VECTOR BALL

VECTOR BALL

ひねくれ者の高校生である米炊おかかは、ある日、人知れず異形の侵略者達と戦う少年・群青新太と出会う。学校で起きている異常を解決するため、そして友人達とのかけがえのない日々を守るため、戦いに身を投じるおかかの姿を描く友情バトルアクション。「週刊少年マガジン」2016年22・23合併号から2017年16号にかけて連載された作品。

正式名称
VECTOR BALL
ふりがな
べくたーぼーる
作者
ジャンル
バトル
 
不条理・シュール
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あらすじ

第1巻

米炊おかかの通うニワトリ高校では、生徒達の記憶が突如曖昧になったり、謎の襲撃者が現れるなど数々の異変が起きており、校内は不穏な空気に包まれていた。そんな状況を厭うおかかは、異変を解決する事を決意し、魑魅魍魎の協力のもと調査を進める。その中で、おかかは校内を徘徊する怪物と、それと戦う群青新太の姿を見る。怯えながらも立ち向かう新太の姿に強い憧憬を抱いたおかかは、不思議な力を使う新太と協力する事で、怪物を撃退する事に成功するのだった。明くる日、おかかは真実を話すものの周囲に信じられなかった。また新太と話そうとするが、おかかは避けられてしまう。一方、孤独な戦いを続ける新太は、友人である大月が敵の毒牙にかかっている事を知る。再びおかかの協力で敵を撃退に成功した新太は、おかかに真実を打ち明ける事を決意する。しかし、おかかはベクターボールを解いた事で、ビリイナと名乗る敵にさらわれてしまうのだった。おかかは、地球を侵略しに来た思念体ジル将軍に体を乗っ取られそうになるが、力を振り絞って抵抗。新太の助けもあり、ジル将軍を撃破する事に成功するのだった。

第2巻

米炊おかか群青新太ジル将軍を撃破するが、激昂したビリイナと戦闘していた。圧倒的な力を持つビリイナに手も足も出ない二人だったが、おかかの持つベクターボールからヴェクターが現れた事で状況は一変する。おかかの才能と新太の力、そしてそれらを組み合わせる事ができるヴェクターの力が合わさる事で三人はビリイナを打倒する。しかし力を使い果たした新太は、仮死状態となってしまう。そして新太に託された思いを果たすため、おかかは思念体との戦いに身を投じる決心を固めるのだった。校内の異変を探っていたおかかは、安藤晴光の豹変に思念体が絡んでいるのではないかと推測。安藤のもとを訪れると、おかかは安藤に取り憑いた思念体、ジャック三条雪奈の戦いを目にするのだった。おかかは雪奈に加勢し、彼女と協力する事でジャックを無力化するのに成功するのだった。そしてジャクを尋問したおかかは、思念体の有力者「ロゥダー」の情報を得る。ジャックを迎えに来たオルガにロゥダーへの言付けを頼んだおかかは、翌日、ロゥダーのリオウルから交渉を持ちかけられるのだった。

第3巻

米炊おかかロゥダーリオウルとの交渉に臨む。思念体の事情を知り、ハッタリを交えた交渉をする事で、おかかは彼等の求める「」の建造を手伝うのと引き換えに「思念体と人間の共存」という新たな可能性にかける。リオウルもその交渉に満足したが、彼の護衛であるオルガは反発。独断でおかかを襲う計画を密かに企てるのだった。一方、おかかとリオウルの交渉を聞いていた蒔苗陽祐は共存の考えに賛同。彼女の姉である蒔苗縫と共におかかと友人となり、おかかは少しずつ共存派の思念体を増やして行くのだった。そんな中、おかかはオルガの仲間であるウルフジャック達にさらわれる。オルガに協力を強要されるおかかだったが、駆けつけた仲間の助けを借りて、反撃を開始する。再びおかかの前に立ち塞がるジャックに苦戦するが、おかかは仲間達の力をヴェクターに結集し、ウルフを撃破する。倒れたウルフに尚も戦う事を強要するオルガの姿を見かねて、オルガを攻撃するおかかだったが、本気を出したオルガによっておかかは追い詰められてしまうのだった。

第4巻

オルガの圧倒的な力で危機に陥る米炊おかか達だったが、苦境にもまっすぐ立ち向かう蒔苗陽祐が状況を変える。陽祐の生き様を間近で見たジャックは己の生き様を恥じ、オルガの攻撃から陽祐をかばう。さらにオルガに仲間達が一斉に攻撃する事で、一行は辛くも勝利をつかむ。リオウルが仲裁に入った事で、お互いに矛を収めた一行。しかし、そこに新たな思念体が現れた報が届く。リオウルにも把握できず、独自に行動する思念体に不気味さを感じる一行は、協力して調査に当たる。そして調査の末、見つけた新たな思念体、ノーマンはリオウルが上層部に見限られた事を告げるのだった。ロゥダー・リサインでリオウルの力を封じて優勢に戦うノーマンだったが、魑魅魍魎に不意をつかれて敗北。リオウルに無力化されるのだった。共存派の思念体はノーマンの言葉の真相を確かめようとするが、別行動していたノーマン派の思念体、ゼルの襲撃を受け、リオウルは重傷。ロゥダー・リサインも奪われ、ノーマン達の脱走を招いてしまう。また、おかかはゼルの取り憑いた少女の木筒つづみがかつての知り合いである事を思い出し、反撃の準備を整えて行くのだった。

第5巻

米炊おかかは共存派の思念体をまとめ上げ、ノーマンゼル達と戦う。その中には、かつての敵だったオルガウルフの姿もあり、彼等の力を結集するものの、おかかは強大な力を持つノーマンとゼルに苦戦する。さらに、ゼルは木筒つづみを人質に取るという卑劣な手をとるが、予想外の抵抗を見せるつづみに動揺。つづみの意志を受け取ったおかか達はゼルを打ち倒し、つづみを救う事に成功するのだった。一方、オルガはノーマンと戦っていた。圧倒的な力を持つノーマンに手も足も出ないオルガだったが、自分を信じて使命を託してくれたリオウルとの絆を守るため奮起。オルガは満身創痍になりながらも膝を屈せず、おかかがゼルを倒すまでの時間を稼ぐのだった。そして、おかかはみんなの力を結集する事で、ノーマンを倒す事に成功する。しかしノーマンは、密かにを完成させる準備を整えており、消え去り際に勝ち誇るようにそれを告げるのだった。そして完成した門から、新たな敵であるゲルツ・メンデが登場。強大な力を持つゲルツはおかかとリオウル達を追い詰め、侵略の裏に隠された恐るべき真実を語るのだった。

登場人物・キャラクター

米炊 おかか (こめたき おかか)

ニワトリ高校に通う男子。2年B組に在籍する。頭脳明晰で家も金持ちだが、ブスを見て笑うのが趣味というひねくれた性格をしているため、学校中から嫌われている。学校で起きている異変を快く思っておらず、何とかして解決したいと思っている。その中で、異変と戦う群青新太と邂逅。まっすぐな性格をした彼を気に入り、彼と友達になる事を決意する。趣味は知恵の輪やパズルで、見ただけで物の寸法を計算して数値化するという特技を持つ。その特技で「ベクターボール」を解いたが、その力に目をつけた思念体達によってさらわれてしまう。危うくジル将軍の器にされかかるが、新太に助けられ九死に一生を得る。その後、新太と共にビリイナと戦う。戦いの中でベクターボールに眠っていた力、ヴェクターを目覚めさせ、ビリイナを倒すが、新太は力を使い果たし、仮死状態となってしまう。そして眠っている新太に代わり、学校を守る事を誓う。新太との交流から「思念体と人間の共存」を考えるようになり、思念体の指揮者、リオウルと交渉。自らの力を貸す代わり、共存方法を共に模索する事を約束する。

ヴェクター

米炊おかかが解いた「ベクターボール」から出て来た謎の存在。少年のような姿をした思念体に似た存在だが、思念体ではない模様。戦闘能力は皆無に等しいが、おかかの命令に従って思念体の力を吸収し、再構築する事ができる能力を持つ。物事の寸法を一瞬で計算するおかかの能力と合わさる事で、複雑な機械も一瞬で製造可能な強力な能力を持ち、「おかかの脳に直接つながっている3Dプリンター」とも評されている。また力を使い果たし、消滅寸前の思念体を仮死状態にする事で死から救う事も可能。この能力で群青新太に取り憑いていた思念体を救っている。おかかの意のままに動くが、自らの意志もある様子。口癖は「ヴェクター感激!!!」で、片言でしゃべり、自らの能力についてもおかかに語って聞かせている。また具現化させたあとは、おかかから離れていてもふつうに活動でき、遠く離れた場所にいるおかかの指示を余さず聞く事が可能。この能力を応用して、ノーマンとの戦いでは、おかから指示された投石機の着弾点を伝える役割を担っていた。

魑魅 魍魎 (ちみ もうりょう)

ニワトリ高校に通う男子。年齢の割に小柄で、忍者のように身軽に動く。ほかの生徒が半袖の夏服を着ている中でも、なぜかいつも学ランを身にまとっている。米炊おかかの数少ない話し相手で、彼の頼みを引き受け、学校の異常について調べた。1年生の頃、お弁当を食べる際に使いやすい止まり木を、おかかに作ってもらった事を恩義に感じており、彼といっしょにお昼ごはんを食べたり、無理な頼みを引き受けたりしている。ただし、おかかの事は恩人であっても友達とは思っていない様子。おかかに巻き込まれる形で、思念体との戦いに参加して行く。ジャックとの戦いでは、彼が目立たないために手加減していたとはいえ、「魑魅君忍法」を使って対等に渡り合った。また思念体の力を得た英茶火勇の話を聞いたおかかに騙され、パズルを解かされてキャプテン・カニシューズと戦う羽目になる。思いのほか強いカニシューズに苦戦したものの勝利し、思念体を取り込んだ。

群青 新太 (ぐんじょう にいた)

ニワトリ高校に通う男子。多忙な両親に代わって、幼い弟と病気がちな妹の世話をしている苦労人。見ず知らずの人にも手を差し伸べる心優しい性格をしている。実はビオクラスの思念体に乗っ取られており、本来の「群青新太」の精神は眠っている状態。思念体としての本来の名前は不明。侵略者として地球に訪れたが、心優しい新太の心に触れた事で自らの過ちを知り、思念体達の侵略を止めようとしていた。人知れずかつての仲間達と戦い、傷つき、疲れ果てていたが、そこで偶然に米炊おかかと出会う。自分の事情を知って手助けしてくれると言うおかかを、巻き込むべきではないと考えていたが、おかかが最低な性格をしている事を知り、方針を転換。積極的に彼を巻き込む決意をする。その後、「ベクターボール」を解いたおかかを助けるため、ジル将軍に不意打ちを行って倒したが、続くビリイナとの戦いで力を使い果たしてしまう。そのまま消滅するところだったが、ヴェクターの力でかろうじて命をつなぎ、思念体は仮死状態となる。時間をかければ思念体は復活するが、そのあいだは本来の新太の精神が目覚め、活動している。

三条 雪奈 (さんじょう ゆきな)

ニワトリ高校に通う女子。黒髪を長く伸ばし、おとなしそうな見た目をしている。「GM-4」と名乗る思念体に体を乗っ取られており、本来の「三条雪奈」の精神は眠っている状態。侵略するために訪れたが、安藤晴光に命を救われた事で彼に好意を抱く。その後、安藤にジャックが乗り移った事で、彼を取り戻すべくジャックと戦っていた。クラスはビオクラスで、作れる素材は「ゴム」。攻撃力は低いが、応用範囲が大きい素材で、ゴムの伸縮性を利用したアクロバティックな攻撃を得意とする。清楚な見た目をしているが、かなり過激な性格をしており、おかかや蒔苗陽祐にからかわれた時は能力を使って反撃している。またノーマンとの戦いでは、同じゴムという属性を持つ事を利用して、ノーマンを父親と呼んで動揺させ、その直後に騙し討ちするという外道な面を見せた。

木筒 つづみ (きづつ つづみ)

ニワトリ高校に通う1年生の女子。内気な性格をした美少女で、成績は学年で5位に入るほど優秀。黒縁眼鏡をかけている。実は中学時代、不安になると体を動かして発散させる悪癖を持っていた。それが変な踊りのように見えるせいで、周囲から孤立していたところ、さらにストーカーに付きまとわれてしまう。そして誰にも相談できず、一人思い悩んでいたところを米炊おかかが助言をした事で救われた。その事をおかかは覚えていなかったが、木筒つづみは覚えており、彼にあこがれの感情を抱いている。しかし、ライナークラスの思念体、ゼルに憑依され、再びいいように利用されてしまう。リオウルの取り憑いている「棋学仔晃征」と同じクラスという立場を利用され、彼を襲撃。ゼルによって母親も傷つけられ、失意のどん底に落ちるが、彼女の事を思い出したおかかが手を差し伸べた事で再び立ち上がった。ゼルにあやつられおかか達との戦いに借り出される。戦いの中で不利に陥ったゼルに人質にされてしまうが、強い意志でゼルの拘束を振り払い、自らゼルの刃に身をさらす事でゼルの動揺を誘い、勝利に大きく貢献した。

リオウル

ニワトリ高校に通う1年生の男子「棋学仔晃征」に取り憑いた思念体。柔らかい物腰の美少年で、慎重で理知的な性格をしている。思念体の中でも特別な役割を持つ「ロゥダー」。役割がほかの思念体と違って「学者」であるため、「ロゥダー・ロウ」しか力を振るう事が許されていない。放送室を密かに管理し、ニワトリ高校の思念体をまとめていた。ジャックを倒した米炊おかかに接触し、彼と交渉。おかかが「門を作るのを手伝う」のと引き換えに、「思念体と人間の共存の方法を探す」取り引きを交わした。思念体としての真の姿は長髪の青年。公平な視野を持ち、上層部から「地球人は愚か」だと吹き込まれていたが、おかかや仲間の思念体と交流して行く内に、リオウル自身も先入観をあらため、共存を考えるようになる。しかし、上層部に独断専行だと判断され、見捨てられてしまう。さらにゲルツ・メンデに王の真意を聞かされた事で思念体から離反。賛同する思念体達と共に侵略を阻止する事を誓う。

オルガ

ニワトリ高校に通う3年生の男子「十文字兜」に取り憑いた思念体。鋭い目つきの少年で、人間を見下す傲慢な性格をしている。セレクタークラスで思念体としての姿は、巨大な角を持つ獣のような姿をしている。ふだんはフルフェイスの兜をかぶっているが、本気を出すと素顔があらわになる。非常に高い戦闘能力を持ち、2本の剣を生み出し、二刀流で戦うのを好む。また本気を出した際には剣が巨大な爪状の武器に変化し、さらに凶悪な戦闘能力を発揮する。役割はロゥダーであるリオウルの護衛で、彼の側にいる事が多い。人間を見下しているため、リオウルが米炊おかかが交渉したのを快く思っておらず、独断で配下のジャック達を使っておかかをさらい、力ずくで協力させようと目論む。おかかと仲間達の予想外の抵抗、ジャックの裏切りで消滅寸前までダメージを受けるが、リオウルの仲裁で休戦する。乱暴者であるが、自分を助けてくれたリオウルには強い信頼感を抱いているようで、ノーマンとの戦いではリオウルのために体を張って戦った。またおかかの事は嫌っているが、認めている。

安藤 晴光 (あんどう はれみつ)

ニワトリ高校に通う3年生の男子。イケメンとして学校中の人気者となっている。学級新聞に取材された際に米炊おかかをバカにしたり、下世話な話をしたりしていたが、これはジャックが安藤に乗り移っていたせい。本来は気さくで飾らない性格をしており、容姿やファッションを褒められても驕らない好人物。口癖は「貧乏でね」で、褒められた際には自らの貧乏エピソードを返すのがお約束となっている。三条雪奈は一時、自殺を考えていたが、安藤に救われた過去があるらしく、安藤に好意を抱いている。長らく思念体に乗っ取られていたが、オルガとの戦いでジャックが仮死状態になった事で目覚めた。

ジャック

安藤晴光に取り憑いている思念体。思念体としての姿は全身が牙と黒い毛で覆われた男性。アルマクラスで、戦闘では思念体を具現化させて戦う。安藤の振りをして、人気者である彼の周囲の人間を裏切る事に愉悦を感じており、三条雪奈に取り憑いた思念体から強く恨まれている。彼女を甚振(いたぶ)っているところに、安藤の異変に気づいた米炊おかかと遭遇。雪奈とヴェクターの力の前に敗れ去ってしまう。その後は、見かねたオルガに回収され、彼の手駒となって働く。もともと享楽的で、後先考えない部分があり、オルガの事が怖くて従っていたが、おかかが差し出したお菓子に買収されて一時はおかかの傍に就く。しかし、戦局が不利になるや再びオルガの側に戻ろうとしたが、肝心のオルガに見限られ、殺されかけてしまう。だがすんでのところで、蒔苗陽祐の思念体の献身で生き延びる。実は都合のいい方に流されがちな自分の性格を「クズ」と嫌っており、そんな自分をかばってくれた陽祐に強い恩義を感じ、オルガの攻撃から陽祐をかばって重傷を負ってしまう。戦いのあとはベクターの力で仮死状態となり、かろうじて生き残る事に成功する。

蒔苗 陽祐 (まきなえ ようすけ)

ニワトリ高校に通う1年生の男子。蒔苗縫の弟。小柄でアヒルのような顔立ちをしている。ビオクラスの思念体に取り憑かれており、思念体としての名前は「MC-4」。姉に取り憑いている思念体も姉弟の間柄に当たるため、思念体としても姉弟として振る舞っている。侵略者の一員として地球に訪れたが、花巻早弓との交流で侵略に疑問を持つ。そして偶然、米炊おかかとリオウルの交渉を耳にした事で、花巻を守るためおかかの「人間と思念体の共存」という考えに賛同し、おかかの友人となった。生み出す素材は「木」。戦闘では縫の思念体の武器を作るという使い方をし、姉弟ならではの息の合ったコンビネーションを見せる。また戦闘能力は高くはないが、不利な状況でも仲間と共に立ち向かう勇気を持ち、ジャックがピンチに陥った際も身を挺してかばっている。そのまっすぐな生き様は、蝙蝠のような生き方をしていたジャックに大きな影響を与え、彼を改心させるきっかけになった。ウィンナーが好物。

蒔苗 縫 (まきなえ ぬい)

ニワトリ高校に通う女子。ソフトボール部に所属しており、一人称は「ボク」。蒔苗陽祐とは姉弟の関係。アルマクラスの思念体に取り憑かれており、思念体としての名前は「ネイリー」。弟に取り憑いている思念体も姉弟の間柄に当たるため、思念体としても姉弟として振る舞っている。思念体は縫に似た顔立ちをした少女の姿をしており、体中に鳥の飾りを付けている。戦闘では弟に「木」の武器を作らせ、姉弟ならではの息の合ったコンビネーションを得意とする。またオルガとの戦いではヴェクターが陽祐の素材を強化する事によって、堅くて軽い木の鎧と武器を使って戦った。ノリのいい性格をしており、思念体を登場させる際には歌いながら踊って登場する。

花巻 早弓 (はなまき さゆみ)

ニワトリ高校に通う女子。2年G組に在籍している。肌の色が黒く、髪型はドレッドヘアで、がっしりした体格をしている。寡黙で、しゃべる際も片言でしゃべるが、心優しい性格の持ち主。米炊おかかいわく「心優しいブス」。母子家庭で、母親が忙しくて、二人っきりで食事をしがちな蒔苗陽祐と蒔苗縫を誘っていっしょに食事をしたりしている。両親も心優しい好人物らしく、蒔苗姉弟は彼等との交流を経て侵略に疑問を抱くようになった。

英茶 火勇 (えいさ ほいさ)

ニワトリ高校に通う男子。精悍な雰囲気を持つ巨漢で、相撲部に所属している。文武両道の人物で、部活動では高校生相撲の横綱、学業では生徒会副会長と、確かな実績を積み上げている。後輩からも慕われているが、米炊おかかに対しては、出会い頭に攻撃を仕掛けるなどぞんざいな扱いをする。周囲からも評判の悪いおかかと付き合うのを心配されているが、実はお互い一目置いて認め合う仲で、おかかの物事の寸法を測る才能を尊敬している。思念体との戦いにはかかわらずにいたが、ゲルツ・メンデの戦いでおかかが危機に陥った際には颯爽と駆けつけ、彼らのピンチを救っている。実はパズルを解いており、思念体と出会っていた。その際に現れた思念体が好物のイカに似ているからという理由で倒して、食べてしまっている。これによって思念体ではないにもかかわらず、思念体が持っていた「火」をあやつる力を身につけた。食べた思念体は「燃焼のドルフ」と呼ばれる二つ名を持つほどの存在で、かなり強力だった。

松原 柚子 (まつばら ゆずこ)

ニワトリ高校に通う2年生の女子。おかっぱ頭で、顔にはそばかすがある。米炊おかかとは幼なじみで、彼の家の向かいにある安アパートに住んでいる。幼い頃からおかかに「ブス」とバカにされており、松原柚子自身も彼を捻くれた性格をしていると嫌っている。だが同時に、長い付き合いから、おかかがつまらないウソを言ったりしないとよく理解もしている。親や学友に仕事を押し付けられたりする要領が悪い部分があり、勉強も不得意。しかし、それらに対して不平不満を一つもこぼさず、ひたむきにがんばる努力家で、健気な性格をしている。その部分はふだん柚子をバカにしているおかかからも尊敬されている。そのため、柚子がビリイナに乗っ取られている事を知った際に、おかかは慟哭して彼女を助けるため奮闘した。ビリイナに乗っ取られている際の記憶はなかったが、おかかに助けられた事には気づいており、彼にお礼を言った。

大月 (おおつき)

ニワトリ高校に通う男子。大柄の体型で、バレー部に所属している。かつていじめに遭っていたが、群青新太に誘われてバレー部に所属した事で自分を変える事に成功し、部活でも活躍を認められてベンチ入りするようになった。恩人の新太が家庭の事情で部活から遠ざかっているのを口惜しいと思っており、彼に激励を送っていた。彼と共に試合に参加し、自分のがんばりを親に見せるのを目標にしていたが、アルマクラスの思念体に取り憑かれてしまう。

織部 (おりべ)

ニワトリ高校に通う女子。ビオクラスの思念体に取り憑かれているが、思念体名は不明。オルガの取り巻きの一人で、彼に従って米炊おかかをさらうのに協力した。冷静沈着な性格をしており、生み出す素材は「布」で、決して強い能力ではないが、大きな布を生み出して目隠しに使ったり、即席で道具を使ったり、おかかが思わず舌を巻くほど器用で効果的な使い方をする。おかかと一時は敵対したが、本来の「織部」が人から慕われる人物で、彼女を慕う後輩達との交流を楽しんでいた。その事と自分が侵略者である事にジレンマを抱いていたようで、リオウルが共存を提案した時は、彼の言葉に賛同している。リオウルがゼルに襲われた際には、咄嗟に彼を逃がす機転を見せ、彼の命を救った。

ウルフ

ニワトリ高校に通う男子「犬塚」に取り憑いた思念体。アルマクラスで、思念体としての姿は青い毛並みをした狼男のような姿をしている。オルガの取り巻きの一人で、彼に従って米炊おかかをさらうのに協力した。おかか達との戦いではジャックと協力する事で、蒔苗縫を圧倒する。しかし、おかかがヴェクターを使って生み出した大型弓によって下半身を吹き飛ばされ、戦線離脱するが、オルガに脅されて無理矢理戦わされる。危うくオルガに捨て駒にされるところだったが、一部始終を見ていたおかかが啖呵を切った事で九死に一生を得る。その事でおかかを認めたようで、ノーマンとの戦いでは共存派の思念体としておかかに加勢。不利な状況でもおかかを信じ、彼を敵の攻撃からかばっている。

ビリイナ

松原柚子に取り憑いていたセレクタークラスの思念体。鎧をまとった女性の姿をしている。米炊おかかが「ベクターボール」を解いたのに気づき、乗っ取った柚子のふりをして彼をさらった。冷酷な性格で、おかかの希望を打ち砕きながら、おかかにジル将軍を乗り移らせようとするが失敗。目の前で群青新太に不意打ちされ、ジル将軍を消滅させられてしまう。その後、憤慨しておかかと新太に襲い掛かる。おかかが初めて戦ったセレクタークラスで、思念体と鉱物の具現化をあやつり、二人を苦戦させたが、ヴェクターの力に目覚めたおかかと限界まで力を使った新太に敗れ去った。

ゼル

木筒つづみに取り憑いているライナークラスの思念体。細身の女性の姿をしている。同じ思念体からも「最低」と評されるほど、残虐非道な性格をしている。思念体の中でも特殊な部類で、ほかの思念体と違って人間の意識を残したまま取り憑き、好きな時だけ肉体を支配する事ができる能力を持つ。ゼルはこの能力を使ってリオウルに気づかれず行動していた。ノーマンの一派に属しており、彼らが敗れたあと、つづみの立場を利用してリオウルを強襲し、「ロゥダー・リサイン」を強奪した。自らの愉悦のためだけにつづみの両親をいじめ、それをつづみに見せ付けていたが、それが仇となってつづみの反抗を招いた。生み出せる素材は「ガラス」。戦闘では自らの体を強化ガラス並みに強化する事で、強力な攻撃力と防御力を発揮する。強化されたガラスは飛び道具のように使ったり、鏡のように使って敵を惑わす事も可能。米炊おかかと共存派の思念体達との戦いでは、数の差をひっくり返す実力を見せたが、不利になるやつづみを人質に取る。しかし、つづみの思わぬ反抗に動揺して、おかか達にそのスキをつかれて敗れた。

ノーマン

ニワトリ高校に通う男子「隅寸音一」に取り憑いている思念体。隅寸としての姿は長髪の優男。思念体の上層部が「思念体と人間の共存」を唱えたリオウルを見限り、彼を処分するため遣わした。クラスはライナークラスで、思念体としての姿は二足歩行する巨大なライオン。ゼルや手下を従え、独自に門を建造していた。自分達の一派を疑問視したリオウルに真実を伝え、上層部より手渡されたロゥダー・リサインで彼等に対して優位に立つが、魑魅魍魎の放った「ブス・大銀河」を見て驚愕。そのスキをつかれてロゥダー・リサインを奪われ、無力化されてしまう。だが密かに行動させていたゼルが、ロゥダー・リサインを奪い返した事で復活。そして、再びリオウル達と戦った。属性は「ゴム」で、自身の体にゴムを付与する事で、ゴムの伸縮性を利用した圧倒的な防御能力と瞬発力を持つ。思念体としてのパワーと合わさる事で高い戦闘野力を発揮し、オルガすら圧倒した。米炊おかか達との戦いでは三条雪奈に騙され、致命的なスキをさらしたところにトドメを刺された。

カーズ・ベー・マジン

「ロゥダー」のまとめ役である「ロゥダー・ロード」という役職に就いた思念体。リオウルの師匠で、角の生えた老人の姿をしている。公平で理知的な性格をしており、純粋なまま成長した弟子であるリオウルの姿を喜んでいた。リオウルが地球に遠征する際に、彼に禁術である「ロゥダー・フォール」の力を託す。実は王の真意に気づいており、過去に王の命令で友人を犠牲にしている。今回の地球の遠征でリオウルが同じ思いをするのを心配しており、彼が本当に守りたい者を守れるように禁断の力を渡し、ほかの思念体に警戒するように忠告した。

ゲルツ・メンデ

上位クラスの思念体。将軍より下だがライナークラスよりも上のクラスで、巨大な2本の角を持つ骸骨のような姿をしている。完成した門から思念体の体の一部を元の世界につなげる事で、思念体の姿のまま地球に現れた。残虐な性格をした思念体の監査官。独断専行しているリオウルを罰し、便利な兵隊を作るために「兵隊の自我を徹底的に破壊する」という王の真意を伝えた。雷の力をあやつる強力な思念体で、「電雷のゲルツ」の二つ名を持つ。圧倒的な力でリオウルと共存派の思念体を苦しめたが、ドルフの力を取り込んだ英茶火勇の不意打ちで門を破壊され、思念体の世界に強制送還された。

ジル

思念体の中でも最上位に位置する「三大将軍」の1体。全身を光り輝く鎧のような物で身にまとった姿をしている。ライナークラスより上のクラスといわれるゲルツ・メンデより、さらに上のクラスだとされている。「ベクターボール」を解いた者に入るという手はずになっており、事が正常に進んだ際には彼がニワトリ高校の思念体の指揮を執るはずだった。しかしベクターボールを解いた米炊おかかに憑依する際に、思わぬ抵抗にあって失敗。驚愕して肉体から追い出されて無防備になったところを群青新太に攻撃されて消滅した。

場所

(もん)

ニワトリ高校に存在する次元の「歪み(ひずみ)」。思念体の住む世界につながっており、ニワトリ高校に現れた思念体はこの歪みを通って地球にやって来た。歪みは小さく、狭いため、現在は1日1体ずつしか思念体は地球にやって来る事はできない。そのため先行して地球にやって来た思念体の「技師」達が、歪みの部分に思念体達しか入れない部屋を作り、きちんとした「門」を建造する事で歪みを広げようとしている。門の建材は特殊なブロックで、これをコントローラーを使ってパズルのように組み合わせて建造している。ただし、歪みの部分に働く力を計算しながらパーツを組み合わせる必要があるため、門の建造は非常に難易度が高い。技師達が総がかりでもなかなか建造が進まないが、米炊おかかは鼻歌交じりで建造してみせ、門の建造を交渉材料にした。ノーマン達によって門が完成された際には、肉体の一部を思念体の世界につなげたまま門を通る事で、ゲルツ・メンデが思念体の姿のまま地球に現れた。

その他キーワード

魑魅君忍法 (ちみくんにんぽう)

魑魅魍魎の使う忍法。魑魅家に代々伝わっているようで、思念体でないにもかかわらず不思議な力を使う。吹き矢でイカを発射したり、「ブス傀儡」でブスをあやつったりする奇抜な技が多い。また十奥義と呼ばれる強力な技が存在し、夜空に無数のブスの顔がライトアップされて浮かび上がる「ブス・大銀河」は、ノーマンですら驚愕して攻撃を止めるほどである。

パズル

リオウルがニワトリ高校にばら撒いたアイテム。複雑な形をした立体型のパズルで、興味を持ってパズルを解くと奇妙な鐘の音が鳴り響き、現れた思念体に取り憑かれてしまう。「プレート」「キューブ」などの種類が存在し、さらに難易度によってランク付けがされている。パズルは思念体の素質を測る役割を持ち、基本的に難易度の高いパズルを解けるほど高い資質を持つとされ、取り憑く思念体も強い存在になる。また「ベクターボール」はパズルのオリジナルともいえるもので、リオウルはもともと存在していたベクターボールをモデルにしてパズルを作った。ベクターボールにはパズルにはない特別な力が宿っているとされている。

ベクターボール

思念体の持ち込んだパズルの中でも最も難しく、特別な力を持ったパズル。光る玉が中央にはまった球状の形をしている。リオウルいわく、ほかのパズルはベクターボールを模して自分が作ったらしく、リオウルすらベクターボールの詳細は知らない。その難易度は「不可能」とされ、リオウルは、万が一解く者が現れた際の方針は決めていたものの、解かれない可能性の方が高いと考えていた。またほかのパズルはリオウルによって持ち込まれたが、ベクターボールは誰によって持ち込まれたのかは不明で、学校の中庭に落ちていたところを米炊おかかに拾われる。ベクターボールはその難易度から、解いた人間には上位の思念体が取り憑く事となっており、解いたおかかの前にジル将軍が現れるが、思わぬ抵抗に遭って失敗。その後、ベクターボールにはめ込まれていた光る玉がおかかの意志に答えて具現化し、ヴェクターとなって姿を現した。

ロゥダー・リサイン

ロゥダーの持つ特権能力「ロゥダー・ロウ」を無効化するアイテム。星状の光り輝く結晶体で、これを掲げる事でロゥダー・ロウを防ぐ事ができる。またロゥダー・ロウによって封印された思念体に掲げれば、封印された思念体を解き放つ事も可能。思念体の上層部が「思念体と人間の共存」を考え始めたリオウルを疑問視し、リオウルに対抗するためノーマンに渡した。

思念体 (しねんたい)

異世界より現れた謎の生命体。姿形は個体差が激しく、さまざまな姿をしたものが存在する。ニワトリ高校にある空間の歪みを通ってやって来ており、地球では肉体を持たないため現地の高校生の肉体を乗っ取って活動している。器となる人間は基本的に誰でもいいが、強力な思念体は高い資質を持った人間に取り憑かなければ、その能力を本来の1割から2割程度にまで制限されてしまう。そのため、思念体はニワトリ高校にパズルをばら撒き、器となる人間の資質を選別している。思念体には階級が存在し、下位の順から「ビオクラス」「アルマクラス」「セレクタークラス」「ランナークラス」となっている。またこれらのクラスのほかに、「ロゥダー」と呼ばれるクラスに依らない特殊な個体も存在する。思念体には固有の能力のほかに、傷を癒やしたり、少しだけ記憶を消したりする事ができる不思議な能力を持つ。ただし思念体の力は自らの本来の肉体を切り離して使っているのに等しいため、力を使えば使うほど思念体は消耗し、最終的には死に至る。

ビオクラス

思念体の中で最も低い階級。上位のクラスのように思念体の具現化はできず、物質を生み出す事のみできる。ビオクラスは物質を生み出す際に呪文を唱えなければならず、呪文は「物質・力・形状」の順で唱えなければならない。呪文自体は何でもよく、それぞれ固有の呪文を唱えている。また、生み出す物質はそれぞれ固有の物で、鉱物からゴムや木のような有機物まで幅広い物質が生み出される。ビオクラスは持っている力が弱いため、戦いで力を多用すると最も消滅しやすいリスクを持つが、同時に憑依する人間への制限が少ないため、最も人数の多いクラスとなっている。ビオクラスはクラスの中で最も低いクラスであるため固有の名前がもらえず、蒔苗陽祐に取り憑いた「MC-4」のように記号で区別分けされる。そのため取り憑いた人間の名前で呼ばれる事を好む者が多い。

アルマクラス

ビオクラスの一つ上の階級。ビオクラスと違って物質の具現化はできないが、思念体の具現化ができるようになる。思念体の姿はそれぞれ違うが、基本的に人間より大きく、力が強いためにビオクラスとは段違いの力を持つ。またこのクラスからそれぞれ固有の名前を持つようになる。

セレクタークラス

アルマクラスの一つ上の階級。ビオクラスの物質の具現化とアルマクラスの思念体の具現化、二つのクラスの特徴を併せ持つ。戦闘では思念体のパワーとタフネスに、物質の具現化を利用して武器や防具を使うため非常に強力なクラスとなっている。群青新太いわく「中ボス」。ビオクラスやアルマクラスが束になっても勝てない強さを持ち、バラバラの思念体を「より強い力」でまとめ上げるのがセレクタークラスの役割だとされている。

ライナークラス

セレクタークラスよりさらに上の階級。セレクタークラスまでが持つ能力に加え、自身の肉体に属性を付与する能力を持つ。これはセレクタークラスが行う防具や武器を作る能力とは別物で、自身の体そのものを特定の物資へと変換する能力となっている。鉄へと変換する能力ならば、体そのものが鉄へと変わり、間節も鉄の硬さを保持しながら人体のように柔軟に曲がるため、セレスタークラスとは別格の攻撃力と防御力を得る事が可能となっている。かなり高位のクラスだが、ゲルツ・メンデやジル将軍はライナークラスよりさらに上のクラスだとされている。

ロゥダー

思念体のまとめ役。最高の学位を持った「学者」で、思念体の世界全体でも数人しか存在しない。思念体の中でもクラスに依らない特殊な役職で、力に頼らず対話と行動で仲間達と信頼関係を築き、まとめ上げるのを役割としている。ニワトリ高校にいる思念体の中では、リオウルがロゥダーの役職に就いている。ロゥダーは独裁を防ぐため本来の力を封じられており、その代わり思念体をプレート状の物質に封印してその行動を封じる特権能力「ロゥダー・ロウ」を与えられている。またリオウルには王の真意に疑問を抱いていたカーズ・ベー・マジンから、己の命と引き換えに敵を葬り去る禁術「ロゥダー・フォール」が密かに与えられている。

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