「WEBマンガ総選挙2023」1位、「アニメ化してほしいマンガランキング2024」ノミネートと、今まさに勢いのある『みなと商事コインランドリー』。
「WEBマンガ総選挙2020」では10位を受賞し、コミックス発売前から絶大な人気を誇る本作ですが、読者から深く愛される理由には何があるのか。
はじめてBL作品を手に取ったとの声もよせられる本作の魅力を、たっぷりとお届けします。
『みなと商事コインランドリー』のあらすじはこちら→ マンガペディアリンク
「WEBマンガ総選挙2023」1位、「アニメ化してほしいマンガランキング2024」ノミネートと、今まさに勢いのある『みなと商事コインランドリー』。
「WEBマンガ総選挙2020」では10位を受賞し、コミックス発売前から絶大な人気を誇る本作ですが、読者から深く愛される理由には何があるのか。
はじめてBL作品を手に取ったとの声もよせられる本作の魅力を、たっぷりとお届けします。
『みなと商事コインランドリー』のあらすじはこちら→ マンガペディアリンク
22020年より月刊コミックジーン編集長を務める。
担当作は、『みなと商事コインランドリー』、『ガイコツ書店員 本田さん』、『恋するシロクマ』、『あかやあかしやあやかしの』など。
ーー 2019年「ゆるきゅんBLマンガ原作コンテスト」にて『Wash my heart!』が優秀賞に選ばれ、その後、『みなと商事コインランドリー』としてコミカライズされました。はじめて原作を読んだときはどのような思いでしたか?
あざらし氏(以下、あざらし) 「ゆるきゅんBLマンガ原作コンテスト」ではありがたいことに、600作品以上の応募をいただきました。
椿ゆず先生(以下、椿先生)が投稿してくださった『Wash my heart!』が際立って素敵だなと思った点は、キャラクターがしっかりしていたこと、冒頭の文章だけで雰囲気が浮かんできたこと、そして関係性が大変わかりやすかったことです。
他にも多くの投稿作品があったのですが「学園ラブ」が多く、もちろん王道パターンですし、悪いことではまったくありません。
ですが王道の作品は、王道の中でも際立つ特徴がないと、ライバルがいっぱいいて埋もれてしまうんですね。
その点『Wash my heart!』は、他の作品とは違ったキャラクター・雰囲気・関係性が文章からしっかり伝わりましたし、椿先生の趣味や萌えポイントを強く感じることができました。
ーー 『Wash my heart!』から『みなと商事コインランドリー』にタイトルを変更した意図には何があったのでしょうか?
あざらし 最初は椿先生も『みなと商事コインランドリー』とつけていたそうなんです。
ですが、あまり「いいね」がつかなくて不安になったので、途中から英語タイトルにされたと仰っていました。
ただ私は『みなと商事コインランドリー』というタイトルがとてもよいと思っていました。
初めて見る人も「あれ?なんだろう?」と興味を持ったり、何よりとてもキャッチ―なタイトルだと思います。
授賞後にご相談し、コミックスにする際には絶対に変えましょうとお話をして、変更させていただきました。
ーー 『みなと商事コインランドリー』ではじめてBL作品を読んだという男性のコメントも見かけました。中高生の読者も多いと聞いておりますが、いかがでしょうか?
あざらし 仰る通り、男性のファンもいらっしゃって、コメントをいただくことも多いです。
『みなと商事コインランドリー』はカバー表紙に性的なものを前面に出していないため、書店に並んでいた際に手に取りやすいというのはあると思います。
また、同じ編集部から出ております『佐々木と宮野』の人気が出る過程で、中高生の子たちがすごく買ってくださったんですね。
男性同士の恋愛の作品を、成人に至っていない子たちも楽しんでくださるし、見てもらえるという実感がありました。
性的なものをメインに据えない作品で、ほかに何を「おもしろさ」として加え、マンガを作れるのか?というのが、「ゆるきゅんBLマンガ原作コンテスト」の企画意図に含まれていました。
ーー 『Wash my heart!』を大賞に選んだ際、「物語を広げていけたらおもしろいかも…!」など先の展開や構想ははじめからあったのでしょうか?
あざらし 他社さんでもそうだと思うのですが、コミックスは1巻が売れたら2巻を出しましょう、2巻が売れたら3巻を出しましょうという商業主義で基本発行しています。
初めは『みなと商事コインランドリー』も、とりあえずコミックス1冊分を想定して、先生両名にプロット(※)やネームを切ってもらおうとしました。
ただ「ピクシブコミック」というWEB媒体で1話を掲載したときに、想像以上の「いいね」がつきました。ランキングの上位をずっととっていたんですね。
もちろん私は、作品を企画した編集として「売れる!」と思っていましたが、もしかしたら自分が想像した以上に売れるかもしれないという予想が、1話を発表した段階で生まれたんです。
ですので2話を進めているくらいの段階で、椿先生には「2巻まで考えるとすると、どういう風に話を広げていきましょうか?」という話をしました。
※プロット…原作。物語の筋、構想。
ーー 売れる!と思った決め手には何がありましたか?
あざらし 1話のカラー扉絵で、漫画担当の缶爪さわ先生(以下、缶爪先生)が、コインランドリーを背景にふたりが並ぶ引きの絵を描いてくださいました。それを見た時に「これは売れるな…!」と思いましたね。
缶爪先生とはすでに6冊ほど作品をご一緒していて、ちょうど前の連載が終わり、「次の作品は何にしましょうか」と話し合っていた時期でした。
缶爪先生自身が、BLを描ける・描きたい・描けないかがまったくわからなかったのですが、どうでしょうとお声がけをしたところ、「興味あります」とお答えいただいて、キャラクターデザインを描いていただきました。
そこでとっても魅力的なラフ絵をいただいたので、大変うれしかったです。
ーー 1話の扉絵はコミックス1巻のカバーにもなりましたが、どのようなこだわりがあるのでしょうか?
あざらし 基本的にBLは、ふたりの距離が近く、顔のアップでというのがよくあるカバーデザインなのですが、当時、「雰囲気のある世界観」を表紙に出している作品が、よく売れているのが目に入っていました。
背景をしっかりと描いて、雰囲気やニュアンスを強めにしたカバーデザインです。
『みなと商事コインランドリー』の漫画担当の作家さんを探している際も、コミックスパッケージはそのようなデザインがいいのでは?と考えていました。きちんと雰囲気を描ける作家さんを探せれば、人気を博せると思ったんです。
扉絵のラフをいただく際に缶爪先生には、「アップの絵と引いた絵をどちらも考えてみてください」と話していました。
過去にお仕事をご一緒した際には、あまり背景を描かれるイメージがありませんでした。ですので、どんな風に描かれるのだろうと楽しみにしていたところ、アップももちろん可愛かったのですが、想像していた以上に引いた絵がしっかりと描けるということに感動したんです。
こちらでぜひ(扉絵を)見たいと思い、引いた絵でカラーにしていただくようにお願いしました。
完成された扉絵は想像以上に美しい絵で、舞台背景であるコインランドリーがしっかりと描かれていたこと、そして目線でふたりの関係性をしっかりと表し、甘酸っぱいラブがはじまるぞ……という雰囲気を最大限表現されていました。
ああ、これが1巻のコミックスカバーになったら完璧だと思いましたね。
ーー 「ピクシブコミック」で1話を掲載した際に、たくさんの「いいね」が付いたとのことですが、コミックス発売前の「WEBマンガ総選挙2020」では、10位を受賞しています。
あざらし まだコミックスが出ていないのに、こんなにファンの方がいてくださるんだ……という事実に感動しました。
また、同じく忘れがたいのが、コミックスがもうすぐ出ますという発売前のタイミングで、アニメイトの池袋本店の三枝さんからお声がけをいただいたんですね。
「この作品は絶対売れると思いますので、ぜひ階段の壁一面にポスターや複製原画を貼っていただきたいです。また特典を描いていただけませんか?」と全面的に応援をしてくださいました。
書店現場の方が応援してくださるということがとても励みになりましたし、コミックス1巻の発売が素晴らしいスタートを切れたのは、読者の皆様、書店の皆様の応援のおかげだと思っています。
ーー 読者投票による作品の選出は7度目(※)です。読者から愛される作品になるよう、日ごろから意識しているプロモーションはありますか?
あざらし 最近は皆さん作られているんですが、X(旧:Twitter)の公式の作品アカウントを作りました。Xはオタクのファンの皆様と親和性が高く、効果的だと思っています。
作家さんがアカウントを作ってくださる方もいると思うんですが、担当編集が作るメリットは、ファンの皆様と同じ視点でポストすることにより、ファンが楽しんでもらえるというのがひとつと、公式情報を提供する場を確保できたことですね。
BL好きの方に感謝を申し上げたいのは、すごく作品を大切に読んでくださるんです。
書店に行って本を探してくれるし、作品を好きになったら各書店の特典を見つけて買ってくださる、大きな愛を持ってくださる方々で。
そのような皆様に愛され、応援してもらえるような作品をどのように作ればいいかと日々考えています。
これは先輩から教えていただいたことなのですが、一案としては、「口コミで広げてもらえるようなキャッチフレーズをつけること」が大切だと思っています。
『みなと商事コインランドリー』を例にすると、「イケメンの高校生がアラサーの管理人に迫る」というのが一番わかりやすいキャッチフレーズだと思います。
Xではそのキャッチフレーズを心に置きながら、ファンの方に「かっこいいから見て!」「このカットがいい!」とSNSで広げてもらいやすい画像を投稿して、RPしてもらい、一緒に楽しめたらいいなと運用しています。
※読者投票による作品の選出は7度目…「WEBマンガ総選挙2020」10位、「WEBマンガ総選挙 pixivコミック10周年 特別編」2位、「WEBマンガ総選挙2023」1位、「ちるちるBLアワード2021 BEST表紙デザイン部門」 第2位、「ちるちるBLアワード2022 BEST表紙デザイン部門」 第2位、「アニメ化してほしいマンガランキング2023」ノミネート、「アニメ化してほしいマンガランキング2024」ノミネート。
ーー 一般投票による選出を盛り上げる手法には何がありますか?
あざらし 読者の皆様が作品を応援するムーブメントを楽しむというのが、この投票方法の醍醐味だと思います。
ファンの皆様と一緒に盛り上げることで、作家さん本人の目にも応援コメントが目に入るのも喜ばしいです。
例えば公約として、「10位以内に入ったら○○をします」ということを掲げることが多いのですが、「叶うかわからないけど頑張ろう!」とファンの皆様が盛り上げていただけたことは、大変ありがたかったです。
ーー では、「アニメ化してほしいマンガランキング2024」での公約は?
あざらし あ、どうしましょう(笑)。
「WEBマンガ総選挙2023」が終わって、やっと一息ついたところでしたので、まずは選出いただいたことが大変ありがたかったです。
「アニメ化してほしいマンガランキングで10位以内に入ったら」の公約は作家さんと相談して作ろうと思います。
こんな欲深くていいのか……と思いますが、狙えるものは狙っていけたらと思っています(笑)。
ーー 本作の先の展開を楽しみしてくださるファンの方も多いかと思います。最終回の展開は話し合っていますか?
あざらし ファンの皆様はご存知の通り、『みなと商事コインランドリー』はドラマ化をしています。
シーズン1では最終話で付き合って、シーズン2ではその先までを描いているんですね。
ドラマは椿先生が原案・構成と脚本のほとんどに監修させていただきまして、私も脚本協力をさせていただきました。
「コミックスとまったく同じではないけれども、本質は一緒」という世界です。
ドラマを見た人たちにも原作であるマンガを楽しみにしていただけるように、マンガのこの先も盛り上げていこうと日々椿先生、缶爪先生と話し合っています。
すみません……、皆様が聞きたいのは、もう少し具体的な内容ですかね(笑)。
ーー 個人的には大学生のシンの姿に期待をしてしまいます。
あざらし 大学生になるとシンがあの高校生の学生服を着なくなっちゃうじゃないですか(笑)。みんな、それで本当にいいの…!?(笑)。白衣が見られればそれはそれでいいのかな…!
シンの見た目に変化が生まれてしまうので、皆さんが変わらず萌えてくれるかな?とドキドキしています。
でも缶爪先生が大学生のシンについて描きたいと仰ってくださっていたので、そこまで描けたらいいですね。
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