異なる主人公による、新たな『オッドタクシー』
本作は、テレビアニメ『オッドタクシー』の新プロジェクトとして始動した、P.I.C.Sによるメディアミックス作品の一つである。『オッドタクシー』は、しがないタクシードライバーの小戸川宏を中心にした群像劇であり、練馬区の女子高生行方(ゆくえ)不明事件の謎を巡るミステリードラマでもある。2022年には、第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞。劇場アニメ『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』や舞台『オッドタクシー 金剛石は傷つかない』、コミカライズ作品などに展開され、根強い人気を誇っている。本作は、そんな『オッドタクシー』の世界を、新たな主人公の視点から描いたサスペンスミステリーである。
テレビアニメ版にも登場していた二人の正体
本作の主人公は、探偵事務所の調査員、19歳の玲奈と24歳の佐藤。二人ともテレビアニメ版に登場しており、玲奈はアルバイトをしながらアイドルを目指すフリーター、佐藤はあることから小戸川を殺そうとする田中一の小学校時代のクラスメイトとして、回想シーンに登場していた。なお、二人が探偵であることは劇場アニメ版で明かされている。本作には、テレビ・劇場アニメ版に加え、新たに登場する人物もいる。例えば、探偵事務所所長の指宿や、何でも屋の赤道である。指宿が、暴力団のボスと何かしらの関係があることや、『オッドタクシー』の重要アイテムである、盗聴器付きの「幸せのボールペン」や遠隔操作できる「ドライブレコーダー」を赤道が作っていたことなどが明らかにされる。
描かれていなかった知られざる真実が明かされていく
10月4日の夜、ある浮気調査をしていた玲奈と佐藤は、上目黒のビルで若い女を降ろしたタクシーを偶然見かけ、なんとなく写真を撮る。その後、居酒屋「やまびこ」の女将、タエ子からの依頼で、二人はタクシードライバーの小戸川宏の素行調査に着手する。一方、二人の上司の指宿は、行方不明の女子高生を調査していた。女子高生が最後に目撃されたのが10月4日で、彼女はタクシーに乗って去っていったという。目撃者が覚えていた車のナンバーは、小戸川の車と同じであり、玲奈と佐藤が上目黒のビルで見かけたタクシーのものだった。こうして、小戸川の素行調査は、女子高生行方不明事件とリンクする。ヤクザのドブと佐藤がじつは出会っていたこと、玲奈とアイドルの三矢ユキが同じ高校の陸上部であることなど、テレビアニメ版の裏側で起きていた知られざる真実が、玲奈と佐藤のコンビによって次々と明かされていくのが本作最大の魅力である。
登場人物・キャラクター
玲奈 (れな)
指宿探偵事務所の調査員の少女。ポニーテールが特徴の19歳で、埼玉県出身。高校では陸上部に所属していたが、何かしらの事情で退学し、15歳から探偵になる。同僚の佐藤とともに、小戸川宏の周辺を調査し女子高生行方不明事件の真実を追う。テレビアニメ『オッドタクシー』では、アイドル志望のフリーターで、キャバクラ嬢として登場する。
佐藤 (さとう)
指宿探偵事務所の調査員の青年。ちょっと太めの24歳で、ある事件がきっかけで小戸川宏を殺そうとする田中一とは小中学校が同じだった。実家は輸入家具屋で羽振りがよかったが、中学生のときに会社が倒産。家出した父を探すノウハウを学ぼうと探偵社に入った。珍しい瞬間に立ち会えたり、レアなものを引き寄せたりする体質。一方、欠点は二択を必ず間違えること。探偵事務所の二択試験で50問すべて不正解だったことから、所長が面白がって採用した。
指宿 (いぶすき)
指宿探偵事務所所長の中年男性。玲奈と佐藤の上司で、口ひげとあごひげが特徴。知り合いである暴力団のボスからの依頼で、行方不明になった練馬区の女子高生の調査を行う。
赤道 (せきどう)
サウナ「赤道」があるビルの地下を拠点とする何でも屋の青年。指宿の古い知り合いで、手先が器用なため色々なものを作る。遠隔操作ができるドライブレコーダーを作成し、小戸川宏のタクシーに取り付けた。また、テレビアニメ『オッドタクシー』で、色々な人の手に渡った盗聴器内蔵「幸せのボールペン」も赤道の製作物である。
クレジット
- 原作
-
此元 和津也 , P.I.C.S.
関連
書誌情報
RoOT/ルート オブ オッドタクシー 5巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2023-05-30発行、 978-4098618071)
第2巻
(2023-09-28発行、 978-4098625239)
第3巻
(2023-12-27発行、 978-4098626229)
第4巻
(2024-05-30発行、 978-4098628025)
第5巻
(2024-11-28発行、 978-4098630714)