『嘘喰い』ストーリー前半で描かれた危険な名勝負の数々！70 Pt.

貘と梶が、廃墟ビルオーナーであり賭郎の会員であるQ太郎と、命と財産を賭けて勝負するエピソードだ。作中では、ここで初めて賭郎会員と立会人が登場する。立会人は後に貘の専属となる夜行妃古壱である。
勝負の勝利条件はQ太郎が所有する廃墟ビルから貘たちが脱出すること。ビルの中にはトラップだけでなく、Q太郎の配下である武装した者たちが潜んでおり、貘たちを殺害するために待ち受けていた。ビルからの脱出ならとにかく下に降りるのがセオリーと思われたが、貘がまず目指したのは屋上。それは敵の裏をかいて武器を奪い、無力化していくための戦法だった。
首尾よく武器を手に入れ、Q太郎の配下を退けていった貘たちだが、彼らの前に最強の男であるロデムが立ちはだかる。ロデムはかつて傭兵だったQ太郎によって幼少期から薬物投与の実験を施され、超人的な肉体を手にいれた人間兵器だ。本来の人格は純真無垢なマルコという青年だが、注射をトリガーとしてロデムの人格を目覚めさせることができ、この廃ビルの中ではQ太郎の指示で獲物を絶望へと追いやる恐るべき刺客として動いていた。自らの身も危険にさらすような賭けに出てロデムを無力化した貘は、ゲームに勝利者する。そして、Q太郎の所持していた賭郎の会員券は梶のものとなり、マルコは以降、貘のための「暴（他者を支配するために必要な武力）」となる。

廃坑の中で、貘はテロリストの佐田国一輝とお互いの命を賭けたギャンブル「ハングマン」に挑む。「ハングマン」とは、0から9の書かれた2組の数字札と、1から5が書かれたジョーカーのカードを使い、ババ抜きと同じようにお互いのカードを引き合い、残ったジョーカーの数字の分だけ首つり台が組み立てられていくというものだ。首つり台は計11工程で完成し、首つり台が完成したプレイヤーはその場で負けが確定し、実際に絞首刑にされてしまう。ルール上、プレイヤー以外の発言は禁止されているが、対戦相手にわからない限りのイカサマは制限されていない。
結果は、貘が佐田国のイカサマを見抜いて勝利。佐田国の死が確定したことを受けて、佐田国の専属立会人である目蒲鬼郎が立会人によるバトル「號奪戦（ごうだつせん）」を申し出るが、號奪戦でも貘側の勝利となり、佐田国と目蒲はハングマンに掛けられた。また、貘と佐田国が勝負をしている最中、廃坑の外では佐田国が武器商人のカール・ベルモンドに手配させたミサイルの発射が準備されており、貘たちはその発射阻止にもかかわることになる。

とある目的のために思い出を賭ける「0円ギャンブル」を仕掛ける賭郎会員の青年、雪井出薫が登場する「迷宮のミノタウロス編」。紙面上の迷宮攻略バトルを繰り広げる前半戦と、国家権力によってもみ消された犯罪者の名前が載っている機密書類「Lファイル」を賭け、現実に存在する迷宮で、警視長の天真（あまこ）征一との攻略勝負が描かれる後半戦から構成される。
前半戦の紙面上の迷路ゲームは、対戦者がそれぞれ6×6マスの紙に入り口と出口を定め、20本の線で脱出可能な迷路を作り、お互いに壁にぶつかるまで進むことができるというものだ。賭け金0円で億単位の金を手に入れられるという噂を聞いた梶は雪井出と対決し、敗北。金は取られなかったが、過去の未解決事件の「アリバイ」を奪われ、被疑者となってしまう。この話を聞いた貘は雪井出と対決。大金を手に入れるだけでなく、貘にはとある目的があった。そして勝負の結果、貘は屋形越えの過去を雪井出に奪わせることに成功した。
雪井出との勝負の後、貘は雪井出を裏からあやつっていた警視庁のエリート、天真と「Lファイル」を賭けて勝負することになる。貘とマルコ、天真と特殊部隊のチームが、紙面と同じ6×6の部屋で構成された実際の地下迷宮で殴り合いありのバトルを繰り広げ、貘はその後のギャンブルでも重要な鍵となる「 Lファイル」を手に入れた。

梶と武器商人のカールが、金融業界の大物である羽山紀明の息子、郁斗とストップウォッチを使った時間当てギャンブルを行うエピソードだ。それぞれが宣言したタイムを自分でカウントし、審判がストップウォッチで計測。宣言したタイムとの誤差が一番少ない者が勝者となり、敗者は誤差のあった時間分「ファラリスの雄牛」という鉄製の拷問器具の中で焼かれることになる。
雪井出との対決で「アリバイ」を奪われ、凶悪殺人事件の犯人に仕立て上げられそうになった梶は、「廃坑のテロリスト編」での作戦失敗から組織に追われているカールと共に世間から身を隠していた。だが、梶は貘からのメールで犯人と目される紀明の存在を知り、自分の手で解決しようと羽山邸に乗り込む。そこで凶悪殺人事件の真犯人は郁斗だったことを知り、郁斗から事件の証拠品を得るためのデスマッチを繰り広げていく。
この勝負で、梶は貘の手助けがない状況で郁斗のイカサマを見抜いて勝利するという成長を見せた。

各業界の著名人や大物がゲストに招かれた報道番組「KY宣言」を舞台に行われた「マキャベリストゲーム」。貘が仕掛けたこのゲームは、番組の出演者と同数の、AからFまでの6枚のパネルが用意され、指示機が止まった場所のパネルが開くシンプルなシステムが根幹となっている。各パネルには、番組出演者が闇に葬ってきた6つの未解決事件の調査結果が書かれており、パネルが開くことでその事件の真相が明かされる。
仕掛け人となった貘は「迷宮のミノタウロス編」で入手したLファイルに記載された大物たちの犯罪を世間に公開しようと、テレビ番組「KY宣言」の乗っ取りを画策。番組司会者である緒島ケン太と番組プロデューサーに接触して、強引に番組のプロデューサーとなり、悪行を隠すゲストたちを番組へと出演させる。そして、生放送が始まってから自身の破滅につながる内容に気づいたゲストと、変装して偽名でゲストにまぎれ込んだ梶は、貘の仕掛けに踊らされていく。指示機は各出演者が投入口に投じる「マキャベリカード」の枚数に応じて動くため、自分の犯罪を明かされたくない者は他者と入れるカードの枚数を取り引きしたり、カード自体を買収したりといった策謀を働かせ、醜い駆け引きを繰り広げた。

作中でも幾度か行われる「號奪戦」は、ギャンブルではなく立会人たちによる肉弾戦だ。立会人同士がお互いの名前と號数の入ったハンカチを重ねることで始まるこの勝負のルールは、挑戦者が10秒以内に相手を倒し、それが出来ない場合は粛清されるというもの。賭郎の長い歴史の中で、號奪戦は会員向けの余興のような存在となっていたが、現当主である切間創一が、かつての立会人たちへの敬意から「試合時間10秒」という古来のルールへと戻した。
作中での初登場は「廃坑のテロリスト編」で、立会人弐號の夜行妃古壱と立会人拾號の目蒲鬼郎が號奪戦を繰り広げている。號奪戦で上の者に勝った者はその號を受け継ぐことができ、號が上の立会人が勝利した場合、下位の立会人が失脚する場合もある。実際に「廃坑のテロリスト編」での戦いで夜行が勝利した際は、目蒲が持っていた立会人拾號の座は三鷹花などに受け継がれた。
賭郎に所属する立会人は、零號から百號までの101人で構成されており、それぞれが「暴」「知」「権」に秀でた者たちである。號数が少ないほど立会人としてのランクが上とされ、賭郎の会員が「屋形越え」に挑むための条件の一つには、専属立会人が「零號」であることも含まれる。なお、お屋形様の座を狙う貘は、「KY宣言編」のあと、夜行に「屋形越え」のために専属立会人として零號をとってほしいと依頼している。