概要・あらすじ
ハーフエルフの吉田は、皇帝都市アイダツィヒの駅逓局に勤める配達人見習い。誰もがどこかで一度は聞いたことがあるような設定の王道ファンタジーな世界で、吉田は全身全霊をかけて書簡の配達に努めており、日々あてにならない宛名書きを頼りに、手紙を届けるため奔走している。不平不満をもらしながらも、経験の浅い新米配達人の吉田は、一通の書簡を届けることに命を懸けるのだった。
登場人物・キャラクター
吉田 (よしだ)
ハーフエルフの女性。皇帝都市アイダツィヒの駅逓局に勤めており、手紙や書類などのさまざまな書簡を届ける配達人の見習い。配達先の宛名書きはあてにならないことが多く、書簡を届けるにあたり危険が伴うことも少なくない。しかし、どんなに困難な宛先にも必ず依頼の物を届けようと努力し、配達に命を懸けている。もともとは森生まれのハーフエルフで、都市に移り住んで7か月になる。 そのため、まだ都市での生活も、配達人としても新米レベル。
新緑のオズワール
エピソード「エルフと魔術師と督促状」に登場する。魔術師の男性。皇帝都市アイダツィヒ領南端保護区にある「巨人の指」と呼ばれる崖のてっぺんに住んでいる。人嫌いで有名なため、誰も彼に近づこうとする者はいない。最近は土地の権利の問題で、都市の官吏と揉めている。
修道士 (ぼうず)
エピソード「エルフと魔術師と督促状」に登場する。復活司祭の男性。皇帝都市アイダツィヒ領南端保護区にある「巨人の指」と呼ばれる崖で、復活修道院を営む。場所柄、「セーブ」に来る客は滅多にいないということもあり、珍しく「セーブ」をお願いに来た吉田に法外な金額を要求する。
暗算のメルセン
エピソード「竜と勇者と配達人」に登場する。経験値記録官の男性。国境付近の山岳地帯へ魔物討伐のために遠征して来た勇者のパーティに参加した。前線で戦っている者の戦いぶりを見て、貢献度などを記録し、経験値を算出する役割を担っている。
文具屋の娘 (ぶんぐやのむすめ)
エピソード「紙とナイフと伝令官」に登場する。皇帝都市アイダツィヒにある文具屋「鷲屋」の娘。親は同業組合の顔役を務めており、隣にある羊皮紙屋「金毛屋」とは祖父の代から頻繁に揉める仲。ある時、羊皮紙屋の倅宛てに、彼を罵倒する言葉だけを書いた手紙を出した。これがきっかけとなって、互いを罵り合う手紙のやり取りが始まる。 実は羊皮紙屋の倅に想いを寄せている。伝えられない想いを手紙に記そうとしたが、素直になれず、結果的に、罵り合う手紙をやり取りするという事態を招いてしまう。
羊皮紙屋の倅 (かみやのせがれ)
エピソード「紙とナイフと伝令官」に登場する。皇帝都市アイダツィヒにある羊皮紙屋「金毛屋」の息子。親は同業組合の顔役を務めており、隣にある文具屋「鷲屋」とは、祖父の代から頻繁に揉める仲。ある時、文具屋の娘から、自分を罵倒する言葉だけが書かれた手紙を受け取り、相手を罵倒する言葉を書き込んで返事を出した。これがきっかけとなって、罵り合う手紙のやり取りが始まる。
先輩 (せんぱい)
エピソード「狩りと魔物と監督官」に登場する。皇帝都市アイダツィヒの駅逓局に勤めており、吉田の先輩にあたる男性。「物騒な案件の担当にも関わらず、ろくに解決せずに放り投げる専門家」との悪評を得ている。いつもは勤務中でも酒を飲んでいるため、いい加減に見える。しかし、いざという時にはスイッチが入り、非常に頭がキレる。 市外配達研修のため、シオドメイ市に向かう吉田に同行する。
棍棒のウォーリフ (こんぼうのうぉーりふ)
エピソード「狩りと魔物と監督官」に登場する。シオドメイ市の森番で、狩猟監督人を務める男性。狩猟権を持たない余所者が、密猟を取り締まるという名目で、森の生き物を勝手に殺傷することを防ごうと監視している。しかし、森に入った者を、生き物に追われて刃を向けざるを得ない状況に陥れ、強引に罰金を徴収したり、狩猟権を押し売りするそのやり口に、反感を持つ者は少なくない。 態度は威圧的で、耳の長いエルフを「耳長ども」と蔑んでいる。
赤爪のヤスミディア (あかづめのやすみでぃあ)
エピソード「魔術師と労働と配達人」に登場する。魔術師の女性。炎を操るが、そのわりに暑がりで猫舌。製鉄の職に就いているが、暑がりが災いして毎日仕事の時間には苦痛を伴っている。氷結のパキリとは職に就く前からの友人。
氷結のパキリ (ひょうけつのぱきり)
エピソード「魔術師と労働と配達人」に登場する。魔術師の男性。氷を操り、超高級食材の鮮度保持の仕事を務めている。一時も絶やさずに凍らせ続ける必要があるため、体力も魔力も酷使し、寒さで消耗しきっている。赤爪のヤスミディアとは職に就く前からの友人。
天上のヒルヒソカ (てんじょうのひるひそか)
エピソード「秩序と混沌と配達人」に登場する。皇帝都市アイダツィヒの駅逓局の局長を務める男性。吉田や先輩の上司にあたる。ムキムキマッチョな巨漢で、顔の中心には駅逓局のマークである「〒」のような傷跡が大きく付いている。見た目は怖いが心は優しい熱血漢。
向い傷のゴラムス (むかいきずのごらむす)
エピソード「秩序と混沌と配達人」に登場する。聖マルティヌス信心会を騙(かた)る盗賊ギルド「スペルト団」の団長の男性盗賊。顔の中心に大きなバツ印の傷跡があるのが特徴。チンピラやならず者の集まりであるスペルト団を統制し、自分が中心となってさまざまな違法活動を行っているため、役所を目の敵にしている。
集団・組織
合法軍団 (ごうほうぐんだん)
エピソード「秩序と混沌と配達人Ⅱ」に登場する。諸々の役所仕事に対し、必要な武力を提供するべく内々で設立された兵士集団。役所の局長たちが直接管轄しているため、局長権限で、大抵のことは合法と見なされる。これを利用してさまざまな垣根を越え、犯罪者を叩き潰す正義の審判を下す組織である。いろいろな違法行為を犯したうえ、税金も納めない聖マルティヌス信心会に対し、徴税という名目で行動を起こす。
聖マルティヌス信心会
エピソード「秩序と混沌と配達人Ⅱ」に登場する。皇帝都市アイダツィヒの「首狩り小路」にあるとされる団体。貧困と酒呑みの守護聖人である聖マルティヌスを信仰する組織を標榜している。実際はその名を騙っているだけであり、その正体は、盗賊ギルド「スペルト団」。窃盗のみならず、恐喝や密猟、贋金作りや営利誘拐など、さまざまな違法行為を行っており、役所とは敵対関係にある。
場所
皇帝都市アイダツィヒ (こうていとしあいだつぃひ)
吉田が暮らす都市。かつてこの世界は、剣と魔法がすべてを支配するといわれていた。しかし、力と混沌ではなく、平和と秩序の中で暮らしたいと願った人々が、何年もかけて都市を築き、その土地の領主から独立していったと伝えられている。現在でもその秩序は徹底されてはいないものの、この都市の存在が、金と書類を中心に回る世界へと大きく変化させる中心となっている。 都市の中心部から離れると、竜やグリフォンなど大型の怪物も多く存在する。
駅逓局 (えきていきょく)
皇帝都市アイダツィヒにある郵便局のような役割を果たす場所。市民から依頼された手紙や書類などの書簡が集められ、仕分け処理が行われた後、配達人に分配される。手紙に書かれているあてにならない宛名書きを頼りに、配達人が宛先の受取人を探し、届ける仕組みになっている。
その他キーワード
復活修道院 (ふっかつしゅうどういん)
ダンジョンなどにある教会風の建物。ここで「記録(セーブ)」をお願いすると、専門の聖職者が蘇生法の一種である復活の呪文を記録。この呪文を唱えると、死んでも一定条件化で復活することができる。「記録」は有料で、その金額は復活修道院のある場所に応じて異なる。施設の性質から、「セーブポイント」とも呼ばれる。
復活の呪文 (ふっかつのじゅもん)
術の力を用いた蘇生法の一種。あらかじめ対象者に固有の呪文を「記録(セーブ)」しておく。対象者が死んだ時に、この呪文を唱えると、肉体に魂を呼び戻して蘇生させることができる。その運用にあたっては制限も多く、必ずしも期待通りの効果を発揮できるとは限らない。大抵の地域では聖職者がこの術を担っており、「復活司祭」「復活修道士」などと呼ばれている。 また、彼らは死体を回収する「死体回収人」とペアで行動することが多く、対象者の蘇生は、死体を回収できてこそ成せることである。