ひきこもり、巣ごもりも悪くないじゃない！オススメ漫画５選51 Pt.

日本では古来、ありとあらゆるものに神が宿ると考えられてきた。八百万の神は数の多さを表す言葉だが、それほど多くの神を束ねる存在が、天照大神である。太陽を神格化した神で、日本の神話や神道の中では最高神として知られている。日本で一番すごい神様ということになるのだが、何故か常にひきこもっている。仕事をしないでSNSやソーシャルゲーム三昧。ガチャで高レアキャラクターが出ないとき、何もしたくなくなる気持ちはソシャゲ好きとしてはとても共感しやすい。最高神なのにぐっと親近感がわくのではないだろうか。しかし、天照のひきこもりは何もガチャだけが原因ではない。そもそもが少々ネガティブなうえに、人前で話すのも苦手。最高神に求められる役割に、本人の性分が合っていないのである。嫌だと言いながらも、おだてられれば頑張る天照。ひきこもって逃げ回るものの、自身の役割を放棄することはない。ダメなところが見えるからこそ応援したくなる神様だ。

本作に登場するNHKは「日本ひきこもり協会」の略称で、公共放送を担っているテレビ局とはまったく関係がない。だが、達広は良質なアニメを提供し続けるテレビ局こそ、ひきこもりオタクを量産している元凶ではないか、という妄想をする。たしかにアニメに関するオタクの場合、生活圏が基本テレビとPCの前、手のひらの中で完結するので、趣味だけに限定すればほぼ外に出る必要はない。あながち見当違いの妄想とは言い切れない、謎の説得力がある。達広はコミュ障をこじらせた結果ひきこもりになり、脱却するために迷走し続けていく。結果、達広の正気はすでに崩壊しているが、岬や後輩の山崎など、協力者はおり、本人が思っているよりも外部とコミュニケーションは取れている。引きこもっているとはいえ、達広の見ている世界は外界から隔絶された場所ではなく、必ず誰かとつながっているのだ。

慎太郎は母親の死をきっかけにひきこもりになった。ネットを徘徊しながら日々を過ごしているが、唯一の楽しみは週刊の漫画雑誌。慎太郎は誰もがイメージするひきこもり青年のイメージそのものだ。家族に苛立ち、自身の立場に焦燥感を抱いているものの、それを認めることができない。自分がこうなったのは万事家族のせいだからこそ、面倒を見るのは当然であると考えている。慎太郎の時間は、母親が亡くなり部屋にひきこもった15歳で止まったままだ。部屋の中にいる限り、慎太郎の時間が進むことはない。ひきこもるという行為に対して、日々忙しくしている社会人はほのかな憧れを抱いてしまうものだが、ひきこもり続ける人間、それを見守り状況を打開していかなければならない側の人間、双方にとって精神的に厳しいものだ。ひきこもりという行為は一見わがままにも見て取れるのだが、本人にしか分からない心の歪みが原因ということもある。家族だからこそ、分かり合えない問題もあるということだろう。

紫苑寺有子はアリスと呼ばれている。身長は130cmほどと小柄で、細身で色白なところからも10歳前後にしか見えない。だが見た目とは裏腹に、アリスは鋭い洞察力とクラッキングの能力を持っており、自身で探偵事務所を運営していける有能な職業探偵でもある。探偵としての実力は、作中での活躍を読めばすぐに理解することができるだろう。身体の時間だけが止まってしまったのではないか、と錯覚するほどの鋭い推理を見せる。また、普段はニート探偵を自称するほどなので全く外に出ない。室内は冷暖房完備で快適。元々食が細く偏食で、食事に特別執着しているわけでもない。唯一好んで摂取しているのがドクターペッパーなのだが、それも助手の鳴海が買いに行けばよいし、依頼人は来るまで待っていればよい。あれ、探偵って実はかなりインドアでもできる職業なのかと考えれば、世の中には安楽椅子探偵ものなんてジャンルもある。ひきこもっているという事実こそが、アリスの実力の証明だ。

動物は可愛いしもふもふしているし、癒やされる存在だ。犬や猫は身近な動物だが、馬も人間の身近にいる動物である。しかし、普段どのような生活を送り、世話にはどの程度の労力がかかるのか、知っている人は少ないだろう。端的に言えば、ひきこもりが0秒で逃げ出す程度には身体的にきつい。朝は早くから世話を開始し、決められた回数分の食事に加えて適度な運動量を確保。日々体調の変化を感じ取るためのボディチェックは欠かせないし、馬の暮らす厩舎の掃除もある。生き物が相手だけに手を抜けないし、馬は相手をよく観察している。手抜きをするヤツには手痛い仕返しも待っているのだ。どう考えても体力的には底辺になりがちなひきこもりに向いていない職業だが、おすすめできるポイントもある。動物たちは嘘をつかない。手をかけただけ、愛情を返してくれる。誰かが必要としてくれるという体験は得難いものだろう。外に出ようと思ったときに牧場、存外悪い選択肢ではないはずだ。