『さんかく窓の外側は夜』1巻で三角・冷川が関わった事件と登場人物21 Pt.

三角と冷川が初めて一緒に除霊を行った事件。数年前に自殺が起きたマンションの一室は、「ヘンなこと」が続いていており、そのため借り手がつかないという相談を受ける。二人が部屋を訪れると、片隅にこちらに背を向けてうつむいている女性の霊の姿が見えた。「いるじゃん」と怖がる三角に対して、冷川は「きみ本当に目が良い」と感心する。
冷川の除霊の方法は「霊を掴んでぶん投げる」というもの。三角の「核心」という魂的なモノに触れることで、三角の感覚を共有し、より一層霊を認識できるようになるのだ。三角の力を借りて除霊に成功した冷川。一方、三角は冷川に触れられることで快感を覚え、「除霊ってこんなにエロくていいの？」と、戸惑う。しかし冷川は、霊現象が起きたときにはエロいことを考えると、人間の生命力に当てられて霊が逃げるのだという俗説を紹介し、自分の感覚を正当化していると開き直った。

家の中のスピーカーや灯り、パソコンが勝手に突然ついて不気味だという相談を受ける三角と冷川。「霊現象に違いない」と依頼主の女性は主張する。冷川と三角が依頼主の自宅を訪れると、依頼主の話通り家電の電源が突然入る。驚いた三角は「霊ですよね！？　これ」と冷川に確認する。しかし、冷川が小さく「…いや」と否定すると、三角は電気やテレビ、パソコンを確認し、依頼主にWi-Fiのパスワードを設定したほうがいいと忠告する。どういうことか理解しかねている依頼主。三角と冷川は何かを確信し、「庭かな」とお互いに確認し合う。
家の中の盗聴器を探そうとする三角の前を人影が通る。依頼主の家族かと思った三角は人影に向かって挨拶をするが、それはこの世のものならない存在だった。その気配は霊感のない依頼人でもはっきり感じられる程強いものだった。三角が話しかけたことで霊の力が増してしまったのだ。冷川は三角の核心に触れながら、家の中に現れた霊を庭に向かって放り投げた。依頼主がとっさに庭に駆け寄ると、そこには霊ではなく、依頼主の会社の同僚が倒れていた。「庭かな」というお互いの確認は、「庭に誰かが潜んでいて、リモコンを使って家電を操作しているのではないか」という見立てだったのだ。倒れていた同僚は依頼人の女性のストーカーだった。冷川に放り投げられた霊はストーカーの体の中に入ってしまった。体の中に霊が放り込まれた人はどうなってしまうのかと尋ねる三角に、冷川は「さあ？　知りません」と言い放つ。

三人が殺され、合わせて一人分になる遺体の一部が見つからない、と依頼を受ける三角と冷川。依頼者の男、半澤日路輝は刑事。冷川の昔からの知人だ。警察と関わりを持って厄介事に巻き込まれることを恐れた三角は「帰りたい」と言うが、冷川いわく、失せ物探しも請負っており、警察に恩を売っておくと良いのだと引き受ける。犯人はすでに逮捕されており、殺害された三人とはなんの接点もないコンビニ店員だった。勾留中に自殺してしまったため、見つかっていない遺体の一部がどこにあるのかはわからない。二人は半澤の手引で、自殺した犯人の自宅から手がかりを探そうとする。
これまで三角の体の中に侵入して除霊を行ってきた冷川だったが、今回は新しいことを試してみたいと言い出す。それは三角が冷川の耳の感覚を共有するというものだった。冷川の力を借りて霊の声が聞き取れるようになった三角は、部屋に残っている犯人の念が「非浦英莉可に騙された」と訴えていることと、残った遺体の一部の在り処（か）を聞き取った。
半澤を連れて遺体が隠してあるとされる場所に向かうと、そこには三人の遺体の一部を一人の人間のようにつなぎ合わせたものが横たわっていた。冷川は、これは「呪い」の道具であり、よくできたものだと感心する。冷川と感覚を共有したことで、より強力に、殺された三人の気配を感じる三角。冷川がいつも見ている世界の一端を垣間見て、吐き気をもよおすのだった。

客が寝ているときにしか現れない霊の除霊のために、ビジネスホテルの同室に泊まることになった三角と冷川。眠りにつくまでの間、三角は冷川に非浦英莉香を知っているのか尋ねるが、冷川は、強い呪いには大抵彼女の名前が残っていること以外に何も知らなかった。冷川は霊が姿を見せるために三角を眠らせようとするが、三角は冷川によって体の感覚や感情を奪われてしまうことに反発する。「きみの意見は尊重します」と、三角をなだめる冷川。意識は残すと言って、体の感覚だけを眠らせた。金縛りのように体を動かせないことに驚く三角。冷川は意識を肉体から離すように促す。冷川の力によって、二人は幽体離脱のように意識と肉体を分離させることができたのだった。すると聞いていたとおり、女性の霊が現れた。二人の体に向かって何かをささやいている霊の姿を見て、三角は除霊ではなく、話を聞いてあげることで「説得」することを提案する。しかし冷川はそれを一蹴。霊が語りかけていることに耳をすますよう促す。それは、三角のことがかわいいから触りたいというものだった。三角の腹に指を這わせる女性の霊。霊の話すことは理路整然としておらず、有害で無意味なものだとして、冷川は強引に除霊を行う。幽体離脱中のむき出しの魂に触れて行った除霊だったため、いつもより痛みを感じた三角。痛いと訴える三角に対して、「でも気持ちいいでしょう？　それに　すぐ　慣れる」と言いながら行ったサディスティックな除霊となった。

三角は書店の同僚から「当たり過ぎて怖い占い師がいる。彼が本物かどうか調べてほしい」と頼まれる。冷川と二人で占い師のもとを訪れる。占い師は予想に反して若くチャラそうな男、迎系多だった。手相を見るからと言って、迎に手を取られた三角に痛みが走る。魂に直接触れられた痛みだ。迎は幽体離脱して三角に付き添っていた冷川の存在に気付き、攻撃する。占いはインチキでも霊感は本物だったのだ。冷川は三角の体を借りて、占いが本物かどうかを確かめるために依頼されたとネタバラシをする。
迎は、インチキでも需要はある、人は話を聞いてもらいたいものだと反論し、呪われている人を助けることもあると訴える。「呪い」という言葉に反応する冷川。「非浦英莉可」という名前を出すと、「知っているのか？」と迎も冷川に問う。迎の話によると、強い呪いからは「非浦英莉可」という名前が聞こえるという。冷川が「非浦英莉可」が関係していると思われる殺人事件の話をすると、迎は関わらないほうが良いと忠告する。同時に、簡単に体を貸す三角に、冷川とは縁を切ったほうがいいとこっそりといさめ、「何かあったら助け合おーぜ　怖えーもん」と連絡先を交換する。

「とにかくおかしなことが起きる」という女子高生三人組の依頼をカフェで受けている三角と冷川。三人の中でも特に現象がひどいカナは、一人になると、あるはずのない死体を目にするという。はっきりと見えるのではなく、視界の端に死体が写り、そちらを見ようとすると消えてしまうというもの。ついにはトイレの便器の中に生首があるのを目撃してしまった。自分たちと比べてはるかに恐ろしい現象が起こっていることに、他の二人は、そこまでひどいとは聞いていなかったと驚く。「そんなこと言えるわけないじゃん!!」と取り乱すカナの顔に、三角は異変を感じる。カナの顔に黒い穴がポッカリと空いているのだ。彼女自身もその自覚があり、鏡で自分の顔を見ると自分の顔に穴が空いているのが見えることがあるのだという。
冷川はカナに呪いがかけられているのではないかと予想し、検証を行うために三人が通う女子校へ移動する。冷川が三人に、手をつないでから離してみるように命じると、カナだけに階段の上に横たわる死体が見えたのだった。これがやはり呪いであることを確信した冷川は、呪いの仕掛けを調べるために、彼女の持ち物が置かれている場所を案内させた。教室に案内されるなり、聞かずしてカナの机の前にたたずむ三角。「あたしの机じゃん　なんで知ってんの!?」と怖がるカナをよそに、三角には彼女の机にポッカリと黒い穴が空いているのが見えていた。すると教室に別の女子高生グループが入ってくる。その中の一人、黒髪のショートカットの少女と目が合い、思わず冷川の肩に触れる三角。その感覚に冷川は異変を感じる。「……変だ　あんたと初めて会ったときみたいな気持ちがする　『強くて』『魅力的』」だ、と少女についての印象を冷川に伝えると、その少女が「非浦英莉可」だと冷川は確信した。机の上の黒い穴は少女の登場とともに閉じており、三角も呪いが非浦英莉可によってかけられたものだと気付く。事件は解決したと伝える冷川の言葉に覆いかぶせるように、三角はカナに「次また同じことが起こらないように、原因を自分の中に探したほうが懸命でしょうね」と忠告するが、三角の様子はどうもおかしい。カナは心当たりがあるのかムッとした顔をした。異変を感じた冷川は三角の腕を掴み「三角くん」と声を掛けるが、三角はほうけた顔で「ミカドくん」と自分の名前を復唱した。冷川が自分の手のひらを軽く握ると、三角は正気を取り戻したかのように見えたが、非浦英莉可が冷川と同じ動作をすると再び三角の口調がおかしくなる。カナたちに付き添っていた女性教師に「お引取りを」と言われると、おかしな口調のまま、まっすぐ非浦英莉可を見て「じゃあまた」と意味深な挨拶をする。
女子校をあとにし、三角は冷川に「きみ 自分が何を言ったか覚えていますか？」と聞かれるが、何のことなのか心当たりがない。
街頭モニターに映る女性の顔が一瞬、黒く塗りつぶされているかのように見えた三角。また別の場所で同じ映像を見ていた「非浦英莉可」。何かを確認すると、多額の残高がある口座から現金を引き出す。脳裏には、「おまえは死ぬ　呪われて死ぬ」と語りかけた女性の顔が、塗りつぶされている光景が浮かんでいた。