WORST外伝 ゼットン先生

WORST外伝 ゼットン先生

高橋ヒロシの『WORST』のスピンオフ作品。WORSTの物語から数年後、鈴蘭高校の顔役として知られた「ゼットン」こと花澤三郎は教師となり、天香国高校に赴任する。高校時代はバリバリの不良だったゼットンが、教師として現役の不良少年たちと向き合う姿を描いたヤンキー漫画。「月刊少年チャンピオン」で2020年8月号から掲載の作品。

正式名称
WORST外伝 ゼットン先生
ふりがな
わーすとがいでん ぜっとんせんせい
原作者
鈴木 大
漫画
ジャンル
不良・ヤンキー
レーベル
少年チャンピオン・コミックス(秋田書店)
巻数
既刊13巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

Z組のゼットン先生

ほかの地域にまで名を轟(とどろ)かせる不良高校「鈴蘭高校」出身の「ゼットン」こと花澤三郎は、新任教師として天香国高校に赴任した。体育館で全校生徒の前で新任の挨拶をするゼットンは、バスケットゴールの上から飛び降りて颯爽(さっそう)と登場する。そしてステージに上がり、かねてから考えていた自己紹介と熱意をマイクで叫ぶ。しかし、あまりの大音響でハウリングが起こり、ゼットンの言葉は生徒に届いていなかったが、自分の考えた最高の挨拶を叫び終えたゼットンは満足気な表情でステージをあとにする。全校集会後に校長室に呼ばれたゼットンは、新倉耕造(校長)から定員割れの危機にある天香国高校を進学校として再生するため、問題児だらけのZ組の担任となり、不良生徒をどんどん退学にして欲しいと頼まれる。さらに校長は、鈴蘭高校への赴任を希望していたゼットンに対し、Z組の生徒を無事に退学させた対価として鈴蘭高校への推薦状を提示する。ゼットンは念願叶(かな)って教師になったにもかかわらず、生徒を退学させるために教壇に立たなければならない現状に葛藤しつつも、この申し出を了承する。Z組に向かう途中、養護教諭である新倉美凪に自己紹介され、新任早々問題児ばかりのZ組の生徒の相手をしなければならないことを励まされる。美凪の心配をよそに、ゼットンは久しぶりに女性と話してテンションが爆上がりしていた。そしてZ組に近づくにつれ、廊下の落書きが増えていく光景を鈴蘭高校と重ね、懐かしさを感じながらZ組の扉を開ける。扉を開けたゼットンの目に飛び込んできたのは、クラス全員がヤンキーで好き勝手に振る舞う姿で、誰の目から見ても明らかにZ組は学級崩壊を起こしていた。しかし、「地獄」と呼ばれていた鈴蘭高校を生き抜いたゼットンはそんな光景にもたじろぐことなく、平然と出欠を取り始めた。前日に名前と写真のカンペを教卓に仕込んでいたゼットンは、名簿を見ずに出欠を取り始める。生徒の名前を赴任前から覚えていたと誤解した生徒たちは驚愕(きょうがく)し、素直に返事をしていくが、久瀬カズマだけがゼットンに反抗的な態度を取る。カズマはゼットンの胸ぐらをつかみ凄(すご)むが、ゼットンは少しも動じない。カズマはそんなゼットンに殴りかかるが、ゼットンは条件反射でカズマの顔面に強烈な蹴りを浴びせて失神させてしまう。

引きこもりの花澤君

花澤三郎(ゼットン)から一撃で失神させられた久瀬カズマは、ゼットンを学校から追い出すためにZ組の面々からアイデアを募る。もともと考えることが苦手なみんなからはロクな案が出ない中、一人の生徒がゼットンの原付を整備している工場の従業員とつながっており、ゼットンの自宅住所の入手に成功した。カズマは聞きかじった知識で、親から頼まれて引きこもりの子供を家から合法的に拉致し、重労働をさせるというヤクザのシノギ「引きこもり支援業」を利用しようと考える。そして、ゼットンを引きこもにりに仕立てて拉致し、無理矢理学校に出勤できないようにしようと画策。カズマはさっそくゼットンを「アパートに引きこもる花澤君」として、ヤクザに拉致を依頼する。一方で、校長の新倉耕造がゼットンを利用して、Z組の生徒を退学に追い込もうとしていることを知った新倉美凪は、お互いの本音を話すためにゼットンを飲みに誘う。これまで女性に縁がなかったゼットンは舞い上がり、ウキウキしながら居酒屋へと向かうが、美凪の酒癖が異常に悪く、ゼットンに絡んで終いには泥酔して潰れてしまう。美凪の自宅を知らないゼットンは、仕方なく自らのアパートへ美凪を連れて帰り布団に寝かせる。美凪を自分のアパートに連れ込んだ言い訳を考えるゼットンだったが、あっという間に夜が明けてしまう。朝食を買いに部屋を離れるゼットンだったが、タイミング悪く、カズマが依頼した渉航生の率いるヤクザたちがゼットンが不在の部屋に到着し、無理矢理に部屋の扉をこじ開け始める。

最強と古子

久瀬カズマが耳の手術のため、しばらく学校を休むこととなった。Z組の頭として君臨していたカズマは、自らの不在中に起こる揉(も)め事を危惧して祥伍にクラスを任せる。しかし特別喧嘩(けんか)が強いわけでもなく、求心力があるわけでもない祥伍にZ組の不良たちをまとめられるはずもなく、カズマのポジションを巡って内部抗争が勃発する。中学時代に学校の頭だった生徒ばかりが集まったZ組の抗争は、周辺地域のヤンキーの最強決定戦ともいえる戦いとなっていく。そして新家友仁三栄成明が、Z組の最強の座を賭けてタイマンを張ることとなる。そんな中、Z組でないふつうの進学クラスに在籍している古子達は、クラスメイトからイジメを受けていた。そこで古子は自分を変えるため、花澤三郎(ゼットン)が顧問を務める空手部に入部しようと部室を訪れる。古子はゼットンに空手を教えて欲しいと頼み込むが、やらされることは掃除などの雑用ばかりだった。しかし古子は、映画で見た「何気ない窓拭きがトレーニングになっている」という特訓方法を思い出し、ゼットンにやらされている雑用をこなせば強くなれると信じていた。だが、ゼットンは古子に対して、空手は心を鍛えるもので他人を攻撃するためのものではないと諭す。古子は雑用をこなしても強くはなれないとゼットンに言われても、イジメっ子に復讐したい気持ちは変わらなかった。そんな中、原付を磨かされていた古子は、校舎裏で新家と三栄が喧嘩をしている場面を目撃し、ゼットンに伝えて二人は校舎裏へ急行する。ところがゼットンは、新家と三栄の喧嘩を止めるどころか煽(あお)り立てる。担任の許可を得た最強決定戦に燃える新家と三栄の戦いは熾烈(しれつ)を極め、最終的に新家の勝利で終わる。最強の座を手にした新家が達成感に浸っていると、ゼットンは次は古子がお前の相手をすると言い放つ。怖れおののく古子をよそに、ゼットンは新家に攻略方法をアドバイスする。

丹山夏生はお金が欲しい

Z組の生徒が退学になるような問題を一向に起こさないことに痺(しび)れを切らせた新倉耕造(校長)は、担任の花澤三郎(ゼットン)に不登校の丹山夏生を一人目の退学者として追い込むように命令する。校長の前では「おまかせください」と応じるゼットンだったが、丹山を退学させるつもりはまったくなかった。そんな中、久しぶりに登校してきた丹山にゼットンは話かける。丹山は近隣で幅を利かせている暴走族「多鬼怨(タキオン)」の集会に出入りしており、学校に来る時間を惜しんで、暴走族のステッカーを売ってお金を稼いでいた。そのため、今は学校よりもお金を稼ぐことを優先していると話す丹山にゼットンは共感するが、自分のクビを賭けてでも丹山を卒業させるから学校には登校するようにと諭す。そしてゼットンは、校長から丹山を退学にするよう命令が出されていることを明かし、丹山からの信頼を得る。後日、新倉美凪が校長から家の買い出しのお金を受け取っている現場を目撃したゼットンは、美凪と校長が援助交際しているとカンちがいし、校長に美凪を自宅に泊めた事実を明かし、援助交際を止めるように詰め寄る。しかし、美凪の父親である校長はその事実に激怒し、ゼットンにクビを言い渡す。その後、教師をクビになったゼットンは、先日の拉致事件で美凪にルブタンの靴を弁償して金欠状態に陥っており、自販機の小銭の取り忘れを漁(あさ)っていた。そこでゼットンは丹山と偶然出会い、丹山が依頼されている「封筒を受け取るだけで報酬10万円」という怪しい仕事についていく。空腹と金欠で正常な判断ができなくなっていたゼットンは、丹山と共に多鬼怨のもとに向って仕事を受ける。その仕事とは、暴走族のバックについているヤクザ「志隈組」のシノギである振り込め詐欺の受け子だった。詐欺の受け子であることを知ったゼットンは、被害者の老人に事情を話しお金を返してしまう。ヘマをやらかした二人の前に、ヤクザの使いである半グレ「暴邨(ボゾン)」が現れ、空腹状態のゼットンはいつもの実力が発揮できず、丹山と共にボコボコにされ拉致されてしまう。そして二人は、バックのヤクザに引き渡されることとなり、志隈組の渉航生が到着する。ゼットンは覚悟を決めるが、そこに高校時代にライバルだった金山丈(キングジョー)が現れる。

関連作品

漫画

本作『WORST外伝 ゼットン先生』は、高橋ヒロシの『WORST』を原作としている。『WORST』は鈴蘭高校に新入生として入学した月島花が、鈴蘭統一を成し遂げるまでを描いた作品で、本作の主人公である花澤三郎は、花が入学時に3年生の先輩として登場している。

登場人物・キャラクター

花澤 三郎

天香国高校でZ組の担任を務める男性。担当教科は歴史で、特に戦国時代の知識に関しては誰にも負けないと自負している。授業中も自分が好きな歴史のエピソードになると話が止まらなくなってしまう。高身長で金髪をリーゼントにセットし、サイドを剃(そ)り上げている。サングラスをかけ、顎髭(あごひげ)を生やしている。好きな食べ物はマロンパフェで、愛車の原付を「黒駒号」と名づけて大事にしている。男子校である「鈴蘭高校」に通い、東北の田舎で大学生活を送ったため女性に免疫がなく、女性の扱いも知らず、人気のブランドにも疎い。不良の巣窟と知られる鈴蘭高校では、戸亜留市の新四天王の一人として不良たちのあいだでも有名だった。鈴蘭高校の卒業生たちが悲惨な末路をたどっていることを憂い、鈴蘭で教鞭を執って不良学生を一人でも真っ当な道へ導くことを夢見ている。昔から高い場所から飛び降りて登場することを好み、天香国高校の新任挨拶の際にもバスケットゴールから飛び降りて登場した。まだ不良ではなかった中学時代に「ウルトラマン」というあだ名の嫌われ者の体育教師を、全校生徒の前で打ち倒したことから「ゼットン」というあだ名が付けられ、以来定着している。特技は中学の頃からやっている空手で、天香国高校でも空手部の顧問を務めているが、部員は古子達一人のみである。元鈴蘭最強の肩書きは伊達(だて)ではなく、喧嘩も強く特に蹴り技を得意としており、その威力はZ組の頭である久瀬カズマを一撃で失神させるほどである。

久瀬 カズマ (くぜ かずま)

天香国高校に通う高校2年生の男子。Z組に在籍している。黒髪のロン毛で、中学時代から名を馳(は)せていたZ組の不良たちを力で押さえつけトップとして君臨している。祥伍とは子供の頃からつるんでいる親友。父親が鈴蘭高校出身で、家にまったく生活費を入れずに、母親や幼い久瀬カズマに暴力を振るっていた。その父親から、ことあるごとに「鈴蘭では〜」と言われ育ったことから、鈴蘭出身者を異常に憎んでいる。幼い頃から父親から虐待を受けて耳がほとんど聞こえなくなり、自己流で読唇術を身につけた。そのため、声が聞こえなくても話す姿を目視できれば何をしゃべっているかを判別できる。全校集会で、花澤三郎(ゼットン)が新任の挨拶を行なった際も、大声のためハウリングして誰にも内容が聞こえていなかったが、カズマだけには伝わっていた。その挨拶でゼットンが鈴蘭高校出身だと知り、一方的に敵意を向けるようになる。

祥伍 (しょうご)

天香国高校に通う高校2年生の男子。Z組に在籍している。短い茶髪を逆立てた髪型にしている。久瀬カズマとは子供の頃からの親友で、カズマの難聴を知る数少ない人物。猛者(もさ)揃いのZ組の中では喧嘩の腕はいまいちながら、不良界隈(かいわい)に造詣の深い情報通である。暴走したカズマを止められる貴重な存在として、Z組の中ではある程度の地位を築いている。カズマが耳の治療のためにZ組を不在にする際に祥伍が留守を任されたが、不良たちをまとめられる実力はなく、カズマのポジションを巡って内部抗争が勃発する。周辺の不良のオールスター戦ともいえるZ組の覇権争いをワクワクしながら観戦していたミーハーな一面を持つ。ちなみに有名な不良は、名前だけでなく通り名まで熟知している。

古子 達 (ふるこ たつし)

天香国高校に通う高校2年生の男子。B組に在籍している。横分けの髪型で眼鏡をかけ、いかにもまじめな学生然とした外見をしている。おとなしい性格から、クラスメイトにイジメを受けている。先日、幼い頃からいっしょに暮らしていた「ルル」という名の飼い犬が亡くなり、その死をきっかけに弱い自分から脱却するために空手部に入部した。しかし空手部では、顧問の花澤三郎(ゼットン)から雑用ばかりやらされている。街の将棋大会で小学6年生で優勝し、プロへの登竜門である奨励会の試験にも合格した経歴を持つ。腕力はないが、将棋を指す際は雰囲気が一変し、周囲を圧倒するほどの迫力を見せる。喧嘩にも格闘技にも少なからずルールがあることから、将棋のルールであれば「天香国最強」とゼットンからは評されている。のちに新家友仁から認められ、Z組の生徒とも交友関係を築いていく。

三栄 成明 (さんえい なりあき)

天香国高校に通う高校2年生の男子。Z組に在籍している。金髪の短髪で左頰に切り傷がある。かつて中学時代は十二中を支配していた。皮膚の薄い部分をカットし、流血させる戦法を得意としていることから、「カミソリ」と評されていた。血を失っていく感覚に恐怖させ、徹底的に戦意を削(そ)ぐ喧嘩のスタイルを取っている。久瀬カズマが不在中のZ組の覇権を巡り、新家友仁と最強決定戦のタイマンを張った。中学の頃、喧嘩でナイフを出した友達が人生を踏み外さないように力ずくで止めようとした際、その友達を一時的に意識不明の大ケガを負わせてしまったことから、三栄成明自身は高校に入学してから喧嘩を控えていた。

新家 友仁 (あらや ゆうじ)

天香国高校に通う高校2年生の男子。Z組に在籍している。黒の短髪で顎髭を生やしている。顔が老けており、中学時代は「下井中最強のオールドボーイ」と揶揄(やゆ)されていた。幼少時に母親のネグレクトで施設に引き取られた時は、まだ出生届が出されていなかったため、実際の年齢は17歳より上である可能性がある。久瀬カズマが不在時にZ組の覇権を巡り、三栄成明と最強決定を決めるタイマンを張った。喧嘩は気合と根性、パワーで押すタイプで、どんな攻撃も受け切ることを信条としている。施設で将棋が一番強かったと自称していたが、古子達に7手で完敗して古子の強さを認め、以降つるむようになる。

丹山 夏生 (にやま なつき)

天香国高校に通う高校2年生の男子。Z組に在籍している。小柄な体型の金髪ロングヘアで、端正な顔立ちをしている。学校にはあまり登校せず、どんな方法でもお金を稼ぐことを第一としている。最強最速と知られる暴走族「多鬼怨(タキオン)」に出入りしており、ステッカー売りから非合法な仕事まで斡旋(あっせん)してもらっている。母子家庭で育つも、母親からは、出て行った父親と丹山夏生自身の文句を言われ続けている。唯一自らに優しくしてくれた祖母を大切にしている。祖母は病気で入院しており、余命いくばくもないことを知るや否や、祖母が好きな『ローマの休日』の舞台であるローマを見せてやりたいとの思いから、非合法な仕事に手を染めていく。丹山自身も学校を卒業することは、将来的に稼ぐために必要だと認識しているが、祖母に時間が残されていないことから「明日の百より今日の五十」というスタンスで生活を送っている。見かけによらず喧嘩の腕もかなりのもので、身の軽さを生かした戦法を得意としている。その跳躍力は、垂直跳びで頭に蹴りを入れられるほどである。不登校のため出席日数が足りておらず、花澤三郎は新倉耕造から丹山をZ組の退学者第1号にするように命じられる。

新倉 耕造 (にいくら こうぞう)

天香国高校の校長を務める中年男性。新倉美凪の父親。生徒や教師からは「校長」と呼ばれている。白髪をオールバックにしている。天香国高校を進学校に構造改革して入学希望者を増やしたいと考えており、そのためには不良の吹き溜まりであるZ組を排除するのが最優先と考え、鈴蘭高校出身の花澤三郎(ゼットン)を担任として雇った。不良学生の人生などまったく興味がなく、学校の経営を第一に考えている。しかし美凪の教育理念を知っているため、Z組の生徒の退学計画は打ち明けていない。娘として美凪を大事に思っており、ゼットンから美凪と援助交際をしていると誤解された際に、美凪と付き合ってると告げられ、激昂してゼットンを解雇した。

新倉 美凪 (にいくら みなぎ)

天香国高校で養護教諭を務める女性。若くかわいらしい顔立ちから、一部の生徒から「美凪ちゃん」と呼ばれて慕われている。新倉耕造(校長)と親子であることは口外していないが、花澤三郎(ゼットン)以外からは周知の事実である。靴のサイズは23センチで、母親からもらったルブタンを愛用していたが、渉航生に拉致された際に紛失している。お酒が大好きながら、酒癖が悪くて基本的に一気飲みをして同席者に絡み、ガラが悪くなり、愚痴を言ったあとは寝てしまう。一度泥酔して寝てしまうと絶対に目が覚めない。教師としては生徒に寄り添うことを理念としており、校長のZ組の生徒たちの退学計画を知ってからは、ゼットンにも不信感を抱くようになる。渉に拉致された一件で押しかけたヤクザを、ゼットンからの「借金があるから借金取りが押しかけてきた」というウソを信じて軽蔑するようになる。

渉 航生 (わたり こうき)

志隈組に所属する男性。細身の体型に黒髪をオールバックにしている。いかにもヤクザ然とした風貌をしているが、仕事中は部下にも敬語で話す。鈴蘭高校に並ぶ不良高校と知られる鳳仙学園出身だが、在学中のほとんどを少年院で過ごしたため、同世代の花澤三郎(ゼットン)や金山丈(キングジョー)とは面識がなく、有名だった二人を渉航生自身が一方的に知っていただけという関係だった。現在はヤクザの構成員で、家族から依頼を受けて引きこもりの子供を拉致して、強制労働させる「引出し屋」を生業としている。頭に血が上ると後先考えずに相手に暴力を振るう凶暴な性格の持ち主。また、丹山夏生が出入りしている暴走族「多鬼怨(タキオン)」のバックに志隈組がついているため、多鬼怨に非合法な仕事を振った場合は渉が直接顔を出すこともある。「暴邨(ボゾン)」という半グレ集団を使役し、仕事の監視や失敗した者への落とし前をつけている。渉自身も仕事で下手を打つと兄貴分から執拗(しつよう)な制裁を受けるため、その治療をキングジョーから受けるうちに、彼のことを信頼するようになる。ゼットンとのタイマン勝負に敗れ、自分の本当にやりたい仕事について考えるようになる。

金山 丈 (かなやま じょう)

坊主頭の大男。岡山弁をしゃべる。過去に鈴蘭高校のライバル校で「殺し屋集団」と呼ばれていた鳳仙学園でトップを務めていた。当時同じ年代で、鈴蘭最強だった花澤三郎(ゼットン)とライバル関係にあり、戸亜留市の新四天王として名を馳せていた。ゼットンからは未だに当時のあだ名である「キングジョー」と呼ばれている。高校卒業後は紆余(うよ)曲折を経て、現在は接骨および鍼灸(しんきゅう)を生業としている。キングジョーと同じく鳳仙学園出身の渉航生が、兄貴分に殴られるたびに治療をしたことで交友関係を築くようになる。

場所

天香国高校 (てんこうこくこうこう)

新倉耕造が校長を務める普通科高校。創立25周年を迎えるも、2年前から定員割れの問題を抱えている。一般生徒は不良ではなく、ふつうの高校生たちである。しかし、花澤三郎(ゼットン)が担任を務める問題児を集めた2年Z組は、教室や周辺の廊下は破壊されて落書きだらけで、鈴蘭高校出身のゼットンは懐かしさを覚えていた。また、Z組の生徒は中学時代に名を馳(は)せた不良が多く、周囲からは「リトル鈴蘭」と評されている。過去に何人もの教師がZ組の担任を辞めている。

鈴蘭高校 (すずらんこうこう)

戸亜留市にある男子高校。不良の巣窟と知られている。創立から決まった頭はおらず、いくつもの派閥が群雄割拠しており、つねに内部抗争が絶えない。その悪名は戸亜留市に留まらず、近隣の地域にまで響き渡っている。花澤三郎(ゼットン)の母校で、卒業生のほとんどがアウトローとなり、ヤクザの鉄砲玉となって死んだり、つまらない喧嘩で死んだりと悲惨な末路をたどっている。世代を超えて近隣にある「鳳仙学園」とはライバル関係にあり、街で遭遇すれば学校同士の抗争に発展することもある。教師の離職率が異様に高い。

クレジット

ベース

WORST (わーすと)

札付きの不良少年たちが集まるため、いまだ一つにまとまったことのない鈴蘭男子高校。携帯電話の電波すら届かない山奥から鈴蘭男子高校へ入学してきた月島花は、自らが偉大な番長になることを宣言。前人未踏の鈴蘭男... 関連ページ:WORST

書誌情報

WORST外伝 ゼットン先生 13巻 秋田書店〈少年チャンピオン・コミックス〉

第1巻

(2020-11-06発行、 978-4253291262)

第6巻

(2022-06-08発行、 978-4253291316)

第7巻

(2022-09-08発行、 978-4253291323)

第8巻

(2023-01-06発行、 978-4253291330)

第9巻

(2023-05-08発行、 978-4253291347)

第10巻

(2023-09-07発行、 978-4253291354)

第11巻

(2024-01-05発行、 978-4253291361)

第12巻

(2024-05-08発行、 978-4253291378)

第13巻

(2024-09-06発行、 978-4253291385)

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