魔王と人間の戦争が終結した世界で、元勇者と元魔王軍四天王が運営する温泉施設の日常を描くお色気コメディ。魔王が率いるモンスターと人間の戦争が終結し、人間の守護者たる勇者たちは、各々があげた功績に見合った報酬を受け取っていた。そんな中、目立った功績がなかった元勇者・ロキは、モンスター領へ配属されることになり、元魔王軍四天王の一員・ガイアベルが女将を務める温泉宿で風呂屋見習いとして働くことになる。客足が伸びないことに悩むガイアベルは、ロキや元魔王軍四天王のラルヴァに何か案はないかと尋ね、知恵を絞るのだった。
物語の舞台はモンスターが運営している、モンスターのための保養施設だ。和洋の特徴を持った2階建ての建物で、木々に囲まれた山際にひっそりとたたずむ姿は風情がある。入り口には立派な門と、ぐるりと施設を取り囲むように壁があるが、人通りが限りなく少ない立地だけに隠れ宿のような印象だ。従業員は法被にハチマキを着用しており、岩風呂や竹垣など日本人にも馴染みのものも多い。モンスターが傷を癒やすためにやってくる場所であるため、ここで働く人間は元勇者のロキだけだ。しかし、モンスターと戦っていた経験があるロキの心中は複雑なものがあった。温泉は傷を癒やす効果があるが、人の心を緩ませる力もある、当初は働くことに乗り気ではなかったはずのロキの気持ちの変化に要注目だ。
異世界の温泉そのものに転生してしまった主人公が、やがて美少女たちと共に立派な温泉として成長していく、温泉ファンタジー。浴場(バス)へ向かうバスの事故で死亡した草津熱美(くさつあたみ)、高校1年生。目が覚めると目の前に天然の露天風呂があるのだが、なぜか身体が動かない。自身の感情の変化により、その露天風呂の温度や水質が変わることから、自分自身が温泉になってしまったことを知る。冒険者のレティシアが偶然入浴したことにより温泉としてのレベルが上がった熱美は、そのことをきっかけに協力者たちと立派な温泉施設を目指していくことになる。原作は七鳥未奏の同名ライトノベル。
いわゆる異世界転生ものでは、異世界人やモンスター、悪役令嬢などが定番の転生先となっているが、お湯そのものへの転生という設定は斬新ではないだろうか。誰かが入浴することで熱美の温泉としての経験値がたまり、レベルアップをする。そうして、温泉施設としての設備が充実していくというのが面白い。やがてレベルアップした熱海は利用者と意思疎通が図れるようになり、設備のグレードも変化する。温泉に浸かると肌が柔らかなお湯に包まれる感覚を味わえるが、温泉自体も誰かが入浴すると気持ち良いらしい、というのも発見だろう。前代未聞の温泉転生、どんな結末を迎えるのか見届けたい。
温泉宿で働く女子高生が、温泉地を守る「泉術師」として邪悪な魂と戦うファンタジーバトル漫画。群馬県みなかみ町、水上温泉郷では町の人が何者かに襲われる事件が頻発していた。温泉宿でアルバイトをしている女子高生・水上郷虎(みなかみきょうこ)は、客が何者かに襲われ、怪我をしたことを知る。そんなある日、帰宅途中に襲われた郷虎を助けたのは、泉術師に変身した郷虎の祖母・湯浴(ゆあ)だった。腰を痛めた祖母の代わりに変身道具である極装具を装備した郷虎は、泉術師に転真(てんしん)。水上温泉郷を守るため、戦うことになるのだった。同名メディアミックスプロジェクトのタイアップ作品。
舞台となっている水上温泉郷は実在する。伊香保、草津と並ぶ群馬県の有名温泉地だ。利根川上流の渓流に位置し、渓谷の崖沿いに宿泊施設が並んでおり、古くからの温泉街と渓谷の優美な景観は趣があり、フォトスポットとしても人気が高い。主人公・郷虎がアルバイトをしている温泉宿も、水上温泉郷の中にある。温泉を愛する郷虎は日々アルバイトに精を出しているのだが、泉術師となって邪悪な魂である荒魂(すだま)と戦うことになってしまった。極装具と呼ばれる変身アイテムは、古くからある温泉地に伝わるアイテムで、温泉地の土地神の力が宿っている。その土地神に認められなければ泉術師に転真することができないため、郷虎が転真できたのは、水上温泉郷を愛しているからなのだろう。温泉地を守る美少女戦士たる泉術師は、歴史のある各温泉地に存在しているらしく、人知れずその地を守る人がいるからこそ、のんびりとお湯に浸かって癒やされることができるのかもしれない。
あの世とこの世のはざまに位置する宿場町にある温泉宿を舞台に、新米仲居の奮闘とお客たちとの交流を描く、ノスタルジックドラマ。人ではないものが行き交うあの世とこの世の間に位置する宿場町。賑やかな大通りを抜けると、長い石段の先に「此花亭」という大きな温泉宿があった。此花亭の新米仲居である柚(ゆず)が大通りから温泉宿に戻ると、先輩の仲居たちが赤ん坊を抱え母親を探していたが、やがてその赤ん坊は姿が見えなくなってしまう。しかし柚は、今度は3歳くらいの女の子と遭遇するのだった。2017年10月テレビアニメ化。
此花亭は狐耳の少女たちが仲居を務める、不思議な温泉宿だ。外観は純和風だが豪奢で、高級そうな雰囲気が漂っている。人だけではなく妖(あやかし)や神様も泊まりに来るのだが、一見さんはお断りという格式が非常に高い温泉宿なのだ。柚たち仲居は少女の姿をしているが、様々な事情を抱えるお客に寄り添い、仕事に抜かりはない。柚は穏やかな性格で、少々ドジなところがあるものの仕事には誠実で、心からお客様をもてなそうと奮闘している。温泉や宿自体の設備も重要だが、やはりゆったりと過ごせるか否かは従業員の接客態度が重要だろう。柚をはじめとした仲居たちのおもてなしは少し賑やかだが、とても心地が良い。あの世とこの世の間にあるということは、あの世に行く前に此花亭に寄ることができる、ということだろう。心づくしのおもてなしを受け、温泉に浸かりながらのんびりと過ぎた人生を偲ぶ。そんな終わりも良いかもしれないと思わせてくれる。
温泉むすめ師範学校に通う温泉の神様といわれる温泉むすめたちが、日本一の温泉むすめを目指してアイドル活動を行う青春アイドル漫画。温泉地には温泉の神様といわれる温泉むすめが存在していた。草津温泉の温泉むすめである草津結衣奈(ゆいな)は、草津温泉が大好き。日々街や実家の温泉宿のために奮闘していた。温泉むすめたちが通う師範学校では、校長の最上級神スクナヒコの提案により、全校生徒が日本一の温泉むすめを目指し、アイドル活動をすることになってしまう。同名クロスメディアプロジェクトによる漫画作品。
温泉むすめは皆一見すると普通の高校生だ。まだ見習いの彼女たちは、温泉むすめ師範学校に通って立派な温泉の神様を目指している。日本各地の温泉地の名前が冠されており、名字を見ればあの温泉地かとすぐに想像することができるだろう。地名や特色に詳しくなくとも、地域の特徴が見られる温泉むすめもいるのでとても分かりやすい。例えば宮城県仙台市にある秋保(あきう)温泉の温泉むすめ・秋保那菜子(ななこ)は、なまりのあるしゃべり方をし、ずんだ餅をすすめてくる、といったような感じだ。そんな地元を愛する温泉むすめたちだが、何故かアイドル活動をすることになった。とはいえ、彼女たちは温泉の神様で、普通の高校生とは少々勝手が違う。結衣奈は家業の温泉宿を手伝いで忙しく、箱根温泉の温泉むすめ・箱根彩耶(さや)は巫女として活動している。アイドルなんて、と尻込みしている彼女たちがどう変わっていくのだろうか。神様でもあり普通の少女でもある温泉むすめたちの奮闘と友情に、胸が熱くなる。