これで税金の仕組みはバッチリ？税金まんが特集31 Pt.

税金は払わなければならないものだが、そもそも税金は何に使われているのだろう？　いざというときの救済策はないのかなど、税金や会計について扱った漫画をご紹介！ あなたの役に立つものもあるかも？

主人公の百目鬼華子は、仕事も優秀な新人市役所職員。しかし鉄面皮で容赦なく税金の徴収を行い、お金にもがめついところがあるなど、一筋縄ではいかない性格。そんな彼女は税金の問題を通じてさまざまな人々と向き合う。親の病気や事業の失敗、貧困が原因で税金を滞納した人たちにとって、納税課の職員はとうてい歓迎できない存在。行く先々で疎まれ、罵声を浴びせられる。基本的には容赦なく税を徴収していくストーリー展開だが、一方で更正の申請など、貧困層に対する救済策もしっかりと紹介しており、必ずしも後味の悪い結果にはならない。華子がどういうきっかけで今の仕事をするに至ったのか、そおの経緯も回を追って明らかになっていく。

石上は若い新人で、ベテランの鐘野は顔の濃い男。この鐘野が、物語の主人公と言っても過言ではない。大柄な体躯と強面、そして容赦ない徴収で、税理士やヤクザからも恐れられる強者だ。アルバイト禁止の公務員でありながらヤミ金の特別顧問をやっているなど、何から何まで型破りの存在。一方でお金に対して「こんなもんただの紙切れだ」と言って燃やしてしまうなど、つかみどころのない一面も。国税と地方税との違いなどにも触れており、なるほどと唸るところの多い作品だ。鐘野の過去にもいろいろあり、話が進む中で明かされていく。ギャグを交えながらも税金について学べる秀逸な話運びも魅力だ。

本作で描かれる「脱税」は、他の人が真似をすると大やけどでは済まなくなりそうだ。税務署に対して嘘もついている。この漫画で語られているのは、「ない袖は振れない」という開き直りと、税務署に対して「こいつは面倒なやつだ」と思わせる嫌がらせの数々。しかし、この作品に描かれている税務署の対応も褒められたものではない。そもそものきっかけは作者の経営する法人の税金滞納が原因であり、法人化した個人事業主と税務署、双方の非常に駄目な部分を浮き彫りにして描いた作品と言える。

女騎士登場シーンのお約束というべきか、1ページ目から「くっ、殺せ！」が飛び出す。女騎士（という名前のキャラである）は、ドラゴン討伐の最中にオークに捕らえられ、経理を教えられ簿記2級の資格を獲得。人間の国に戻ってからも持ち前のポンコツぶりでトラブルに首を突っ込み、そのたびに経理について学んでいく。まだまだ民間に経済が発展していないからこそ、「簿記」の能力が非常に役に立ち、納税から借金の返済まで、お人好しの女騎士だからこそ人々の役に立っていく英雄譚的な側面もある。しかし、人間の国より先にオークたちが経理のシステムを作っていたのだから、長期的に見たら人間の国のほうがヤバかったのではないだろうか。

pixivに作品を発表していた時代から、ひと味違った観点から作られたファンタジー世界で好評を博してきた作者。この作品は、自ら「思考実験」と称している通り、「ファンタジー世界で税金や勇者討伐の費用、そこから得られる利益はどうなっているのか」を、経済活動に欠かせない「手紙」を運ぶ配達人の視点から描いている。無秩序に開発された城下町での徴収の難しさなども、中世世界の発展期にはいかにも発生しそうな問題。一方で税務局が私兵（合法軍団）を使ってならず者から税金を強制徴収するなど、ギャグにしか思えないがいかにも中世でありそうな話が笑いを誘う。郵便と税金の切っても切れない関係など、現代にも通じるところがある。