H難度だって夢じゃない!男子体操漫画オススメ５選60 Pt.

本作はロサンゼルス五輪の金メダリストである森末慎二が原作を手掛け、ラブコメ要素も含んでいる体操漫画だ。最初は初心者だった主人公の駿が、仲間たちと共に成長していく姿が描かれている。オリジナルの新技を開発すると自分の名前が技名に付けられるが、作中でも駿は鉄棒でトカチェフ前宙の「フジマキ」の開発に成功。体操は難易度も大事だが、体操自体を楽しむことも大切だ。駿は大舞台でも心から体操を楽しんでおり、その楽しさは観客にも伝わり、駿の演技は観る者を魅了する。作中にはコメディ要素もふんだんに織り込まれているが、駿たちの努力し続ける熱い姿が描かれている。ゼロからのスタートでも懸命に練習すれば報われるという夢と希望が感じられる作品だ。

本作で監修を務めている内村航平は高い実力と人気を誇り、出場した複数のオリンピックでも輝かしい成績を残している選手だが、最初から順風満帆だったわけではないという。本作の主人公の翔馬も、有名選手が集う特別合宿メンバーの中で無名の目立たぬ選手というところからスタートしている。しかし、素直で真面目な性格の翔馬は、小さな体操教室でも日々の練習の中でしっかりと体操の基礎を固めており、礼儀正しさも持ち合わせていた。自信過剰な選手が脱落していく中で、翔馬は真摯に体操に向き合い、確実に人としても選手としても大きくなっていく。読み進める内に、一流の選手として成功するために必要なものが何なのか、何故無名の選手だった翔馬がこの合宿に参加できたのか、読者にも理解できることだろう。

本作は、数々の世界選手権でメダルを取得している体操選手の水鳥寿思が監修している本格体操漫画。体操競技の得点は、難易度や構成内容の評価を示すDスコアと出来栄え点のEスコアの両方で決まる。主人公の満月は理論派で、頭の中でどうすれば思い通りできるのかシミュレーションしてから練習し、自分が考える完璧な体操を目指す。一方、ライバルの朔良は物心ついた頃から英才教育を受けたエリート中のエリートだが、ミスなくEスコアを取りきった上で更に攻めの姿勢で自らの体操を開拓していく。繊細さと大胆さを兼ね備えた描写で男子体操の魅力を表現しており、出来栄え点の採点基準など、体操競技に関する説明が作中に自然な形で溶け込み、体操初心者にも理解しやすい作りになっている。

ハネルはいじめられっ子で、一方、ライバルとなるジュンヤは不良でいじめっ子という、二人とも体操とは無縁に思われる存在だ。しかし、元々身体能力が高かったハネルは、ジュンヤに脅された時にまぐれではあるが高難度の技「ローチェ」を跳ぶことに成功する。「ローチェ」とは「前転跳び前方抱え込み2回宙返り」で、素人が成功させるのは奇跡に近い。また、ハネルの憧れの存在である女子選手・藤咲光との距離も縮まり、ハネルの運気は上昇気流に乗ったかのように思えた。しかし、実は体操経験者だったジュンヤが同じ体操部に入部してきたことで暗雲が立ち込める。果たしてハネルはジュンヤの圧力に屈することなく、体操部で這い上がっていくことができるのか。是非最後まで見届けて欲しい。

本作では、病に負けずに苛酷な運命に立ち向かっていく太一の姿が描かれている。幼い頃、太一と榛名を繋いだものは体操だった。榛名は太一の前で月面宙返り（ムーンサルト）をし、負けず嫌いの太一はそれよりもっと凄い技をやってやろうと特訓を始めたのだ。一方、榛名にとって太一は初恋の相手であると同時に、命を救ったヒーローでもある。太一の怪我は、過去の「あいつ」こと、榛名を助けたために負ったのだ。だが、ボーイッシュな榛名のことを男子だと太一は思い込んでおり、再会しても太一は榛名が「あいつ」だと気付かないまま物語は進んでいく。太一は独学で習得した月面宙返りを体操クラブで披露し、榛名を含む周囲の者を驚かせた。展開が進むにつれて太一の前には幾つもの壁が立ちはだかるが、太一は決してくじけない。そんな姿に勇気づけられる読者も多いのではないだろうか。