あらすじ
第1巻
春野太慈の住む高曽根市では、1か月ほど前から「END事件」と呼ばれる謎の連続殺人事件が起きている。犯人はターゲットを殺害後、死体を細かく切り刻んで並べ「END」の文字を作るという、極めて残虐な行為を繰り返していた。そのため、太慈の勤務する特殊清掃会社「特殊清掃 アウン」でも事件は話題になっており、11月のある日、太慈はついに「END事件」の殺害現場を担当することとなる。この部屋では小田慎太郎という男が殺害され、四人目の被害者となった。太慈、加藤臣、柳女優香の三人が作業を始めると、慎太郎の死体の下の床下に、もう一体の白骨化した死体を発見する。これがきっかけで、太慈は高曽根署捜査一課の五十嵐秋奈と知り合うが、その直後から会社の社長の橘浩二と連絡が取れなくなる。しかも秋奈たちの捜査によると、事件が起きた小田家では8年前にも人が亡くなっており、その時は浩二が清掃を担当していた。浩二と白骨死体には何か関係があるとにらんだ秋奈は太慈に連絡し、二人は浩二が戻るまで自宅の前で張り込むことになる。その最中、太慈は自分の境遇を秋奈に打ち明ける。一方の秋奈も現在太慈が住んでいる部屋で、弟の五十嵐晶が自殺したことを伝える。こうして二人は意外な形で親しくなるが、翌日に「END事件」五人目の被害者として浩二が発見される。
第2巻
橘浩二が「END事件」の被害者となったことで、春野太慈は事件を独自に捜査することにした。そんなある日、太慈が弟の春野真人と甥の春野雄太と自宅で三人で過ごしていると、そこに「END事件」の犯人と名乗る、仮面を付けた男が押し入る。仮面の男は雄太を人質に取って太慈と真人を脅し、浩二を殺害した人間しか知らないことを語り出す。しかし、そこに偶然五十嵐秋奈が訪問したことでスキができ、太慈は雄太の救出に成功。そして太慈は、逃げ出した仮面の男を秋奈と共に追うが、男のDNAは採取したものの、最終的には逃げられてしまう。その翌日「特殊清掃 アウン」の事務所に、面接希望者がやって来る。生前、浩二は太慈に何も言わず求人を募集していたのだ。太慈は困惑しつつも、即戦力レベルの田中一平を採用することで時間をつくり、浩二の地元へ行く計画を思いつくのだった。しかし現在の会社には、一平を雇用するうえでもう一つ問題があった。加藤臣と柳女優香には、清掃現場でセックスをするという悪癖があり、これを一平に知られる前になんらかの対策を取る必要があった。そこで臣は、太慈の知人である心理療法士、江崎連理のもとに通うことになる。
第3巻
橘浩二の地元へ向かった春野太慈は、偶然出会った五十嵐秋奈と共に浩二の知人に会いに行くことになった。一方その頃、高曽根署では仮面の男のDNAが、身元不明の白骨死体と浩二のDNAと一致し、三人は一卵性の三つ子であることが判明する。しかし、知人に浩二の卒業アルバムを見せてもらうと、そこにいたのはまったくの別人だった。浩二は、本物の「橘浩二」の戸籍を買い取ってずっと彼のふりをしていた、身元不明の男だったのである。太慈はこの事実に衝撃を受けつつも、浩二が恩人であることには変わらず、独自捜査は続けることにする。こうして太慈たちは、帰り道で秋奈の弟の五十嵐晶にそっくりな男を見かけるが、高曽根市に戻ることにした。しかし会社では、現場でセックスができないことで、加藤臣が精神的に不安定になっていた。柳女優香はこれを案じつつ、セックスを通じて臣を支えることで、自分自身も安らぎを得ていたことを自覚する。そこで優香は江崎連理に会いに行き、臣の治療状態を尋ねるが、このあいだにも臣は精神的に追い詰められ、その日はとうとう家に戻ってこなかった。翌日、太慈と優香が事務所で臣を待っていると、やって来た警察官から、臣が「END事件」六人目の被害者となったことを告げられる。
第4巻
先日、春野太慈と五十嵐秋奈が目撃した五十嵐晶にそっくりな男の正体は「阿久津メンタルクリニック」の院長、阿久津亮だった。最近開業した亮は、江崎連理に自分のクリニックで働いてもらうために、高曽根署付近をよく訪れていたのである。秋奈は謎が解けたことに安堵するとともに、晶のいない世界で生きていく決意を新たにする。その直後、仮面の男と思われる人物が駅の監視カメラに映っていた。しかし高曽根署が調査すると、仮面の男は「END事件」と同様の手口で殺害され、森の中に遺棄されていた。その後、捜査の途中で犬飼拓也が不審な人物を発見して追いかけるが、取り逃してしまう。一方その頃、柳女優香は自殺を考えてビルから飛び降りようとしていた。するとそこへ、亡くなったはずの橘浩二が現れる。そして浩二は困惑する優香に自分のことを秘密にするように告げ、加藤臣の両親が優香に会いたがっていることを伝えて去っていく。その直後、高曽根署では、浩二と思われていた人物の死体と、森の中で殺された浩二と同じ顔をしている「END事件」七人目の被害者の指紋が一致したことが判明。このあり得ない状況から、野口隆文、鬼頭壮一郎、小阪直人は、署内にデータを改ざんした裏切り者がいると判断する。
第5巻
署内の裏切り者に指紋データを提供したのは、巡査長の菊田だった。菊田は何者かに弱みをにぎられ、脅されていたのである。これを知った鬼頭壮一郎は、菊田の代わりにその人物に会いに行く。そこへ現れたのは、拓海と名乗る橘浩二と同じ顔をした男だった。拓海は浩二と同じ顔をした三人目の男で、つまり同じ顔の男は四人いることになる。しかし、これを公表されると問題になるからと、自分の存在を隠蔽してくれるのであれば「END事件」の手がかりを教えると言って去っていく。同時に壮一郎は、菊田がすでに拓海によって殺されていることを察する。壮一郎は、菊田が指紋の件に責任を感じて自殺したことにして、野口隆文にも拓海の存在を秘密にする。一方その頃、春野太慈は亡くなった母親、春野八千代の誕生日のために実家に戻っていた。しかし太慈は、その最中に春野武人とけんかになってしまう。太慈は八千代が亡くなって何年経っても、八千代に執着し続ける武人に嫌気が差していたのである。それでも二人は仲直りして太慈は仕事に戻るが、その直後「END事件」の七人目の被害者が出たことをテレビで知る。時を同じくして五十嵐秋奈は、事件現場の一つに以前住んでいた泰藤綾乃から話を聞き、関係者の中で一人アリバイのない人物がいることに気づく。
第6巻
「END事件」の犯人は春野真人だった。鬼頭壮一郎は拓海の情報から八人目の被害者である西沢久美の家へ向かい、駆けつけた五十嵐秋奈、小阪直人と共に真人を現行犯逮捕する。しかし真人は、前の被害者の殺害時にも、実は森の中で目撃されていた。だが、刑事の鎌木大木がこれを軽視して追わなかったことで、八人目の被害者が出てしまったのである。一方その頃、春野葵の乳がんの手術が終わり、春野太慈たちはこれに付き添っていた。そこへ高曽根署の警察官たちが現れ、太慈たちに真人が「END事件」の犯人だったことを伝える。しかし太慈は、秋奈からあらためてこの事実を聞かされても、まだ信じられずにいた。少し冷静になった太慈は秋奈に再度連絡するが、秋奈は待ち合わせ場所に現れることはなかった。仕方なく太慈が自宅に戻ると、すでに真人は犯人として報道されており、太慈や春野武人の自宅にはマスコミが詰めかけていた。そして太慈は、犯行が起きた日は、すべて真人が自宅にいなかったこと、また真人自身も犯行を認めていることを葵から聞かされ、事実を受け入れざるを得なくなる。一方、取り調べを受けた真人は、高校1年生のある日、春野八千代の自殺の理由を知り、それに耐えかねて見知らぬ男を衝動的に刺したことを自供し、同時にその男が橘浩二と同じ顔をしていたことを思い出す。
第7巻
時は遡る。春野真人は高校1年生の頃、橘浩二と同じ顔の男を殺害するが、翌日まったく同じ顔の男に会い、困惑する。そして、この殺人を誰にも打ち明けられないまま成長する。この時に殺害したのが小田慎太郎の家で見つかった白骨化死体だった。一方その頃、春野太慈はこれまでどおり仕事をしていたが、真人が加藤臣を殺害したという事実を受け入れ、柳女優香に謝罪する。優香には太慈の責任ではないと言われたものの、太慈にとって真人は自分自身であり、真人の罪は自分の罪も同然だったのである。その夜、すべてに絶望した太慈は自殺を考えるが、偶然五十嵐秋奈に会ったことで思いとどまる。そこで太慈は自分の気持ちを伝え、秋奈も老後にお互いを思い続けており、かつ独身だったらその時は交際しようと伝えて去っていく。翌日、春野葵たちは葵の入院する病院で今後について話し合うが、葵が見知らぬ男に突如襲われてしまう。葵は軽いケガで済んだものの、自宅に戻っても見ず知らずの人たちからの中傷はエスカレートし、春野一家は追い詰められていく。しかし警察は、真人が九人の被害者全員を殺したわけではないことを、すでに把握していた。
第8巻
春野真人が殺害したのは橘浩二と、浩二と同じ顔をした二人の男の、合計三人だけだった。真人は最初の男を殺害したあと11年間はふつうの生活を送っていたが、同じ顔の浩二と出会い、気が動転して殺害してしまう。その後、今度は仮面の男として現れたやはり浩二と同じ顔の男を、自分の家族を狙う敵と判断して殺害。しかし、戸崎悟をはじめとした残りの六人に関しては、真人が殺したのではなく、自殺した遺体を他殺に見えるように損壊していただけだった。真人は以前から、江崎連理のクリニックを監視しており、真人は患者の中から将来自殺しそうな人間を推測していたのだ。そして、毎日患者の自宅を回っては、安否を確認していたのである。さらに候補者が本当に自殺してしまった場合、遺族は自殺よりも他殺の方が気持ちが楽だろうと考えて、自分が殺したかのように見せかけていたのだ。この頃、春野太慈は、その事実を知らないまま連理のカウンセリングを受けていた。そして太慈は、カウンセリング中に連理がわざと自分を追い詰めるような発言ばかりすることに気づく。これによって太慈は、連理が加藤臣や五十嵐晶に対して自殺教唆したと確信し、すぐにこの事実を五十嵐秋奈に伝える。半信半疑の秋奈だったが、高曽根署も真人の証言から、連理に自殺教唆の疑いをかけていることを知らされる。
登場人物・キャラクター
春野 太慈 (はるの たじ)
S県高曽根市の清掃会社「特殊清掃 アウン」に勤務する男性で、年齢は28歳。春野真人の兄で、春野武人と春野八千代の息子。社内では最も古株であり、橘浩二の死後は会社を継いで社長となった。前髪を目の上で切った短髪で、左目尻にほくろが一つある。高校時代は金髪だった。以前、浩二が清掃を担当した「沢村マンション」303号室に住んでいるが、ここは五十嵐晶が自殺した部屋でもある。学生時代は感情の起伏が激しく、周囲から乱暴な人物だと思われていた。現在は冷静で落ち着いた性格になっているものの、今も悲しみや恐怖は怒ることでしか表現できない。そのために敵対する相手には、感情に任せて危険な行動に出るのではと、若狭恭司に心配されている。10歳の時に八千代が自殺し、彼女を止められなかったことに強い憤りを覚えている。それからは自殺を強く嫌悪するようになり、春野太慈自身も生きる希望をなくしているが、自殺だけは絶対にしないと誓っている。18歳の時に生死にかかわる仕事をしたいと考えるようになり、アウンに就職した。自分とは対称的な性格の真人を非常に大切に思っており、真人には幸せになってほしいと強く願っている。神社とお寺が好きで、見かけたら参拝している。高巣高校出身で、当時は泰藤綾乃に思いを寄せていた。これを知った真人に綾乃を奪われてしまうが、太慈はこの事実を知らない。
五十嵐 秋奈 (いがらし あきな)
S県高曽根署の高曽根署に勤務する警察官の若い女性。階級は巡査部長。五十嵐晶の姉だが、実際に血のつながりがあるかどうかは不明。前髪を目の上で切りそろえ、腰まである黒のストレートロングヘアにしている。一見体型は細く見えるが、筋肉質で腕っぷしも強く、身体能力が非常に高い。まじめでクールな性格の持ち主。生まれてすぐに捨てられ、孤児として児童養護施設で育った。拾われた際にいっしょにいた晶と姉弟として扱われ、実の姉弟同然に暮らしてきた。晶とは非常に仲がいいが、依存体質なために、よく晶の右肩に嚙みついては愛情を確認していた。しかし、ある年の秋に突然晶が自殺してしまい、その原因がわからずに苦しんでいる。同じ頃に「END事件」が始まり、仕事に復帰直後に四人目の被害者である小田慎太郎の捜査がきっかけで春野太慈と出会う。それからは、いっしょに「END事件」を捜査しながら絆を深めている。やがて太慈に思いを寄せるようになるが、自分たちは交際すべきではないと考えているため、老後も自分たちが同じ気持ちのままで、かつ独身であったら交際しようと約束した。
橘 浩二 (たちばな こうじ)
S県高曽根市の清掃会社「特殊清掃 アウン」の社長を務める男性で、年齢は59歳。前髪を上げて額を全開にした撫で付け髪に眼鏡を掛けている。細身の体型で頰がこけている。穏やかな性格でつねに落ち着いており、何事にも動じることなく非常に頼りになる。しかしその正体は、死ぬたびに新しい体を得て生き返る、永遠の命を持った神である。生き返る際は同じ性別と同じ容姿で生まれ、年齢は50歳程度からスタートする。さらに記憶は、前の人間のものを持ち越す。こうして何度も生き返っており、ある時からは「橘浩二」という男性の戸籍を買い取って浩二として暮らしていたが、春野真人によって突然殺害された。真人には、この殺人は夢であると言い聞かせたものの、真人が死体を隠しに来たことで真人に殺されたばかりの体と、新しく生まれた体が同時に存在しているところを見られてしまう。また、この古い体は「END事件」において「白骨死体」「三つ子A」と呼ばれた。その後は浩二として平和に暮らしていたが、春野太慈がアウンに就職したことで真人と再会。真人からは殺しても死なない亡霊と認識され、今度は「END事件」の四人目の被害者として殺害された。この身体は「橘浩二」「三つ子B」と呼ばれ、戸籍がバレてからは「バラバラ死体」とも呼ばれた。この直後、仮面をつけた「仮面の男」として春野家に向い、真人に警告。しかし、この体も真人に殺害され「END事件」の七人目の被害者「三つ子C」と呼ばれるようになる。それからは鬼頭壮一郎の息子である鬼頭拓海から取って「拓海」と名乗って暗躍し、壮一郎に真人の情報を提供して事件解決に協力。さらに「川上」と名乗って江崎連理を殺害し、「END事件」を完全に解決させて姿を消した。
加藤 臣 (かとう おみ)
S県高曽根市の清掃会社「特殊清掃 アウン」に勤務する若い男性。同僚の柳女優香の恋人で、前は福島寿洋の会社で働いていたが解雇された。橘浩二に拾われる形で、優香と共にアウンに就職した。前髪を上げて額を全開にしたツーブロックヘアで、顎ひげを生やしている。若い時に結婚し、妻の加藤美夏とのあいだに、長女の真帆と長男の歩をもうけるが、車を運転中に交通事故に遭って三人を失った。相手の居眠り運転が原因だったが、加藤臣は強い責任を感じており、以来性的なことをいっさい受けつけなくなってしまう。その結果勃起不全となるが、自分の体の変化には気づいていなかった。しかし次第に精神的に不安定になり、最初の会社を解雇される。この頃にようやく自分が性的な話題を聞くだけで気分が悪くなったり、子供を見かけるだけで不安な気持ちになることに気づく。だが、このままではいけないと感じ、寿洋の会社で働き始めた。そんなある日、同僚の優香の境遇を知り、業務現場で死臭を嗅ぎながら、子供の産めない体である優香に対しては、性的な興奮を覚えることに気づく。以来、現場で優香とセックスを繰り返すようになるが、この行為を目撃されて優香と共に解雇され、浩二の会社に就職した。このままではいけないという自覚はあり、春野太慈の勧めで江崎連理のカウンセリングを受けるようになる。しかし連理によって自殺教唆され、精神的に追い詰められ、かつて家族と暮らしていた家で自殺。「END事件」の六人目の被害者として発見されるものの、これは春野真人がそう見せかけただけだった。
柳女 優香 (やなぎめ ゆうか)
S県高曽根市の清掃会社「特殊清掃 アウン」に勤務する若い女性。同僚の加藤臣の恋人で、一年ほど前に橘浩二に拾われる形で、臣と共にアウンに就職した。前髪を目の上で切って真ん中で分け、顎まで伸ばした癖のあるボブヘアにしている。生まれつき妊娠の望めない体で、思春期にこのことを知る。それでも気丈に振舞っていたが、子供はあきらめると両親と話し合ったにもかかわらず、自分に隠れて不妊治療について調べていることに深く傷つく。その後、康太と交際を始めて結婚を考えるが、康太を両親に会わせたところ不妊治療を勧められ、さらに傷つく。これが要因となって康太とも別れ、その後は仕事をやめて地元を離れて福島寿洋の会社で働き始める。この会社で臣と出会い、臣の精神状態を知って交際を始めた。そんな中、業務現場でセックスを繰り返すようになり、寿洋の会社を解雇されてアウンに就職した。自分のことを歪んだ人間ととらえているが、臣には自分以上の歪みを感じており、セックスを通じて臣を支えることで、柳女優香自身の心を安定させているところがある。
田中 一平 (たなか いっぺい)
S県高曽根市の清掃会社「特殊清掃 アウン」に勤務する若い男性。橘浩二が死の直前に出した求人に応募し、浩二の死後に採用されたため、社内では一番の若手。しかし、アウンに来るまでに二社で遺品整理と特殊清掃を行ってきた経験者でもある。坊主頭で、誠実な性格をしている。勤めていた会社で行われていた、残すべき遺品まで処分したり、見積金額を遺族の足元を見て吹っ掛けたりする不誠実な仕事に耐えかねて、退職した。そのため、アウンの誠実で遺族に寄り添った姿勢を見て、ようやくきちんとした会社で働けると喜びを感じている。婚約者はいるが、子供は婚約者が出産できる年齢のうちに作れればいいと考えている。
春野 真人 (はるの まさと)
S県高曽根市の物流センターに勤務する若い男性。春野太慈の2歳下の弟で、春野武人と春野八千代の息子。妻の春野葵と長男の春野雄太と暮らしている。前髪を左寄りに分け、眼鏡を掛けている。穏やかな性格ながら、生まれつき自分には人間らしい感情が欠けていると感じており、春野真人自身は母親の八千代似だと思っている。8歳のある日、八千代が自殺するが、涙も出ずにあらためて自分は冷酷な人間であることを自覚。それからは心優しい男性を演じて暮らしている。しかし15歳のある日、偶然八千代の遺書を発見して八千代には人間らしい感情がなく、家族を愛すことができずに、幸せに暮らすことにさえ前向きになれなかった結果、自殺したことを知る。これに強い怒りを感じ、一家無理心中を考えるが実行できずに、代わりに森の中にいた見知らぬ男を殺害する。しかしそれからすぐに、その殺した男と同じ顔をした男に出会って混乱する。このことを誰にも話せずに強い孤独感を感じたまま泰藤綾乃と交際していたが、彼女と別れたのちに葵と結婚し、雄太をもうけた。そしてある日、江崎連理のカウンセリングを受けるために江崎宅に向かう。しかし、そこで八千代によく似た高橋和葉を見かけたことで断念。それからは連理のカウンセリングを受けている、和葉のような自殺の危険性がある人たちに目星をつけ、安否を確認するために毎日見張るようになる。しかし、戸崎悟が自殺したことで、自殺よりも他殺の方が遺族は苦しまないだろうと考え、自分が殺したように見せかける「END事件」を起こす。
春野 葵 (はるの あおい)
春野真人の妻で、春野太慈の義妹の若い女性。春野雄太の母親で、旧姓は「鈴木」。前髪を目の上で切って左寄りに分け、肩までの長さのセミロングヘアにしており、容姿が春野八千代と高橋和葉によく似ている。明るく穏やかな性格の持ち主。ある年の秋、右の乳房が乳がんとなり、全摘手術をすることになる。手術は成功するが、手術当日に真人が「END事件」の犯人として逮捕される。後日、真人が九人を殺害した凶悪犯であると聞かされ、離婚を決意。しかしその後、真人が殺害したのは橘浩二と、浩二と同じ顔をした男性二人だけだと知る。残りの六人は自殺であったが、真人が他殺に見せかけていたと知り、彼らしい行為であると涙した。
春野 雄太 (はるの ゆうた)
幼稚園児の男子で、春野真人と春野葵の息子。春野太慈の甥で、太慈とは非常に仲がいい。明るく元気な性格をしている。ある日、葵の検査中に真人と共に太慈の自宅で待たせてもらっていたが、そこに仮面の男が押し入り、人質に取られる。その直後、五十嵐秋奈が太慈の家に偶然訪問したことで救われるが、この時に受けた傷にその後も苦しむことになる。
春野 武人 (はるの たけと)
春野八千代の夫で、春野太慈と春野真人の父親。年齢は60歳。春野葵の義父で、春野雄太の祖父。短髪で唇の右下にほくろが一つある。感情豊かな激しい性格をしている。18年前、八千代が自殺するが、その時に遺書を発見してその内容にショックを受ける。以来、太慈と真人には遺書の存在を隠して生きてきたが、真人が15歳のある日に遺書を置いたまま眠ってしまう。これを読んだ真人が八千代の死の真相を知り、衝動的に橘浩二を殺害することとなった。
春野 八千代 (はるの やちよ)
春野武人の妻で、春野太慈と春野真人の母親で故人。亡くなった時の年齢は36歳。前髪を左寄りに分け、肩につくほどのセミロングヘアにしている。容姿が春野葵と高橋和葉によく似ている。生まれつき人間らしい感情が欠落していると自覚しており、のちに自分とは対照的な性格の武人と結婚する。その後、太慈と真人が生まれて幸せに暮らしていたがつねに満たされず、次第にリストカットを繰り返すようになる。36歳のある日、自分はどうしても家族を愛すことができずにいたため、自殺して無になりたいと考え、この事を遺書に書いて自殺した。
野口 隆文 (のぐち たかふみ)
S県県警本部の係長を務める中年男性。スポーツ刈りで、眼鏡を掛けている。事件当初から「END事件」にかかわっており、警察官としては堅実な捜査を信条としている。しかし、「END事件」の真相にたどり着けずにいる。
小阪 直人 (こさか なおと)
S県県警本部の主任を務める中年男性。事件当初から「END事件」の捜査を担当している。髪型はふんわりとした角刈り。五十嵐晶が亡くなった時、五十嵐秋奈に対して、秋奈が不在だったために捜査が遅れたと暴言を吐くなど、仕事熱心ながら辛辣な性格で、配慮に欠けたところがある。だが、春野太慈が秋奈と親しくしていることを知り、秋奈の境遇を話したり「END事件」の犯人に激しい怒りを燃やす太慈にあえて冷静に事実を伝えたりと、気遣いを見せることもある。鬼頭壮一郎とは犬猿の仲。
鬼頭 壮一郎 (きとう そういちろう)
S県県警本部の主任を務める中年男性で、鬼頭拓海の父親。前髪を目の上で切って左寄りで分け、後ろの髪の毛を肩まで伸ばしている。「END事件」には、春野太慈たちが仮面の男に襲われた直後にサポートとして参加した。しかし合流するなり、捜査が一向に進んでいない小阪直人たちをどなりつけるなど、直人とは犬猿の仲。その後は独自に「END事件」の被害者と、犯人の可能性がある仮面の男のDNA検査を行った。この検査の結果、小田慎太郎が自宅に隠していた白骨化死体と橘浩二、そして仮面の男の三人が、一卵性の三つ子であるという結論に至る。さらにその後、野口隆文から署内に裏切り者がいるらしいと聞き、それが菊田である証拠をつかんだ。この時、菊田の代わりに菊田を脅している人物に会いに行くが、そこで浩二と同じ顔の四人目の男、拓海と出会う。そして、拓海たちが四つ子であることを署に黙っている代わりに、拓海から「END事件」の情報を得て、事件を解決に導いた。最終的には、浩二たちの正体が人間ではないと察して、彼から手を引くことにした。
鎌田 大木 (かまた だいき)
S県高曽根市の高曽根署で、巡査部長を務める中年男性。坊主頭の横暴な性格で、差別的な発言を繰り返すことで署での評判はよくない。また捜査では単独行動ばかりの一匹狼をきどっているが、パチンコ店でサボってばかりいる。そのため仮面の男が「END事件」の七人目の被害者となった際、現場の森で犯人らしき人物を見かけたにもかかわらず、追わずに無視してしまう。結果、八人目の被害者として西沢久美の遺体が損壊されたことで、責任を取って一線から退いて事務担当となった。
七瀬 謙吾 (ななせ けんご)
S県県警本部で巡査部長を務める男性。鬼頭班の所属で、鬼頭壮一郎と行動を共にしている。前髪を左寄りで分けた短髪にしている。クールで落ち着いた性格の持ち主。壮一郎から信頼されており、署内の上層部以外には知らされていない情報も彼から聞いている。
酒井 佳歩 (さかい かほ)
S県県警本部で主任を務める女性。前髪を左寄りに分けたショートヘアにしている。明るくさばさばとした性格の持ち主。五十嵐秋奈と共に「END事件」を捜査している数少ない女性警官。そのため秋奈に関心を持っており、四番目の被害者である橘浩二に関する捜査を共にしたことをきっかけに、親しくなる。自分たち女性警官は捜査で多忙なため、恋愛では早めに手を打たなくては結婚できないと考えている。
犬飼 拓也 (いぬかい たくや)
S県にある高曽根署に勤務する警察官の若い男性。階級は巡査長。短髪で、明るくまじめな性格をしている。「END事件」において七人目の被害者「仮面の男」の死体が森の中で発見された際、捜査中に不審な人物を発見する。すぐさま追いかけるが返り討ちに遭い、その後しばらくその場で気を失ってしまう。五十嵐秋奈にひそかに思いを寄せているが、成就しなかった。
菊田 (きくた)
S県の警察官の男性で、階級は巡査長。短髪で体型はやや太め。気弱な性格から、鬼頭壮一郎には小物と評されている。ある時、女性と関係を持つが、後日彼女が未成年であることを知る。そしてこの弱みを彼女の兄ににぎられ、自分たちの指示に従うように命じられて、「END事件」の指紋データを渡した。この男は橘浩二とつながっており、最終的には浩二によって殺害され、壮一郎の独断で自殺として処理された。
江崎 連理 (えざき れんり)
S県高曽根市で心理療法士として働く中年男性。高曽根署と「沢村マンション」のあいだにある山にクリニックを開業し、店の付近にある自分で建てた偽神社の偽神主も務めている。これは、自分にはアミニズム的な多神感が合うと考えているため。胸の下まで伸ばしたストレートロングヘアを、首の付け根の位置で一つに結んでいる。一見穏やかで物腰柔らかく見えるが、実際は利己的で人を人とも思わない残虐な性格をしている。そのため、カウンセリングを通じて、患者を精神的に追い込んで自殺させることを目的としている。一方で、それ以上に多くの患者を救っているため、周囲からの信頼は厚い。判明しているだけでも五十嵐晶、戸崎悟、高橋和葉、若狭仁、小田慎太郎、加藤臣、西沢久美の七人を自殺に追い込み、このうち六人は「END事件」の被害者となる。しかし「END事件」との関連性をどれだけ疑われても、警察は自分を逮捕できないだろうと自信を持っている。
戸崎 悟 (とざき さとる)
S県高曽根市で単身赴任をしている会社員の男性で、故人。亡くなった時の年齢は26歳。短髪で鼻が高く、眼鏡を掛けている。妻の戸崎薫とはアルバイト先で知り合い、のちに結婚して子供を一人もうける。しかしこの直後、転勤が決まって単身赴任することになった。赴任直後から失敗を繰り返し、上司に叱責されたことで次第に社内では孤立状態に陥る。やがていじめに遭うようになり、精神的に追い詰められていく。そして2年後の10月4日「END事件」の最初の被害者として発見される。しかし、これは当時カウンセラーを務めていた江崎連理が自殺教唆した結果、自分で首つりをしたことによる窒息死であった。他殺に見られていたのは、戸崎悟が連理の患者の中でも際立って追い詰められていることを知って、その生活を監視していた春野真人が、悟の自殺を確認してすぐに部屋に侵入し、遺体を自らの手で損壊して他殺に見せかけたからである。
高橋 和葉 (たかはし かずは)
S県高曽根市に住む社会人の女性で、故人。亡くなった時の年齢は24歳。前髪を左寄りで分け、肩まで伸ばしたセミロングヘアにしている。容姿が、春野八千代と春野葵によく似ている。11歳の時に母親の高橋正子が亡くなり、父親の高橋由太郎と暮らしている。その後は二人でなかよく暮らしていたが、ある日一度だけ由太郎から性的虐待を受け、さらにこれを祖母に相談しても取り合ってもらえなかったことから、深く傷つく。以来、性的なことをいっさい受け付けなくなってしまう。そのため、恋人ができても性的なことはすべて断っていたが、ある日恋人からセックスをしたいと言われてしまう。これを断ったことでふられてしまい、江崎連理のカウンセリングを受けるようになった。また、この頃に春野真人に一方的に認識され、八千代と葵に似ている女性として親近感を抱かれるようになるが、自分を自殺させようともくろむ連理によってますます追い詰められて自殺。10月11日「END事件」の二人目の被害者として発見された。他殺に見られていたのは、高橋和葉が連理の患者の中でも際立って追い詰められていることを知って、その生活を監視していた真人が、和葉の自殺を確認してすぐに部屋に侵入し、遺体を自らの手で損壊して他殺に見せかけたからである。
若狭 仁 (わかさ じん)
S県高曽根市に住む無職の男性で、故人。亡くなった時の年齢は64歳。若狭恭司の父親でもある。癖のある短髪で、無精ひげを生やしている。粗暴な性格ながら、これは繊細で傷つきやすい内面を守るための虚勢である。恭司が子供の頃から家族に暴力を振るっており、恭司が高校生の時に妻に逃げられた。その後、酒とギャンブルに溺れ、恭司から軽蔑されていることも理解している。江崎連理のカウンセリングを受けるようになるが、自分を自殺させようともくろむ連理によって精神的に追い詰められて自殺。10月20日に「END事件」の三人目の被害者として発見された。他殺に見られていたのは、若狭仁が連理の患者の中でも際立って追い詰められていることを知って、その生活を監視していた春野真人が、仁の自殺を確認してすぐに部屋に侵入し、遺体を自らの手で損壊して他殺に見せかけたからである。
小田 慎太郎 (おだ しんたろう)
S県高曽根市のタクシー会社「細田タクシー」に勤務している男性で、故人。亡くなった時の年齢は31歳。あごの高さまであるボブヘアにしている。鼻が大きく、体型はやや太め。ある時、橘浩二の正体を知って「神様」と呼び慕うようになる。また、浩二との出会いがきっかけでうつ病を克服し、精神的に救われた。その後は浩二の頼みで、元浩二である、春野真人に殺された時の体の白骨死体を自宅に保管することになる。次第に浩二に嫌われるのではないか、見捨てられるのではないかという不安に駆られ、江崎連理のカウンセリングを受けるようになるが、自分を自殺させようともくろむ連理によって精神的に追い詰められて自殺。11月2日に「END事件」の四人目の被害者として発見された。他殺に見られていたのは、小田慎太郎が連理の患者の中でも際立って追い詰められていることを知って、その生活を監視していた真人が、慎太郎の自殺を確認してすぐに部屋に侵入し、遺体を自らの手で損壊して他殺に見せかけたからである。
西沢 久美 (にしざわ くみ)
S県高曽根市の「幅川アパート」102号室に住む34歳の女性で、故人。前髪を顎まで伸ばして真ん中で分け、肩につくほどまであるセミロングヘアにしている。親子関係が要因となり、自己否定の強い性格に育つ。そんな中、夫の不倫が原因で離婚することになるが、その原因は自分が夫をないがしろにしたためだととらえていた。このことで自分を必要以上に追い詰めるようになり、江崎連理のカウンセリングを受けるようになるが、自分を自殺させようともくろむ連理によって精神的に追い詰められて自殺。その後、「END事件」の八人目の被害者として発見された。他殺に見られていたのは、西沢久美が連理の患者の中でも際立って追い詰められていることを知って、その生活を監視していた春野真人が、久美の自殺を確認してすぐに部屋に侵入し、遺体を自らの手で損壊して他殺に見せかけたからである。
若狭 恭司 (わかさ きょうじ)
S県高曽根市のクラブ「TORA」を経営する男性で、若狭仁の息子。金色の撫で付け髪で、無精ひげを生やしている。徹底した合理主義者に見えるが、親切な性格でなんだかんだで面倒見がいい。子供の頃から仁に暴力を振るわれ、高校生の時に母親が家を出てからは仁と二人で暮らしている。将来は美術大学に進学したいと考えていたが、進学資金を仁に盗まれたことから、高校1年生の時に初めて仁を殴った。それからは、暴力を振るわれなくなったが親子関係は改善されず、仁が「END事件」の三人目の被害者となっても、父親が殺されてむしろ幸運だと思っていた。そのため、事件後も仁の殺害現場をあえて清掃せず、取材に来るマスコミや見物に来る野次馬に公開し、有料で写真を撮らせたり、インタビューを受けたりしてお金を稼いでいた。しかしこれによって「END事件」の犯人だと誤解されるようになり、潔白を証明するために「END事件」のコメンテーターを務めるようになる。春野太慈とは、橘浩二が五人目の被害者になった直後、太慈が独自捜査で仁の殺害現場にやって来たことがきっかけで知り合った。この時、太慈のあやうさに気づき、五十嵐秋奈には気をつけるようにアドバイスしたり、その後も太慈を気にかけるようになる。
阿久津 亮 (あくつ りょう)
S県高曽根市の「阿久津メンタルクリニック」で院長を務める精神科医の男性。ふんわりとした癖のある短髪にしている。容姿が五十嵐晶と非常によく似ており、実の双子の兄弟である可能性が高い。穏やかで落ち着いた性格の持ち主。ある年の秋に開業し、近くに住んでいる心理療法士の江崎連理にも協力してほしいと、連理の住む山に通って説得を続けていた。その際に春野太慈と五十嵐秋奈に目撃され、晶とカンちがいされるがすぐに誤解は解け、秋奈と親しく付き合うことになる。
五十嵐 晶 (いがらし あきら)
S県高曽根市に住む無職の若い男性で、故人。五十嵐秋奈の弟だが、血のつながりがあるかどうかは不明。ふんわりとした癖のある短髪で、右肩には秋奈が嚙みついた傷跡がある。容姿が阿久津亮と非常によく似ており、実の双子の兄弟である可能性が高い。穏やかで心優しい性格をしている。生まれてすぐに捨てられ、その時秋奈といっしょだったことから、姉弟として児童養護施設で育つ。秋奈とは仲がよく、五十嵐晶の愛情を確かめるために秋奈からよく肩に嚙みつかれていたが、我慢していた。その後は「沢村マンション」303号室に住んでいたが、ある時体を壊して退職。秋奈に迷惑を掛けてばかりの自分に悩み、江崎連理のカウンセリングを受けるようになるが、自分を自殺させようともくろむ連理によって精神的に追い詰められ、ドアノブに首をつって自殺。この部屋は橘浩二の手によって清掃され、のちに春野太慈が暮らすようになる。
福島 寿洋 (ふくしま としひろ)
特殊清掃と遺品整理の会社を経営する男性で、年齢は48歳。橘浩二に仕事を教えた人物でもあり、加藤臣と柳女優香を雇っていたため、春野太慈とも親しい。前髪を上げて額を全開にした撫で付け髪で、体型はがっしりしている。34歳のある日、突然会社にやって来た浩二に特殊清掃と遺品整理の仕事を教えてほしいと頼まれる。だが2年後に、浩二は一人の方が気楽なので独立すると言って退職してしまう。しかし、一人で仕事をすると言っていたはずの浩二が太慈を雇い、その後は自分が解雇した臣と優香まで雇ったことを不思議に思っていた。臣と優香が業務中にセックスすることを知っており、それが二人を解雇するきっかけとなった。浩二が亡くなり、太慈が「特殊清掃 アウン」を継ぐことになったと知り、あらためて太慈と対面する。そして太慈に新社長となった以上は、浩二のやり方をなぞるだけではなく、臣と優香にもカウンセリングを受けさせ、処遇を改めるべきだとアドバイスした。
康太 (こうた)
柳女優香の元恋人。前髪を眉の上で短く切った、癖のある短髪に眼鏡を掛けている。まじめで誠実な性格の持ち主。優香が妊娠できない体であることを知ったうえで、優香に告白して結婚を前提に交際を始める。順調に交際を続け、優香の両親にあいさつに行くが、そこで優香の両親から不妊治療を勧められた際にあいまいな返事をしたことで、優香を深く傷つける。これが原因で別れることとなる。
明実 (あけみ)
柳女優香の友人の若い女性。前髪を左寄りで分け、顎の高さまであるボブヘアにしている。三白眼で、鼻の周囲にそばかすがある。優香とは学生時代からの付き合いで、優香から子供が産めない体であることを打ち明けられるが、前向きに励ました。優香が康太と婚約した際には喜んでいたが、その後に破談になったことを心配していた。そのため、優香の新しい恋人の加藤臣が「END事件」の六人目の被害者となったことを優香の母親から聞いた時には、すぐに優香に会いにやって来た。「愛菜(まな)」という幼い娘がいる。
鬼頭 拓海 (きとう たくみ)
S県高曽根市の特別支援学級に通う男子で、鬼頭壮一郎の息子。年齢は16歳。前髪を真ん中で分けた、ツンツンの短髪にしている。知的障害のため、言葉をうまく話せない。また性的にも正しい判断ができず、外出先で自慰をしたり、学校でも性関連のトラブルが絶えない。
泰藤 綾乃 (やすふじ あやの)
S県高曽根市に暮らす女性で、年齢は28歳。春野真人の元恋人で、春野太慈の友人でもある。前髪を斜めに分け、左側は編み込んで胸の下まで伸ばしたロングウエーブヘアを、首の付け根の高さで一つに結んでいる。生まれつき色素が薄く、髪が茶色のために染髪していると誤解されることが多い。太慈と同じ高巣高校出身ということで親しくなり、髪の毛の悩みを打ち明ける。これがきっかけで、太慈は金髪に染めて教師に叱られたり、春野武人とけんかをしたりするようになる。これを真人が目撃しており、この時に太慈が泰藤綾乃に思いを寄せていることを知る。その後、真人にアプローチされて交際を開始し、自宅の合鍵をプレゼントした。のちに別れた際に鍵は返却してもらったが、そのまま紛失してしまう。この鍵を真人が再度手に入れていたことで、この部屋が橘浩二の殺害現場となった。
書誌情報
ROUTE END 全8巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2017-06-02発行、 978-4088811208)
第2巻
(2017-09-04発行、 978-4088811598)
第3巻
(2017-12-04発行、 978-4088813066)
第4巻
(2018-04-04発行、 978-4088814537)
第5巻
(2018-07-04発行、 978-4088815220)
第6巻
(2018-11-02発行、 978-4088816333)
第7巻
(2019-02-04発行、 978-4088817279)
第8巻
(2019-04-04発行、 978-4088818061)