戦後の日本文化と風俗、主人公の男女2人の愛情を描いた少女漫画。舞台となるのは、昭和23年の日本。戦争の焼け跡が残る東京に、美術品泥棒・吉田虎之助(よしだとらのすけ)は住んでいた。彼は宝探しのために迷い込んだ小さな村で、口は悪いが人形のように美しい面立ちの少女・真神千越(まがみちお)と出会う。彼女は代々村を守ってきた守り神のような存在・真神家の当主で、村のために山の神の使いである狼に嫁ぐ、つまり生贄となる運命にあった。その事実を知った虎之助は、村人に捕らえられてしまう。
虎之助はひょんなことから世話になることになった真神家で千越に出会い、彼女の許嫁が狼であることに気づく。狼、特に白狼は山神の使いとして、また地域によっては「ヤマズミサマ」と呼ばれ信仰の対象になっている。そして真神とは、狼を指す言葉だと言われていたのだ。真神家の当主は狼と結婚しなくてはいけない。そして結婚とは「喰われる」こと、つまり生贄を指す。村人たちが虎之助を真神家に連れてきたのは、生贄となる真神家の血を絶やさないため、千越との間に子供を生す種馬が必要だったからだ。虎之助は千越を連れてその場を逃走。その後、虎之助は彼女の保護者として共に東京で同居生活を始めることになる。虎之助と千越、2人が徐々に距離を縮めていく様子を見守ろう。
スリの少女と陰陽師の活躍を描いた、大正バディ・アクション漫画。舞台となるのは大正14年の帝都・東京。アーメンおりょうは、スリをして生活している少女。ある日、彼女は自分を「陰陽師」だと名乗る不思議な少年・烏丸晴哉(からすまはるちか)と出会う。近頃帝都では凶悪な犯罪が多発していたが、それは悪霊が人に取り憑いて悪さをしているからとのこと。最初は信じなかったおりょうだが、自身が通り魔に襲われたことをきっかけに、烏丸と悪霊絡みの事件に巻き込まれていくことになる。
元々はお嬢様として恵まれた暮らしをしていたおりょう。しかし震災で両親を亡くし、住む場所を失くした彼女が生きるには、スリをするしかなかった。そんな彼女に近づいてきた、自称・陰陽師の烏丸。烏丸曰く、おりょうには巫女のような力があり、魔物にとっては栄養満点のご馳走。そのためおりょうの周囲には、魔に取り憑かれた人間が現れやすいのだ。悪霊から帝都の平和を守ることを使命としている烏丸は、おりょうに悪霊退治の手伝いをしてもらうべく、度々彼女のもとを訪れるようになる。当初は烏丸の存在を煙たく思っていたおりょうだったが、彼と行動を共にするにつれ、徐々に心を開いていくようになる。不良少女と陰陽師。異色のバディの活躍と、2人の関係の行方に注目だ。
様々な思いを抱いてもがく高校生たちを描いた、青春作品集。本作は、表題作である『花の名を知らない』のほか『月を乞う人』『わらの夏』『カメレオン・ハイ』『忘れっぽい天使』『青い毒』という全部で6つの物語が収録された短編集だ。自分は周囲と違って特別だと感じる自意識、子供でも大人でもない時期だからこそ生まれる繊細かつ複雑な気持ちが、淡々と丁寧に描写されている。キラキラだけじゃない、思春期特有の青さや痛みが表現された作品だ。
本作には6つの作品が収録されており、それぞれが独立した短編集となっている。共通しているのは、どの作品もスポットが当てられているのは高校生だということだ。高校生を主人公にした少女漫画と言うと、心ときめく異性との交流や、キラキラした青春模様を想像する人は多い。しかし本作で描かれているのは、思春期だからこそ抱えてしまう痛さや鬱屈した気持ち、繊細さだ。爆弾を作ってみたり、大人相手の恐喝組織を作ってみたり、成人したらどうしてそんなことをしたんだろう、と頭を抱えてしまうようなことをしてしまいがちな高校生の不安定さが美麗な絵で表現されている。物語は必ずしもハッピーエンドで幕を下ろすわけではない。しかしそこがまたリアルで読者の胸を打つだろう。
商人の娘と元伊賀忍が織りなすドタバタコメディ漫画。舞台は明治7年の日本。主人公の菊乃(きくの)は、商人の家に生まれたおてんば娘だ。そんな彼女に、縁談が持ち上がる。おてんばすぎて嫁の貰い手があるか心配した父親が、1人の男を結婚相手として連れてきたのだ。男の名は柘植清十郎(つげせいじゅうろう)。菊乃から見るとただの腑抜けにしか見えない男だったが、実は彼は明治維新でリストラされた元伊賀忍だった。菊乃は清十郎の忍びとしての実力を目の当たりにすることになる。
菊乃は好奇心旺盛で、古いしきたりを嫌い新しいものをどんどん取り込もうとする少女だ。英語に憧れ、断髪令が出れば髪を切り、袴が許されれば袴をはく。そんな娘に両親は頭を抱えていたが、菊乃は自分の道を譲るつもりはなかった。一方、全てを諦めて周囲に抗う努力をやめてしまったのが清十郎だ。清十郎は忍びだったが、雇い主である藩や大名の一切の権限は新政府に移り、新政府は忍びを必要としていなかった。清十郎たち忍びは、リストラされてしまう。菊乃は不満があるなら新政府に抵抗すればいいと告げるが、清十郎は頑張っても報われない、ならば何も望まないことが賢さだと告げる。菊乃と清十郎の考え方は真逆だった。そんな2人が互いに歩み寄り、共に新しい時代の生き方を模索していく。