トレース 科捜研法医研究員の追想

トレース 科捜研法医研究員の追想

科学捜査研究所に勤務していた経歴を持つ作者、古賀慶の代表作にして初連載作品。警視庁科学捜査研究所(科捜研)を舞台に、法医研究員の真野が殺人事件の証拠品を鑑定しながら事件の真相を追求する物語。23年前に家族を惨殺された過去を持つ主人公の前に、当時の現場に最初に臨場した刑事の虎丸が現れ、新人法医研究員の沢口ノンナを巻き込みながら物語は展開していく。本作は警察サスペンス作品に分類され、DNA鑑定やルミノール検査など、実際の科学捜査で用いられる技術が物語の重要な要素となっている。科捜研の施設や備品、鑑定手順が詳細に描かれ、警察組織でありながら真実の究明のみを目的とする機関として描かれている。コアミックス(連載開始時はノース・スターズ・ピクチャーズ)「月刊コミックゼノン」2016年3月号から2023年4月号まで連載。テレビドラマ化され、2019年1月から放送。また、同年2月にはテレビドラマ版のノベライズも刊行された。

正式名称
トレース 科捜研法医研究員の追想
ふりがな
とれーす かそうけんほういけんきゅういんのついそう
作者
ジャンル
その他職業・ビジネス
 
推理・ミステリー
レーベル
ゼノンコミックス(コアミックス) / ゼノンコミックス(ノース・スターズ・ピクチャーズ)
関連商品
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作品の概要

基本情報

科学捜査研究所に勤務していた経歴を持つ作者、古賀慶の代表作にして初連載作品。

要旨と舞台設定

警視庁科学捜査研究所(科捜研)を舞台に、法医研究員の真野礼二が殺人事件の証拠品を鑑定しながら、事件の真相を追求する物語。23年前に家族を惨殺された過去を持つ真野が、科学的手法で事件の真実にせまっていく。

ストーリー展開

真野は科捜研のエースとして認められているものの、時に見解の相違から捜査員と対立することもある。そして、23年前の事件の真犯人を追い続ける真野の前に、当時現場に最初に臨場した刑事の虎丸良平が現れ、物語は新たな展開を見せる。

ジャンル的特徴と位置づけ

本作は、元科学捜査研究所に勤務していたという経歴を持つ作者、古賀慶の、科学捜査の手法や法医学に関する知見をもとに、事件解決過程を描いた警察サスペンス作品。DNA鑑定やルミノール検査など、実際の科学捜査で用いられる技術が物語の重要な要素となっている。

作品固有の表現技法と特徴

作中では作者の実務経験が色濃く反映され、科捜研の施設や備品、鑑定手順などが詳細に描かれる。各事件においては、科学的な証拠に基づく捜査と、人間関係や心理的要素が融合した物語が展開される。

世界観の構築と設定

科捜研は、警察組織でありながら、被害者や組織のためではなく、真実の究明のみを目的とする機関として描かれており、この特殊性が独自の世界観を形成している。また、そこで働く研究員たちの姿勢や信念が、物語の基盤となっている。

連載状況

コアミックス(連載開始時はノース・スターズ・ピクチャーズ)「月刊コミックゼノン」2016年3月号から2023年4月号まで連載。

メディアミックス情報

テレビドラマ 

『トレース~科捜研の男~』:2019年1月7日から3月18日までフジテレビほかで放送。原作と比べ、真野礼二と虎丸良平が険悪な関係であることや、「練馬一家殺人事件」が「武蔵野一家殺人事件」に変更されているなどの差異がある。キャストは真野礼二を錦戸亮、沢口ノンナを新木優子、虎丸良平を船越英一郎が演じている。

小説

『トレース ~科捜研の男~ 上』:2019年2月10日扶桑社「フジテレビBOOKS」より刊行。テレビドラマ版のノベライズ。

『トレース ~科捜研の男~ 下』: 2019年3月27日刊行。

あらすじ

第1巻

ある日、見習い法医研究員の沢口ノンナは、警視庁への出向から帰ってきた真野礼二と出会う。無愛想で空気を読まない発言ばかりの礼二に壁を感じるノンナだったが、真実究明のために真摯に鑑定に取り組み、被害者に礼を尽くす礼二の姿に心を打たれ、尊敬するようになる。礼二は、状況や物証から推察される個人の主観にはいっさい耳を貸さず、ひたすら鑑定結果にのみ真実を求めることこそが、死者への弔いであると考えていた。そんな礼二には、かつて練馬一家殺人事件で生き残った者として、兄の源義一に濡れ衣を着せた真犯人を見つけ出すという大きな目的があった。

第2巻

家族間の刺殺事件を解決に導いた夜、真野礼二虎丸良平練馬一家殺人事件の現場となった、源家自宅跡の公園に連れて行かれる。礼二が事件の唯一の生存者である「源礼二」だと知った虎丸は、ただ「この事件には触れないほうがいい」と告げる。そんな中、礼二はかつて姉の源仁美の副担任だった先生から、事件に深くかかわっていると思われる三人の名前と、居場所について情報提供を受ける。そして礼二は、その三人のうちの一人、佐保優作の父親が孤独死した事件に立ち会う機会を得る。

第3巻

佐保優作の父親が孤独死した事件にかかわり、優作のDNA型を入手した真野礼二は、今度は姉の源仁美を司法解剖したのが医師の大木であるとの情報を得て、単身、大木のもとへと向かう。そこで仁美の体から採取された「絨毛」を譲り受けた礼二は、仁美が身ごもっていた胎児の細胞から、胎児の父親の手がかりを得る。さらに練馬一家殺人事件の真犯人と目されている一人で、事件後から行方不明となっている新妻大介の所在を突き止めた礼二は、大介に会いに行くことにする。ホームレスとなっていた大介は、礼二を一目見るなり涙ながらの謝罪をするが、礼二は謝罪を受け入れることはなかった。そして礼二はその翌日、大介が何者かに刺殺されたという報を受ける。

第4巻

練馬一家殺人事件の真犯人と目されている一人、新妻大介により、殺害された事件現場の遺留品として持ち込まれた軍手には、大介の血液だけでなく、練馬一家殺人事件の被害者である源仁美や両親の血液が付着していた。どんなに調査しても見つからなかった23年前の事件に関する資料が、突如として現れた事態に真野礼二は、事件が起きてから現在までの記憶を思い返していた。独自に事件を調べるうちに先生と出会い、協力関係になったことを回想しつつ、真犯人を突き止める覚悟を新たにする。そんな中、練馬一家殺人事件の真犯人と目されている最後の一人、壇浩輝が、刑事部長として新宿警察署科学捜査研究所の視察に訪れることになる。

第5巻

新妻大介が殺害された事件現場の遺留品として持ち込まれた軍手は、やはり練馬一家殺人事件の際に押収され、さらに新宿警察署科学捜査研究所から引き上げられて、冷凍保存されているはずの証拠品だった。その事実を当時鑑定した海塚から聞かされた真野礼二は、海塚が鑑定したすべてのデータを書き写し、保管していたというノートを受け取る。当時、事件を捜査していたのが牛濱勇という刑事だと知った礼二は、牛濱が住んでいたという鹿児島の家を訪ねる。そこで発見した家族宛の独白には、練馬一家殺人事件についての心残りが書かれていた。

第6巻

真野礼二は、牛濱勇の息子である志堂優太と接触するため、先生を通じてライター志望の人物として会う約束を取り付ける。しかしその矢先、優太がある殺人事件の重要参考人として名前が挙がっていることを知る。鑑定にスピードと合理性を求める野川正臣と対立しつつも、優太が犯人ではないと突き止めた礼二は、偽名を使って優太と面会する。しかし、優太はすでに礼二の素性も、さらには現在の職業も知っていた。その事実を知ったうえで礼二は、勇と練馬一家殺人事件に関連する情報提供を求める。礼二へのインタビューと引き換えに承諾した優太は、勇が突き止めた情報を話し始める。

第7巻

志堂優太からの情報で、かつて虎丸良平が個人的に練馬一家殺人事件の捜査をしていたことを知り、真野礼二は改めて虎丸と話をする。虎丸は礼二が並々ならぬ執念で、この事実に辿り着いたことを知り、その捜査の最中に家族が危険に晒(さら)されたこと、そして牛濱勇から託されたすべての捜査資料が盗まれたことを話した。その中で、これまで実の兄と信じて疑っていなかった源義一が養子だった可能性があると知らされ、礼二はショックを受ける。その後、新妻大介の殺害に使用されたと思われる凶器が発見され、礼二はその鑑定に全力を尽くすことになる。

第8巻

新妻大介の殺害に使用された凶器から、壇浩輝の血液が検出された。この鑑定結果に動揺を見せる海塚孤谷に対し、真野礼二虎丸良平と共に、大介と浩輝が練馬一家殺人事件に関係があることを打ち明ける。これを聞いた海塚と孤谷が真実究明に協力したことで、礼二と良平はついに浩輝の逮捕状を取ることに成功する。そんな中、浩輝が逃亡したことで、指名手配されることとなる。これにより、練馬一家殺人事件の犯人とされている源義一が受けていたいじめもマスコミで取り沙汰されるようになり、ネットリンチを受けた佐保優作が捜査協力を申し出る。

第9巻

練馬一家殺人事件を起こし、源義一を自殺に見せかけて殺害したうえで逃亡した真犯人は先生だった。壇浩輝からの呼び出しに応じた真野礼二を待っていたのは、礼二によって捕らえられ、拷問を受けた先生自身による思いがけない告白だった。さらに浩輝は義一を心から愛していたことを告白し、礼二を困惑させる。真犯人を突き止め、礼二に殺させることを目的に今まで見守ってきたと語る浩輝は、戸惑う礼二の前に車椅子に乗せた先生を連れ出し、真実を語るようにうながす。そして浩輝は、礼二にそっと拳銃を手渡す。

作品誕生のいきさつ

作者の古賀慶は、かつて実際に科学捜査研究所に勤務していたが、漫画家デビューしてからは、その経歴を積極的に明かそうとはしなかった。しかし新作の案を練っていた際、担当編集者との打ち合わせの場でそのことを話したところ、その経験を作品に活かすべきとのアドバイスを受け、本作『トレース 科捜研法医研究員の追想』の着想を得たという。

登場人物・キャラクター

真野 礼二 (まの れいじ)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員として働く男性。主任を務める。どこかぼんやりとした顔つきで、TVアニメの主人公「スコルピオン・マン」の人形をいつも白衣の胸ポケットに入れて持ち歩いている。スコルピオン・マンの人形を持ち歩いているのは、自分が正義のヒーローになるのだという強い決意の表れでもある。沢口ノンナが入庁する前から警察庁に出向しており、最近新宿警察署科学捜査研究所に戻ってきた。「新宿警察署科学捜査研究所のエース」と評されているが、空気を読むことが苦手なためにまったく融通が利かない。23年前に起こった練馬一家殺人事件の生存者で、本名は「源礼二」。納得のいかない幕引きとなった練馬一家殺人事件の真実を暴くために科学捜査研究所に勤めるようになった。鑑定結果以外は誰の言葉も信じず、根拠のない推察を極端に嫌う。そのため、冷たい性格だと思われることも多いが、中絶児に対する配慮を忘れないなど優しい一面もある。鑑定結果こそが揺るぎない真実であり、究極の客観であるというポリシーから、鑑定には全力で取り組み、虎丸良平たちが想定していなかった真相を解明することもある。

沢口 ノンナ (さわぐち のんな)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員見習いとして働く女性。肩までの黒髪をポニーテールにまとめている。勤務2年目の頃は鑑定資格を持っていなかったため、真野礼二や水田まり子の指示のもとで鑑定を行っていた。3年目で資格試験に合格しているが、合格後も礼二のサポートを受けている。胃の内容物やコンドームの鑑定には多少の抵抗があるものの、指示されたことには積極的に取り組んでいる。出会いを求め、虎丸良平に幹事を頼んで合コンを主催してもらうこともあるが、礼二を気にしている様子が見られる。

虎丸 良平 (とらまる りょうへい)

新宿警察署刑事課で巡査部長を務める中年の男性。短髪の天然パーマで、顎髭を蓄えている。23年前に起こった練馬一家殺人事件で、最初に現場である真野家に到着した。捜査一課に所属していた頃、練馬一家殺人事件を個人的に捜査しており、牛濱勇にも面識があった。ただし事件を調べている最中、妊娠中だった妻が転落事故を起こして流産したり、事件資料が自宅から盗まれたりと身の危険を感じることが重なり、家族を守るために捜査を中断した。真野礼二が練馬一家殺人事件の生存者である「源礼二」であることを察し、真実を探るために新宿警察署科学捜査研究所に入ったのかと確認したあと、「この事件には触れないほうがいい」と釘を刺した。

孤谷 (こたに)

新宿警察署刑事課捜査一課で巡査部長を務めている男性。オールバックの黒髪を一房だけ額に垂らしており、糸目なのが特徴。当初は真野礼二たちに傲慢な態度で接していたが、真実をひたすら追求する礼二の姿勢を知る中で、強い信頼を寄せるようになる。

海塚 (かいづか)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員として働く初老の男性。科長を務める。ふくよかな体型で、黒髪を七三分けにしている。語尾に「~のね」を付けて話す癖がある。かつて練馬一家殺人事件における遺留品の鑑定を依頼され、血液型鑑定を行った。その後、上司から事件に関係するすべての資料を提出しろと命令を受けたが、その内容をひそかにすべて書き写し、手元で保管し続けていた。

野川 正臣 (のがわ まさおみ)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員として働く男性。副主査を務める。長めの黒髪を真ん中分けにしており、目の下に濃いクマがある。事件では捜査員の要望に応えるのが科学捜査研究所の務めだというポリシーのもと、短時間で効率的に鑑定を行うことこそ最優先事項であると考えているため、真野礼二とはたびたび対立している。

清松 トオル (きよまつ とおる)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員として働く男性。短髪の痩せた体型で、オネエ言葉で話す。面倒見のいい性格で、沢口ノンナにもよき先輩として接しており、慕われている。虎丸良平を恋愛対象として見ている様子が窺(うかが)える。真野礼二とは同期で、気やすく会話ができる良好な関係を保っている。

水田 まり子 (みずた まりこ)

新宿警察署科学捜査研究所の法医研究員として働く女性。肩下までの黒髪をサイドでまとめ、眼鏡をかけている。真野礼二とは同期で、気やすく会話ができる良好な関係を保っている。清松トオルからは「まり姉」と呼ばれている。

先生 (せんせい)

元・高校教師の男性。かつて源仁美の在籍したクラスの副担任を務めていた。痩せた体型で、眼鏡をかけている。真野礼二と共に練馬一家殺人事件の真相を探るべく、礼二とは定期的に連絡を取り合っている。事件が起こって以来、自分が強引にでも仁美を警察に連れて行けば事件は起こらなかったかもしれないと考えており、自責の念に囚われ続けている。

剛木 (ごうき)

新宿警察署鑑識課で巡査部長を務めている男性。そり込みの入ったスポーツ刈りで、筋肉質な体型をしており、非常に力が強い。ある事件で真野礼二の仕事ぶりを目にして、最初は真野を嫌味な男だと思っていたが、その仕事に対する真摯な姿勢を気に入り、現在は好意的に接している。

佐保 優作 (さぼ ゆうさく)

かつて源義一をいじめていた中年の男性。中肉中背で、黒髪をオールバックにしている。真野礼二から、練馬一家殺人事件の犯人ではないかと目されている一人であり、断罪と復讐の対象者として狙われている。父親が孤独死していた事件で、礼二と面識を得た。新妻大介が殺害されてからは、義一の関係者による復讐であると思い込んでおり、次に殺されるのは自分ではないかと怯(おび)えている。

新妻 大介 (にいづま だいすけ)

かつて源義一をいじめていた男性。痩せた体型で、長い黒髪をうなじでまとめている。真野礼二から、練馬一家殺人事件の犯人ではないかと目されている一人であり、断罪と復讐の対象者として狙われている。中学生時代は、義一の親友として自宅にも何度も遊びにきており、礼二や源仁美にも優しく接していた。事件後から失踪し、ホームレスとして生活している。礼二と再会した直後、何者かによって殺害された。

壇 浩輝 (だん ひろき)

かつて源義一をいじめていた男性。現在は警視庁刑事部長となっている。真野礼二から、練馬一家殺人事件の犯人ではないかと目されている一人であり、断罪と復讐の対象者として狙われている。成績優秀で容姿端麗、家柄もよく、誰からも好かれていた。佐保優作と新妻大介には、義一をいじめていた理由は自殺させてみたかったからだと話していた。礼二の本名が「源礼二」であることや義一の弟であることも理解したうえで、挑発するような態度を続けている。壇浩輝の父親は、練馬一家殺人事件の当時警視総監を務めており、現在は法務大臣をしている。

源 仁美 (みなもと ひとみ)

真野礼二の姉で、故人。練馬一家殺人事件の被害者で、殺害当時は16歳で女子高校生だった。佐保優作、新妻大介、壇浩輝に学校内で犯されて妊娠してしまう。先生からは警察へ相談に行くことを勧められたが断わり、子供にも罪はないと、出産のために休学届を提出した。練馬一家殺人事件の1か月後に休学する予定だった。事件を扱ったニュースでは、源仁美が妊娠していたことは報道されていない。

源 義一 (みなもと よしかず)

真野礼二の兄で、故人。練馬一家殺人事件の犯人と目されている男子高校生で、家族を殺害したあとに自殺したと考えられている。佐保優作、新妻大介、壇浩輝からひどいいじめを受けていた。また、義一は源家の養子だったとも噂されている。事件を扱ったニュースでは、源義一に養子の可能性があることや、いじめを受けていたことは報道されていない。

牛濱 勇 (うしはま いさみ)

かつて練馬一家殺人事件を担当した刑事の男性。事件の4か月後に捜査一課から総務部へ異動になり、さらにその3年後には上司への傷害事件を起こして懲戒処分、依頼退職を受けた。退職後は離婚して鹿児島の実家で暮らしていたが、すでに亡くなっている。自宅には家族に対する独白が大量に残されており、その中に練馬一家殺人事件についてのことも書き残していた。

志堂 優太 (しどう ゆうた)

フリーライターの男性。牛濱勇の息子。明るい茶髪で、ヘビースモーカー。主にWEBサイト用の記事を執筆しており、ゴシップを得意としているが、取材方法が強引なことから同業者からの評判が非常に悪い。父親である勇の誇りを踏みにじり、家族を崩壊に導いた警視庁を心底憎み、壇浩輝が練馬一家殺人事件に深くかかわっているのではないかと疑って、さまざまな情報を収集していた。真野礼二の素性や現在の職業まで熟知しており、礼二が接触してからは連携して行動している。

大木 (おおき)

かつて源仁美を司法解剖した医師で、老齢な男性。ふくよかな体型で、頭頂部が禿げている。地方で小さな診療所を営んでいたが、真野礼二が訪れたその日、定年によって診療所を閉院したばかりだった。仁美の遺体の状況をよく記憶しており、仁美から採取した胎盤のもとである「絨毛」を保管し続けていた。

沢口 カンナ (さわぐち かんな)

沢口ノンナの妹。新宿警察署の会計課事務を務めている女性。いつも身ぎれいにしており、女性としての人生を謳歌している。ノンナの飾り気のなさを気にかけ、髪を巻いてやったりして魅力的な女性にしようとしている。また恋愛事に鼻が効き、ノンナが真野礼二に恋しているのではないかと期待している。

場所

新宿警察署科学捜査研究所 (しんじゅくけいさつしょかがくそうさけんきゅうじょ)

真野礼二が勤めている研究機関。「科捜研」とも呼ばれる。科学捜査研究所という部署そのものは各都道府県刑事部にあり、真野たちは新宿署を拠点としている。刑事部に所属していながら、被害者のために研究をしているのではなく、ひたすら真実究明のための研究を続けている。主な業務としてDNA型鑑定があり、全国のDNA鑑定数は年間20万件を超えるとされる。また、毎日大量の事件資料が嘱託されているため、事件の担当者がわかりずらく、一方で各事件を担当する研究員はつねに一人であることから、法医研究員であれば証拠品の鑑定結果を黙殺、またはすり替えることで完全犯罪を作り上げることが可能とされている。

その他キーワード

練馬一家殺人事件 (ねりまいっかさつじんじけん)

23年前、練馬区で起こった殺人事件。長男の源義一が両親と妹の源仁美の三人を殺害し、自らも遺書を残して自殺したとされる殺人事件で、真野礼二はこの事件での唯一の生存者。虎丸良平は当時、通報を受けて最初に駆けつけた警察官だった。礼二は義一が家族を殺害したとは考えておらず、真犯人が別にいると確信しており、独自に証拠を収集している。しかし、ほとんどの捜査資料は抹消され、当時の捜査員たちの多くは練馬一家殺人事件については一様に口を閉ざしている。また礼二は、義一をいじめていた佐保優作、新妻大介、壇浩輝の誰かが事件の真犯人ではないかと考えている。

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書誌情報

トレース 科捜研法医研究員の追想 13巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉

第1巻

(2020-04-01発行、978-4867200704)

第8巻

(2020-04-01発行、978-4867200773)

第12巻

(2022-11-18発行、978-4867204429)

第13巻

(2023-04-20発行、978-4867204955)

トレース : 科捜研法医研究員の追想 8巻 ノース・スターズ・ピクチャーズ〈ゼノンコミックス〉

第1巻

(2016-08-01発行、978-4199803567)

第2巻

(2017-03-01発行、978-4199803949)

第3巻

(2017-10-01発行、978-4199804458)

第4巻

(2018-04-01発行、978-4199804830)

第5巻

(2018-10-01発行、978-4199805165)

第6巻

(2019-02-01発行、978-4199805479)

第7巻

(2019-07-01発行、978-4199805721)

第8巻

(2019-12-01発行、978-4199806063)

トレース : 科捜研法医研究員の追想 11巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉

第9巻

(2020-07-01発行、978-4867201541)

第10巻

(2021-07-01発行、978-4867202418)

第11巻

(2022-06-01発行、978-4867203781)

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