身体が柔らかい「軟体男子」漫画5選44 Pt.

1960年9月7日、ローマオリンピック男子体操団体総合で、日本が初の金メダルを獲得。以後、モントリオール大会まで5連覇を達成した。そんな日本体操の記念日である9月7日は、体操選手や身体の柔らかい「軟体男子」が活躍する漫画をピックアップ。

原作を担当した森末慎二は、当時の採点基準において、満点である10.00で金メダルを獲得した鉄棒のスペシャリスト。そんな理由もあり、主人公・藤巻駿の得意種目も鉄棒となっている。ずぶの素人として高校の体操部に入部した彼は、徐々にその才能を開花。天性の空中感覚を武器に、高難度の技を会得していく。本作は、競技人口が減少し、低迷する体操界に危機感を抱き、体操日本の復権を目指して企画された。そのもくろみは、期待以上の結果を生むこととなる。実際に本作の影響を受けた体操選手は数多く、美しい演技で世界を魅了し、世界選手権個人総合10連覇、五輪でも二連覇の偉業を成し遂げた天才・内村航平もその中の一人だ。

森末慎二とのタッグで体操ブームを巻き起こした漫画家・菊田洋之が、世界王者にして五輪王者の内村航平を監修に迎え、新たなブームを起こすべく立ち上げた体操漫画。『ガンバ!Fly high』の愛読者でもある内村航平が、菊田洋之と新たなタッグを結成。まさに”受け継がれる系譜”という言葉がピッタリと来る作品と言えるだろう。作中には、内村本人がモデルと思しき絶対王者・大和公平も登場。開始前に両手を眼前にかざす独特のポーズから、跳馬の演技を披露している。果たして、本作の読者の中からネクスト内村が誕生するのか。今後が気になる作品だ。

『ガンバ!Fly high』『THE SHOWMAN』がリアル路線の作品であるのに対して、本作は漫画ならではのファンタジックな要素の強い作品と言える。例えば、小学校低学年の女子が、反発力もない公園の地面で月面宙返りを決めるシーンがそれだ。他にも、連載当初は現実での成功者がいなかった床での三回宙返りを、作中で中学生となった主人公が成功させるなど、かなりの超人ぶりが描かれている。その後、床での三回宙返りが「リューキン」として、現実の技となっているが、現在でもG難度の大技である。もっとも、体操競技の歴史は、常に不可能を可能にした先駆者たちの手によって築き上げられてきたもの。ある意味では、現実を先取りした漫画と言えるかもしれない。

本作には、体操選手ではないが、人間離れした身体の柔らかさを持つ白石由竹が登場する。関節を自在に外すことが可能な彼は、縄抜けや狭い隙間への出入りなどを軽々と行う。彼は、その特技を活かして脱獄を繰り返したことから、「脱獄王」の異名を持つ。また、コミュニケーション能力が高く、舌先三寸で相手に取り入り、必要な情報を入手するのも得意。酒や女にだらしなく、主人公である杉元やアシリパに迷惑を掛けることも多いが、どこか妙に憎めない愛嬌がある。いろいろな意味で柔らかい軟体男子だ。

「軟体男子」というくくりなら、本作の主人公・モンキー・D・ルフィを外すことは出来ないだろう。なにしろ、「ゴムゴムの実」の能力者である彼は、骨や関節の制約など一切無しに、身体を自由自在に伸び縮みさせることができるのだ。また、ビッグ・マム海賊団の大幹部で「モチモチの実」の能力者である「将星カタクリ」も、ルフィに匹敵する「軟体男子」だ。同じ系統の能力だが、部分的にはルフィを上回る能力を持ったカタクリとの戦いでは、流石のルフィも大苦戦。二人の戦いは、ホールケーキアイランド編のクライマックスとなっている。