概要・あらすじ
サッカーをこよなく愛するタコ焼き屋の多胡九兵衛は、自らの手でJリーグのチームを作り上げるという野望を抱いていた。やがてその熱意は実を結び、商売の成功によって長者となった多胡は、夢の島オクトパスと呼ばれる新チームを立ち上げるに至る。しかし集ったメンバーたちは、フォワードの蟹賀かけるをはじめ、身体能力こそ高いものの奇行が目立つ選手ばかり。
それでもオクトパスは、ライバルチームであるベルディ河崎や火島アントラーズなどと対戦を重ね、相手を奇行に巻き込みながらも成長を続けていく。
登場人物・キャラクター
蟹賀 かける (かにが かける)
夢の島オクトパスに所属している16歳の少年。ポジションはフォワード。若年ながら脚力とスタミナに優れ、特にドリブルを得意としている。ただし、前に走るより横に走る方が得意、という奇妙な特徴を持っており、このことが相手チームをかく乱させるという長所と、精密な動きができないという短所の両方に繋がっている。また、目立つためには手段を選ばず、ギャグじみた行動も厭わないため、敵味方の両方から扱いにくい選手として認識されている。 一方、目立つためのチャンスを決して逃さない天性の感覚を持っており、この直感がゴールを決めるプレーに結びつくことも少なくない。
多胡 九兵衛 (たこ きゅうべえ)
夢の島オクトパスのオーナーを務めている男性。かつては町のたこ焼き屋を生業としていた。その頃からJリーグに強い憧れを抱いており、いつか自分自身の手でチームを作り上げることを夢見ていた。優れた経営手腕を誇り、屋台のたこ焼き屋から、全国たこ焼きチェーン店を作り上げ、3年の間に日本有数の個人資産を保有するに至った。その資産を惜しみなく投入して、クラブチームを発足させた。 オクトパスにとって極めて有利な条件を付けたタコQカップを個人で開催したり、活躍した選手に1000万円のボーナスを支払おうとするなど、金に物を言わせる悪癖を持つが、サッカーに対する熱意は本物。
鮫島 (さめじま)
夢の島オクトパスに所属している青年。ポジションはミッドフィールダー。チームの中では数少ない常識人で、蟹賀かけるの奇行に対して突っ込むことが多い。しかし、活躍した選手に特別ボーナスを出す、という多胡九兵衛の発言に目の色を変えるなど、俗っぽい一面も持つ。
海老原 竜二 (えびはら りゅうじ)
夢の島オクトパスに所属している青年。ポジションはフォワードで、自らの運動神経に絶対の自信を持っている。高校時代はジーコに憧れてサッカー部に所属していたが、収入が不安定という理由で、一時期サッカーから離れる。その後は香港で役者として活動しており、現地ではカンフースターとして広く名を知られていた。しかし、カンフーアクションの巧みさに目を付けた多胡九兵衛に、スカウトされてオクトパスに入団し、サッカー選手へと復帰した。 入団当初はオクトパスのエキセントリックな面々に翻弄されていたが、ともにプレーしていくうちに慣れてしまった。実在の人物、海老原博幸がモデルと思われる。
マスクドフリッパー
夢の島オクトパスに所属しているメキシコ人の男性。ポジションはフォワード。常に覆面を被っている。メキシコではプロレスラーとして活躍していたが、オクトパスにスカウトされて来日し、そのままチームに合流する。俊敏な動きを見せるものの、サッカーのルールを理解できていない。火島アントラーズとの試合では、ボレーシュートの際にクロスチョップを繰り出してハンドの反則を取られ、得点のチャンスをふいにしてしまっている。
蟹賀 一匹 (かにが いっぴき)
夢の島オクトパスに所属している36歳の男性。蟹賀かけるの父親でもある。ポジションはフォワードで、センターラインから直接ゴールを狙うほどの、高いシュート力を誇っている。一方、歳のせいか走力は低く、ドリブルの技量は息子のかけるに劣っている。かつては漫才師をしており、サッカーの試合でも時折、漫才らしき仕草を見せることがある。
アンティーフグ
夢の島オクトパスに所属している男性。ポジションはディフェンダー。インドでヨガの修行僧をしていたところ、鯛頭五郎によってオクトパスにスカウトされた。普段は細身だが、空気を思い切り吸い込んで身体を膨らませることができ、その体積でボールを阻むという特技を持つ。実在の人物、アンディ・フグがモデルと思われる。
宿狩 守 (やどかり まもる)
夢の島オクトパスに所属している男性。ポジションはゴールキーパー。ハウスキーパーの仕事をしていたところ、オクトパスによってスカウトされた。ハウスキーパー時代の癖が染みついており、ゴールの周りを常に綺麗にしないと落ち着かない。また、相手が挨拶をした際には、簡単にゴールを明け渡すなど、ゴールキーパーとしては問題の多い人物。
鯛頭 五郎 (たいがしら ごろう)
夢の島オクトパスの監督を務めている男性。監督に就任する前は魚屋を営んでおり、サッカーの経験はまったくなかった。そのため、ロクな采配を振ることができず、監督としてまったく機能していない。さらに、自ら振る舞ったフグ料理で、選手が食中毒を起こすなど、害をなすことの方が多い。それにも関わらず、監督を下ろされることはないという、謎に満ちた人物である。
ラモス
ベルディ河崎に所属している男性。ポジションはミッドフィールダーで、司令塔としての役割を果たしている。サッカーに対して非常に真摯に取り組んでおり、道楽でサッカーを楽しもうとする人間を嫌っている。タコQカップでは、金に飽かせた戦略を多用する多胡九兵衛と夢の島オクトパスを、明らかに嫌悪する様子を見せていた。 しかし、蟹賀かけるが見せた、サッカーを心底から楽しむ姿勢を見て、僅かながら認識を改める。実在の人物、ラモス瑠偉がモデルと思われる。
北沢 剛 (きたざわ つよし)
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはミッドフィールダー。優れたボールコントロール能力を持っており、タコQカップにおける夢の島オクトパスとの試合では、ヒールリフトを駆使して相手のディフェンダー陣を次々に突破していくが、蟹賀かけるに阻止されてしまう。実在の人物、北澤豪がモデルと思われる。
カズ
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはフォワード。トリッキーなドリブルを持ち味としており、蟹賀一匹を鮮やかに抜き去るほどの精度を誇る。さらに、北沢剛との連携で蟹賀かけるのドリブルを封じるなど、技巧においては他の追随を許さない実力を持つ。実在の人物、三浦知良がモデルと思われる。
ビスマルク
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはミッドフィールダー。信心深い性格のクリスチャンで、ゴールを決めた際に神に祈る仕草を見せる。Jリーグ本戦における夢の島オクトパスとの試合では、この信心深さを利用される。ロザリオを見せられて反射的に祈りを捧げ、その隙にボールを奪われてしまった。実在の人物、ビスマルク・バレット・ファリアがモデルと思われる。
柱谷 (はしらたに)
ベルディ河崎に所属している男性。ポジションはディフェンダー。堅実な性格の持ち主で、Jリーグ本戦における夢の島オクトパスとの試合では、カズと北沢剛の連携によって追い込まれた蟹賀かけるから、ボールを奪おうと接近するが、かけるのバックスピンを利用した一人時間差攻撃によって突破されてしまう。実在の人物、柱谷哲二がモデルと思われる。
武田 (たけだ)
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはフォワード。「ペンギン走り」と呼ばれるドリブルを得意としている。トップスピードに乗った際に見せられる動きは、ディフェンダー陣によるプレスをものともせず、一直線にゴールを狙えるほどの突破力を持つ。Jリーグ本戦における夢の島オクトパスの試合では、ドリブルで敵陣に切り込み、そのままシュートを放とうとする。 しかし、マスクドフリッパーの奇策により、止められてしまう。実在の人物、武田修宏がモデルと思われる。
猫又 雄一郎 (ねこまた ゆういちろう)
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはフォワード。監督である松木が、蟹賀かけるに対抗するため新たに招聘した人物。かけるを凌駕する身体能力を持つ。一方で、全力を出すと数十分間休眠状態に入ってしまう、という厄介な弱点を持つ。Jリーグ本戦における夢の島オクトパスとの試合では、かけるを含めたオクトパスの面々をかく乱するなど、その弱点を補って余りある活躍を見せつけた。
菊池 (きくち)
ベルディ河崎に所属している青年。ポジションはゴールキーパー。優れたセービング能力を持っており、カズ、北沢剛、柱谷を抜き、1対1になった蟹賀かけるのシュートを見事に止めて見せた。実在の人物、菊池新吉がモデルと思われる。
松木 (まつき)
ベルディ河崎の監督を務めている男性。相手チームの研究に余念がなく、夢の島オクトパスに対しても決して油断をせず、中でも蟹賀かけるの脅威を、誰よりも早く見抜いていた。Jリーグ本戦におけるオクトパスとの試合では、かけるを止めるための人材として、猫又雄一郎を投入した。実在の人物、松木安太郎がモデルと思われる。
中山 (なかやま)
ジュビロ岩田に所属している男性。ポジションはフォワードで、Jリーグで最も注目されている選手といわれている。夢の島オクトパスがベルディ河崎を下したことを聞きつけ、その決勝点を決めた蟹賀かけるを下して、更なる知名度を得ようと目論む。実在の人物、中山雅史がモデルと思われる。
アルシンド
火島アントラーズに所属している男性。ポジションはフォワード。紳士的な性格だが自他ともに厳しく、夢の島オクトパスの奇行に憤慨しては、チームメイトの本田になだめられている。パワーとスピードに優れており、単身でオクトパスの敵陣に切り込むほどの突破力を見せつけた。実在の人物、アルシンド・サルトーリがモデルと思われる。
本田 (ほんだ)
火島アントラーズに所属している青年。ポジションはミッドフィールダー。冷静な性格で、夢の島オクトパスの選手たちの奇行を冷めた目で見ている。また、熱くなりがちなアルシンドをなだめることもあるなど、チームの中ではストッパー的な役割を果たすことが多い。試合では、小柄な体格を活かしたディフェンスを得意としており、マスクドフリッパーを単身で阻止する活躍を見せた。 実在の人物、本田泰人がモデルと思われる。
ジーコ
火島アントラーズに所属している男性。ポジションはミッドフィールダー。ファンやチームメイトから絶大な信頼を集めており、海老原竜二が憧れている選手でもある。夢の島オクトパスの奇妙なプレーを、「サッカーらしくない」と言いつつも、多少は認めるような素振りを見せるなど、随所で器の広さを見せている。一方で負けず嫌いな性格で、敗北すると途端に不機嫌になってしまう。 実在の人物、ジーコがモデルと思われる。
ロナウド
ブラジル代表に選出された男性。ポジションはディフェンダー。Jリーグでプレーしていたことがあるため、夢の島オクトパスの悪名を知っている。それだけに、不意にブラジルに現れたオクトパスのメンバーに面食らう。練習試合では蟹賀かけると空中で競り合い、そのまま押し勝つなど、ディフェンダーとしての実力を見せつけた。 実在の人物、ロナウド・ロドリゲス・デ・ジェズスがモデルと思われる。
ラマーリオ
ブラジル代表に選出された男性。ポジションはフォワード。ブラジルが生んだ世界最高のストライカーとして知られており、Jリーグ相手なら、1分で片を付けられると豪語している。夢の島オクトパス、ベルディ河崎の合同チームとの練習試合では、蟹賀かけると猫又雄一郎のツートップからボールを掠め取り、敵陣に向けて疾走。 その様子は、もはや人間業ではないとまで評された。実在の人物、ロマーリオ・ジ・ソウザ・ファリアがモデルと思われる。
レオナドル
ブラジル代表に選出された男性。世界最高峰のディフェンダーとして名を馳せており、猫又雄一郎の身のこなしを見破って、彼からボールを奪うなどのプレーを見せた。攻撃にも秀でており、ラマーリオとの連携で瞬く間にゴール前までボールを運んでいる。なお、レオナドルはワールドカップ終了後、日本に渡ってJリーグに参加することになった。 実在の人物、レオナルド・ナシメント・ジ・アラウージョがモデルと思われる。
集団・組織
夢の島オクトパス (ゆめのしまおくとぱす)
Jリーグに所属しているプロサッカーチームの1つ・東京都江東区の夢の島にホームタウンを構えている。たこ焼き屋の全国チェーンに成功して財を成した多胡九兵衛が、100%の出資を行って設立された。九兵衛が独自に開催したタコQカップで、ベルディ河崎を破って優勝し、J1リーグからJリーグに昇格している。 ただし、所属選手は、そのほとんどが試合中に奇行に走るうえに、タコQカップ自体がほぼ八百長の産物であったため、他のチームからは見下されている。発足当初は蟹賀かける以外に実力のある選手がいなかったが、のちに海老原竜二やマスクドフリッパーといった、多方面で活躍していた人材を積極的にスカウト。他チームとも渡り合える実力を獲得している。
ベルディ河崎 (べるでぃかわさき)
Jリーグに所属しているプロサッカーチームの1つ。松木が監督を務めている。ラモスを司令塔に、カズや北沢剛、ビスマルク、猫又雄一郎など、多くの実力者が在籍している。ナビスコ杯を制覇するなど戦績も目覚ましく、タコQカップでも決勝戦に進出した。しかし、決勝戦で夢の島オクトパスと対戦した時は、48点を取りながらも、「この時間からはワンゴールで50点になる」と、多胡九兵衛が勝手に宣言。 その直後に、蟹賀かけるにゴールを決められ、50対48で敗れるという理不尽な結果に終わってしまった。実在のクラブチームである「東京ヴェルディ1969」がモデルと思われる。
火島アントラーズ (かしまあんとらーず)
Jリーグに所属しているプロサッカーチームの1つ。ジーコを筆頭に、アルシンド、本田などの強豪が所属しており、ベルディ河崎に匹敵する人気と実力を誇っている。さらに、少年サッカークラブと練習試合を行うなど、町おこしにも積極的。実在のクラブチームである「鹿島アントラーズ」がモデルと思われる。
ジュビロ岩田 (じゅびろいわた)
Jリーグに所属しているプロサッカーチームの1つ。現在、最も世間から注目されている中山が選手として所属しており、チーム自体も注目を集めている。ただし、ベルディ河崎や火島アントラーズとは異なり、タコQカップには参加していない。実在のクラブチームである「ジュビロ磐田」がモデルと思われる。
ブラジル代表 (ぶらじるだいひょう)
ワールドカップのブラジル代表チーム。世間からは世界最高のサッカーチームと評されている。ブラジルのホームグラウンドで練習をしていたところ、突如夢の島オクトパスのメンバーが現れて面食らう。しかし、鯛頭五郎の提案に乗り、オクトパスと練習試合を行うこととなる。後半はオクトパスを追って現れたラモスたちベルディ河崎の面々も参加し、オクトパスとベルディの合同チームとの試合となった。
イベント・出来事
タコQカップ
Jリーグ本戦の開幕前に行われた、トーナメント形式のカップ戦。夢の島オクトパスのオーナーである多胡九兵衛の出資によって開催された。Jリーグに加盟する11のクラブチームが参加している。オクトパスはシードにより、いきなり決勝に進出し、ベルディ河崎と対戦することとなった。多胡の差し金により、シード以外にもオクトパスに有利な条件が多数揃っている。