あらすじ
第1巻
かつて起こった人間族と異形の者たちによる戦争によって、人間族が滅びかけている世界。とある森を守る「守り人」である異形の者のゴーレムは、今は森を離れて幼い人間族の少女であるソマリと旅をしていた。そんなある日、ゴーレムとソマリは「終わりの森」に一人で暮らす年老いた人間族の男性、ザザと出会う。ザザは異形のゴーレムと、人間であるソマリがなぜ旅をしているのか不審に思うが、それはソマリの両親を捜すためだと知る。ソマリは孤児で、ゴーレムが管理する森にやって来たことで二人は知り合った。しかし、ゴーレムには定められた寿命があり、現在あと約1年4か月ほどにせまっていた。そこでゴーレムは「守り人」の使命を放棄し、ソマリと共に彼女の両親を捜す旅に出たのだった。そんなゴーレムの優しさに触れたザザは、二人の旅を応援する。しかし二人が「終わりの森」を離れた直後、ソマリは足をケガしてしまう。ゴーレムは薬の在庫がないことに焦るが、そこに現れたのは小鬼のシズノだった。ゴーレムはシズノにソマリの治療を頼み、さらに今後旅を続けていくために、シズノから薬作りを学ぶことにする。
第2巻
魔女の村にある「魔女印図書館」を訪れたゴーレムとソマリは、人間族について書かれた本を探すことにした。二人は司書のヘイゼルの案内で、「ハライソの伝記」の存在を知るが、ゴーレムが本を受け取ろうとした瞬間、本の天敵である紙を食べる魚「オトト魚」が出現。なにとか退治することに成功するが、本は読めなくなってしまう。そこでヘイゼルの姉のプラリネは、以前「ハライソの伝記」を読んだことのある図書館館長のイゾルダ・ネヴゾルフを紹介する。そして二人がイゾルダを訪ねると、彼女は衝撃の事実を語る。本の著者はイゾルダ自身で、かつて大祖母のフェオドラ・ネヴゾルフから聞いた話をまとめたものだったのである。フェオドラは若い頃、竜巻の被害に遭ってゴーレム族のハライソに保護された。そこでフェオドラはハライソの管理する人間族の村でしばらく暮らすが、人間たちは異形の者を極端に恐れており、無抵抗の異形も平気で襲うことを知り、ショックを受けるのだった。そこでフェオドラは、他種族に人間の情報を与えず、距離を置くことで争いを避けようと決意。帰還後、魔女たちに今後千年、人間族に関する本を書いてはならないと告げて亡くなる。しかし、イゾルダがこれを破ったことによって人間は狙われるようになり、衰退。イゾルダはそのことに、ずっと責任を感じていたのだった。
第3巻
「アリの穴街」を訪れたゴーレムとソマリは、人手不足で困っているコキリラの店を手伝うことになる。コキリラの息子のキキーラと親しくなったソマリは、キキーラからなんでも願いが叶う花「夜覚めの花」の存在を教えられる。そこで二人は大人たちに内緒でさっそく「夜覚めの花」を探しに行くが、途中でキキーラの兄貴分のムスリカに見つかってしまう。しかしどうしても、ゴーレムといっしょにいたいという願いを叶えたいソマリは、ムスリカに頼み込んで花探しを続行。途中で危険な目に遭うものの、三人はみごと花を採集することに成功。しかし、帰宅してすぐソマリは体調を崩してしまい、非常に脆弱な「夜覚めの花」は、最終的にムスリカの判断で元の場所に戻される。だが、ソマリの思いを受け取ったゴーレムは、ソマリにずっといっしょにいるとウソの誓いをし、二人の絆は深まる。その後、手伝いを終えてアリの穴街を出た二人は、ウゾイというハラピュイア族の少女と、ハイトラという人間族の男性と親しくなる。二人からいっしょに砂漠越えをしないかと持ち掛けられたゴーレムたちは、この誘いに乗るが、ウゾイの真の目的はソマリだった。ウゾイは人間族であるソマリの血が、病気のハイトラの特効薬になるのではないかと考えていたのだ。
第4巻
ウゾイのソマリ殺害計画は未遂に終わったが、ハイトラの病状は悪化の一途を辿っていた。そんなハイトラは、ゴーレムに自分たちの過去を打ち明ける。ハイトラはかつて妻子と共に人間族の村で平和に暮らしていたが、ある日村がヒト狩りに遭ってしまう。ハイトラたち家族三人はなんとか逃げおおせたものの、やがて飢えたハイトラたちは、ハラピュイアの女性を襲い、その肉を食べ始める。しかしその直後、妻子は顔からハラピュイアの羽が生えてくる奇病に襲われ、亡くなる。唯一生き残ったハイトラは、自分が殺した女性の娘であるウゾイの存在を知り、償いのために彼女を育てることにしたのだった。この話を隠れて聞いていたウゾイは、深いショックを受け、ハイトラへの復讐を誓う。しかし翌日、竜巻に飛ばされたところをカケアシドリに狙われてしまう。そんなウゾイを、ゴーレムたちはすぐさま追いかけ、ハイトラは身を挺して助ける。そしてウゾイは、真相を知ってもハイトラといっしょにいたい気持ちを伝え、ハイトラは命の続く限り、ウゾイのそばにいると約束するのだった。その後、ゴーレムとソマリはウゾイたちと別れ、カジルバの街に到着。そこで、シズノとヤバシラに再会する。
第5巻
時はさかのぼる。「守り人」として自らの森の管理をしていたゴーレムは、交通事故に遭った荷馬車を発見する。荷馬車は奴隷商のもので、乗っていた奴隷商とその仲間、奴隷のすべてが死亡したかに思われた。しかしその直後、ゴーレムは自身を「おとうさん」と呼ぶ、どうやら父親とカンちがいしているらしい人間族の少女に出会う。彼女は荷馬車の唯一の生き残りらしく、それからはゴーレムを執拗に追いかけるようになる。最初は冷たくあしらっていたゴーレムだったが、やがてあきらめて彼女の世話をするようになる。しかしゴーレムは自身の機能停止、つまり死亡するまであまり時間がないことを理解していた。このままでは自分の死後、少女は生きていけないと考えたゴーレムは、最初に少女を発見した生物「コミドリソマリ」から、少女に「ソマリ」と名付け、いっしょにソマリの両親を捜す旅に出て現在に至る。この話を聞いたシズノはあらためて二人への協力を誓うが、その直後、現在ゴーレム、ソマリ、シズノ、ヤバシラが滞在中の家に、近隣住民が大挙して訪れる。彼らはソマリが人間族であることを聞きつけ、殺しに来たのだった。
第6巻
ゴーレムは危機に陥ったソマリを救うため、突如別人のようになってしまう。ゴーレムは正気を失い、シズノとヤバシラさえ襲うようになった姿を見たソマリたちは混乱するが、ソマリが身を挺してヤバシラをかばったことでゴーレムは正気を取り戻す。こうしてヒト狩りをしようとしていた近隣住民たちは逃げ去り、事はいったんおさまる。しかし、シズノはゴーレムの存在に疑問を抱く。それはシズノの知る範囲では、ゴーレムにこのような機能は備わっていないからだった。だが、当のゴーレムさえ自分がなぜこうなったかは理解できないままだった。そんな中、四人はひとまず次の目的地として、競り市で有名な「タマキノガマ」へ向かう。一方その頃、「魔女印図書館」の新館長となったレーグルは、タマキノガマの競り市に「ハライソの調書」が出品されているという噂を聞きつけ、現地に向かっていた。イゾルダ・ネヴゾルフ亡きあとも彼女を慕うレーグルは、イゾルダの後悔の遺物である「ハライソの調書」を回収することで、少しでも報いたいと考えていたのである。ゴーレムたちはそんなレーグルと、競り市で再会。レーグルは「ハライソの調書」が競りにかけられたところまでは把握していたが、極悪商団「トコワカ商団」がこの競りを仕切っていること、思うように手を出せず困っていたことを知る。さらにその「トコワカ商団」の頭首は、フェオドラ・ネヴゾルフのかつての友人であるジゼルの末裔、つまり人間族だった。
登場人物・キャラクター
ゴーレム
とある森を守る「守り人」を務めるゴーレム。名前はなく、ただ種族名の「ゴーレム」と名乗っている。性別も不明だが、ソマリは男性と認識している。そのため、彼女からは「おとうさん」と呼ばれている。全身が機械でできており、顔の中心を縫い合わせた人間のような白い頭に、紫色の筋肉がむき出しになったような、背の高い人間の男性に似た姿をしている。これはもともとは外皮があったが、1000年近く生きる中で、そのほとんどが剥がれ落ちてしまったため。また、縫い合わせたように見える部分は瞼で、開くと縦長の大きな一つ目が出現する。この目は万物の構成物質が解析でき、貴金属の品質の目利きなどができる。ゴーレムであるために飲食の必要はなく、酸素や日光、水があれば活動できる。また味覚もないため、基本的に食事をすることはない。冷静な性格で、つねに落ち着いており、堅い感じの難しい言葉を多用した話し方をする。生まれてから998年以上経ったある日、管理する森に奴隷商の荷馬車が通り、交通事故に遭ったことを知る。その直後、事故の唯一の生き残りであるソマリと出会い、仕方なく世話するようになり、やがて彼女に実の娘のように接することとなる。しかし、ゴーレムの寿命は1000年と定められていることから、自分の死後にソマリの世話をする人間を探すため、二人は生きているかもしれない彼女の両親を捜す旅に出る。守り人として備わった、動物と会話する能力がある。
ソマリ
人間族の女子で、ゴーレムの義理の娘。推定年齢は6~7歳ほどで、正確な年齢は不明。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、顎の高さまで伸ばした黒のボブヘアにしている。人間族であることを知られると危険であるため、上着のフードに角をつけ、牛角(ミノタウロス)種であると偽って行動している。中性的な雰囲気を漂わせて、男性のような口調で話す。やや表情に乏しいが、無邪気で明るい性格をしている。ある日、希少な人間族として奴隷商に捕えられるが、乗せられた荷馬車がゴーレムの管理する森を走っている最中に崖から落ち、ソマリ以外の乗員が全員死亡する。唯一生き残って森をさまよっていたところ、ゴーレムと出会った。この時なぜかゴーレムを父親と認識し「おとうさん」と呼んだ。以来ゴーレムを慕ってついて来るようになり、森の中で生活を共にするようになってからしばらく経ったある日、突然ゴーレムから森を出ることを告げられる。そして二人で、ソマリの両親を捜す旅に出ることになった。ゴーレムのことを実の父親のように慕っており、ずっといっしょに暮らしたいと願っている。ゴーレムの寿命があと1年4か月ほどにせまっていることは知らない。
ザザ
「終わりの森」の中に住む、人間族の年老いた男性。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした外ハネのセミロングヘアで、口ひげと顎ひげを長く伸ばしている。ふだんは角と長い前髪のついた帽子をかぶり、人間であることがばれないようにしている。若い頃は農村で母親と暮らしていたが、ある日となりの村がヒト狩りに遭い、村人全員で村を捨てることになる。この時、足の悪い母親はあとから合流するとウソをついて村に残り、死亡したあとは天涯孤独な旅人として旅を続けていた。しかし次第に人間である限り、ほかの種族に狙われる生活が続くことを悟る。そこである日「終わりの森」を発見し、以来は森の中に隠れ住むようになった。そして年老いたある日、偶然森にやって来たゴーレムとソマリに出会う。当初は異形のゴーレムと人間族であるソマリがなぜ旅をしているのかが理解できず、人間であるというだけで非常に危険が多いソマリのことを案じていた。そのため、無理にでもソマリを引き取ろうとしていたが、ゴーレム自身の寿命が尽きるまでにソマリの両親を捜していることを知り、考えを改める。そして種族こそ違うが、すでに二人は立派な親子だとゴーレムを励ました。
シズノ
とある森の中に住んでいる薬師を務める若い男性で、種族は小鬼族。前髪を目の上で切って、後ろの髪の毛だけを腰まで伸ばし、首の付け根の高さで一つに結んでいる。額の両目の真上の位置に小さな角が二本ずつ、合計四本生えており、たれ目で両耳はとがっている。また小鬼という種族柄、成人したあとも体が小さく、人間族の子供程度の年齢にしか見えない。穏やかな性格で、のんびりとした口調で語尾を伸ばして話す。薬師としての腕は確かだが、大雑把な一面があり、片付けは大の苦手。また調合の際も、薬の配分などが雑なところがある。もともとは町に住んでいたが、薬草取りのために頻繁に森に出かけるのは手間がかかるという理由で、助手のヤバシラと共に現在の森の中に引っ越した。ゴーレムとソマリとは、薬草取りの最中に出会い、ソマリがケガをしていることを知って治療を引き受ける。その後自宅に招いた際にゴーレムから薬の作り方を教えてほしいと言われ、軽い気持ちでゴーレムの体の一部をプレゼントしてくれるならと引き受けた。それを真に受けたゴーレムから実際に体の一部を受け取ってしまい、これを後悔しつつも、ゴーレムの優しさに触れ、親しくなった。その後も二人とは友人として付き合っており、カジルバの町で再会する。
ヤバシラ
シズノの助手を務める若い男性で、種族は鬼族。前髪を耳の高さまで伸ばして真ん中で分けた短髪にしている。額にある両目の真上の位置に長い角が一本ずつ、合計二本生えている。背が高く釣り目で目つきが悪い。そのため一見怖そうに見えるが、実際は優しい性格で家庭的なところがある。料理や掃除が得意で、整理整頓が大の苦手なシズノの世話を焼いている。シズノとは母親と子供のような関係で、彼に対してもため口で話す。一見上下関係があるようには見えず、むしろヤバシラがシズノを自分の子供のように甘やかしていると評されることが多い。ゴーレムとソマリとは、ある日シズノが薬草取りの最中に出会い、自宅に招いたことで知り合った。その後も二人とは友人として付き合っており、カジルバの町で再会する。
ヘイゼル
魔女の村にある「魔女印図書館」の司書を務める若い女性。種族は魔女族で、広範囲に届く魔法を得意とする。プラリネの妹でもある。前髪を目の上で切りそろえ、太ももまで伸ばしたロングウエーブヘアを、二本の三つ編みにしてまとめ、眼鏡をかけている。まじめな性格で、つねに落ち着いている。ある日「魔女印図書館」を訪れたゴーレムとソマリを案内することになり、二人と親しくなる。二人が探している本「ハライソの伝記」を渡そうとした際に、紙を食べる魚のオトト魚に襲われ、退治するものの本は読めない状態になってしまう。これに責任を感じ、館長のイゾルダ・ネヴゾルフが以前にこの本を読んだことがあるという情報を得て、二人に教えた。出会った当初は、ゴーレムのことを不気味に感じて恐れていたが、いっしょにオトト魚を退治した際、ゴーレムのソマリに対する愛情に触れて考えを改めた。
プラリネ
魔女の村にある「魔女印図書館」の司書を務める若い女性で、種族は魔女族。ヘイゼルの姉でもある。前髪を目の下まで伸ばして真ん中で分け、寝癖のついたショートヘアにしている。スタイル抜群で、露出度の高い服装を身につけている。おおらかでマイペースな性格で、フランクな感じの男性のような口調で話す。そのため、本来持ち出してはならない本を持ち出したり、飲食禁止の館内でこっそり食事したりしては、ヘイゼルに叱られている。ゴーレムとソマリとは、ちょうど自分が読んでいた「ハライソの伝記」を探すために、ヘイゼルと共にやって来たことで知り合った。しかしその直後、本がオトト魚に襲われてしまい、オトト魚は退治するものの「ハライソの伝記」は読めなくなってしまう。これに責任を感じて「ハライソの伝記」を読んだことがあると噂される館長、イゾルダ・ネヴゾルフの情報を二人に与えた。
イゾルダ・ネヴゾルフ
魔女の村にある「魔女印図書館」の館長を務める年老いた女性。種族は魔女族で、年齢は300歳ほど。これは魔女族の本来の寿命である150年を大きく超えているが、「魔女印図書館」の館長に選ばれるほど優れた魔女であるために、寿命も長い。フェオドラ・ネヴゾルフの子孫でもある。前髪を長く伸ばして真ん中で分けたストレートロングヘアで、体形は非常に瘦せており、皮膚はすでに変色している。現在は病気のために寝たきりで、目はアイマスクで覆って口には呼吸器を付け、首の周辺にもいくつもの管のようなものを付けている。フェオドラからは「魔女印図書館」の魔女として、人間に関する本を千年間は書いてはならないと言いつけられていた。しかし、ある日これを聞かずにフェオドラの過去を「ハライソの伝記」と「ハライソの調書」という二冊の本にまとめてしまう。その後、「ハライソの調書」が何者かに盗まれ、他種族に人間族の情報が広まってしまう。その結果、人間族と他種族たちの戦争が起きたと考えており、すべては自分の責任だと感じている。ゴーレムとソマリとは死の直前、二人が「ハライソの伝記」に関する情報を求めてやって来たことで知り合う。人間の情報が得たいのなら、ハライソがいたという「最果ての地」を目指すといいとヒントを与え、その直後に亡くなる。
フェオドラ・ネヴゾルフ
魔女の村にある「魔女印図書館」でかつて館長を務めた女性で故人。種族は魔女族で、イゾルダ・ネヴゾルフの大祖母でもある。成人してからも、人間族でいうと幼い少女のような容姿で、前髪を目の上で切って胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアにしている。まじめで聡明だが、ある日「巣立ち」と呼ばれる、ほうきで空を飛んで村の外へ出ようとする行動をとる。まだ未熟であるという理由で周囲に止められるが、これを振り切って空を飛んだところ竜巻の被害に遭い、ハライソの村まで飛ばされてしまう。そこでゴーレム族であり、村を管理するハライソに保護され、ハライソ以外には魔女族であることを隠してしばらく暮らすことになる。この時にジゼルと親しくなるが、基本的に人間たちは他種族全般を非常に恐れ憎んでおり、無抵抗の相手でも平気で襲うことを知り、ショックを受ける。そんなある日、ジゼルが崖の下に落ちてケガをした際、彼女を救うために魔法を使って救出には成功したものの、その直後、それまで親しくしていた村人たちから追い出されるような形で村を去った。帰還後、人間族の高い攻撃性がやがて争いを招くと考え、他種族には人間の情報を与えず、距離を置くことで争いを避けようとした。そこで「魔女印図書館」の魔女たちには、今後千年、人間に関する本を書いてはならないと言いつけて亡くなった。
ジゼル
ハライソの村に住む人間族の幼い少女で、フェオドラ・ネヴゾルフの友人。サクラの先祖でもある。前髪を額が見えるほど短く切り、肩につくほどまで伸ばした、癖のある外ハネのセミロングヘアにしている。あだ名は「ミヤ」。明るく素直な性格ながら、村人たちの教育によって人間族以外の種族は異形とみなしており、彼らと親しくすることは不可能だと考えている。ある日、祖母のレベッカのお使いでハライソの家を訪れ、これがきっかけで滞在していたフェオドラと親しくなる。やがてフェオドラを実の姉のように慕うようになるが、フェオドラがいずれ自宅に戻ってしまうことを寂しく思っていた。そんなある日、強風に飛ばされて崖から落ち、ケガをして意識を失う。その際フェオドラに助けられ、彼女が魔女族という異形の者であると知る。しかし、それでも別れ際まで、フェオドラと友人であると主張し続けた。
ハライソ
ハライソの村をおさめるゴーレム。全身が黒鉄でできており、背の高い人間の男性に似た姿をしている。顔の中心には大きな一つ目があり、体の中心や首の付け根、肘などに縫い合わせたような跡がある。上半身は何も着ていないが、腰には布を巻いている。体が大きく、表情が読み取りづらいために一見不気味で恐ろしく見えるが、実際は知的で落ち着いた性格をしている。また難しい言葉を多用して話す。村の長として人間たちに知恵を与えながら、周囲の村と調和して暮らしていた。ある日、竜巻に巻き込まれてやって来たフェオドラ・ネヴゾルフを発見し、保護する。そしてすぐさまフェオドラが魔女族であることを見抜き、事態がわからず混乱している彼女に、ひとまず魔女族であることは隠すように指示する。そして村人たちには、フェオドラは家出をして道に放浪していたところを獣に襲われたため、ケガが完治するまでハライソの村で保護することにしたとウソの説明をし、しばらくフェオドラを住まわせた。
コキリラ
アリの穴街でレストランを営む男性で、種族はムク毛シュリガラ族。ギーラの夫で、キキーラの父親。三白眼の釣り目で、非常に首が長く、二本足の兎のような体に二本の角を生やしている。ある日ギーラが腰を痛めてしまい、キキーラに働いてもらうことになるものの彼はサボりがちで、店が立ち行かず困っていた。そこにゴーレムとソマリが偶然来店したことで、しばらくのあいだ、お金を必要としていたゴーレムにアルバイト従業員として働いてもらうことにする。
キキーラ
アリの穴街に住む、ムク毛シュリガラ族の幼い男子。ギーラとコキリラの息子でもある。二本足の兎のような体に小さな二本の角を生やし、目は丸くて大きい。穏やかで心優しい性格ながら、やや気が弱いところがある。ムスリカからは「キラ坊」と呼ばれている。ある日ギーラが腰を痛めてしまい、回復するまでのあいだ、キキーラ自身が働くことになる。そんな中、ゴーレムとソマリが偶然来店したことで、二人と出会った。そこでお金を必要としていたゴーレムに、自分の代わりにアルバイト従業員として働いてもらうことにする。その直後、ソマリがゴーレムとこの先もいっしょにいられるか不安を感じていることを知り、アリの穴街の地下通路に咲いている「夜覚めの花」に願いを叶えてもらってはどうかと伝えた。そこで二人で地下に入り「夜覚めの花」を探しに行くが、途中で兄貴分のムスリカに見つかり、止められてしまう。しかし、ソマリが必死で花の必要性を訴えたことで冒険はムスリカを交えて続行。途中危険な目に遭いつつも、最終的にいっしょに「夜覚めの花」を手に入れた。実はムスリカに見つかり、連れ戻されるのはこれが初めてではなく、地下への侵入は常習犯である。特技は絵を描くこと。
ムスリカ
アリの穴街の地下を管理する組合「ツチノコ組」に所属する若い男性。種族は不明で、二本足のがっしりとした体形で狼のような姿をしている。釣り目の三白眼で、左目は眼帯で覆われている。両耳の下に一本ずつ、小さな羽が生えている。キキーラからは「ムスリカししょー」と呼ばれている。強面で、やや乱暴な口調で話すために一見近寄りがたく見えるが、実際は面倒見のいい性格をしている。「ツチノコ組」の一員として、誰かが地下に入る際は護衛兼案内役として行動を共にしたり、許可なく地下に忍び込んだ者を連れ戻したりしている。ある日、弟分のキキーラがソマリを連れて地下に入るところを目撃し、途中まで二人に見つからないようについていく。そして二人が危険生物に襲われたのを機に助けに入り、地上に戻るようにうながした。しかし、ソマリの「夜覚めの花」に対する真剣な思いに心打たれ、ムスリカ自身も同行することを条件に探索の続行を許可した。無事に花を発見して帰還したあとも、ゴーレムにソマリの思いを伝えたり、役目を終えた「夜覚めの花」を元の場所に戻したりと面倒を見た。
ウゾイ
ハラピュイア族の少女。前髪を目の上で切りそろえ、胸の下まで伸ばした前下がりのボブヘアにしている。褐色の肌を持ち、肩甲骨の下に大きめの羽、両耳の上と両目の上下、両腕の下部分に小さな羽が生えている。気の強い性格で、目的のためには手段を選ばないところがあるが、根は心優しいため、残酷なことは結局実行できないでいる。ハラピュイア族の特徴として、子育ては母親のみがするために父親はおらず、幼い頃は母親と二人で暮らしていた。しかしある日、突然母親が何者かに殺され、同時期に現れたハイトラから、母親は病気で亡くなったと聞かされて、彼に保護された。その後、ハイトラとは親子同然の関係となり、彼が希少な人間族であることも知っている。しかし、ハイトラが奇病に冒されていることを知り、その治療法を探すため、二人で旅をするようになった。そんな中、オオスナ砂漠を越えることになるが、自分たちだけでは心配で、同じ目的のゴーレムとソマリに声を掛ける。また、この時ソマリが人間族であることを見抜き、人間族の血液ならハイトラの病気の特効薬になるのではないかと考える。そこでソマリを殺害しようとするが、結局未遂に終わる。さらにこの時、母親を殺害したのはハイトラであることを知り、一度は復讐を考えた。だがこれも実行されることはなく、最終的にはハイトラを許していっしょに生きていく道を選んだ。ハラピュイア族は聴覚が非常に優れているため、大きな音は苦手。
ハイトラ
人間族の若い男性で、ウゾイの父親代わりの存在。前髪を目の上で切った短髪にしている。かつてハラピュイア族の女性を食べたことによって奇病に冒されており、顔の右半分からハラピュイア族と同じように羽が生えている。右目は見えず、半身は蝕まれて内臓も少しずつ病に冒されている。これを隠すために、両目以外の顔全体を覆う大きな鳥の頭のデザインのマスクをつけている。若い頃は妻と幼い娘と共に人間族の集まる村でひっそり暮らしていたが、ある日村がヒト狩りに遭い、壊滅状態となる。それでもなんとか家族三人で逃げ出すが、食料が手に入らずに偶然その場にいたハラピュイア族の女性を襲ってその肉を口にした。その結果、妻と娘は奇病によってすぐ亡くなり、ハイトラ自身も重い病気を患うようになる。それでも、その直後に自分が殺したハラピュイア族の女性の娘であるウゾイと出会い、彼女の母親を殺した償いとして、父親代わりになって生きることを決意した。この事実はウゾイには告げぬまま、ウゾイと病気の治療法を探す旅に出る。病気の治療法を探してウゾイとオオスナ砂漠越えを決意した際、ゴーレムとソマリに出会う。これをきっかけにウゾイにすべてを知られてしまうが、それでも命尽きるまで、親子としていっしょに生きていくことになる。
レーグル
魔女の村にある「魔女印図書館」の館長を務める若い女性で、種族は魔女族。イゾルダ・ネヴゾルフの死後に館長に任命された。前髪を目の上で切りそろえ、顔の右脇の髪の毛だけ残して残りは左側にまとめ、耳の上の高さで一つに結んだサイドテールにしている。左目尻にほくろが一つある。きまじめな性格で、規律を重んじているが面倒見がいいため、ブルーベルをはじめファンが多い。イゾルダのことを慕っており、イゾルダの死後も彼女が自責の念に駆られる原因となった「ハライソの調書」と「ハライソの自伝」の二冊の本のうち、紛失したままの「ハライソの調書」を、どうにかして取り戻せないかと考えていた。そんなある日、「ハライソの調書」が「タマキノガマ」で行われる競り市に出品されるという噂を聞きつける。そこでほかの魔女たちと相談した結果、しばらく長期休暇を取ってタマキノガマへ向かうことになる。ゴーレムとソマリとは、二人が魔女印図書館内のイゾルダの部屋に無断侵入しようとした際に知り合い、当初は二人を敵視していたが、和解して別れた。その後、タマキノガマで再会していっしょに「ハライソの調書」の入手と、競りにかけられている人間族の少女を救出するために奔走することになる。
ブルーベル
魔女の村にある「魔女印図書館」の司書を務める若い女性で、種族は魔女族。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。まじめな性格で、レーグルを慕っている。「タマキノガマ」の競り市に「ハライソの調書」が出品されるらしいことを知る。しかしこれはほかの魔女が調査すべきもので、魔女の村の責任者である館長のレーグルが直接出向いて村を離れることには反対していた。だが、レーグルやほかの魔女と話し合った結果、納得してレーグルを送り出した。
サクラ
各地で違法な取り引きを行う極悪商談「トコワカ商談」の頭首を務める若い女性。種族は人間族で、ジゼルの子孫でもある。前髪を目が隠れるほど伸ばし、胸の下まで伸ばした癖のあるロングヘアで、着物を着ている。ふだんは仮面をかぶって顔を隠している。クールな落ち着いた性格で、麻薬取り引きや密猟、密輸など悪行の限りを尽くしており、狙った獲物は絶対に逃さない。「タマキノガマ」の競り市に参加し「ハライソの調書」と人間族の少女を出品する。その際、一人で行動していたソマリと出会い、なぜか「灯火の剣」という貴重品をソマリにプレゼントする。