概要・あらすじ
岐阜県立可児第三高1一年生の志摩晃は、名古屋のプロクラブのJr.ユースだった元サッカーエリート。Jr.ユースを落とされた晃は、可児第三高校(可児三)のサッカー部に入部した。しかし、可児三のサッカー部は、部員もろくに集まらない弱小チームで、監督も全くやる気のない男だった。そんな環境に身を置きながら、晃は、将来自分だけのプロサッカークラブをつくる、という野望を抱いていた。
そんなある日、学校に遅刻しそうになった晃は、外国人のような高校生に出会う。彼は、日系ブラジル人の母親を持つ日本国籍の少年、五十嵐ジュニオールだった。晃の隣のクラスで、美術部員だという。その日の体育の授業で二人は再会した。クラス対抗でサッカーをやる事になったのだ。
ジュニオールは土をいじって遊んでいて、全然やる気を見せなかったが、ボールが来た途端、超絶テクニックを披露した。しかし、味方のゴールに突っ込んだり、猫に気を取られたりと、好き勝手に遊んでいるように見えた。その姿に「楽しみすぎ」「自分を抑えて真面目にやれ」という晃に、ジュニオールは「そういうサッカーをやりたいのか」と問う。
その言葉に晃はハッとする。今まで自分も、常識に縛られた大人達のサッカーにうんざりしていたのだ。「誰も想像できない、とんでもないチームを作る」。改めてそう決意した晃は、翌日、ジュニオールのクラスに押しかけ、一緒にサッカーをやろうと誘う。しかし、ジュニオールの返事は「NO」だった。ブラジルと日本を行ったり来たりの生活だったジュニオールは、やはりブラジルでサッカークラブに入っていた。
そこで、監督から「ふざけている」と指摘されたため、いつもより頑張ろうと、スコーピオンキックをしたら、クビになったのだ。そんなわけで、サッカーも嫌いではないが、今は美術のほうがもっと好きだという。それでも諦めない晃は、翌朝も登校中にジュニオールを口説いていた。
二人が校門にたどり着いたとき、人だかりができていて、生徒達が騒いでいた。原因は、可児三の名門野球部だった。いかつい野球部の連中が、一人の1年生を強引に勧誘しようとしていたのだ。その1年生の名前は、杉浦実。超人的な体力を持つと言われる男だった。志摩晃、五十嵐ジュニオール、杉浦実。この三人の出会いが、後に「子供達の王国」と呼ばれる可児三サッカー部の、すべての始まりだった。
登場人物・キャラクター
志摩 晃 (しま あきら)
岐阜県立可児第三高校一年生の男子。サッカー部所属。名古屋グランディスJr.ユースにいたが、コーチに「なんの特徴もない器用貧乏」と評され、Jr.ユースをクビになる。古い常識に縛られた大人達に反感を覚えており、いつか自分達だけのサッカークラブを作る野心に燃えている。自由奔放で超絶テクニックを持った、五十嵐ジュニオールに出会い、執拗にサッカー部に勧誘する。 ジュニオールには、シーマと呼ばれる。
五十嵐 ジュニオール
日系ブラジル人の母親を持つ日本国籍の少年。岐阜県立可児第三高校1年生の男子。美術部所属。背が低く、褐色の肌とアフロヘアが特徴。ブラジルと日本を行ったり来たりの生活をしていた。ブラジルではサッカークラブに所属していたが、あまりにも自由なプレイスタイルが、監督の気に入らずにクビになる。サッカーにおいては、ずば抜けてた才能を持っている。 自由奔放でマイペースな性格。
杉浦 実 (すぎうら みのる)
岐阜県立可児第三高校1年生。超人的な体力を誇る強面の男子。中学時代は野球で名を馳せた男で、専門外の100メートル走で10秒83の記録を持つ怪物。名門、可児第三高校の野球部の強引な勧誘に合うが、本人は生物部を志望する。