグドアドによって生み出され、アトゥムが生まれ新世界が創られたあとは、世界を監視・記録する「世界の監視者」となる。また、世界が終焉を迎える際には、眠っているオグドアドを起こすという使命も持っている。 アポフィスとは友人関係であったが、中立的な監視者としての立場上、彼を人間や神々からの迫害から救えずにいた。のちにアポフィスが地獄に封じられたのをきっかけに地上に残り、自らの存在や記憶を書き換えて人間に転生し、神官として監視と記録の使命を果たし続けていた。その際に作り出した偽装人格の一つであるイムホテプが禁忌を犯した事により、3000年以上彼の中で眠り続けていた。 覚醒以降はアポフィスを止めるべく、イムホテプ達に協力するようになる。

アポフィス

オグドアドの守護神として創世前の混沌の時代に生み出された黒蛇の男神で、トトの友人。本来は月日の概念を生み出すために太陽神となるはずだったが、夜闇の力が強すぎたために太陽としての役割を果たせず、アトゥムが生まれた新世界では闇の神となる。しかし、太陽信仰の影響で人々が闇を恐れるようになった事により、人間やほかの神々から激しく迫害されるようになる。 アトゥムとは分身関係のため不死の身となっており、彼を恨むようになって襲い続けては、神々に打ち倒されていた。のちに九柱神によって地獄に封印されるが、地獄門が消滅した際にジェゼルと融合し、土人形を媒介にマガイの王として暗躍するようになる。オグドアドを恨んでおり、トトによって目覚めさせられた彼らを殺そうとしている。

アトゥムの器 (あとぅむのうつわ)

命を落としかけたイムホテプが月光の魔水晶(心臓)の中で出会った謎の少年。幼少期にアトゥムの器として選ばれ、家族と離れ離れになる。長いあいだ器として生きてきたため、昔の記憶や自分の本名を思い出せずにいる。

アクエンアテン

マガイ教によって目覚めた古代エジプトのファラオの一人で、「アメンホテプ四世」とも呼ばれる。生前は古代エジプトで崇拝されていた数々の神々を否定し、アマルナ宗教改革によってアテン神を唯一神として崇めていた。またもっともアメン神官団を忌み嫌ったファラオでもあり、人々からは「異端の王」とされていた。目覚めたあとは、アポフィスによってアテン神と一体化する形でマガイ・アテンとなる。 実在の人物・アメンホテプ四世がモデル。

マガイ・アテン (まがいあてん)

マガイ教が作り出したマガイの一つ。目覚めたアクエンアテンが一体化している。大量の触手が生えた、巨大な球体の怪物の姿をしている。手のような無数の触手を伸ばし、無差別に人を襲う。

集団・組織

アメン神官団 (あめんしんかんだん)

古代エジプトより存在する、神官たちの集団。エジプトのアメン大司祭国家に本部が置かれている。3000年前、マガイが世に蔓延したことをきっかけに組織化され、現在は世界各国に支部がある。所属している神官は白服を着た「上位神官」と黒服の「下位神官」に大きく分かれている。

マガイ教 (まがいきょう)

マガイの王が束ねている、マガイを崇拝する人間の集団。マガイの祖であるマガイの王を救世主として崇め、幾度となく彼の復活を企てている。そのため、アメン神官団とは激しく敵対している。教徒はローブをまとい、逆さアンクを身に付けている。

オグドアド

トトとアポフィスが守護する八柱の神々。九柱神が生まれる前の混沌の時代より存在し、トトとアポフィス、アトゥムを生み出した。アトゥムが創った新世界の誕生を見届けたあとはトトに世界の記録と監視の役目、そして記録抹消大魔法を託し、宇宙の果てで眠り続けている。

場所

アメン大司祭国家 (あめんだいしさいこっか)

アメン神官団によって3000年前に作られた、神々のための独立国家。いかなる重鎮であっても、許可を得た者しか入国できない。エジプトの砂漠の中にあるが、魔法によって結界が張られており、一般人には認識できないようになっている。街の中央には、アメン神官団エジプト本部がある。

地獄 (じごく)

九柱神がアポフィスを封じるために作り出した牢獄。のちに、かつてアポフィスが人類に撒いた「マガイ」の因子を発動し黒アザを発症した人間を、廃棄するための場所となる。黒アザによる瘴気があふれており、地上を守るために「太陽の魂」と呼ばれる太陽神の御霊を持つ人間の心臓を捧げる事で、瘴気を浄化するという儀式が定期的に行われている。 地上にある「地獄門」の向こうに存在するが、記録抹消大魔法で地獄門が消滅した事により、アポフィスも自由の身となってしまう。

御空神社 (みそらじんじゃ)

御空晴吾の実家の神社。15年前に神主一家心中事件があり、境内にある鈴は死者に通じる「天国の呼び鈴」と呼ばれている。長年、御空家によってマガイ・セトが妖魔として、封じられていた場所でもある。しかし八咫黒烏の干渉をきっかけにマガイ・セトが解放され、晴吾の両親が惨殺される。その際に八咫がマガイ・セトを自らの体に封じ込め、両親を失った晴吾は八咫に引き取られている。

原初の丘 (げんしょのおか)

アポフィスが身を潜めている場所で、マガイ教の本拠地。もともとは海で、創世時代にアトゥムが生まれた、世界の始まりの場所でもある。のちに九柱神に放棄されアポフィスが長らく逃げ込んでいたが、日光が届かず地下でも海底でもない地核にあるため、アメン神官団でも見つけられずにいた。アポフィスの闇が充満しているため、普通の人間では進入する事ができない。

その他キーワード

お祓い箱 (おはらいばこ)

イムホテプが3000年前に記録抹消大魔法を発動する際に入手した、箱状の水晶。正式名称は「月光の魔水晶」。「マガイ」を封じ込めることができ、封じ込めた「マガイ」の能力を使用者の魔術として駆使することも可能。謎が多く、イムホテプにとってもその力は未知数。

マガイ

この世に蔓延している、偽の神。「神々の紛い物」であることから「マガイ」と呼ばれる。病・天災・事故などを振りまき、人間に取り憑いて命を吸い取ることもある。箱庭や刀など特定の憑代を住処としており、その憑代が破壊されると弱体化する。

九柱神 (きゅうちゅうしん)

第一の神アトゥムを筆頭とする、シュウ、テフヌト、ゲブ、ヌト、オシリス、イシス、セト、ネフティスの、9人の創造神。それぞれが「神の口」となるために選ばれた人間の肉体を「器」としている。3000年前に神々を冒涜したイムホテプを世界から追放し、封印していた。現代に目覚めたイムホテプに「マガイ」の討伐と、記録抹消大魔法によるジェゼルすなわちマガイの王の消去を命じる。

記録抹消大魔法 (きろくまっしょうだいまほう)

トト神が巨大石とともに残したとされる、世界のあらゆる記録を消去することができる禁断の大魔法。3000年前にジェゼルを生贄の宿命から救うため、イムホテプが発動しようとした。現在ではこの魔法の呪文が刻まれた巨大石は、「マガイ」によって破壊されているため、唯一呪文を知るイムホテプ以外は発動することができなくなっている。

八家 (はっけ)

古代エジプト時代から存在した、8つの神官貴族の通称。それぞれの家系がアトゥム以外の九柱神の名を姓に持ち、アメン神官団の中でも強い権力や地位を持つ。アゥシルたちの家系は、この八家の1つであるオシリス家の一族として宿命を背負っている。

精霊 (かー)

人間が持つ魂の一種で、すべての人間の中に存在し生命などの源となっている。神官の中には自分の精霊を「精霊魔法」と呼ばれる魔術であやつり、御空晴吾などのように戦闘に役立てる者もいる。

宿命 (しゅくめい)

九柱神を中心とする神々が、世界を管理する目的で、人類にそれぞれ与えた使命や運命の事。アポフィスによって人類が黒アザを発症するようになったのをきっかけに神々が地上から離れた際に、地上の維持・管理のために人類に宿命が与えられるようになる。神官や王族などは、世界に大きな影響を与えるほどの重要な宿命を持っている事が多い。

黒アザ

地獄に封じられる際にアポフィスが人類に撒いた闇の因子が「マガイ」の種となり、全身や体の一部に黒蛇のようなアザが出た状態。この黒アザを発症した者は徐々に体を蝕まれていき、最終的には「マガイ」になってしまう。またマガイ教が作り出した特殊な薬を飲んだ者は、突如黒アザを発症したり、もともとあった黒アザを急速に広めて「マガイ」化してしまう。

(うつわ)

九柱神の言葉を伝える「口」となるために選ばれ、肉体と一生を神に捧げた人間。器となった者は徐々にかつての記憶を失っていき、精神も表に出ない状態となる。

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