このはな綺譚

このはな綺譚

あの世とこの世の狭間にある温泉宿、此花亭で、新人仲居として働くこととなった狐娘、柚の活躍を描く和風ファンタジー。もともとは季刊誌「コミック百合姫S」(一迅社刊)で、『此花亭奇譚』のタイトルで連載されていた。後に同誌が休刊となってしまったため、「月刊コミックバーズ」(現・月刊バース)に掲載を移し、タイトルを『このはな綺譚』と改題して2014年2月号より連載を再開した。なお、世界観や登場キャラクターはそのまま『此花亭奇譚』を引き継いでおり、時系列としては『此花亭奇譚』が前日譚にあたる。また、2017年10月テレビアニメ化。

正式名称
このはな綺譚
ふりがな
このはなきたん
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
バーズコミックス(幻冬舎コミックス)
巻数
既刊16巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

此花亭の新人仲居のは、この地に来るのは初めてだという客に対して、周囲を案内する。その最中、此花亭は神様がお泊まりになる宿だと説明するが、その客は自分は神ではないと答える。しかし、柚は、お客様はみんな神様であると告げ、引き続き仲居としてもてなしを続けるのだった。(エピソード「このはな綺譚 ~序の話~」)

お使いから此花亭に戻った柚は、仲居仲間のに、赤ん坊の世話を頼まれる。ところがその赤ん坊は、みんなが目を離しているスキにどこかへと行ってしまう。さらに、迷子の童女が此花亭に姿を現すが、その子もすぐにいなくなってしまう。当時、此花亭には着物を織っている老婆の客がいたが、不思議な事に先の赤ん坊が、老婆が織る着物に合わせて、童女から少女、果ては成人女性へと、どんどん成長していたのである。実はその子は老婆が早くに亡くした子供の志乃であり、子供といっしょに過ごしたかったという老婆の夢が、此花亭にて実現したものだった。(エピソード「花嫁御寮」)

ある日、柚とは亀が猿に虐められているところに遭遇した。亀を助けようとした柚は猿の攻撃を受けるが、機転を利かせた櫻が大きな鐘を転がして猿を撃退。しかし、その最中に誤って亀を傷つけてしまう。二人が傷ついた亀を此花亭に連れて帰ると、亀は助けてもらったお礼として、柚と櫻を竜宮城に連れて行ってあげると告げる。柚は仕事があるからとそれを断るが、亀は竜宮城に行けば働く必要なんかないと語る。(エピソード「カメのおんがえし」)

ある日、蓮のお腹が妊婦のように膨らんでしまう。が彼女の服を脱がすと、彼女のお腹には大きな卵がくっついていた。その卵は櫻が此花亭に持ち込んだものだったが、櫻に尋ねても結局なんの卵かはわからない。さらに卵はどうやっても蓮から引きはがす事ができず、仕方なく蓮は仲居の仕事を休む事になった。その日の夜、蓮は悪夢にうなされるが、不思議な事に、その悪夢はすぐに別の夢へと変化。その翌日、蓮が目を覚ますと、蓮にくっついていた卵が、今度は皐のお腹にくっついていた。(エピソード「たまごのみる夢」)

ある日、柚は此花亭に見知らぬ子供が入り込んでいるのを見て、その子供は誤って迷い込んでしまった別の世界の住人であると気づく。その頃、此花亭には宿泊期限が過ぎているにもかかわらず、一向に帰ろうとしない男性客がいた。その客は別の世界で交通事故に遭ってしまい、戻っても家族の厄介になるからと、こちらの世界に留まろうとしていたのだ。そんな彼の前に先の子供が姿を現し、共に帰るように説得を始める。(エピソード「てのひら」)

街の中で咲いていた桜の木に見惚れていた柚のために、皐はもっと間近で見られるようにと、その枝を折ってしまう。皐は桜の木の枝を折ると、そこから腐ってしまう事を知らず、柚はその事を悲しんでしまうが、ふと気づけば真っ暗闇の中にいた。そこでは一人の翁が桜の木を1本1本植えており、そんな彼の桜の木に賭ける情熱に柚は感銘を受ける。のちに柚は街の中で咲いているたくさんの桜は、一人の植木職人がたった1本の桜から継ぎ木で増やしたものだと知り、それをどこかで聞いた話だと思うのだった。(エピソード「さくやこのはな」) 

第2巻

此花亭の新人仲居であるは、離れの機織り小屋にいる客の世話をしていた。しかし、その客は仕事である機織りに夢中でご飯にすら手をつけない。その客には姉と妹がおり、彼女達もまた機織りの仕事をしていた。客は姉にはスピード、妹には完成した物の綺麗さで負けているらしく、姉妹よりもっと早く、もっと綺麗に織りたいと躍起になっていたのだ。そんな客に対して柚は、「早くて綺麗に」は客独自の基準であると言い、それを聞いた客は少しだけ気が楽になる。そして、柚の持って来たおにぎりを頬張ると、再び機織りを再開する。(エピソード「棚機の娘」)

此花亭にいわくつきの人形が持ち込まれる。それは人間にぞんざいに扱われ、日本人形としての使命を全うできなかった事を悔いており、その怒りによって自由自在に動き回る「呪いの人形」になっていたのだ。動き回って此花亭のみんなを驚かせようとする呪いの人形だが、誰も怖がる様子を見せない。さらにによる悪戯で髪をボロボロにされてしまい、こんなに不細工では日本人形として駄目だと泣き出してしまう。それを聞いたは女は努力して綺麗になるものだと人形を諭し、彼女によって呪いの人形は綺麗に生まれ変わった。(エピソード「恐怖!! 呪いの日本人形」)

此花亭に突然、最上級の神様である沫那美神が訪れる。しかし、その時女将である椿は出掛けており、仲居頭であるも先約の客の相手をしているために手が離せない。そこで桐は沫那美神のお世話を蓮と柚に任せる。蓮は最上級の神様のお世話をできる事を喜び、張り切り始める。しかし、お風呂に入る沫那美神の背中を流している最中にお湯をかけると、彼女の身体はたくさんの小さな泡になってそこら中に散らばってしまう。柚はその事態を桐に知らせようとするが、蓮は自分が任された仕事だからと桐には知らせないよう柚に言いつける。そして、蓮は柚とといっしょに、そこら中に散らばった沫那美神の欠片である泡を集める事になった。(エピソード「泡沫の神様」)

ある日、柚は海岸に倒れている少女を見つける。少女は自ら遭難したと告げて、それを聞いた柚は彼女に同情して持っていたお饅頭を差し出す。しかしその途端、少女は遭難したというのはウソだと告げ、お饅頭を受け取らなかった。実は彼女はウソを吐くのが好きで、それにより周囲から孤立してしまっていたのだという。そしてそんな自分を卑下しつつ、柚を騙した事を謝る。しかし、柚は、騙すと言うのはそれで誰かを傷つけたりするものであり、少女の話した事は面白い「お話」であるため、騙されてなどいないと主張する。(エピソード「潮騒」)

此花亭にの姉であると共にやって来る。皐はもともと巫女になる事を夢見ていたが、巫女に選ばれたのは柊の方で、皐は今もその事にコンプレックスを抱いていた。それを知っている柚は皐と柊のやり取りをハラハラとした面持ちで見つめる。しかし、実は柊は皐を今すぐにでも巫女にしてやりたいと思っており、それを菖から聞かされた柚は、皐が巫女になるために、今日にでも此花亭から出て行ってしまうのではないかと考える。(エピソード「姉上襲来」)

ある日、皐はお茶菓子と間違えて茶の間に置いてあった「身体が小さくなる薬」を飲み、手のひらくらいの大きさになってしまう。しかし、皐はこの身体でも指示は出せるからと柚の肩に乗って仲居の仕事を行う。すると皐は柚の仕事を間近で見る事により、彼女が客に対して細かな気配りをしている事に気づく。そして、新人だった柚がすっかり一人前の仲居に成長していた事を実感するのだった。(エピソード「一寸さつき」) 

第3巻

は、此花亭にやって来た客を案内しようとするが、あれはの客だから案内しなくてもいいとから止められる。そして、客は櫻とまるで親子であるかのように遊び始めた。一方、のところにも新たに客がやって来るが、芸能の神様だと言うその客は、地上でのお祭りが減ってしまった事を嘆いていた。そんな中、櫻と遊んでいた客は自身の持っている刀を使って竹を割り始める。その様子を見た柚は、小刀を持って来ると言ってそれを止めようとするが、客は構わないと柚に告げる。戦(いくさ)の神様だと言うその客は、地上で戦が行われなくなった事から、もう自身の刀を使う機会がなく、錆びるのを防ぐために竹を割っていたのである。(エピソード「神様の休日」)

日本人形であるお菊は、瓜乃介といっしょに街の中を徘徊していたところ、街の中で捨てられている人形を見つける。その人形は持ち主に捨てられたらしく、行く場所が見つかるまでのあいだ、お菊といっしょに此花亭にて過ごす事になった。ぞんざいに扱われる事に対して恨み節を言うお菊に対して、その人形はぞんざいに扱われる事もまた、自分達人形の使命であると説く。お菊は、捨てられたのだからもう自由だと言い返すが、人形はそれを受け入れる事なく、元の捨てられていた場所に戻っていった。(エピソード「わたしの人形は、よい人形」)

柚は、此花亭で大掃除をしている最中、とある巻物を見つける。それを持って神社に出掛けると、鳥居がたくさんある妙な場所に迷い込む。さらに柚は、そのままとある少女に連れられて、またも見知らぬ場所に迷い込んでしまう。そこは神社を訪れた人の願いを叶える場所で、柚は「眷属の巻物」を持っていた事から、そこの眷属であると勘違いされて連れて来られたのだという。さらに、柚が現在いる場所は此花亭がある世界とは別の場所で、もう此花亭には帰れないと言われてしまう。それを知った柚は仲間達のもとに戻りたいと泣き出してしまう。(エピソード「大晦日の奇跡」)

ある日、とある老夫婦に連れられて此花亭を訪れた少年がを見て目を輝かせ、棗に自分の担当をお願いする。それを見た蓮は、その子が棗に一目惚れしたものだと思い込む。棗とその子がなかよくしているのを間近で見ていた蓮は、その子に嫉妬してしまい、さらにその子が棗といっしょに遊びに出掛けると聞いて、どんどん不機嫌になっていく。(エピソード「恋い待ち焦がれ」) 

第4巻

仲居頭のといっしょにおつかいにやって来ていたは、帰りに突然の雨に見舞われてしまい、桐の行きつけだという喫茶店でいっしょに雨宿りをしていく事にする。柚はそこで初めてカステラやコーヒーを味わい、とても美味しかったと店員に告げる。しかし、柚は桐からなるべく静かにするようにと言われてしまう。ここは静かな時間を一人きりで贅沢に味わう場所だと桐から教わった柚は、そこでの時間をゆっくりと楽しむのだった。(エピソード「雨宿り」)

桐のお墓参りに付き合っていた柚は、彼女から墓に関する思い出話を聞く事になる。もともと桐の実家は神様に仕える眷属の仕事をしており、桐もそれを手伝っていたが、新たに此花亭の仲居を務める事になる。そこで桐は、此花亭の客としてやって来た芸者の女性、八重と出会う事になる。(エピソード「此花亭慕情-其の一-」)

此花亭に老婆の客がやって来る。その客は自分が死んだという自覚がなく、飼っている猫達の世話をしたいから早く家に帰らせてほしいと言う。しかし、桐から自分が死んだという事を聞かされ、さらに飼っているたくさんの猫達の世話についても心配ない事を知るや否や、もうこの世には未練がないと告げる。その老婆は生前、たくさんの猫を飼っており、周囲からは「猫又ばばあ」と呼ばれて忌み嫌われてきた。そのため、自分が死んだところで、泣いてくれる人もいないだろうと吐き捨てる。(エピソード「縁」)

ある日、夢を食べる獏である瓜乃介が風邪を引いてしまう。さらに、此花亭のみんなの夢を食べている最中にくしゃみをしてしまったせいで、みんなの夢が混在し、そのせいでみんなが夢から帰って来れなくなってしまう。それを知ったはそれを元に戻すために、みんなの夢を巡る羽目になってしまう。(エピソード「夏の夜の夢」)

ある日、夜行バスに乗っていたはずの少年は、気がつけば大きな旅館の前にいた。そこは此花亭と呼ばれる旅館であるらしく、少年はそこに滞在する事になる。そこでは少年が神様と呼ばれ、さらに描いた絵がまるで生きているかのように動き始めるなど、不思議な事ばかりが起きる。少年は子供の頃から絵で生計を立てる事を夢見ていたが、都会の美術大学に進学してから、そこで才能の限界を思い知らされており、この此花亭であれば特別扱いされるからと、それを喜び始める。(エピソード「絵筆の神様」)

第5巻

此花亭にやって来て1か月ほど経ったある日の事、仲居頭である水木やそのほかの仲居達までが、季節外れのインフルエンザに倒れてしまう。それにより人手が足りなくなってしまう中、桐が眷属の頃の経験を活かして現状での合理化を図ろうと提案する。当初は桐の計画どおりに事は進むが、だんだんと計画がほころび始め、客から不満の声が上がるようになる。そして、ついに客の不満は爆発し、酒も料理も出て来ないと怒ってしまうが、芸者の八重が大広間で芸を披露した事により客達の怒りは収まる。桐は今日の事を反省しつつ、フォローをしてくれた八重に感謝するのだった。(エピソード「此花亭慕情-其の弐-」)

の妹であるモモが此花亭で働く事となった。しかし、モモは蓮が大好きなあまり、彼女にばかり構ってしまう。それをきっかけとして女将の椿によって此花亭を追い出されてしまい、モモは巫女として神社に勤める事となる。そして、先輩巫女のによって厳しく躾けられつつも、なんとか巫女としてうまくやっていけるようになるのだった。(エピソード「新米巫女の受難<1>」)

ハロウィンの日を迎え、此花亭でもそれに乗じたイベントを行う事になった。ハロウィンの事を詳しく知らない達は文献を漁って調べ始め、その結果、死者の霊が親族のもとを訪れる祭りと判明し、その知識をもとにイベントを開催しようとする。しかしその結果、柚達が行うハロウィンはまるでお盆のようになってしまうのだった。(エピソード「此花亭小話」)

お菊が雪女にまつわる怪談を聞かせて、子供の客を怖がらせてしまう。すると、柚は幼い頃に雪女に助けられた事があるから、雪女は怖い妖怪ではないと子供に聞かせる。柚は幼い頃、八百比丘尼といっしょに暮らしていたが、ある夜、八百比丘尼が急な用事で外に出掛けてしまう。そうして一人で留守番をしていた柚のもとに、通りすがりの雪女が訪れる。(エピソード「ちび柚と雪女」)

新米巫女であるモモは、先輩である菖にハリセンでお尻を叩かれたり、時には鉄拳で制裁されるなどの厳しい教育を毎日受けていた。そんな日の事、モモは巫女仲間である牡丹に呼び止められる。牡丹はモモが先輩の菖から気に入られているものだと思い、モモに調子に乗るなと忠告をする。しかし、モモはそんな事を意に介さず、それどころか忠告を受けた事にすら気づいていなかった。(エピソード「新米巫女の受難<2>」)

柚は、八百比丘尼のもとに里帰りをする事になったが、時を同じくして、八百比丘尼のもとを地上で死んだ霊達が訪れる。彼らは自分が死んだ事に気づいておらず、柚はそれを彼らに伝えようとする。しかし、八百比丘尼から死は簡単に受け入られるものではないからとそれを止められ、八百比丘尼のもとで魂を救われた霊達が天に昇って行く光景を目の当たりにする。柚は、八百比丘尼のもとにいた方が、此花亭にいるよりも多くの魂を救う事ができるのではないかと考えるようになり、此花亭に帰らずにここに留まると言い出した。(エピソード「柚の里帰り 前編」)

第6巻

八百比丘尼のもとから此花亭には帰らないと言い出すが、逆に質問を投げ掛けられる。それは川で溺れている二人の内、どちらを助けるのかというもので、柚は答えに詰まってしまう。そんな中、柚のもとに人間の少女が訪れる。彼女は友人を探しに来たと言うが、柚はその友人が既に死んでいると知っており、それを伝えると、少女はその友人を柚に託して消えていった。それにより、柚は八百比丘尼の質問に対する自分なりの回答を導き出す。(エピソード「柚の里帰り 後編」)

此花亭のみんなは、大桜の宴にて行われる巫女神楽を見に来ていた。は巫女をしている姉のにコンプレックスがあるためか、その場から逃げようとするが、に捕まってしまう。すると柚がそんな皐を気遣い、気分が悪いから此花亭まで送ってくれないかと皐に申し出る。しかし、皐は仲居の仕事に誇りと自信を持てるようになった事から、以前よりも柊にコンプレックスを感じなくなっていたという。そして皐は、目的と自信を与えてくれた柚に感謝するのだった。(エピソード「大桜の宴」)

桐は買い物をするために柚やを連れて街に来ていたが、少し桐が目を離したスキに柚と櫻がいなくなってしまう。彼女達は江戸風鈴を販売している店の前におり、風鈴を作っている職人の様子に見惚れていた。そして、店主に誘われた柚と櫻は、風鈴作りを体験する事になる。(エピソード「びいどろ横丁」)

ある日、棗のもとに家族からの手紙が届く。それには兄の嫁が流行り病を治すために実家に帰ってしまった事で、家事も儘ならなくなってしまったと書かれていた。しかし、家事が苦手である棗はどうする事もできないと嘆く。そんな中、が手伝いを申し出た事により、棗といっしょに彼女の実家に行く事になった。蓮は男が苦手な事もあって、男所帯である棗の実家の雰囲気に戸惑うが、それでもなんとか家事をこなしていく。(エピソード「片恋の達人」) 

登場人物・キャラクター

(ゆず)

狐の娘。狐耳と尻尾の生えた少女の姿をしている。幼い頃、雪の中に埋もれていたところを八百比丘尼に助けられ、以後、比丘尼に育てられる。社会勉強のために此花亭で仲居として働くこととなった。ドジなところもあるが、優しい性格で明るく前向き。比丘尼に育てられたために、人間の知識も身に付けている。

(さつき)

狐の娘。青紫の長髪が特徴。新人時代の柚の教育係で、現在は柚の憧れの先輩。責任感が強く真面目。暗闇が苦手。姉が1人いる。姉に対してコンプレックスを抱いている。

(なつめ)

狐の娘。ボーイッシュな性格で、かつショートヘアでいつも男物の着物を着ているため、よく男の子に間違えられる。一人称は「ボク」。蓮とは幼馴染み。蓮の気持ちに気付いていないようでもあるが、蓮に対しては特別な感情を抱いている。

(れん)

狐の娘。フワフワしたピンクの巻き毛が特徴。お洒落やファッションについて詳しい。裁縫が得意で、お菊の服を作ってあげている。上品な振る舞いを心がけるが、腹黒な一面も持つ。幼馴染みの棗が大好き。

(さくら)

狐の娘。口数は少ないが、好奇心旺盛でいたずら好き。仲居としては柚の先輩だが、柚よりも幼い。クダギツネを召喚して掃除や洗濯に使役している。幼い頃、母に連れられて此花亭に来た際に、桐と出会っている。

(きり)

狐の娘。此花亭の仲居頭。皐とは仲居として働き始めてからのつきあい。新人時代から有能だったが、有能であるが故に何でも一人でやろうとしてしまい、結果的に失敗に繋がることもあった。機転の利く八重によく助けられていた。

椿 (つばき)

此花亭の女将。仲居たちとは違い、普段は狐の姿をしているが、化粧をすると人間のような姿に変化することができる。かつて宇迦御魂の下で眷属として働いていたことがあり、その際、時空を超えて迷子になっていた柚と出会っている。

八百 比丘尼 (やお びくに)

尼僧。雪に埋もれていた柚を助け出し、そのまま育てた。見た目は若い女性だが、すでに何百年も生きており、此花亭の女将・椿とは古くからのつきあい。柚にいろいろ学ばせるため、此花亭に預けた。

(ひいらぎ)

皐の姉の狐。巫女。銀色の髪と水色の瞳を持つ。明るく自由奔放な性格で、歌や踊りを得意とする。その反面、頭の悪さや落ち着きのなさという欠点もある。皐を妹としてかわいがっているだけでなく、仲居の仕事をきっちりこなす、しっかりした妹だと認めている。

(あやめ)

柊の同僚の巫女の狐。長い黒髪で眼鏡をかけている。巨乳。柊と皐をよく知っており、互いの関係を半ば面白がりながら見守っている。後にモモの教育係となり、厳しく指導している。

モモ

蓮の妹の狐。髪の色はピンク。新米の巫女。仕事でのミスが多く、教育係の菖にしょっちゅう怒られている。性格はポジティブかつ強いメンタルの持ち主で、怒られてもへこたれず、菖に言い返したり、同僚に無視されていても、気付いていなかったりする。姉が大好き。

牡丹 (ぼたん)

巫女の狐。柊、菖に次ぐナンバー3の存在。有能で美人。明日葉、楪という妹分の取り巻きがいる。実は菖にお仕置きされたいと思っているドMな性格で、菖にしょっちゅうお仕置きされているモモに一方的に嫉妬している。

八重 (やえ)

此花亭に通う人気芸者の狐。櫻の母。桐が新人だった頃、娘の櫻をよく桐に預けていた。非常に機転が利く人物で、桐が判断ミスで客を怒らせてしまった時、うまいフォローでことを丸く収めるなど、何度も桐を助けている。

お菊 (おきく)

日本人形。喋ったり髪が伸びたりする。名前は棗が勝手に付けた。有名な職人に作られた逸品。元の持ち主に気味悪がられ、ずっと蔵の中にしまわれていたため、呪いの人形と化した。此花亭の仲居たちと出逢って仲良くなり、そのまま居着いている。現在は蓮が作った服に着替え、髪型も縦ロールのツインテールにしている。

瓜乃介 (うりのすけ)

櫻が拾った卵から生まれた動物。イノシシの子供(ウリ坊)のような見た目をしていたため、棗が「瓜乃介」と名付けた。実は貘の子供で、よく仲居たちの夢を食べてくれているが、仲居たちはそのことに気付いていない。

美月 (みつき)

兎耳をした兎娘。桐がよく通っている喫茶店・満月のウェイトレス。桐に頼まれて柚にサイフォンでコーヒーを淹れてみせた。耳は良いが、静かな雰囲気を楽しむ客のために、無駄口は叩かないクールな接客を行う。

志乃 (しの)

人形に娘の魂が宿って具現化した姿。志乃という娘を早くに亡くした婦人が、娘の身代わりとして服を着せていた。乳児から3歳、7歳と急激に姿を変えていき、最後は花嫁衣装を着て母である婦人の前に現れた。婦人が満足したので、その役目を終えてあの世へと旅立って行った。

カイト

盲導犬。少年の姿をして此花亭に迷い込んできた時に、此花亭で逗留していた男と仲良くなる。実はその男は事故で生死を彷徨っており、此花亭で行き先を決めかねていた。その後、失明はしたものの一命は取り止めた男のもとで、盲導犬として飼われることとなる。

沫那美神 (あわなみのかみ)

水の泡の神様。夫は沫那芸神(あわなぎのかみ)。日本神話の伊邪那美、伊邪那岐の孫にあたる。此花亭にやってきて「生まれ直し」のために、何体もの「ちびナミ様」に分裂してしまい、騒動になる。

場所

此花亭 (このはなてい)

あの世とこの世の狭間にある宿場町の温泉宿。宇迦之御魂神が建てた。当初は宇迦之御魂神が、知り合いの神々を招くなどしていた。いつしか神様だけでなく、迷い込んできた人間や人ならざるものなど、様々な客がやってくるようになっている。由緒正しき宿で、一見さんは基本的に泊まれず、常連客や招待客、または手形を持つ客だけが宿泊できる。 狐の椿が女将を務め、仲居は少女の姿をした狐の娘たちが担当している。

書誌情報

このはな綺譚 16巻 幻冬舎コミックス〈バーズコミックス〉

第14巻

(2022-09-24発行、 978-4344851092)

第15巻

(2023-07-24発行、 978-4344851993)

第16巻

(2024-08-23発行、 978-4344853874)

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