静岡県の高校を舞台にした青春柔道漫画。主人公・粉川巧(こがわたくみ)は中学時代の昇段審査で大技「山嵐」を決め、注目を浴びる。その場にいた杉清修(すぎせいしゅう)、斉藤浩司、宮崎茂、三溝(みつみぞ)幸宏らは揃って巧と共に浜名湖高校に進学を果たす。しかし、浜名湖高校には柔道部がなかった。巧たちは柔道部を設立し、顧問・倉田龍子(りゅうこ)や巧のガールフレンドでマネージャーの近藤保奈美、のちに女子部員となる海老塚桜子らと力を合わせて全国制覇を目標に邁進する。
この作品は、それまでのスポ根的な柔道漫画とは一線を画し、同級生5人が柔道を楽しみながら強くなろうと切磋琢磨する姿が爽やかだ。当初は、地方大会のライバル校である佐鳴(さなる)高校や三方ヶ原(みかたがはら)工業高校に力及ばず負けてしまうが、巧の急成長と比例し学年を重ねるごとに他校を撃破し、インターハイへ駒を進める。全国屈指の強豪・千駄谷学園との団体戦や個人戦が最大の見どころだ。作者自身が浜松市出身であり、作品内に登場する校名などには浜松の地名にちなんだものが多い。また作者は柔道経験者でもあるため、本格的な柔道の描写や細かいルール説明なども多く、当時はまだ注目度が低かった女子柔道の世界にもスポットを当てるなど、初心者にも柔道ファンにも受け入れやすい内容となっている。
超能力を持つ少女と老人が、世界を変える運命に巻き込まれるファンタジー漫画。花屋を経営する樫村蔵六(ぞうろく)は、コンビニで食べ物を物色する少女に出会う。不審がる蔵六に、「助けてくれたら願いを叶えてやる」と少女は取引を持ちかける。そこに少女の仲間だった姉妹が現れ、お互い超能力を使った大立ち回りを繰り広げる。だが、蔵六は超能力にひるまずに彼女たちを叱りつけ、行き場を失った紗名(さな)と名乗る少女を引き取った。この出会いにより、2人の運命の歯車が大きく動き出す。2017年にテレビアニメ化。
紗名の正体は「アリスの夢」と呼ばれる超能力者だ。想像したものを自由に生み出すことができ、育てられた研究所の地下に「ワンダーランド」という巨大空間を作り出し遊び場にしていた。「アリスの夢」の中でも、特にその力が強いことから「赤の女王(クイーン)」と呼ばれている。紗名は、静岡にある製薬会社の研究所でさまざまな実験を受けながら暮らしていた。緑豊かな富士山のふもとの描写とは裏腹に、研究員たちが能力者たちに非人道的な実験を行うなど、自然の美しさと実験の残忍さとのギャップに魅せられる。紗名は脱走を企て閉鎖的な空間から外の世界へ飛び出し、蔵六との出会いを果たす。曲がったことが大嫌いな蔵六と衝突することもあるが、周りの人々とふれあうことにより人間らしく成長する紗名から目が離せない。
田舎にある中学校を舞台にした学園ギャグ漫画。主人公・わぴこが通う田舎ノ中学校は廃校の危機を迎えていた。ある日、わぴことクラスメイトの葵、北田秀一(しゅういち)の仲良し3人組は学校の裏山で倒れている少女を発見する。藤ノ宮千歳と名乗る少女は筋金入りのお嬢様で、都会ノ学園からの転校生だった。父の死により千歳の家は没落し、ペットである金魚の「ぎょぴ」が唯一の財産だった。だが、ひょんなことから遺産が転がり込み、千歳は遺産で田舎ノ中学校を買い取り再生させるべく奮闘する。1991年にテレビアニメ化。
田舎ノ中学校は、作者の出身地である静岡県西部ののどかな田舎が舞台となっている。田舎ノ中学校は千歳の手によって「新田舎ノ中学校」として復活し、新しい学校に生まれ変わらせようとするも、校内には牛や豚・鶏なども徘徊しており動物小屋まで作られてしまう有様である。特に、二足歩行で言葉を話し、生徒同様の扱いを受ける「不良牛(ふりょううし)」をはじめとした牛たちのキャラクターがシュールだ。千歳はかつて在籍していた都会ノ学園と何かにつけて張り合ったり、やる気が空回りするところもあるが、わぴこや葵たちの能天気な明るさに支えられ学生生活を謳歌する。また、マスコット的存在であるぎょぴは、ポテトチップスを食べたり空を飛んだり言葉を話すなど、破天荒なペットぶりが人気となった。
高校生コンビが、校内で起こる様々な事件に挑む学園ミステリー漫画。穂村千夏ことチカは、吹奏楽部に憧れ高校に入学する。顧問の草壁信二郎に一目惚れをしたチカは、偶然その場で幼なじみの上条(かみじょう)春太ことハルタと9年ぶりの再会を果たす。部員はチカとハルタを入れてたったの5人で、廃部寸前だ。おまけにハルタも草壁に片思いということが発覚し、チカは驚愕する。そんな2人の前に、次々と難題や難事件が立ちはだかる。2016年にテレビアニメ化、2017年に実写映画化。
ハルタとチカが通う学校は静岡市の清水南高校をモデルにしており、校名も全く同じという少し珍しい作品である。チカは吹奏楽に関してはズブの素人で、騒音問題もあり、練習場所にも困っていた。練習場所の提供と引き換えに生徒会のトップから発明部の問題解決を依頼されたり、優秀なオーボエ奏者である成島美代子を勧誘するも、真っ白なルービックキューブを「完成」させるよう条件を出されたりと前途多難だ。元バレーボール部でアクティブなチカと、草食系男子で頭脳明晰なハルタが、吹奏楽部のために、課せられた難条件や校内のトラブルを解決していくバディ要素も楽しめる。部活の面でも、吹奏楽の甲子園的存在である「普門館」を目指して邁進したり、また、草壁をめぐって恋敵となった2人のかけ合いも楽しめる。
天使や悪魔たちが下界の高校で学園生活を送るまったり系コメディ。主人公である天真(てんま)=ガヴリール=ホワイトことガヴは、天界にある天使学校を首席で卒業した優等生だった。下界で修行を積むことで、人間を幸せに導ける一人前の天使になるために下界の高校へ入学したガヴであったが、ネトゲにハマってしまい学校にも行かず怠惰な生活を送る。見かねた友人であり悪魔の月乃瀬=ヴィネット=エイプリルことヴィーネは、ガヴを更生させるべく奮闘する。2017年にテレビアニメ化。
ガヴは自らを「駄天使」と名乗り、部屋は散らかし放題で金髪もボサボサであり、一人前の天使になる誓いもどこへやらだ。ガヴを支えるしっかり者のヴィーネの他にも、いつも態度はデカいがいじられキャラの悪魔である胡桃沢(くるみざわ)=サタニキア=マクドウェル、見た目は癒し系の天使だがSっ気たっぷりな白羽=ラフィエル=エインズワースなど、友人たちも個性的である。ガヴたち4人組は天使と悪魔だがいがみ合うこともなく、一緒に海に行ったりクリスマスパーティーをしたりと、下界の生活を満喫する場面には心癒される。また、ガヴたちが降り立った下界のモデルになった舞天(まいてん)市は作者の出身地である静岡県浜松市であり、実際の浜松市に似た風景などを楽しむことができる作品だ。