dear

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人間、魔者、魔狼による友情や愛情を描いたファンタジー作品。『わたしの狼さん。』と『私の狼さん。THE OTHER SIDE OF LYCANTHROPE』の続編にあたる。「月刊ガンガンWING」2002年8月号から2008年1月号にかけて連載された。

正式名称
dear
ふりがな
でぃあ
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

人里離れた森の奥地に住む、「魔狼」と呼ばれる種族の生き残りの少女・散葉は、ある日「人間と暮らしたい」という夢を叶えるために、人里へと降りて来る。そこで彼女は妃杈・スメラギという青年と出会う。彼は幼い頃、散葉にとっての唯一の友人であった男性だった。彼は記憶喪失によりその事実を忘れていたが、散葉は再会できたことを喜ぶ。

しかし、妃杈は「不死」の呪いを受けたため、魔狼に対し恨みを抱いていたのである。妃杈が散葉に接触したのは、その恨みを晴らそうと考えてのことであった。

登場人物・キャラクター

散葉 (ちるは)

伝説上の存在とされている魔狼の生き残りの少女。着物姿で、黒髪にリボンを付けている。普段は人間と変わらない姿をしているが、驚いた時などに、普段は隠している獣耳が現れる。好奇心旺盛で人懐っこく、健気で心優しい性格で、自分のことより人のことを優先してしまうところがある。人里に降りて来るまで一人暮らしで、過去に妃杈・スメラギと遊んでいた時期がある。 しかしある時を境に関わりを断ち、妃杈もその頃の記憶を失くしていた。1人で暮らしていた頃は、日がなテレビを見ており、多くの知識をテレビから得ている。自給自足の生活をしていたのでサバイバル技術に長けており、吹き矢や投げ槍などで獲物を捕らえることができる。妃杈を「きーちゃん」というように、親しい友人の名前を略して「ちゃん」づけで呼ぶ。

妃杈・スメラギ (きさらすめらぎ)

討伐隊の副長を務める青年。色素の薄い髪色の長髪を頭後ろで1つに束ねており、整った顔立ちをしている。臆病で警戒心が強く、冷静沈着な性格。過去に散葉と友人だった時期があるが、現在は記憶喪失により、それらの事実を忘れている。魔狼による呪いで不死の身体を得ている。そのせいで、周囲には不死の力を利用する者か、自分に対して畏れを抱いている者しかいない。 そのため、だんだん人を信じられなくなっていくと同時に、魔狼に対し強い恨みを持つようになった。魔者との戦闘の際には、右腕に装着した鋭い刃を用いて戦うが、他にもナイフや手榴弾などといった多彩な武器を所持している。散葉への誤解が解けた後は、彼女への強い愛情を抱く。一方で、彼女を優先するあまりに、自身の欲望を押し殺して生きるようになる。

小桃・サクライ (こももさくらい)

レベル0の勇者で、昴・ハーネストとともに旅をしている少女。魔力持ちであるため真っ白な肌と髪を持っている。華奢な身体つきをしているが、胸は比較的大きい。レベル0であるため勇者としての仕事にありつけず、アルバイト三昧の日々を過ごしており、貧乏暮らしが長い。性格は実直で義理堅く、誰に対しても大らかだが、その分空気を読むのが下手。 昴の魔狼の右手による浸食を治す手がかりを探るため、魔狼の気配を追って、散葉のもとへとやって来る。

昴・ハーネスト (すばるはーねすと)

かつて魔王であった魔者の青年。現在は小桃・サクライとともに旅をしている。黒髪の短髪で、切れ長の目をしている。人間に対しては、わがままで冷たく横柄な態度を示すことが多い。小桃に強い愛情を抱いており、基本的には優しく接するが、サディスト気味に強引に接したり、意地悪することも少なくない。右手に魔狼の右手を宿し、それにより強い魔力を持ち、高い戦闘能力を誇る。 ただし、その代償として寿命を削っており、同時に激痛に苛まれている。しかし、本人はそれを隠して気丈に振舞っている。もともと魔王であった経緯から多くの大切な者の死を経験しており、その中で人間らしい感情が希薄になっていた。しかし大切な者を失くしてなお強い感情を持っている小桃に惹かれ、「勇者」として「魔王」である自分を倒しに来た小桃に、強い愛情を抱くようになった。

プリノ・ハーウェル (ぷりのはーうぇる)

魔王城の将軍を務めている魔者の少女。ハーフアップの髪型で前髪を切りそろえており、華奢な身体つきをしている。才色兼備の努力家だが、天然のドジッ娘。仲間たちからも1人で行動することを心配されるほど。魔狼である散葉の気配を、遠い魔王城から感じ、かつて魔狼の木乃伊に魅入られていた時と同様に、再び魔狼に意識を乗っ取られてしまう。 それをきっかけに、散葉の気配を確かめるべく、紅・アカツキとキャロル・ブルーハースを連れ、散葉のもとを訪れる。

紅・アカツキ (くれないあかつき)

かつて魔王城で昴・ハーネストの側近を務めていた魔者の青年。赤髪の短髪で、耳にピアス、首には十字型のチョーカーを付けている。真面目な性格で、キャロル・ブルーハースや昴に振り回される苦労体質。動物が好きで、押入れの布団の下には動物図鑑が隠してある。魔者でありながら魔力を持っていないため、スピードで補い、刀を使った接近戦を得意としている。 魔狼の右手に侵食される昴が限界に近付いていることに気づく。しかし、昴に口止めされたため仲間に言い出せず、そのことについて深く悩んでいる。本当の母親を知らずに育っており、その形見である十字型のチョーカーを大切にしている。自身の過去については語らずにいたが、それをキャロルやプリノ・ハーウェルに話したことで、さらに絆を強めることとなる。

キャロル・ブルーハース (きゃろるぶるーはーす)

かつて魔王城で昴・ハーネストの側近を務めていた魔者の少年。柔和な笑顔を浮かべる背の低い男性で、紅・アカツキなどを弄っては愉しむサディスト気質。式神による戦闘を得意としており、普段は呪符を通してその力を使役する。呪符では、攻撃などの他に援護や人物を模したダミーなどを用意することもでき、それを応用した搦め手からの戦法を得意としている。 幼少時は何不自由なく過ごしてきたが、11歳の時、両親の離婚により教会に預けられた。その際、教会で「何に対しても楽しむ気持ち」を学んだ。いわゆるショタ的な外見だが、自身ではそんな姿に対して強い嫌悪感を抱いており、筋肉質な男になることを夢見ている。そのため普段から身体を鍛えており、日々鍛錬を欠かしていない。

ケイン・クレバート (けいんくればーと)

討伐隊の隊長を務める男性。オールバックの髪型で身長が高く、上品そうな整った顔立ちをしている。実家は金持ちで、メイドを含む使用人を雇っている。美意識が高く、醜いものは直視できないと豪語する。隊長という立場にありながらサボり癖があり、午後に出勤することが多い。討伐隊では主に頭脳労働を担当している。変人に見られがちだが、根は優しく紳士的。 隊のことや仲間たちをよく見ており、行いによってはフォローすることも欠かさない。「不死」である妃杈・スメラギの力を見込んで討伐隊で拾ったものの、不死でありながら傷いていく彼の姿を見て心を痛めるようになる。それからは妃杈に優しく接しており、彼の行く末が幸せになるように願っている。相手が魔者であっても、人語を解すものについては共存の道を探れると考えている。 その優しさゆえに、妃杈には「討伐隊には向いていない」と評されている。

(うめ)

昴・ハーネストの使い魔。大きな鈴の付いた首輪を着けた小犬の姿をしている。可愛い見た目をしているが、その実力は底が知れず、「闘技大会動物の部」に出場した際には、難なく優勝を勝ち取っている。服屋の服をこっそり食べ、それをもとに小桃・サクライが着る服を口から出して用意するなど、その生態は謎に包まれている。

アベル・ウィンスレット (あべるうぃんすれっと)

監査役として討伐隊へとやって来る壮年男性。白髪の混じった短髪に、深く皺(しわ)が刻まれた顔をした堅物そうな人物。「伝説の監査」として知られており、もとは上層部直属の工作員であった。その頃に培った変装・擬態能力を活かして監査の職務に就いており、「私の前で取り繕うことなど不可能」と公言している。その言葉どおり、どんな場所にも自然に溶け込み、諜報活動を行う凄腕。 時には壁に擬態したり、ゴミ箱や冷蔵庫の中に隠れることもある。根は真面目な人物だが、実はお茶目なところがあり、多趣味。休日はキャンプなどのアウトドア活動を楽しんでいる他、意外な部分が多い。

シグマ

魔狼の生き残りで、魔狼の右手を昴・ハーネストに与えた男性。そのため昴とは主従関係で結ばれており、シグマが念じるだけで昴を殺すことすら可能。普段はかぶり物をして素顔を隠しているが、服装はTシャツなどのラフな格好をしている。これまでに長い年月をずっと1人で生きてきたが、同じく魔狼の生き残りである散葉の存在を知り、一緒に生きることを願う。 寂しさからか歪んだ価値観を持っているが、普段は温厚で物静かな性格。暇を持て余しており、物作りを趣味としている。

奏・ハーネスト (かなではーねすと)

魔王である昴・ハーネストの遠縁の親戚である魔者の男性。片目を前髪で隠し、大柄な体格でコートを着込んでいる。無表情から繰り出される、空気を読まないブラックジョークで相手を怒らせることが多い。しかし、本人は剣呑な空気を苦手としており、シビアな場であればあるほど、笑えない冗談を口にする悪循環に陥りがち。かつて魔王候補であったが、魔狼の右手に選ばれず、それでいて死や異形化を免れた稀有な存在。 魔王候補として魔狼の右手を一時的に装着した時から、シグマの考えや価値観を一部共有。それからは彼の幸せを一番に考えるようになった。しかし、その一方で、周囲の者全員が幸せになって欲しい、と考えている心優しい人物。ただ、最優先事項はシグマの幸せであり、そのためであれば荒事も辞さない。 強大な戦闘力を有しており、戦う際は身の丈ほどもある大きな鎌を用いる。

ミモザ

かつて魔王候補だった魔者の女性。黒髪に赤い瞳、露出度の高い恰好をしたセクシーな姿をしている。魔狼の右手に選ばれず、それでいて死や異形化を免れた稀有な存在。魔王候補として魔狼の右手を一時的に装着した時から、シグマの過去の記憶を共有するようになり、彼に対して愛情を抱くようになった。それが洗脳でも構わないと考えており、シグマのためにできることを行い、彼の中に自分を深く残そうとしている。 杖を用いた中・遠距離による攻撃を得意としている。

(あんず)

ミモザが飼っている黒色の毛並みをした小型犬。耳にリボンを付けている。見た目こそ普通の小犬だが、口から光線を放出するなど、明らかに普通の小犬ではない。梅と見た目が酷似しているため使い魔の類だと思われるが、詳しいことは分かっていない。

ロリア

魔王軍に所属し、「みんなのアイドル」を自称する魔者の女の子。髪型はツインテールで、幼い見た目をしている。昴・ハーネストの命を受け、散葉を捕らえるためにヤムカ、出雲とともに散葉の暮らす島へとやって来た。ステッキを媒介とした魔力吸収による戦闘を得意としている。自分より可愛いモノは嫌いと口にしているが、実際のところ可愛い動物には目がない。

ヤムカ

魔王軍に所属している魔者の男性。スキンヘッドで耳にピアスを付けている。ロリアを信奉しており、彼女につき従う形で散葉が暮らす島へとやって来る。刀を使った戦闘を得意としており、「魔力を刃のように実体化させる」媒介を使い、刀による間合いを伸ばして戦いを有利に進める。昔からヤンチャな性質で、魔王軍に入隊した後も不真面目に過ごしていた。 ロリアの「クマさんパンツ」を見て彼女に惚れ、つき従うようになった。

出雲 (いずも)

魔王軍に所属している魔者の青年。眼鏡をかけたアニメオタクで、2次元に恋をしており、「宇宙天使! チロリちゃん?」の大ファン。同作の主人公である「中井チロリ」がフェミニストであることに影響を受け、「女に暴力はふるわない」と公言している。ロリアには一種の「萌え」を感じているためにつき従っているが、あくまでも2次元的可愛さを持つところに惹かれているだけで、恋をしているわけではない。 戦闘では、呪符を用いた爆破による攻撃を得意としている。

トリス・ハーウェル (とりすはーうぇる)

プリノ・ハーウェルの兄でバイオリニスト。短髪の髪型で、眼鏡をかけた優男。プリノには真面目でしっかり者だと評されている。ただ、シスコン気味なところがあり、プリノと仲の良い様子だった紅・アカツキに危害を加えるなど、独占欲の強い一面がある。

ユイマ

キャロル・ブルーハースの親友で、彼と同じ教会に預けられていた少年。短髪の髪型でよく礼服を着ている。感受性が強く、感情が表情に出やすい。どんなことでも楽しくしているその様子が、キャロルに強い影響を与えている。キャロルが魔王軍に入隊した後も、時折顔を合わせている。

アンネ

ケイン・クレバートの家でメイドをしている女性。メイド服に身を包み、髪を後頭部でお団子状にまとめている。一家代々クレバート家に仕えてきたため、弱冠25歳ながらメイド長を務めている。

(かなめ)

饅頭屋を営んでいる壮年の男性。無精ひげを生やしており、腹巻を巻いている。ロマンチストで、時々「妻とは駆け落ちして一緒になった」などとでたらめを口走る癖がある。ちなみに、実際は妻とは普通の恋愛結婚をしているが、詳しいことは不明。誰に対しても分け隔てなく接するが、暑苦しい性格で空気の読めないところがある。

レジィ

盗賊団「レジィ盗賊団」のリーダーを務める魔者の青年。短髪の髪型で、額にタトゥーを入れている。近隣の村から討伐の依頼が出されており、討伐を引き受けた小桃・サクライと昴・ハーネストによって捕らえられた。

蝶麗 (てぃえりー)

女性限定の闘技大会に出場し、小桃・サクライと闘った女性。短髪の髪型で、大きくスリットの入ったスカートに、お腹を大きく露出させた服装を身に着けている。「闘技場のアイドル」を目指しており、闘技大会では「闘技場の華」というあだ名が付けられていた。戦闘では棒術と、棒の先に鎖で繋がれた鉄球を用いて戦う。小桃と戦った際には、当初は戦況を有利に進めていたが、昴・ハーネストの助けを受けた小桃に敗れてしまう。

クレオス・ロストール (くれおすろすとーる)

豪華絢爛な家に住む成金趣味の男性。黒髪の短髪で、高級スーツに身を包んでいる。同様の家格規模であるケイン・クレバートに対して貴金属を自慢するなど、なにかと突っかかることが多い。非合法の闇取引に手を出しており、それがもとで討伐隊に検挙された。

その他キーワード

魔狼 (らいかんすろーぷ)

伝説上の生き物とされている種族。高い魔力を持っている。世界中での魔狼の生き残りは、散葉とシグマ以外には存在しない。人間を喰らって寿命を延ばすことができる他、右手などを与えて相手を従者とすることができる。

魔者 (まもの)

魔力を持つ生物の総称。稀に人間が魔力を持って生まれてくる場合もあり、その際は魔者と区別して魔力持ちと呼ばれる。一方で、例外的に魔力を持たず生まれてくる魔者もいる。魔者は、その外見から大きく分けて人型と獣型の二種類に大別される。人型である場合は魔力を持つ以外、人間と大きな違いはない。人型の魔者である場合は、魔者の証として、生まれてすぐにタトゥーを身体のどこかに彫っている。 「魔力を持つこと」と「タトゥー」以外に人間とは区別がつかないため、人間の中で生活している人型の魔者も多くいる。また、獣型の魔者であっても、人語を解し意志の疎通を可能とする生物はいるが、その大半は人間や人型の魔者と対立関係にある。

魔力 (まりょく)

魔者が持つ力の総称。魔力をエネルギー源として巫術を扱ったり、魔法を操ることなどが可能となる。ただし魔力はエネルギー体であるため、媒介とする道具が必要となり、それ単体では力を持たない。しかし、魔狼などが持つ規格外の魔力ともなると、それ単体で力を持ち、相手を魔力のみで焼き払うことすら可能となる。

魔力持ち (まりょくもち)

人間でありながら魔力を持つ者の総称。小桃・サクライが該当する。魔力持ちであった場合、容姿に影響を与えることも多く、その場合は髪の毛や肌などが真っ白に染まる。魔力持ちであった場合は、魔者が操る呪符などを扱うことが可能。

宇宙天使! チロリちゃん? (うちゅうてんしちろりちゃん)

魔法少女アニメ。出雲はこの作品の大ファン。不思議な力を手に入れた柔道有段者の女子中学生・中居チロリが、敵の宇宙人を倒していくという内容。出雲によれば、魔法少女モノでありながら、昼ドラ並みに繰り広げられるドロドロの人間関係が見どころだという。チロリの考え方や価値観などが出雲に大きな影響を与えている。

魔狼の右手 (らいかんすろーぷのみぎて)

所持者に絶大な魔力を与える右手。魔王により代々受け継がれており、現在は昴・ハーネストが所持している。この右手に「選ばれない」まま、右腕に付けた者の多くは異形化し、廃人になるか死ぬこととなる。昴の右手の元の持ち主はシグマであり、これを着けた昴はシグマに逆らうことができない。逆らえば、彼の念により魔狼の右手が持ち主の身体を侵食する。 侵食された者は壮絶な苦しみを味わい、その結果、死ぬこととなる。

魔狼の木乃伊 (らいかんすろーぷのみいら)

魔王城の一室にて厳重に封印された右腕のミイラ。それ単体で強力な魔力を持っており、目にした者は魔狼に魅入られ、意識を乗っ取られてしまう。また、一度魅入られた者は、その呪いを解こうとも、魔狼の意思を感じることができるようになる。

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