人ならざる者たちと関わることになってしまった闇医者の青年がまきこまれる怪事件を描く伝奇アクションコミック。木下京太郎は、回診専門の闇医者を営むしがない青年。怪しげな知識をやたらと持つ古道具屋「眩桃館」の主人・麻倉美津里(みつり)や、京太郎の家に居候する謎の風来坊・長谷川虎蔵とは腐れ縁の仲。京太郎は二人によってもちこまれる怪しげな事件にかかわるはめに陥る。大正時代の日本のような舞台設定の中、インモラルな怪事件がまきおこる。
本作の主人公・京太郎は、もともとはいたって普通の青年だった。しかし、美津里に眼鏡をあつらえてもらってから人外のものが見えるようになってしまう。美津里もどうやら人ならざる者であるようで、京太郎の元に居候する虎蔵も妖し気な力を有する異形の者であった。そんな彼らが紡ぐストーリーに、クトゥルフ神話が絡むことになるのは、「寄群(よぐ)編」。「よぐ」はクトゥルフ神話における「ヨグ=ソトース」という、触手や触角のある怪物のような姿をした神に由来。美津里の紹介で闇社会のオークションの参加者に用心棒として雇われた虎蔵が訪れることになるのが、さびれた漁港・寄群。そして、偶然なのか必然なのか京太郎も患者である老婦人の依頼を受けて寄群へ赴くことになる。
クトゥルー神話の邪神たちを女の子キャラにおきかえて描く日常系漫画。クトゥルー神話の象徴ともいえる、人智をこえた力を有し禍々しい姿をしているといわれる神々、クトゥルーやアザトース、ダゴンといった存在を、かわいい女の子キャラクターに設定。そのちょっと変わった日常を描く4コマギャグ漫画。クトゥルー神話ならではの、じわじわとした恐怖を感じられるショートストーリーも収録され、硬軟織り混ぜたクトゥルー神話の世界が展開する。
クトゥルー神話における神は、かつて地球を支配した「旧支配者」のこと。彼らは人間の理解をはるかにこえた力や文化体系をもっており、彼らにとって地球は宇宙のごく一部にすぎない、とるにたらないものだ。それだけに、この神々は、理解をこえた宇宙的恐怖の象徴として描かれるのが普通だが、本作はそんなイメージを大変換。かわいい女の子の姿になって登場。しかしキュートなルックスをしていても神々それぞれにクトゥルー神話の設定がいかされている。例えば、クトゥルー神話を代表する神・クトゥルーは星辰(せいしん)スーツという着ぐるみを着た姿で登場。「正しい星辰スーツを着ているときだけ起きていられる」という設定なのだ。クトゥルー神話好きなら笑ってしまう小ネタが満載だ。
江戸時代を舞台にクトゥルー神話の神々との戦いを描くバトルアクション漫画。原作は猪原賽。舞台は19世紀の江戸の町、瓦版屋の番太郎は、佃島(つくだじま)に現れる河童の噂を追っていた。そんなある日、番太郎の語る河童の話に興味を示した侍・無明獅子緒(むみょうししお)と出会う。獅子緒は恐ろしく強い上に異様な形の片腕をもっていた。その晩、佃島を望む川縁を訪れた番太郎は、獅子緒と再会。共に、異形の怪物を目撃することになる。しかし、それは河童ではなかった。
本作はクトゥルー神話が、江戸の町で花開く異色のストーリー。瓦版屋の番太郎が、多数の目撃証言をもとに追っていた河童の正体は、クトゥルー神話で旧支配者と呼ばれる海神「だごん」の眷属である「深きものども」という異形の怪物。実は獅子緒は、同じく旧支配者であるシャンタク鳥によって、自分が護衛していた姫をさらわれたという経緯から、旧支配者である異形の者たちと闘っていたのだ。獅子緒の異様な左腕は、旧支配者と対立する「旧神」の眷属である「ないとごぉんと」に寄生されたもので、獅子緒の戦いは太古の昔から繰り広げられてきた旧支配者と旧神の戦いでもあった。そこへ、旧支配者を追っているイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエル10世も加わり、異形の神々との戦いは白熱していく。
TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)「クトゥルフ神話TRPG」をプレイする女子高生たちを描く4コマギャグ漫画。原作は内山靖二郎、アーカム・メンバーズ。キャラクター原案は狐印。私立御津門(みつかど)学園に転入した高校2年生の樋口さやかは、そこで中学時代の友人・日野睦(むつみ)に再会。「クトゥルフ神話TRPG」にはまっていた睦は、一緒にプレイしようとさやかを誘う。そこへ、TRPG大好きな学園理事長の安針塚京(あんじんかみやこ)が現れ、TRPG部設立を猛プッシュされる。
本作に登場する「クトゥルフ神話TRPG」は、アメリカで生まれたゲーム「クトゥルフの呼び声」を翻訳したもので、実際に存在する。ゲームといっても、ゲーム機等を使用するものではない。いわゆるテーブルゲームで、プレイヤーがダイスをふったりして、対話しながらすすめていくロールプレイングゲームだ。本書で、「クトゥルフ神話TRPG」に挑戦することになるキャラクターたちは、原作者の内山靖二郎がクトゥルフ神話TRPGの世界観で描く人気ライトノベル「るるいえ」シリーズの登場人物(ちなみに「ルルイエ」とはクトゥルフが眠っているとされる古代都市の名前)。小説ファン、クトゥルフ神話好きにオススメなのはもちろん、TRPGに興味がある人ならプレイする雰囲気が味わえ、より楽しめるだろう。
クトゥルフ神話の原点ともいえるラヴクラフトの小説「クトゥルーの呼び声」をコミカライズしたホラー漫画。1926年、「僕」は不審死をとげた大伯父・エインジェル教授の遺品の中から謎めいた品を見つけた。それは、思わず目をそむけたくなるような醜悪な存在感を宿した粘土板と、「クトゥルフ教のこと」と題されたノートだった。「僕」は遺品に導かれるようにしてクトゥルフの謎に迫っていく。コミックに加え、クトゥルフ神話を研究する森瀬繚による解説も収録。
クトゥルフ神話の世界への入門編にぴったりな一冊だ。本書はラヴクラフトが「クトゥルーの呼び声」と題して発表した三章からなる小説を「粘土板の恐怖」「ルグラース警部の話」「海からの恐怖」の三編のコミックにして収録している。物語は、筆者である「僕」が大伯父の遺品について詳しく調べていくうちに、人智をこえた禍々しい者たちが存在にすることを知ってしまう恐怖が描かれていく。それぞれに森瀬繚による解説もついており、ラヴクラフトのプロフィールに始まり、小説が生まれた背景についても理解を深められる。そしてラヴクラフト個人の創作物が、その仲間たちをはじめとした多くの人々によってクトゥルフ神話として体系化されていった経緯も知ることができる。